過去のWRアンプの掲示板27


この掲示板27は新しい順に並んでいます。
その1へその2へその3へその4へその5へその6へその7へその8へその9へその10へ
その11へその12へその13へその14へその15へその16へその17へその18へその19へその20へ
その21へその22へその23へその24へその25へその26へその28へその29へその30へその31へ
その32へその33へその34へその35へその36へその37へその38へその39へその40へその41へ
その42へその43へその44へ
掲示板へホームページへ

1302川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Mar 5 16:00:00 JST 2012
ふなさん、八尋さんご投稿ありがとうございます。

 お二方に共通するのは昔の録音の聴き直しでしょうか。私もLPを含めて相当数のソースを
持っていますが、一体、その内のどれだけを普段聴いて楽しんでいるかと言えば、案外限ら
れたソースを取っ替え引っ替えしているのが現実だと思います。

 殆どの方が経験してると思いますが、新しいソースを買って来て「これは素晴らしいぞ!」
と思うものは希で、大体は「ちょっと録音が良くないな!」とがっかりする事が多いのでは
ないでしょうか。だからライブラリーには聴かないソースが実は一杯眠っているはずです。

 確かに、録音は水もので一筋縄では行かない厄介なものですが、それにしても大したもの
が少ないと言う実情は寂しい限りです。八尋さんが最新録音は冴えないものが多いと仰って
いますが、強ち再生装置のせいばかりではなさそうです。

 録音技術もオーディオの一種ですから科学的に系統だった流れがある訳ではなく、名人芸
で補われてきた傾向は否定出来ません。例えばカルショウが去った後の英国デッカが、その
録音水準を保てたでしょうか。その録音技術を継承出来たでしょうか。私は必ずしもそうだ
とは言い切れないと思います。

 一方で難はあるが少し妥協すれば聴ける程度の録音は沢山ある気がします。しかし、難が
あると言う事は、再生装置如何では聴くに堪えない音がする事を意味しています。その難が
再生装置、その中でも特にアンプシステムの弱点を突いて来ます。弱点を突かれたアンプは
音楽信号には含まれない過渡ひずみを放出します。それが曲の全体に平均して起きる場合と
部分的に強く起きる場合とがあります。

 その良い例がジョン・ルイスのバッハで、昔はとても楽しめる音がしませんでした。今日
は片チャン250Wのブリッジ駆動システムで聴いて見ましたが、昔の苦労は嘘のように消えて
いて、ルイスの名演をタップリと楽しむ事が出来ました。此処までピアノのタッチが綺麗に
聴こえるようになるとは、夢にも思っていませんでした。八尋さんはリニューアル中なので
まだ完璧とは行かないでしょうが、完成時にはきっと楽しめるようになると思います。

 このようにアンプの安定性を上げて行くと、これまで不合格だったソースが蘇る事がある
と言う事なのです。その絶大な効果をはっきりと確認できたのはエミッタホロワに頼らない
アンプ、即ち出力回路を全てコレクタホロワで賄うと言う発想の具現化が完遂した時だった
のです。勿論それだけでは不足で、帰還アンプに必然的に生じる「負性抵抗」を消失させる
特許回路が併せて使われて、初めて意味を持つのです。

 ひずみ感の減少、耳疲労の低下と言う現実的な生理反応で、この事は裏付けられています。
そう感じるのは私だけではなく、ふなさんも同様な感想を述べられています。生の音楽でも
タコ4、タコ8、タコ10のような偏った音響バランスは耳の神経を疲労させますが、綺麗に
ハモった生の音楽で耳が疲れる事は普通はありません。不協和音は一種の過渡ひずみとして
耳に嫌な刺激を齎すのでしょう。

 耳の生理に取ってこの上無い、極上の音響を提供できるのがWRのコレクタホロワ型アンプ
システムです。耳に優しいだけのアンプなら他にも幾らでもあるでしょうが、唯優しいだけ
ではなく、リアリティが生音楽レベルで伴う事が重要なのです。2つの事が両立するアンプ
システムこそがこれからを担えるオーディオアンプになると思います。WRアンプシステムは
その典型と言っても過言ではありません。

 その結果これまでに集めたソースの中に数多く存在する、一旦は諦めていたソースが蘇生
すると言うオマケが付いてきます。一度ダメだと見捨てたソースが楽しめるようになります。
ふなさんのように、古い録音ながら買う価値のあるソースを期待感を持って買う事ができる
のです。トスカニーニは私も昔よく聴きました。いい音で聴ける事を期待しています。

 最後に八尋さんが「新WRアンプではINとOUTの限界がはっきり分かって」と書いて
おられますが、OUT の方は兎も角もINの方は、確かに他社のエミッタホロワを使ったプリと
混在して使用しますと悪い方に引っ張られて、WRアンプが100%の性能を発揮出来ませんので、
皆さんもどうかご注意頂きますようにお願い致します。私が「アンプシステム」と言う言葉
を多用するのは、その事を皆さんに明確に意識して頂きたいからなのです。

 最近良い演奏、良い録音が少ないとお嘆きにならないで、WRアンプシステムを入手されて、
過去に収集し眠っているソースを見直してみられては如何でしょうか? 眠っているソース
がそれなりに楽しめるようになれば、皆さんの幸福感はきっと倍増すると思います。


お詫び)アンプの製作等が遅れています。今しばらく、お待ちになって下さい。  

1301八尋さん(会社員) Sun Mar 4 11:22:30 JST 2012
WRアンプによるリニューアル計画続報

システム更新の第一弾として、新WRアンプ(WRP-αZERO/BAL)を導入
して2週間程経過して気が付いたことを報告します。

1点は、相変わらず60、70年代のアナログ最盛期のころの録音は素晴らしく改善
されドップリ浸かっていますが、気になったのは旧録音の改善度に比べ最新録音
が今ひとつ精彩を欠くことでした。
そこで思い付いて、DENONのプリを外しCDPにWRアンプを直結したところ
俄然最新録音らしい生々しさが出現してきました。
ユジャ・ワンのラフマニノフはオーケストラに隠れていたピアノが前面にアップされ
難所を軽々と飛翔していきます。バティアシュヴィリのシスタコでは切れのよい
バイオリンの線がきれいに浮き上がり目の前で演奏しているようです。
30年前のDENONのプリはアナログ録音が限界のようです。
もう1点は、掲示板に上げられていたジョン・ルイスのバッハです。確かに変な
音が一部あったなと思いつつ引っ張り出して聴いてみました。小型SPが完全に
破綻します。他のフルレンジ1発のSP(実は先のふなさんが掲示板にあげられ
ていたステレオ誌付録ですが)につなぎ替えるとそれなりに見事に再生
できているので無理に帯域を広げた超小型2wayでは無理なようです。
今回分かったのは、この新WRアンプではINとOUTの限界がはっきり分かって
しまうようです。

いきなりハードルをあげてしまったようなのですが次のステップアップが楽しみです。

柏市 八尋
  

1300ふなさんさん(会社員) Wed Feb 29 20:08:11 JST 2012
先日ステレオ誌の付録のスピーカーを箱に入れようと秋葉原のヒノオーディオに
行ったところ、FOSTEXの試聴会に出くわし2時間聴かせてもらいました。

長岡鉄男さんの傑作といわれているモアイの思想をFOSTEX の最新ユニットで実
現した2モデル、炭山アキラさんの「金次郎」, 浅生(日方)さんの「AS2010H」を
作者のお二人が紹介する視聴会でした。
どちらも、フルレンジ(バスレフ箱)の上下にホーンタイプのスーパーツィーター
と 20cm サブウーハーを -6dB/oct で繋いで、自然な音色、広帯域、高Dレンジ
を狙ったもので、10cm フルレンジを使った AS2010Hは自宅の SuperSWAN(WR式 
UHC-MOS ミニアンプでドライブ)と似た印象で、お金と暇があれば作ってみよう
かと思わせるものでしたが、自宅では感じない歪っぽさがあり、視聴会の後は疲
れが残りました。

学生時代に通ったジャズ喫茶のアンプ(Technics SU/SE 10000)がオーバーホー
ルの際に代替品(他社の高級セパレートアンプ)に代わったときに、音が歪みっ
ぽくて長居できなくなったことがあり、漠然とアンプで歪み感が違うとは感じて
いました。
社会人になってオーディオ店の毎週末の視聴会に通っていたことがあります。高
級な装置でも、約2時間程集中して聴かせていただくと、それなりに疲労感が残る
と感じていました。
これに対して、WRアンプの試聴会に参加するたびに感じたのは疲労感の少なさで
した。自宅のアンプをWRアンプ(TV音声用に UHC-MOS miniアンプ、メイン用にコ
レクタフォロア型とドレインフォロア型のセパレート)に替えてからは、歪っぽ
いと感じることが無くなりました。家族もアンプを変えたらうるさくなくなった
と言っています。その一方で分解能が不足することもなく、音楽に集中できます。

古い録音がとても聴きやすくなり、50年代のジャズ、クラシックを聴く度に「こ
んなに上手い演奏だったんだ」と再認識しており、手持ちのソースを聴きかえす
だけでなく、再発CDに手を出す機会が増えました。
先日もトスカニーニのコンプリートコレクション(CD80枚以上、約8千円でした)
を予約し、届くのを楽しみにしています。
  

1299川西 哲夫さん(WRアンプ開発設計者) Mon Feb 27 22:45:00 JST 2012
久し振りにブリッジ接続によるハイパワーアンプで聴いてみました。

 このところパワーアンプをWRの中心的パワーアンプであるWRP-ΔZERO/BALに固定して
聴いてきました。それは標準的なコレクタホロワ型アンプシステムの音を、自分自身で
確認しておく必要があると思ったからです。そしてこれまでのアンプシステムより確実
に音質が向上している事を、幾つものソースで追認する事が出来ました。

 これならプリとパワーを併せて50万円程度になっても、それだけの価値はあると思い
ました。最近の投稿文中に出てくる私の試聴記事でお分かりだと思いますが、要するに
以前のアンプシステムには多かれ少なかれ存在した過渡ひずみが、皆無に近くなったと
思われる事です。昔は「録音がおかしい」或いは「録音のせいだ」と思っていたソース
が、かなり見直された事でも分かります。

 オーディオ再生には難しい「楽器と音域」があります。例えばピアノは全体的に再生
の難しい楽器ですが、右手の一部に特に難しい音域があります。バイオリンも中高音部
に耳に着き易い音域があり、特に合奏で難しさが倍増します。しかしピアノにもバイオ
リンにも案外再生の楽な音域もあります。どのような装置で聴いても比較的それらしく
聴こえる音域です。

 音域もそうですが奏法も関係します。ピアノならタッチ、バイオリンならボーイング
でしょう。難しい音域と微妙なタッチや強引なボーイングが、余計に耳に嫌らしく響く
音を生み出します。ピアノ、バイオリンの他にも、ホルン、ソプラノ等、オーディオに
取って難しいものは色々あるのです。

 それとは逆に、再生の楽な音域が広い楽器もあります。ギター、ハープ、フルート等
はそうだと思います。又、比較的奏法の影響を受け難い楽器とも言えるかも知れません。
しかし全ての音域がそうだとは言えず、必ずその楽器の鬼門とも言える音域があります。
だから、その音域を上手く外した曲を集めたソースはオーディオ的な訳で、オーディオ
愛好家に好まれる所以です。

 そのようなオーディオ的なソースを使ってアンプシステムのチェックをしても、私は
殆んど意味がないと思います。つまりそのような音は、どのようなシステムで聴いても
ある程度耳に心地良く響くからです。心地良さにランクを付けて、アンプの良し悪しを
客観的に判断するのは非常に難しいと思います。結果的に自分に都合の良い判断になる
のです。だからオーディオは着実に発展出来ないのだと思います。

 私が採用してる判断基準は全く逆でどれだけ耳に障る音が出るかどうかで判断します。
耳に障る音がどちらが少ないか、と言う命題は比較的冷静に判断出来ますからより正確
にアンプシステムの診断が出来るのです。そして最終的には全く耳に障りのない音まで
求めて行く事が出来ます。耳に何の障りもない音は、結局リアルな音に帰着すると思い
ます。リアルな音を再生する事が私のオーディオの最終目的です。

 エミッタホロワを有したアンプシステムの時は、軽微にはなっても完璧に耳に障る音
をゼロにする事は出来ませんでした。ある線で限界を感じていました。まだ手を付けて
いない何かがあると思わざるを得ませんでした。そして研究当初に立ち返ったのでした。
それはずっと気にしていたエミッタホロワの不安定性だったのです。

 コレクタホロワ化が始まってから、耳に障る音が確実に減りだしてとうとうゼロ近傍
に漸近したのです。それを確信できたのは、プリアンプの安定化電源もコレクタホロワ
にした時だったと思います。その時以来、パワーアンプはずっとWRP-ΔZERO/BALで固定
してきました。

 そう言えば長い間、ブリッジ接続によるモノーラル・ハイパワーアンプで音を聴いて
いませんでした。これらのパワーアンプは80W+80Wくらい出ますからブリッジ接続では
約240W出る事になり、50W 出力のΔZEROの5倍になります。これだけ差が有ると聴いた
感じも違うはずです。

 ブリッジ接続で聴いて見たくなったのは、パワーだけの問題ではなく過渡ひずみゼロ
と言う音が、踏襲されるのだろうかと言う素朴な疑問があったからでもあります。負荷
抵抗が半分になり、2台のパワーアンプのホットとコールドの信号をスピーカーで合成
すると言う手法に問題はないのか、と言う事をはっきりさせたかったのです。

 最初は何ヶ月振りかに通電したので、4つのパワーアンプの動作が揃わなかったのか
音像がぼやけた感じに聴こえ、ブリッジ接続に有り勝ちな音かも知れないと危惧したの
ですが、段々エンジンがかかってきて、ΔZEROに負けずにシャープになってきました。

 それどころか、ffではやはりハイパワーの凄みが感じられて、オケの音のリアルさ
に自分でもちょっと怖くなりました。大げさに言えばこんな音が我が家で聴けても良い
のかと言う驚きでした。八尋さんが仰った「WRアンプ恐るべし」と言う言葉を思い出し
ました。ΔZEROの時もリアルさは結構感じていましたが、ここまで鳴るのかと言う感じ
に聴こえました。サントリーホールで聴く日フィルも凄いですが、我が家で聴く小澤/
ボストンもまた別の凄さがあります。

 ΔZEROでも本質的には全く問題ありませんが、大きな部屋で大音量で聴きたい方には
カスタムになりますが80W〜100W 程度のパワーアンプ2台によるブリッジ接続をお勧め
致します。但し普通のステレオアンプをブリッジ接続にする為には、フルバランスプリ
例えば、WRC-ΔZERO/FB が必要です。  

1298川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Feb 22 14:10:00 JST 2012
八尋さん、ご投稿ありがとうございます。

 八尋さんに最初にWRアンプを買って頂いた時は、確かにアンプの型番もなく、当然の事ながら
プリも未だ製品化されていませんでした。試聴会も共立女子大学の旧第一会議室で文化祭の一環
として年一回行われていた時代でした。

 あの時から変わっていないのは、私がモニターに使っているB&W805MATRIXだけかも知れません。
このスピーカーに固定してアンプの開発を進めてきましたが、当初の音とは随分変わったと思い
ます。先日拙宅に来られた時の「唖然とし、・・・」と言う一文でその事はお察し頂けるものと
思います。一言で言えば、音が極限までに洗練されたと言うところでしょうか。

 昨日もCDやCD-Rを聴いていましたが、これまでは際どい音の再生時に多かれ少なかれ耳に異常
な刺激として感じていた過渡ひずみが、皆無と言っても良い程に少なくなっています。それ程に
WRアンプの音は洗練されたと言っても良いと思います。これでおかしな音がするなら、それこそ
録音の問題だと言えるのではないかと思いました。録音が悪いと感じた場合の半分以上の責任は
実は自分(殆どはアンプの責任)にあると言う事です。

 一つ例を挙げましょう。それはジョン・ルイスの「プレリュードとフーガ Vol.2」(826 698-2)
です。特に2曲目が最難関です。これは私のみならず霞仙人さんも他社製のアンプを使っている
時に、スピーカーがビリビリいって とても音にならなかったと証言されています。

 WRアンプはエミッタホロワ時代でもかなり良くなっていましたが、何処か一部では怪しい音が
まだ残っていました。自分の中でも妥協があったと今は思っています。このCDの難しさはピアノ
の再生にありますが、それだけではありません。ギターの中低音が異常に響き馬鹿でかい楽器に
聴こえます。ベースの音も籠もって綺麗に沈みません。三重苦なのです。

 それが昨日聴いて見ると、全てが嘘のようにピアノはどの音階でも正常な音ですし、ギターも
普通のギターに聴こえます。ベースも下に綺麗に抜けているではありませんか!もう、完璧です。
このCDのベストの音を初めて聴いた想いでした。一時は「このCDの録音は絶対におかしい!」と
自分の中で決め込んでいましたが、昨日はあっさり思い直してしまいました。唯、おかしな音の
芽は録音ソースに含まれており、それがアンプの弱点を突いて来る事は確かだと思います。

 このように、コレクタホロワ化されたWRアンプを使えば、一見録音が悪いと思われたソースや
八尋さんが好んでお買いになっていると言う一昔前に録音されたソースも驚くほどにリアルな音
で再生されて来るのです。

 新譜に魅力的なアーチストが居なくなりメジャーレーベルも録音に力を入れられない昨今では、
古き良き時代に録音された、偉大な指揮者やソリストの遺産をもっと聴き直すべきだと思います。
バーンスタイン、カラヤン、チョン・キョンファ、ルプー、アンセルメ等、段々聴かれる頻度が
少なくなっていると思います。

 そうなると何故かその存在感が薄くなり、演奏の価値も下がったかのように思い込んでしまう
傾向が、我々の心の中にはあるように思います。幸い安価に買えるのですからこの際古いソース
を見直すべきでしょう。其処に新しい発見が必ずあるはずです。

 その手助けになるのがコレクタホロワ化されたWRアンプです。八尋さんがお買い上げになった
アンプは、WRP-αZERO/BALのコレクタホロワ版です。内容的にはWRP-ΔZERO/BALより価値のある
パワーアンプと言っても良いでしょう。オールSEコンだからです。現在お持ちのWRP-α1 も同様
の仕様ですから、これからコレクタホロワ化のアップグレードを行えば、同等の音質に蘇るもの
と思われます。

 12年程据え置かれた装置の一大リニューアルにコレクタホロワ化されたWRアンプを選んで頂き
大変有り難いと思います。この先ホーンを主体にしたマルチを整備されるのも良し、何か秀逸な
ブックシェルフをお買いになってαZEROとα1 でバイアンプで鳴らすのも良し、又2台のアンプ
をブリッジ接続にしてハイパワーモノアンプとしてスピーカーをバランス駆動するのも一興かと
思います。ブリッジ接続によるバランス駆動はフルバランスプリWRP-ΔZERO/FB の機能が有れば
こそですから、是非一度はお試し頂きたいと思います。

 これからも装置の発展に伴ってご投稿をお願い出来ればこれに過ぎる幸せはありません。是非
よろしくお願い致します。これをお読みなったコレクタホロワ型アンプのユーザーの方も、八尋
さんに続いて頂けたら嬉しく思います。良い音で良い音楽ライフをお過ごしなら、是非後続の方
にもご披露頂いて参考に供して頂きたいと思います。重ねてよろしくお願い申し上げる次第です。

 逆に、どうもしっくりしないと言うご不満がお有りでしたら、それは原理的なものでは無くて
個の問題かと思いますので、先ずはメールでご相談なさって下さい。万が一何処かに不具合でも
あれば、勿論、無償で修理させて頂きます。  

1297八尋さん(会社員) Sun Feb 19 15:40:00 JST 2012
久々に投稿します。八尋です。

高尚なオーディオ論の後に・・だからオーディオは面白い・・と決め込んでいる小生の
拙文となるのは気が引けますがそんな方も多いとの思いで恥ずかしながら投稿します。

投稿は、この掲示板の最初期(その1)以来なんと12年!ぶりになります。
WRアンプ初代機(α1の名前が付く前)導入から12年が経つことになります。
私事ですが小生もサラリーマン現役引退の時期となりました。有意義な引退生活の
ため、小生と同様にガタのきた現行オーディオシステムの一新を川西先生に相談した
ところ、WRアンプは格段の進歩を遂げてるとのこと。すぐに先生宅に試聴に押し
かけ、唖然とし、小生としては一大イベントとなるリニューアル計画を決行するに
至りました。
その第1弾として、メインアンプWRP−αZERO/BAL(コレクタフォロア版)
を導入し1週間の結果を第1報として上げさせていただきます。

試聴は比較のため、普段のマルチアンプ大型システムでなく
・SPはテクニクス超小型SB−M01(8センチ2way)(置換え機種選定中)
・プリはDENON PRA2000(WRC−ΔZERO/FB置換え予定)
・CDPはSONY CDP−R3(置換え機種選定中)
・アンバランスで接続(バランスケーブル依頼中)
・12畳洋間でSPが破綻するぎりぎりまでボリュームを上げて試聴。

まずは最近激安のBOXセットで買いだめしてしまった60年、70年代の決して
優秀録音ではないクラッシクの中から開始。
・・素晴らしい・・
この小さなSPからフルオーケストが眼前に展開。従来、団子になっていた総奏が
内声部まできれいに分離され音が実に生々しい。バーンスタインNYPの音はこんなに
よかった?。熱気がもろに伝わってきます。カラヤンBPはやっぱりうまい。
ここまでやるか?という感じ。
面白くて時を忘れ深夜まで次々聴いてしまい翌日仕事休むはめに。
気を取り直して翌日はDECCAのセット。ルプーのベートーベンのピアノから。
スタインウェイ(たぶん)をすぐ横で聴いてる様。ジーンという打鍵の響が心地よい。
キョンファ・チョンの鋭いヴァイオリンの音も決してきつくならず浮き上る。
アンセルメのファリァ、見通しがいい。ベルガンサの声こんなによく取れてたんだ。
ということできりがない。
こんな小さな、安価なSPでここまで再現できるWRアンプ恐るべし。
コレクタホロワの威力なのかな〜。
これはまだリニューアル計画の第一弾!なのですが大成功です。
これからプリを変え、バランス伝送化、SACD、ハイレゾまで広げ、最後にSPを
入れ換える(追加する)予定です。現行システムで今でも唯一綺麗なホーンの中高音
を支えてきたα1もコレクタホロワ化改造中です。
拙文ですが逐次掲示板に上げていくつもりです。
ご意見ご指摘あれば都度よろしくお願いします。

柏市 八尋  

1296川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Feb 16 20:20:00 JST 2012
オーディオはもう少し科学的、論理的に考えるべきではないでしょうか?

 先日、相方の平野紘一氏と電話で話す機会がありました。彼のところには色々な方が気楽に
オーディオに関する相談をしてくるそうですが、中には「ちょっとどうなのよ?」と首を傾げ
たくなるような話もあるそうです。そして、もう怖いものがなくなった2人して、オーディオ
界にもの申そうと言う事になったのです。

 私はずっと象牙の塔の中に居ましたので、オーディオは科学的に扱われなくてはならないと
常々考えて今までやってきました。その信念を貫いた結果、到達出来たのがコレクタホロワ型
のアンプシステムなのです。その完成には、数学もコンピュータも随分使って来ました。まだ
パソコンなんて無い時代から、大型計算機で多元連立1次方程式を解いて「負性抵抗」の核心
に一歩ずつ迫っていました。

 又、高周波領域までスペクトラムを有するホワイトノイズを使って、アンプの混変調実験や
エミッタホロワの発振・変調実験等を、高周波スペアナで監視しながら行って来ました。それ
らの科学的アプローチの積み重ねによって、初めてコレクタホロワの正当性を見出せたのだと
思っています。それは単なる山勘や思い付きではなく、科学的・論理的な必然だったのです。

 全てがそうでなくてはならないとまでは申しませんが、現在のオーディオはやはり非科学的
な部分が多過ぎる気がします。アマチュアが趣味でやるなら、それはご自由にと言う事になる
のでしょうが、商品化されるとなると話は又別なのです。商品化されると何故かオーソライズ
されたように消費者は錯覚します。

 オーディオが斜陽化したのは、趣味が多様化しオーディオ以外に容易で面白い趣味が増えた
事も大きな要因だと思われますが、本質的な問題は、他に有るのではないでしょうか。それは
オーディオメーカーが科学的にしっかりした研究をせずに、オーディオ機器、特にオーディオ
アンプを売って来た事にあると私は思っています。

 その最大の罪は「トランジスタアンプは音が硬い」と言う誤った概念を植えつけてしまった
事です。罪を擦り付けられたトランジスタこそいい迷惑です。真空管の製造中止が決まり世は
トランジスタアンプの一人舞台になるかと思われたのですが、いい加減なトランジスタアンプ
を発売したが為に、メーカーはユーザーに幻滅されて、徐々に信用を失ったのです。行き場を
失った人が行き着いたところは、捨てたはずの真空管だったのです。

 もう一つそれに輪を掛けたのがCDの発売でした。CDそのものは決して悪くはないと思います
が、多くのCDプレーヤーからはLPに劣る硬い音しか得られなかった、と言われても仕方ないで
しょう。この2つが重なった事で、「オーディオはもう楽しくない」と思われてしまったのだ
と思います。結局、メーカーは自分で自分の首を絞めたのです。

 トランジスタアンプとCDプレーヤーの発売は、バブルに乗って幸先良いスタートを切ったの
ですが、それは物珍しさとバブルによる景気に支えられていたに過ぎず、それに胡坐をかいて
いたメーカーの怠慢、及び科学的にリードすべきだった学会の閉鎖性とオーディオ嫌いの問題
が、それを本物に成長させる事を妨げたのです。

 私がまだペイペイの頃、学会にはオーディオに一見識をもつ研究者が大学やメーカーに多く
存在していました。しかし、何時しかオーディオは毛嫌いされて、研究論文も激減して行った
のです。「オーディオは科学ではない!」と嘯く研究者が多数を占めるようになったのです。

 その言い分は言い逃れだと思います。オーディオが非科学的なら、科学的に扱う努力をする
のが真の研究者ではないでしょうか。私の研究も、途中までは原著論文として掲載されました
が、ちょっと音の事に触れると途端にリジェクションされたのです。確かに、音は心理的要素
を含みますから、単純には扱えないでしょうが、そこを切り開いて行くのが研究者の仕事では
なかったかと思います。あとの祭りです。学会から足を洗って独自に研究して来て良かったと
今は思っています。そして私の主張は特許としてオーソライズされたのです。

 面倒なものは切り捨てると言う古風な学会の体質が、オーディオに確固たるバックボーンを
形成させる事を不可能にしたのです。バックボーンの無いオーディオが、暴走し破滅するのに
多くの時間は必要なかったのです。そして今のオーディオ界は糸の切れた風船の如く、あっち
こっちを彷徨うだけで、一向に目的地に到達出来ない状況が続いています。

 そのようなオーディオ界を残念に思いますが、本来オーディオは苦しむ為にあるのではなく
楽しいものなのです。どうか既成オーディオの亜流から脱して、清流に足を踏み入れて下さい。
ウエストリバーのコレクタホロワ型アンプシステムを信じて改宗して下さい。もう一度楽しい
オーディオを取り戻しませんか? 亜流の中に居ては何時までたっても楽しいオーディオには
到達出来ないでしょう。

 最近コレクタホロワ型アンプシステムを手に入れられた方は、皆さん満足されて音楽を楽し
まれていらっしゃいます。オーディオの柵から解放されて、自由に音楽を享受されているのだ
と思います。私のところに来るメールにはそう書かれています。或いは、行間からそのように
察する事が出来ます。

 しかし、時節柄なのでしょうか、残念ながらWR掲示板には発表されない事が多くなって来て
います。公に文章を書く事は大変ではありますが、どうか手に入れられた幸福を後に続く人に
伝えて欲しいと思います。そして幸福の輪を広げて行きませんか。それに足る資格がWRアンプ
システムには有ると私は信じています。   

1295川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri Feb 10 14:10:00 JST 2012
気になっている別のCDもSSD 装着パソコンでコピーして見ました。

 前回の「ロミ・ジュリ」のコピーが良かったので、平行してコピーの実験をしていた、下記の
2点についても、息子に同様なコピーをして貰いましたので、結果をご報告します。

 1.項番1273でご紹介した、ベートーベン「交響曲第7番」(全集の1枚)
  (クリュイタンス/ベルリンフィル:7243 4 83415 2 5 仏EMI)

 2.項番1274でご紹介した、リスト「ハンガリー田園幻想曲」
  (チェッカート/カンパネッラ/モンテカルロ歌劇場管:461 096-2 独BELART)

 クリュイタンスは一般にはフランス音楽の大御所と呼ばれていて、EMI に多数の名演を残して
います。私はフランス音楽には余り興味が無かったので、殆どそれらのCDを持っておりませんが、
このベートーベンの交響曲は別格です。クリュイタンスが大指揮者であった事を証明しています。

 まだクリュイタンスの名を知る以前の話になりますが、高校生の頃にこのLPが発売になったと
記憶しています。ラジオでも盛んに放送され、独特のリズム感でワクワクさせられ「ベト7」の
魅力を知ったのでした。当時のラジオ放送でも録音は良いと思いました。

 金持ちの息子が同級生にいて、文化祭のレコードコンサートにこのLPを貸してくれたのでした。
偶々、音楽評論家として有名な三浦敦史氏が英語の先生でしたので、貴重なLP等をお借りしたり
コンサートでの解説原稿のヒントを頂いたり、いろいろ先生との楽しい一時が想い出されます。

 「ベト7」は最近では「のだめ」で有名になりましたが、当時もこのLPのお陰でかなり日本中
を湧かせていました。だから、このソースは常に頭の隅にありましたし、私の「ベト7」の規範
でもあったのです。

 科学はオリジナリティが重要視されます。音楽(芸術)の世界も同じ事だと思います。指揮者
に取って演奏スタイル、或いは演奏そのものは一種の著作です。科学論文を書く時に、それ以前
に発表された関係論文に言及しない事はあり得ません。音楽の世界でも、もう少し先人の演奏を
尊重すべきではないかと思います。

 確かに科学と違って、真似なのかオリジナルなのかの判断は難しいでしょうが、其処を見抜く
のが専門家である音楽評論家の仕事ではないでしょうか。「この演奏は○○の亜流だ!」くらい
にズパっと書く見識の高さが欲しいものです。最近の評論家は、難しい形容詞を使うのは上手い
ですが、結局何を言いたいのか論点に棘がありません。その点、盤鬼西条卓夫氏の演奏評は胸が
すく思いで読みました。

 クリュイタンスはベルギーの生まれで、フランスのラテン系文化とドイツのゲルマン系文化を
幼少時より身につけたと言われています。その為かベートーベンを振っても場違いな感じは全く
なく、そればかりか、ラテン系の音楽を身につけた強みが随所に見て取れる気がします。だから
この演奏はクリュイタンスとベルリンフィルの一期一会的な名演になったのだと思います。

 前置きが長くなりましたが、だからこのCDを少しでも良い音で楽しみたいのです。そして一人
でも多くの人に、過去にこのような名演・名録音があった事を知って欲しいのです。

 もう一枚の方はずっと後からの録音でそれだけに状態もかなり良いのですが、何分にもピアノ
の再生に難しさがあって、何とか気持ちよく聴きたいと常に思っていました。スタインウェイの
音は徐々に輝かしい音色から、ホールの隅まで聴こえるような大きな音に変化して来ているので、
今となってはこのソースは非常に貴重なものだと思います。

 リスト/スタインウェイと来れば自ずと期待してしまう音、ジーンと鳴る冴えたピアノの響き
を連想します。しかし、現在では生の演奏会に聴きに行っても、残念な事にそんな音はまず期待
出来ないのです。だからピアノの演奏を止めてしまった演奏家すらいるのです。

 アンプが完全にコレクタホロワ化されてから、ピアノ音の再生は一躍改善されて今では殆んど
問題が無くなっていますが、それでもこのソースのffでのピアノの安定感がさらに良くならない
かと期待したのです。ピアノには耳に心地よく聴こえる音域と、余り良い音には聴こえない音域
があります。

 気持よく抜けないちょっと詰まったような音域をffで弾かれると、さすがに息苦しさを感じて
しまいます。例えば、それが 3:22 頃に現れるのです。その部分を少しでもスカッと聴きたいと
思うのはオーディオをやっている者の切なる願望でしょう。

 カンパネッラのタッチは綺麗ですし、録音に使用されたピアノも極上です。それでも苦しい所
はあるのです。それがピアノなのです。リストはショパンに比べれば増しな方です。多分リスト
はショパンと違って、少なからず音響効果を狙って作曲した可能性があると思います。P協1番、
2番共にショパンのP協に比べてずっと再生が楽だからです。

 勿論この「ハンガリー田園幻想曲」も音響効果を狙って作曲されていますが、やはり一部には
そのような息苦しいffが存在してしまうのでしょう。その音域を全く避けた作曲法はあり得ない
ので仕方がないところです。

 さて、SSD 装着パソコンでコピーしたCD-Rの音はどうだったのでしょうか。「ベト7」に限り
ませんが、交響曲全曲について総じて言える事はバイオリンパートが左チャンネルから飛び出て
来る事です。普通の装置で聴いている人は録音が古いから仕方がないと諦めるでしょう。これが
このCDの最大の問題点です。

 今回のCDには第5番も入っていますが同様の傾向です。全曲共に1960年前後に録音されていて
この頃の一つの特徴でもあります。リストの方のCDに入っている「ハンガリー狂詩曲」も同様の
問題を含んでおり、これも60年前後の録音です。

 このバイオリンパートの問題を除くと、現代の大したことのない録音より余程リアルに録れて
います。だから、何とかコピーによってバイオリンパートを少しでもまともに再生したいのです。
その願いがSSD 装着パソコンによるCD-Rへのコピーでかなり叶えられました。

 あんなに気になっていた左スピーカーからの音の飛び出しが収まって、距離感をもって舞台で
演奏しているオーケストラが感じられます。それも極上のベルリフィルです。この音なら十分に
音楽が楽しめます。弦の柔らか味も味わえるようになりました。「ベト7」は59年の録音ですが、
50年以上前にドイツで響いた音が、今我が家で再現されていると考えるとオーディオの有り難さ
を改めて感じます。こう言う音で聴いて初めて、この演奏の良し悪しを論じられるのではないか
と思います。

 リストの方はどうだったのかと申しますと、これもかなりの効果がありました。ちょっと振れ
ましたが、「ハンガリー狂詩曲」の方はドラティ/ロンドン響の演奏で、昔のマーキュリー録音
です。Living Presence と呼ばれたHiFi録音で一世を風靡しました。このシリーズの中に有名な
35mm Magnetic Film Recordingがあります。このCDには6曲中から2曲入っていますが、何れも
バイオリンパートがお世辞にも綺麗だと言えません。他の楽器は問題ないのに不思議です。

 この頃のマイクか録音機か分かりませんが、何か共通する問題点があったのでしょう。それが
コピーする事によって、少なくても左チャンネルから、凄まじい音が飛び出してくるような事は
なくなりました。取り敢えずオーケストラの中に収まりました。この音ならバイオリンパートが
気になって音楽が楽しめないと言う事はないと思います。

 肝心のピアノ音はどうなったでしょうか。やはり安定感が増しました。「ガーン!」と来ても
音が崩れる兆候が全くなくなりました。それに音全体に柔らか味が加わって、LPの音に共通する
ようなアナログっぽさも感じられるようになりました。

 結論的に言えば、CDのダイレクト再生には無理があるようです。余程高価なプレーヤーを使わ
ない限りこの宿命から逃れられないでしょう。貴方はLPに逃避しますか? それともCDをコピー
する事によってCDを蘇らせますか? PCオーディオと言う手もありますがこれはこれでデジタル
処理系の問題を孕みます。

 世の中から次々に巨匠が去り、どんぐりの背比べのような時代になってしまい、新譜に魅力が
無くなった昨今では、昔の名演・名録音を蘇らせる事が出来ればこれに過ぎる事はないでしょう。
自分のライブラリーを最大限活用して、いい音楽をいい音で楽しんで行きたいと思います。

 その為の準備が、アンプシステムの完全コレクタホロワ化であり、CDの良質なコピーなのです。
皆さんもちょっと手を伸ばせば手中に納める事が出来ます。追随して頂ければ幸いです。  

1294川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Feb 5 16:00:00 JST 2012
CDのコピーも SSDを使ったパソコンで処理した方が音が良いようです。

 前々項で、WR録音のミックスダウンやCD-Rへの焼き込みを、SSD を使った Macで行ったところ
デジタル録音の嫌味が殆どなくなり、アナログ録音的な柔らかい音も再生出来るようになった事
をご報告しました。

 一つ付け加えるならば、96KHz/24bit から44.1KHz/16bit に変換する時に、使用するディザー
を間違えると、ぶち壊しになる事も分かりました。昔、まだWRアンプがコレクタホロワ化される
以前は、ディザーを変えても音が変わった事は確認できたものの、どれが本当なのかまで見抜け
ませんでした。今は岐路に立った時に着実に正しい方向を見定める事が出来ます。

 この事は曖昧模糊としたオーディオに於いては非常に大切な事です。常に正しい判断を重ねて
行けば、着実に音を良くして行く事が出来るからです。最新のコレクタホロワ化されたWRアンプ
システムになさればCDプレーヤー、ケーブル、スピーカー、或いはCDやLP等のソース源の評価を
迷う事なく下す事が出来ますので、能率良く音楽を楽しむ為の環境を構築出来るはずです。

 今回採用したディザーは優秀で、DVD-AUDIO で聴いた感じに近いイメージです。勿論、情報量
は相当違う訳ですから音質は悪化しているに違いないのですが、黙って聴かされるとその判定に
苦しむ程似たような感じに仕上がっています。コレクタホロワ化されるまでは、良いディザーを
見つけられなかった事もあって、圧倒的にDVD-AUDIO の方が音が良いと思っていました。しかし
CD-DA もきちんと作れば、かなり実用的には問題ないものが出来る事が分かりました。

 さて、前置きはこの位にして本題のCDのコピーの話に入ります。以前、一つのソースを決めて
コピーをし、CDダイレクト再生より音質が向上する事をご報告しました。もう一度整理しますと、

1.ソースには小澤/ボストン響の「ロミオとジュリエット」(423 268-2 独輸入盤)を使う。

2.リッピング時にMac のメモリー内に仮想ドライブを作って、其処でデータ処理を行う。

3.Mac も含めて、焼く為のドライブもコレクタホロワ化されたWR製安定化電源で供給する。

4.CD-Rには誤り率の低い太陽誘電製メディアを使う。

となります。因みに「ロミ・ジュリ」は色々ありますが、プロコによるものです。

 こうして作られたCD-Rでもダイレクト再生より音質は相当向上し、CDの音質を見直す程の効果
が有ったのです。しかし、この時は未だSSD は使っておらず、強いて言うならばリッピング等の
処理中に、Mac 本体のHDD は動いていたはずなのです。それがマイナスに働いていれば、現在の
SSD 化されたMac で処理すれば、もっと音が良くなるはずです。

 データそのものの扱いは個体メモリ内で行われているので、単なるデータ処理の為のOSの動き
によるHDD の動作がどれ程の害悪が有るのかは、それこそやって見なければ分からないと思った
のです。そこで息子にSSD を使った現システムで、もう一度コピーをして貰ったのです。因みに
ファイルはAIF ではなくWAV で行いました。WAV の方が音が映えるようです。又仮想ドライブは
敢えて作りませんでした。

 今度は、CDをリッピングする時と焼き込む時以外は、ノイズを出す可動部分は何もありません。
果たして音質は向上するのか変わらないのか、そのCD-Rを再生して見ると、何と良くなっている
ではありませんか。なんとなくではなく、はっきりとその良さが分かりました。今までの音には
雑味を感じるのです。純粋な楽器の音以外の嫌な音がまだ含まれていたのです。コレクタホロワ
化されたシステムで聴くと、このような音の差も聴き分ける事が出来たのです。

 昨日、Disc1(再生時間約73分) とDisc2 の35分程度のところまでを一気に聴いてしまいました。
総時間で約110 分です。これは2時間弱で普通の演奏会の時間より長い位です。一部始終で生に
近い分解能の高い楽器の音を堪能出来ました。このオリジナル録音は優秀ですが、曲が曲だけに
下手をすると中高域、特にバイオリン群の音が煩く直ぐに耳が疲れてしまいます。それにしても
この頃の小澤の演奏は凄いです。素晴らしいです。ボストン響も品があっていいです。

 我が家の最大音量で聴いたにも拘わらず、聴き終わっても耳の疲労感は殆どありませんでした。
この音量はサントリーホールでの私の定席(1階センター中央前より)で聴くよりは大き目です。
私の耳はどちらかと言うと中高域、特にバイオリンの帯域に敏感で直ぐ其処に耳が行くのですが、
今回は中低域から下の充実感が何時もとは違うと思いました。かなりの量感が安定に出るのです。
ホルンの低い音が何ともリアルな張りをもって聴こえて来ます。16cmのウーハーとは思えない音
で大太鼓、ティンパニー等が鳴ってくれます。それもワザとらしくではなく、さり気なく、そう
感じる事が出来たのです。

 こうなると最初は良いと思った、雑味のある前のバージョンはもう聴けません。オーディオは
やはり際限がないようですが、ある意味微妙なこの音の違いを聴き分けられたのも、何度も言う
ようですが、システムが完全コレクタホロワ化されたお陰だと思っています。

 原因が分からないから、いろいろやって音がこうなった、あーなったとオーディオの楽しみが
あるのかも知れませんが、もうその段階から抜け出す時期にオーディオは来ているのではないで
しょうか。単なる試行錯誤では無駄が多過ぎますし、意味のある発展に結び付くかどうかも甚だ
疑問です。それより先が見えるシステムにし、早く自分の理想の音を着実に手に入れて、あとは
時間もお金も音楽を聴く為に使った方が得策なのではないかと思います。

 WRアンプは単なる、興味本位のオーディオの為にあるのではなく、あくまでも音楽をいい音で
聴く為の便利で現実的な道具です。ある程度、科学的に先を見越して行けるアンプシステムです。
どうせなら、プリアンプとパワーアンプはセットでご購入下さい。多分一部にエミッタホロワを
使ったアンプを混在させると、100%本領発揮は出来ないと思います。システムとはそう言うもの
です。

 旧型アンプをお使いの方も含めまして、なるべく早く完全コレクタホロワ化されたシステムを
手に入れられますように、お勧めする次第です。

 尚、上記のようなコピーシステムをお持ちで無い方の為に、無料(送料のみ負担願います)で
コピーして差し上げますので、奮ってお申し込み下さい。原則として、コレクタホロワ化された
方に限らせて頂きます。CDの音がどれ位良くなるか実感して見て下さい。CDに対する偏見が無く
なるか、減ると思います。


使用機器:

CDプレーヤー:TEAC DV-15
光ケーブル :SAEC X-1
DAC         :AccuPhase DC-91
接続ケーブル:WR製バランスケーブル( DAC−プリ及びプリ−パワーアンプ間)
プリアンプ :WRC-α1/FBAL(コレクタホロワ改造済み)
スピーカー :B&W 805MATRIX
パワーアンプ:WRC-ΔZERO/BAL   

1293川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Jan 31 14:30:00 JST 2012
電源プラグの極性にご注意を! 極性を揃えればもっと音はよくなります!

 昔から、電源プラグをコンセントに差し込む方向によって音が変わると言われてきました。
事実、コンセントの長い切れ目(アース側)に電源ケーブルのアース側を合わせると、音が
スッキリすると言う事が多いようです。

 元来、商用電灯線は落雷対策の為に中性線は電柱の所で地中に落とされています。中性線
とは100V/200V 単相3線式の共通線の事です。色で言うと白い線です。バランスして使うと
この線には電流が流れません。最近は大きい家が増えていますので、マンションを含めても
殆どこのタイプになっているはずです。

 家庭の屋内配線は、この中性線の方をコンセントの長い切れ目に繋ぐように施工されてい
ます。従って、長い切れ目の方を仮に触っても感電しない訳です。この長い切れ目が本当に
アースに落ちているかどうかは工事した電気屋さんに依る訳ですが、絶対間違いがないとは
言い切れません。一度チェックする事をお勧めします。

 どうやってチェックするかですが、一番原始的なのは自分で触って、ビリビリ来なければ
正真正銘アース側だと分かります。これは万が一の事もあり危険ですから、普通は検電器を
使います。検電器はネオン球を利用したもので、人間には殆んど感じないようにネオン球を
通して電極に触れるのです。アース側ならネオン球は点きませんが、ホット側の場合は点灯
するので、どちらがアース側か分かります。ホット側の電線の色は赤又は黒が多いです。

 私は検電器を持っていないので普通のテスターの交流レンジを使って調べています。この
レンジは電圧計の為に高抵抗が入りますので、これを検電器代わりに使います。テスターの
リードの片側を手で握って、もう片側をコンセントに差し込んで、デスターの針が振れるか
どうかで判定しています。アース側の場合は殆んど針は動きませんが、ホット側の場合は目
で有意の振れ幅を確認できます。

 コンセントの極性が正しい事を確認した上で、次に電源ケーブルの極性を合わせるように
差し込みます。電源ケーブルのプラグのどちらがアース側なのか、これにも問題があります。
WRアンプに付属させているケーブルには2種類あります。大体、10万円以下のWRアンプには
「SANWA」とケーブルに印刷された平行ビニール線のものが、高級機種には「SHINAGAWA」と
印刷されたキャプタイヤケーブルが付属しています。どちらも音質チェックして決めたもの
です。

 先ず、アンプ側に差し込まれる方を見て下さい。文字が読める方向にして、左側に小さな
文字が確認できると思います。前者のケーブルには「N」後者のケーブルには「W」がある
はずです。これがアース側を示しています。Nは Neutral、Wは Whiteでしょう。

 アンプ側ではこれがトランスの捲き始めに接続されています。捲き始めはアンプシャーシ
に静電容量を持つので、これが地中アースに接続されるとシャーシはアース電位に近くなり
アンプにノイズが乗り難くなると考えられのです。だから音がスッキリするのです。

 では、この反対側、即ち電源プラグの方はどうでしょうか。実はそれらしきものは書いて
ありませんが、前者のケーブルの場合はやはり文字が読める方向に見て左側がアース側です。
幾つかテストしましたが、これは確実のようです。しかし、後者のケーブルには実は問題が
あるのです。最近気が付きました。

 アース側が左か右か決まっていないのです。これはケーブルの製造工程の問題なのですが
私は決まっていると最近まで思い込んでいました。しかし、手持ちのケーブルをテスターで
調べて見ると、確率5割でどちらとも言えませんでした。即ちキャプタイヤは捩れています
から、プラグを付ける工程でどちらが左になるか分からないようです。そこまで管理されて
作られていないと言う事なのです。

 こればかりは実際に一つ一つテスターで調べるしかありません。テスターの無い人は電池
と豆球を使って調べて見るのも良いでしょう。私は最近まで一つだけ測定して、あとは右へ
倣えでアース側を決めていたのです。実は、それ以外にも凡ミスをやっていました。

 電源コンセントから自作のテーブルタップを経由してプリやパワーアンプに供給している
のですが、実はこのテーブルタップの極性を誤っていたのです。これは単純な思い込みです
が、アース側を識別する色付け(私は黒か青にしている)を見事に付け間違っていたのです。
要するにシステムの電源の極性は滅茶苦茶だったのです。

 それでも、システムのノイズ状況がベストになってなくても、アンプのコレクタホロワ化
によって、かなりの線まで音は浄化されて来ていました。しかしお客さんが聴きに来られる
のを機に、何となく電源の極性が気になったのです。そして今回の騒動に発展したのでした。

 全てを正しく極性を整えて見ると、やはり音がスッキリします。音が良くなるのには際限
がないのでしょう。バイオリンの抜けが明らかに向上します。詰まったりしません。ピアノ
のタッチがより明瞭になります。ハンマーとピアノの弦の間に、薄い布が挟まっていたのが
取れた感じに聴こえます。カタカタ音も結構聴こえて来ます。

 バイオリンとピアノが同時に音が良くなれば本物です。この2つの楽器は装置が中途半端
な時は相反する事があるのです。バイオリンの音は落ち着いたのに、ピアノの音が冴えない
とか、逆にピアノの音は冴えてるのにバイオリンの音がチリチリするとかです。バイオリン
とピアノが両立すると、全ての楽器の質感がワンランク上がったように聴こえます。やはり
電源の極性は大切だと改めて思いました。

 どうか、皆様方も電源の極性を是非チェックして見て下さい。思い込みや無意識によって
電源の極性がいい加減な状態になっている可能性が大いにあります。面倒ですが、コストは
掛かりませんので是非チェックする事をお勧めします。きっと、今よりもっと音が良くなる
と思います。

 先日の日フィルで聴いた「ブラ1」の弦の音が素晴らしかったので、直ぐに自分の装置で
チェックする気にならなかったのですが、この機に乗じて試して見ました。使ったソースは

 ジュリーニ:ロサンゼルス管(427 804-2 独輸入盤)

です。勿論、注目するのはバイオリンパートの音です。全く、引き攣れ、詰まり、荒れ等が
なく非常に綺麗で且つ力強く聴こえます。細かな和音の変化も感じ取れ、一本調子ではあり
ません。先日の生の音に及ばないにしてもかなり同質の音になったと思います。少なくても、
再生音でこんな音が聴けたのは生まれて初めてです。何十年ものアンプ研究が実った瞬間で
した。この分ならブラームスのV協も気持よく聴けることでしょう。  

1292川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Jan 26 14:00:00 JST 2012
録音又はその後のデータ処理にハードディスクは向かない?

 少し前の項番で、ハードディスクのモーターの動きがノイズを発生させる可能性があるので
録音の質を悪化させる、と言う意味の事を書きました。現今では固定メモリーが安価になって
いて、おまけに SSDなる HDDと互換性のあるものまで入手出来るようになっていますので余り
HDD に拘る必要はない訳です。SSD とは Solid State Driveの略です。

 もう1年以上前に、息子が試験的に Macの HDDを SSDに代えて録音に臨んだ事があったので
すが、見事に Macを立ち上げた瞬間に SSDが壊れたようで、一瞬、今日はもう録音が出来ない
と思ったのでした。幸い予備の HDDを持って来ていたので無事録音を済ます事が出来たのです。

 そんな訳で安いバルクは怖いし一流メーカーのものは高いし、その後はずっと HDDで録音を
して来たのでした。おまけに、録音データを記録する HDDにはRAID機能をもつものを使い始め
てましたので、余計にノイズと言う観点からは不利になっていました。(RAID機能とは複数の
HDD に同じデータを重複して保存しデータ保存の確実性を上げる事、普通は2つの HDDを使う)

 それで SSDの性能も向上し価格も安くなって来たので、もう一度 SSDを使って見ようと言う
事になりました。その予備的実験の為に、OS部分は仕方ないとしても、データ処理だけは USB
上で行えば、少しは良くなるはずだ、と息子は考えたようで、USB バージョンを焼いて持って
来てくれました。

 その音からは、デジタル処理で起こるザラザラ感が無くなっており、一歩前進と思いました
が、音質そのもは少し抜けが悪くバイオリンの音などの切れ味が今一つで、ちょっと硬直した
音でした。私は勝手に USBの処理速度が遅いので最新の高速 SSDを使えばもっと音は良くなる
と直感的に思いました。

 この結果に意を強くした息子は早速 SSDを購入したのです。もうメモリー内に仮想ドライブ
を作る必要はなく、SSD の中で普通に処理すれば良いはずです。こうなると、データの処理に
必要なOS上の動きも含めて全てが個体メモリー上で行われるので、二重に有利になるはずです。

 その全てを個体メモリーで処理したCD-Rが届きました。最初にRAIDの HDDからデータを読み
込む時と、最後にCD-Rを焼く時以外は機械的な可動部分は無くなったのです。案の定、音質は
格段によくなりました。分かりやすく言えば、音がアナログっぽい音になりました。

 デジタル録音の典型的な嫌な音は殆ど抑制されています。音の切れ味も悪くなく、もう元に
戻れない感じです。今後はミックダウンそのものの良し悪しを気にすれば良いわけで、誤った
判断をする確立が減るだろうと思います。

 唯、オリジナルは96KHz/24bit で録っているので、CD-DA に落とす時のディザーのかけ方や
使用ソフトで音質は変わります。その最善の方法を探って行く必要はあると思います。しかし
デジタル処理に伴う余計なザラツキ感は激減したので、今後の展開はずっと楽になるはずだと
思います。

 オーディオのソースは、LPやCDに加えてPCオーディオが加わっていて、WRアンプユーザーの
方の中にもPCオーディオを楽しまれている方が増えています。この経験は必ずやPCオーディオ
にも参考になると思います。

 高音質を狙うデジタル処理で注意する事は

1.全ての機器に於いてスイッチング電源は使わない。→WRの安定化電源のようなものを使う。

2.HDD の使用を止めて SSDにする。

となると思います。逆に言えばこれらのものが残っているデジタルシステムの音はもっと良く
なるはずです。何時しか「デジタル」と言う言葉が「アナログ」と言う言葉より、オーディオ
的に上に扱われる日も来るのではないかと思います。

 話は少しずれますが、同様な事象として「トランジスタ」と「真空管」と言う対比があると
思います。「トランジスタ」が「デジタル」に「真空管」が「アナログ」に対応する事は言う
に及びません。

 これは私の中では決着がついていて、WRアンプの完全コレクタホロワ化で、「トランジスタ」
に軍配が上がっています。この音を真空管で達成する事は至難の業でしょう。最近、経験した
事ですが、日本及び海外の著名なパワーアンプのどれでも上手く鳴らせなかったあるお宅の家
で、WRアンプは合格を貰えたのです。このお宅で通用するアンプは世界広しと言えども、数種
有るか無いかだと言います。言い換えれば、WRアンプは世界の頂点の域に達していると言える
でしょう。私の独り善がりではないのです。

 ブランド名は差し控えますが、著名なアンプとは皆様が容易に想像する高額なパワーアンプ
です。ブランドに惑わされて有り難く使っているオーディオマニアの方が、如何に多いかです。
それは自分で本物の音を見抜く耳の鍛錬を怠っているからでしょう。確かにオーディオは趣味
ですから他人がとやかく言うべきではありませんが、耳の良い人にチェックされれば、一瞬に
して馬脚を現してしまうでしょう。物差しを持たないオーディオの運命なのです。

 その意味で、WRアンプは高い安いに拘わらず安心して使って頂けます。迷路に迷い込む事も
ありませんし、恥をかく事もありません。そればかりか何が良くて何が悪いのか、オーディオ
が見えて来ると思います。そろそろブランド信仰はお止めになりませんか?  

1291川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Jan 21 21:00:00 JST 2012
日フィル1月定期を聴く

 秋シーズン最後のコンサートはドイツものを集めたプログラムであった。指揮は主にアメリカで
活躍する中国人指揮者のラン・シュイである。ジンマンやマズアの下で研鑽を積んで来て現在では
世界各地のオーケストラに招かれるまでに成長していると言う。

 曲は、ちょっと珍しいメンデルスゾーンの序曲「美しきメルジーネの物語」、シューマンのP協、
そしてメインはブラームスの交響曲第1番であった。ピアノは若くしてその才能を開花させた田部
京子で、芸大在学中にドイツに留学し、各種コンクールに何回も入賞している逸材である。

 メンデルスゾーンの序曲と言えば、先ずは「フィンガルの洞窟」が有名であるが、それでは名曲
コンサートになって、定期プログラムには相応しくないと考えたのだろう。だから滅多に演奏され
ないこの曲が選ばれたのではないだろうか。それは兎も角も、この曲は結構充実した佳曲で、後に
作曲される「スコットランド」を思わせる曲想である。初めて聴く曲なのに、行きなりメンデルス
ゾーンの世界に惹き込まれる程の分かり易さであった。

 この指揮者の統率力は中々のもので、のっけからオケを上手くコントロールしていたと言っても
良いだろう。ラザレフに扱かれて腕を上げた日フルの上手さもあったのかも知れないが、第1曲目
からピシッと合っていて、単なるウォーミングアップの為に置いた曲とは思えなかった。

 次のシューマンのP協だが、私は余り好きな曲ではない。確かに、グリークのP協とよくカップ
リングされる有名な曲であるが、だったらチェロコンの方が余程内容が濃い気がする。チャイコや
ラフマニノフのような美しいメロディーに富んでいる訳でもないし、ブラームスのような充実感が
ある訳でもない。この曲の真価を知っている人から見れば私は差し詰め「猫に小判」かも知れない
が、好き嫌いだけは仕方がない。だからかも知れないが、田部京子の演奏も並に聴こえたのである
が、それは自然の成り行きだっただろう。

 15分の休憩を挟んで期待の「ブラ1」だった。期待と言うのはやはりオケの本当の実力はドイツ
の伝統的な音楽で、何処まで聴衆を納得させられるかで決まると思うからである。それには、何と
言ってもベートーベンやブラームスの交響曲が最適である。「ブラ1」はその中でも最も相応しい
曲だと思う。耳にタコが出来るほど聴いているので、良い演奏に出会っている確立も高い。だから
感動させる為のハードルは高いのである。

 先ず注目は出だしのストバイの音である。「ブラ1」の出だしが問題なく再生できる装置は殆ど
ないのではないだろうか。多分、ある程度引き攣れても目を瞑って聴く人が多いのではないだろう
か。そしてブラームスの和音がその原因だ、と思い込んでいる人も居るのではないだろうか。その
せいで、ブラームス嫌いになった人も居るはずである。

 その意味で大注目であった。結果は、ブラームスの和音は決して引き攣れて聴こえるようなもの
ではないと言う事が分かったのである。今回は運が良く、コンサートマスターが扇谷であった事が
幸いしたと思う。これまでも何回となく経験して来た事であるが、扇谷の時の日フィルの弦は本当
に綺麗に揃って聴こえるのである。日フィルの弦の腕前は高い方だと思うが、特に扇谷の時は素晴
らしい。

 出だしのバイオリン群からは、全く耳への嫌な音の成分が聴こえて来なかったのである。これは
初めての経験である。そればかりかブラームスの絶妙な和音に快感すら覚えたのである。これだけ
で感心してしまった。これには、指揮者の統率力も無視できない存在だったと思う。勿論、出だし
だけではなく、最後の最後までブラームスの音楽に取って、弦の存在は常に意味のある動きをして
いるので、全くストレスを感じる事無く「ブラ1」を堪能できたのである。

 この曲には弦の他にオーボエ、ホルン、フルート、そして影の存在としてトランペット等が活躍
するが、皆トップのレベルがそれなりに高く、この曲を盛り上げていたと思う。指揮は若干直線的
で情緒に欠ける傾向があるが、総じてアンサンブルの良いスッキリしたブラームスを聴かせてくれ
たと思う。

 私が若い頃から聴いているカラヤン/ウィーンフィル(英デッカ録音、ビクター発売)はもっと
重く重厚感があるし、ジュリーニ/ロサンゼルス管(独グラモフォン)もテンポが遅く演奏に慣性
を感じる程重々しい。遅くする事でブラームスらしさを出しているのかも知れない。

 しかし、この曲の解釈には明らかに直線的に演奏する選択が有り得るのである。盤鬼西条卓夫氏
の推薦盤はベイヌム/コンセルトヘボー管であったが、これはあっと言う間に終わってしまう程の
テンポの速い演奏であった。

 その中間的存在としてドイツの指揮者、例えばサバリッシュがよく行った演奏は、途中でテンポ
を大きく弄り、遅くしたり速くしたりが交互に繰り返されるものであった。これには聴いている方
がずっこけてしまい、少なくても私は着いて行けなかった。

 その意味で今回の演奏を分類するなら、ベイヌム手法と言う事になる。西条氏はフランス風演奏
を高く評価していたので、ドイツ流の歩いたり走ったりを唐突に繰り返す演奏は我慢できなかった
のだろう。私も、だったら余程直線的な演奏が肌に合うと思う。

 第4楽章のコーダが終わった瞬間、絶大な拍手が巻き起こったが、もう一つ興奮し切れなかった
会場が其処に有った気もする。もうちょっとだけ溜めが有っても良かったと思うのである。


ご報告)寒中特価セールに出ておりました、旧型シャーシによる完全コレクタホロワ式プリアンプ
    はお陰様で売り切れました。残るはユーズド部品を活用したパワーアンプWRP-ΔZERO/BAL
    だけになりました。これも完全コレクタホロワ式の最新型WRパワーアンプです。ご予約で
    さらに5%お安くなりますので、奮ってご応募下さい。  

1290川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Jan 16 01:20:00 JST 2012
寒中特価セールを開催しています!

 世の中、やはり不景気で沈滞気味ですね。オーディオに手を出したくても、こう世の中が
暗いと、余り大きなお金を動かしたくないのが人情です。

 そこでWRでは、アップグレードや下取り時に生じた部品やシャーシを生かして、正規品と
同等の音質が得られる特価品を作り、皆様に出来る限りお安く提供させて頂く事にしました。

 今回は下記の3機種が用意できます。

1.WRP-ΔZERO/BAL→予価 \199,500

 このアンプは、WRの新しい顔になりました。春から夏に掛けて行った新デザインシャーシ
記念特価販売でも、ユーズド部品使用と言う条件で販売させて頂き好評でしたので、今回も
一台追加させて頂きました。SEコンは限定的にしか使いませんが、BGコン又はBGコンクラス
のケミコン、ERO 、進抵抗(ニッコーム)等の高級部品を使用しています。

 パワーTRにはNEC のEMe (2SD180/2SA626) を使っていますので、音楽性の高い音が得られ
ます。小容量補償コンデンサーには吟味したセラミックが使われていて、SEコンとは違った
スッキリ、爽やか、端正な音が得られます。これはコレクタホロワにしたからこそ得られた
音質だと思っています。

2.WRP-αZERO/BAL→予価 \147,500
 残念ながら既に予約されました。

3.WRC-ΔZERO/ST→予価 \126,000
 新しいWRのプリとしてWRC-ΔZERO/FB が標準になりましたが、性能的にはその部品を普及
部品にした、謂わばWRC-ΔZERO/ST だと思って下さい。そんな商品は定番品にはありません
が、シャーシ構造を除けば正しくその名に相応しい、普及型コレクタホロワ式フルバランス
プリアンプです。前回に続いて第二弾になります。

 音質はマスターズ平野氏の折り紙付きで、音が弾み明るく聴きやすい音です。音質的には
WRC-ΔZERO/FB とは別の良さがあり、決して劣りません。安心してお買い求め下さい。今回
は旧型シャーシがアンバランス式でしたので、これからバランス用の穴あけと再塗装を行う
予定です。もうシャンペーンゴールドは無く、ミルキーホワイトにする予定ですが、或いは
別の色も可能かも知れません。

 ご予約になりますと更に5%引きになります。お申し込み又はご質問、カスタムのご相談等、
気楽に下記までお問い合わせ下さい。

メール:kawanisi@west.river.jp.org

電話:042-683-0212   

1289川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Jan 12 14:00:00 JST 2012
CDのコピーをすると音が良くなる?

 このテーマは昔から私がラジオ技術に何回か書き、それでは収まらずにDVD-AUDIO 化までして
かなりのライブラリーを作って聴いて来ました。DVD-AUDIO 化はオペラ等の大作を1枚で聴ける
のが魅力です。最近、PCオーディオが流行って来て再びCDのリッピングがちょくちょく行われる
ようになっています。

 初めてお読みになる方の為に、前回までに書いた内容の論点を整理して置きたいと思います。

1.対象CD:小澤征爾/ボストン響:プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」(423 268-2)

2.問題点1:Mac のファインダon/offの問題

3.問題点2:HDD への取り込みとHDD からのライティングの問題

4.Mac 、ライター等の電源の問題

 1のソースは独グラモフォンの優秀デジタル録音ですが、CD特有のデジタル的な刺激音が多く
長い間聴いていると耳が疲れますし、オケ独特の柔らか味が殆んど味わえません。

 2は画面上の不必要なアイコン等を消し、メモリに余裕を持たせられるので、デジタル処理に
有利に働き(例えばスワップが減る等)、結果的に音にも良いと考えられています。

 3の HDDはアクセス時に必ず駆動モーターが動きますので、ノイズ発生等の問題が生じるはず
です。スピンドルモーターの回転数制御、シークモーターのサーボ機構で制御用デジタル信号が
頻繁に発生するので、それがノイズの原因になります。

 4はコンピュータを始めとするデジタル機器の電源は、殆んどスイッチング電源が用いられて
いて、これらの出すノイズが確実に環境を汚染する問題があります。そればかりではなく電源の
インピーダンスが高いので、ノイズが野放しになります。

 要は、デジタル処理系に於いても、ノイズの原因となる不必要なパルスの発生は極力抑える事
が必要なのです。正確にデジタル信号を処理するには、その信号と無縁なデジタルノイズは誤り
を発生させる原因になりますので、出来る限り減らす努力をすべきです。

 大切な事は元のCDディスクに刻まれたデジタル情報を、如何に正確に読み出してCD-Rに正しく
書き込むかに掛かっています。CDプレーヤーの難点はリアルタイムで再生しなければならない事
と、CDの媒体(ポリカーボネート等)の量産に依るピットの不正確さにあります。(時間を掛け
れば、もっと音質の良いCDが出来ると言われている)

 リアルタイムで読めば読み損なう事は当たり前で、そこに誤り訂正が入り込み取り繕った信号
で我慢する事になります。それに輪を掛けるのが、ピットの穴あきが不正確に作られたCDの媒体
です。この問題を解決しようとすれば相当高額なプレーヤーになるでしょうし、何処まで行ける
かも疑問です。

 では、どう解決するかと言えば、

1.優秀なリッピングソフトを使い、読み取り難いピットを何回も繰り返し読んで、極力正しい
  であろうと言う情報を生成する努力をする。当然、リーダーの電源はWRのコレクタホロワ式
  安定化電源を使い、電源インピーダンスを下げて不要なノイズを極力吸収する。(SW電源に
  比べると電源インピーダンスは1桁以上下がる)

2.その際HDD は使わずにMac のメモリ内に仮想ドライブを作り、其処に読み込む。ファインダ
  を offにすると、結果的に音が悪くなるのでファインダonで処理する。勿論、Mac の電源も
  WRのコレクタホロワ式安定化電源で供給し、コンピュータ内の不要なノイズを吸収する。

3.読み込んだデータはMac の電源を切ると消失するので、そのままリッピングに使ったものと
  同じソフトを使ってCD-Rに書き込む。CD-Rには誤り率の低い太陽誘電を使う。勿論ライター
  の電源にもWRのコレクタホロワ式安定化電源を使う。(リーダー/ライターは同じドライブ
  であり、一般には5Vと12V が必要)

と言う手順でCD-Rを作成します。こうして作られたロミ/ジュリのCD-Rを聴いて見ました。

 これまでで一番良いと思ったものは、リッピング時に一度HDD に保存し、仮想ドライブに転送
してからファインダonで焼いたCD-R(この時はリッピングとライティングのソフトは別物)でした
が、それと比べるとオケの柔らか味が随所で確認できるようになっていて、その点が大きな進歩
だと思いました。ファインダonは致命的問題ではないようです。

 生音楽と再生音楽の一番の違いは、楽器の柔らかい音が聴こえるかどうかだ、と私は思います。
バイオリンの音って、キーキーと鳴る激しい音だと言うイメージがありますが、実は独特の柔ら
かさがあります。生で聴くとこれが何とも言えない魅力的な音に聴こえます。特に基音が中低域
の時に感じますが、物凄く、微妙な倍音を含んでいると思われます。

 しかし、この音は再生音楽では殆んど聴こえて来ません。多分、耳を異常に刺激する余計な音
にマスクされて、この倍音が掻き消されるから聴こえて来ないのだと思います。だから、この音
が聴こえるようになったと言う事は、余計な音が相当減った証拠だと思います。

 この倍音を含む柔らかい音が、私が今まで機会ある毎に「サワサワサワサワ」とか「エーテル
がファーっと漂うような」と表現してきたものと、基本的には同じ音なのです。これが聴こえる
装置は一流と言えるでしょう。「エーテル云々」と言う表現は故高城重躬氏が最初に使った言葉
だと思います。まだ電磁環境の良い時代に過渡特性に優れたオールホーンシステムでは聴こえた
のだと思います。

 WRは特許回路と工夫されたコレクタホロワ回路の採用によって、それを可能にしました。上述
したCD-Rが仮に昔作られたとしても、多分、余計な音を発するアンプではその真価を評価できな
かったでしょう。WRのコレクタホロワ式アンプシステムの完成によって、全ては上手く繋がった
なのだと思います。柔らかい音が聴こえると言う事は、アンプが柔だと言うことではありません。
出るべきところはビシッと出ます。誤解なさらないようにして下さい。又音楽のジャンルも選び
ません。クラシック、ジャズ、ポップス、歌謡曲、打ち込み、何でも最良の状態で再生します。

 このレベルに音質が高められると耳の疲労はあり得ません。音楽会の帰りに耳が疲れたと思う
事がないのと同じです。しかし先日、昔作ったDVD-AUDIO を聴いていたら見事に耳の疲れを覚え
ました。やはり、誤り訂正で取り繕われた音は、かなり余計な音を含んでいるようです。この事
がCD嫌いを生み、LPに回帰させている原因だと思います。これさえ回避出来ればCDはLPに勝るで
しょう。最終的には基本的なスペックがモノを言うからです。上限再生周波数の問題は本質的な
問題ではないと思います。
 
 同様に、このレベルまで来れば真空管アンプの比ではありません。特に出力インピーダンスを
下げ切れない無帰還アンプには限界があるでしょう。やはり、最終的にはハイテクが勝るのです。
それが確固たる技術です。但しオーディオは趣味ですから、技術的に劣るものを使ってもご自分
が楽めるのなら、他人がとやかく言う筋ではないでしょう。私は、その事に気が付いた人の為に
最良のアンプシステムを提供するだけなのです。


注)生音楽会でもショスタコービッチのエキセントリックな交響曲を聴かされると耳を塞ぎたく
  なりますが、あれは耳が疲れると言うよりは、精神的に頭がおかしくなるように思います。  

1288川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Jan 8 17:50:00 JST 2012
磯村さん、プリアンプWRC-ΔZERO/FBのお買い上げとご感想ありがとうございます。

 プリアンプの納期が大幅に遅れ大変ご迷惑をお掛けしました。何時ものシャーシ屋さんが異常に
混んでしまい1ヶ月程延びてしまいました。此処に謹んでお詫び致します。今後、シャーシ屋さん
が恒常的に混みますと、1ヶ月と申している納期が1.5 ヶ月くらいになるかも知れません。どうか
お急ぎの方は早めにお申し込み頂ければと思います。

 プリの方は幸い気に入って頂けたようで、私も大変嬉しく思います。CDプレーヤー又はDAC から
直接聴くより雑味が減って音場感が広がり耳心地が良いと仰って頂けて、プリをお買い上げ頂いた
甲斐が有ったかとお喜び申し上げます。

 昔からWRパワーアンプを単体で聴くより、WRプリを併用した方が良いと言うお声が圧倒的ですが、
今度のコレクタホロワ形式なってから、余計効果が上がるように私は感じております。ふなさんも
同様のご感想をお持ちのようで、未だプリの改造を行っていない方に強くお勧めする次第です。

 ご投稿文には書き記されておりませんが、磯村さんがお使いのラインアップを簡単に紹介させて
頂こうと思います。勿論、パワーアンプはWRP-ΔZERO/BALです。

★トランスポート:トライオード TRV-CD4SE

★D/A コンバータ:ソウルノート sd2.0B

★スピーカー:ウッドウィル 8cmタンデムR&B

 トランスポートとDAC 間は同軸で、DAC とWRプリの間はバランス伝送だそうです。多分、プリと
パワーの間もバランスだと思われます。DAC にはPCからのデジタル信号を入れ、所謂PCオーディオ
もお楽しみなっているそうです。

 相対的に高価な機器をお使いのようで、かなりいい音で鳴っていると想像致します。8cm のSPは
フォステックスが使われていると思いますが、概して中高音が目立ちその割に低音の量感が少ない
ので落ち着いた音は得られにくいと想像します。このSPで耳心地良く鳴っていると言う事はアンプ
のポテンシャルがそれ相応に高い証拠かと思います。

 確かにスピーカーには必ず何らかの癖があり、使用するアンプがプアーですとモロにその欠陥が
耳に着く事になります。私が使用してるB&W805MATRIXも中高域が煩く、鳴らし辛いスピーカーだと
言う評判がありましたが、アンプを完全コレクタホロワ形式にした今では、全くそんな気配はあり
ません。スピーカー単独で音質・音色が決まる訳ではなく、アンプが接続されて初めてクローズド
されて特性が決まります。

 良いと言う評判を聞いて買ったのに今一ついい音で鳴らないと言うご不満をお持ちの方は、是非
アンプを完全コレクタホロワ形式になったWRアンプに取り替えて見て下さい。これが同じSPなのか
と思うような音に成ると思います。

 伸るか反るかではなく、リアリティがありながら耳に優しく響き、決して耳が疲れない柔らかい
音場の中で、ゆったり音楽をお聴きなりたい方には、WRアンプシステムが最適なのです。  

1287磯村さん(会社員) Thu Jan 5 17:08:35 JST 2012
プリアンプWRC-ΔZERO/FBが昨年2011年12月に届きました。
その節はありがとうございました。

非常に気に入って使わせていただいています。
じかにCDから直にパワーアンプで聞いていたときより、
雑味が減り音場感が広がったように感じます。
耳心地がよく鳴ってくれて自然に音楽が楽しめます。

長く大切に使わせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
話の途中となり申し訳ありませんが、お礼まで。

ありがとうございました。

1286川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Jan 4 17:00:00 JST 2012
小澤/ボストン響のロミ・ジュリのCD-Rをじっくり聴いてみました。

 暮れは気忙しくてじっくり音楽を聴いていられなかったので、正月休みに先日リッピング
して焼き直したCD-Rを腰を据えて聴いて見ました。実は Macのファインダをoff にした方は、
何故か思ったようにいい音にはならなかったので、今回はファインダonで焼いたものを聴き
ました。

 いい音にならなかった理由は定かではありません。HDD 内にある音ファイルを直接焼くと
余りいい結果にはならないので、これまでMac のメモリー内に仮想ドライブを作り、其処に
音ファイルを転送してから焼いて来ました。そもそも仮想ドライブを作る為にファインダを
使っているので、その元の仕掛けを消しても良いのかどうか、この辺りに問題があるのでは
ないかと言う事になりましたが、本当のところは分かりません。作成した仮想ドライブが宙
に浮きHDD から直接焼いたのではないか、と言うような音に聴こえました。

 昔なら良い事をしたのだから絶対いい音になっていると言う先入観が勝り、誤った判断を
していたかも知れませんが、どちらが正しい音かを直ぐさま見通せるようになった事は着実
に我がシステム(WRアンプ)が成長した証だと思っています。唯、誤解の無いように補足して
置きますが、ファインダを offにしたリッピングでは明らかに効果があると思いましたので、
ファインダ off自体は問題はなく音質上有利に働くと思います。

 そんな訳でファインダonで焼いた方をゆったりと聴いてみたのですが、デジタル録音でも
こんなにも、しっとりしているのに芯のある美しいバイオリンの音が録れるのかと、改めて
独グラモフォンの録音技術に感心してしまいました。これまでのシステムではこんな音では
とても鳴らなかったでしょう。もっと耳に刺激的で、聴き終わると耳に疲労感が残るような
刺々しい音だったと思います。だから、高級なオーディオファンはCDを敬遠しLPに走るので
はないでしょうか。

 しかし、この音を聴けばCDの音を見直すのではないかと思います。私は生の音に近いのは
このCD-Rの音の方だと思いました。理想的に行けばデジタル録音の方に分があると思います。
それが科学技術の真の発展と言うものでしょう。同じ事が真空管とトランジスタにも言える
と思います。正しく設計すれば、トランジスタアンプの方に分があるのです。やはり私には
LPと真空管は一種の逃避だと思えてしまいます。

 昔このオリジナルCDを聴いていると、頭の中では演奏も録音も良いと思うのですが、結局
20〜30分も聴いていると耳が疲れて、もういいやと思ってしまったのが、聴けども聴けども
益々聴きたくなり、もう終わっちゃったのかと逆に残念さが湧いて来る始末でした。それに
曲のどの部分でも興味深く聴けた事です。

 システムの音が良くない時は往々にして曲の盛り上がる部分は面白く聴けても、つなぎの
部分の何でもないところでは途端に音に冴えがなくなり、つまらない音楽に聴こえてしまう
のが常だったのですが、ロミ・ジュリにはそんな部分は全く無く、何処も彼処もじっくりと
楽しめたのです。楽器の息遣いが手に取るように分かるのです。だから音楽が生きているの
です。その意味でも生の音楽会と近いと思いました。

 もう、トランジスタアンプでデジタル録音を聴くのがベスト、と言う状況になったと思い
ます。勿論トランジスタアンプにはWRの完全コレクタホロワ型のプリとパワーアンプを使う
事が条件であり、デジタル録音には優秀なアナログ録音のデジタル・マスタリングを含んだ
CDから、リッピング技術を生かして焼き直したCD-Rを当てるべきかと思います。

 CD-Rの作成は簡単には行きません。SW電源などで駆動されたパソコン、インターフェース、
ドライブ等ではダメです。本当に良いCD-Rは出来ません。それぞれWR製のコレクタホロワ型
安定化電源で供給して、始めて滑らかなデジタル臭の無いCD-Rが焼けたのです。現在3種類
の電源容量の違う安定化電源を駆使してCD-Rを作成しています。

 息子もこれらの安定化電源を使うようになって、やっと思うようなWR録音が出来るように
なったと言っています。デジタル録音の大切な点は、未然のマイクの配置よりは、その後の
ミックスダウンにあるようです。最終的にスピーカーで聴く録音は、ヘッドホンでは正確に
モニター出来ないのでスピーカーで行う必要があり、これらの作業を正確に行う上でWR製の
コレクタホロワ型安定化電源は不可欠であるとも言っていました。

 WRの完全コレクタホロワ型システムを構築された方でご希望の方は、輸送代ご負担の上で
オリジナルCDをお送り下さい。1〜2週間程度でご返送致します。是非、デジタル録音及び
CDの素晴らしさを見直して下さい。

 SP→LP→CD、真空管→トランジスタと技術的に発展したのですから、その一番新しい技術
で最高のパフォーマンスを得るようにするのが、技術屋の役目ではないでしょうか?


告知)ご好評につき第2、第3の普及部品を使った完全コレクタホロワ型フルバランスプリ
   を企画しています。旧型シャーシを生かした、安定化電源駆動の本格的プリにご期待
   下さい。再塗装、部品のレベルアップ、フォノEQ等のご希望、ご予約も承ります。 

1285川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Jan 1 00:00:00 JST 2012
謹賀新年

 今年もどうぞWRアンプをよろしくお願い申し上げます。

 昨年の終わりの掲示板上に、括弧書きで「音色は変わる」と書きました。以前にも一度
「音質」と「音色」を使い分けるべきである、と言う主旨の書き込みをした事があったと
思いますが、良い機会なので改めてこの2つの言葉の意味について、探ってみようと思い
ます。

 音質はtone qualityであり、音色は単にtoneですが、意味合いはやはり colorだと思い
ます。quality には良し悪し(或いは高い低い)が有りますが、color には良し悪しはなく、
単純に好き嫌いがあるのみです。

 この2つを混同すると、唯でさえ音の表現が曖昧になり勝ちなのに、それに輪を掛けて
不正確な表現になります。私がこれまで苦労して来た殆どの事は音質上の話です。ホルン
やピアノの音に耳が異常に反応したのは、スピーカーから出て来る音の qualityの問題で
した。要するにアンプの過渡ひずみが無視できなかったのです。

 オーディオ界では、オーディオは趣味であって、多様性があり、又好き嫌いの世界でも
あると言われます。一般論としてそれは正しいと思いますが、tone qualityに限定すると
必ずしも好き嫌いで割り切るべきでないと思います。

 にも拘わらず、音を全て好き嫌いで割り切ってしまう風潮もあり、それではオーディオ
の真の発展はあり得ません。過渡ひずみが多くて聴き辛い音を「自分はこれが好きだ」と
言い張るのは自由ですが、人に押し付けるべきではありません。少なくても、オーディオ
製品を開発する人は意図する、しないに拘わらず、そのような事は慎むべきでしょう。

 音質は、アンプの物理諸特性を極限まで高めて行けば必ず向上しますが、周波数特性や
ひずみ率等の定常特性だけでは不足で、負性抵抗に起因するアンプの高周波安定性も考慮
する必要があり一筋縄では行きません。音質に直接関係する言葉としては定位感、空気感、
遠近感、分解能、指向性などがあります。

 音色は、回路、使用するデバイス、抵抗、コンデンサー等に依って決まります。暖かな、
ドライな、甘い、弾む、ウェットな、ソリッドな、明るい、締まった、等々と枚挙に暇が
ありません。アンプの高周波領域の安定性がある程度のレベルにあれば、これらの部品は
単なる音色の違いを示すだけですが、アンプの安定性が悪いと音質にまで影響を与えます
ので、話が複雑になります。

 WRアンプで言えば、エミッタホロワを採用していた時は、SEコン、BGコン、ERO コン等
を使わないと、明らかに音質上に問題が生じ、普及部品では音にならなかったと言う苦い
経験があります。ERO コンに続いてBGコンまでディスコンになった時は、正直お先真っ暗
の状態でした。その頃苦し紛れに探したコンデンサーがイタリアコンでした。しかし音質、
音色共に明らかに違っていて、SEコンの代替品にはならなかったのです。

 コレクタホロワ化された今現在は違います。SEコンでもセラミックでも音質上の問題は
なくなり、音色の違いで、それらを取捨選択出来るようになりました。私の趣向ではあり
ますが、サントリーホールの最上席でチューニングされた耳には、セラミックの音の方が
しっくりと来ます。SEコンはオーディオ的でウェットな感じを受けますので、一般的には
好かれるかも知れませんが、私の好みではなくなりました。
 
 サントリーホールの音が規範になりますと、必然的に定位感、空気感、遠近感、分解能、
指向性などが重要視され、それらをアンプの音色で誤魔化す事は出来ず、音質を根本的に
向上させる必要があったのです。私が初代WRアンプの音では満足出来なかった最大の理由
は此処にあります。

 しかし、この生音を基準に考える事は決して特異なアプローチではなく、オーディオの
本来的な目的は、そこからスタートしたと私は考えています。アコースティックな楽器の
しかもある程度残響を伴う音の再現は難しく、これがクリアできれば殆んどのものは解決
すると思っています。

 ターゲットこそ違っても、コレクタホロワ化されたWRアンプは殆んどのオーディオ好き
の方に適合すると思います。最も遠い存在だと思っていた打ち込み音楽にも、多大な効果
(底まで見えるような聴こえ方)のある事が、ふなさんの証言で明らかになっています。

 要するにジャズでも打ち込みでも歌謡曲でも、それらしく聴こえる為にはやはりアンプ
が音楽信号を正確に増幅する必要があるのです。このアンプはジャズに向いてるとか打ち
込み音楽に向いているとか言うのは、逆に言えばジャンルを特定しないと使いものになら
ない、出来損ないアンプと言う事になり、結局ジャズでも打ち込みでも真の再生は出来て
いない場合が実は多いのです。

 それにしても趣味なのだからそこまでシャカリキになる必要はないのでは、と言う声が
聴こえて来そうですが、勿論、趣味の世界、何処まで求めるかは個人の自由だと思います。
唯、私は最大限の要求を掲げる方にも適合するアンプを提供したいと考えているのです。

 私のお勧めするアンプシステムは、WRC-ΔZERO/FB とWRP-ΔZERO/BALの組み合わせです。
今年の6月までセット販売の特典セールを実施しています。どうぞこの機会にこの特典を
利用して、どんなジャンルにも最大限の効果を発揮する、理想的なアンプシステムを手に
入れて下さい。

 どちらか片側だけで聴いて居られる方は、是非、システムをWRアンプで統一して下さい。
WRプリとWRパワーの2つのアンプが組み合わされて、初めて異次元の世界に上り詰める事
が出来ます。(それにはコレクタホロワ化は必須です)

 貴方の所有するCDプレーヤー( DAC)やスピーカーはそのままでも、全く違う音の世界に
誘われると思います。それはこれまでのオーディオアンプの常識を超えた、未踏の音だと
言っても良いでしょう。

 以下の文章は最近あるユーザーの方から頂いた感想文です。行間からこの方の言いたい
事を汲み取って下されば、私だけの妄想ではない事がお分かり頂けると思います。


★音もいいですね。代替機が普通のアンプにきこえてしまいます。背景が静かで、
★立ち上がる楽器の音や歌声が見えるような音。無理矢理分離してるのではなく、
★各々の音がきこえつつ混ざりあう、自然な音です。そして以前も書いたように
★音に立体感を感じます。

注)代替機とはWRP-αZERO/BALを指しています。  

1284川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Dec 29 16:25:00 JST 2011
今年を振り返って−−−コレクタホロワ化されたWRアンプシステム完成!!!

 昨年辺りから、エミッタホロワによる2段ダーリントンで構成されているパワーアンプの
終段をコレクタホロワに代えて見る試みを始めて来ました。それは準コンによるγアンプを
聴いていて、これまでのWRアンプの音と本質的に少し違う気がしていたからです。

 勿論、それは兆候程度の微々たるものでしたが、例えば、ホルンやピアノの音に含まれる
嫌な音が減った感じに聴こえたり、コントラバスのピッチカートが多少スムーズに聴こえる
事があったのです。その時準コンはエミッタホロワの数が半分少ないから、終段の安定度は
多少良いはずだと考えたのです。準コンと言うスタイルに習って、安定化電源の正負電源も
片側だけはコレクタホロワ化していました。

 これまでの常識では、終段は出力インピーダンスが低くひずみが少ないエミッタホロワの
方が適していると考えられていました。今でもそう思っている技術屋さんは多いと思います。
しかし、エミッタホロワの出力インピーダンスを高周波領域まで計算して行くと、実数部が
殆どの場合負に転じてしまう事を知っている私は、昔からエミッタホロワには懐疑的でした。

 しかし、1998年に最初のWRアンプを発売するに当たって、行き成りエミッタホロワを回避
する勇気も、技術も、又経験もありませんでした。言い訳になってしまうかも知れませんが、
技術の進歩は一朝一夕には成し得ないものです。結果的に、ユーザーの皆さんにはご迷惑を
お掛けした事を申し訳なく思っております。

 コレクタホロワ化に踏み切ったもう一つの動機は、バランス伝送等の大層な試みを行って
来たものの、結局、ホルン、ピアノ等の音に付き纏う、耳を異様に刺激する嫌な音は本質的
には無くならず、何か大きなものを掴み損ねていると思っていたからでしょう。

 昨年の秋や今年の春の試聴会で、終段をコレクタホロワにした改造パワーアンプを聴いて
頂きましたが、パワーアンプ自体の完成度が低く、プリの安定化電源にはエミッタホロワが
まだ残っていましたので、今ひとつコレクタホロワの良さをご理解頂けなかったと思います。

 しかし当人に取っては大きな違いを見出せていました。この方向は間違っていないと確信
するに足る音の違いに気付いていました。これを徹底すれば良いはずだと考えて、プリの方
にも手を伸ばす事にしました。プリのアンプ部には、当初からエミッタホロワを使っていま
せんでしたので、正負安定化電源の制御部をコレクタホロワ化したのです。

 折から新デザインパワーアンプが発売されて、それらをこなす過程で安定化電源に関する
ノウハウが分かり、その事で、パワーアンプのコレクタホロワ化の完成度は高められました。
プリの改造は安定化電源部だけだし、そんなに大きな変化は無いだろうと予測したのですが
これが意外に効果を上げたのです。

 その事は、既にアップグレードなさったふなさんによって言及されています。最後に一つ
残っていた穴が埋まって「ビンゴ!」と言う感じだと私は思っています。勿論パワーアンプ
の安定化電源で得られたノウハウはプリの安定化電源にも生かされています。その頃プリも
新デザインシャーシにする決意をしました。

 斯くして、WRの長いアンプ研究がようやく終着駅に辿り着いたと思っています。今度こそ
ホルンやピアノの音にビクビクすること無く、無心で音楽が楽しめます。音質上何の妥協も
なく音楽を楽しめます。これまでのオーディオの進歩は漸近的で周回的でしたが、コレクタ
ホロワ化は漸近ではなく、階段状に一段違う所に登った感じです。その域に達したアンプは
部品のランクによって本質的な音質の違いは起きなくなります。SEコンもone of them なの
です。(音色の違いは残る)

 これと平行してWR録音に使う複数台のマイクプリや Mac、インターフェース、ドライブ用
安定化電源もコレクタホロワ化に踏み切り、録音、ミックスダウン、ライティング、再生の
録再システムでも同様の効果を上げる事が出来、デジタル臭から完全に開放されました。

 このコレクタホロワ化がオーディオアンプに於いて正しい事は、これら一連の成功で裏打
ちされて、ほぼ一般化されたと言っても過言ではないと思います。これまでのオーディオの
技術は、こっちでは上手く行くがあっちでは逆効果と言うものが殆どでした。スペッシャル
ケースにしか適用できない技術が多かったのです。

 最後に、今回のコレクタホロワ化は「負性抵抗」と決して無関係ではなく、ダーリントン
接続されたエミッタホロワは単体より遥かに負性抵抗を持ち易く、負性抵抗の権化とも言う
べきものであり、結局私が唱えて来た「アンプシステムから負性抵抗を排除すべし」と言う
事を徹底すれば、理想的なアンプシステムが完成できるのです。

 その具体策として私が取得した特許回路を使ってWRアンプが完成できたのですが、違った
アプローチでも可能なはずです。山の頂上に上るルートは幾つかあるはずです。

 ユーザーの皆々様、今年一年お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い致します。
此処まで来れたのも多大なサポートを頂いた皆々様のお陰だと思っております。今後、私は
完成したWRアンプシステムを一人でも多くの方に理解して貰い、音質に不満を持つことなく
安心して音楽を楽しんで頂けるように尽力したいと思っています。

 それでは良いお年をお迎え下さい!  

1283川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Dec 26 11:34:57 JST 2011
お待たせしました!普及部品を使った本格的コレクタホロワ型プリの詳細を掲載しました。

 http://west.river.jp.org/PopUp.html

に掲載されています。

 新着情報からもトップページからもワンクリックでご覧になれます。
1台限定なので、メールなり電話なりを頂いた方から順に受付させて頂きますので
ご了承下さい。

  尚、平野氏からのレポートではWRC-ΔZERO/FB より音が弾むようで、遜色がない
ばかりか、特にジャズやポップスには効果的との事です。細かな傷を気にされない
方にはお買い得なプリだと思います。(致命的な大きな傷はありません)

  これはコレクタホロワ化され、回路が超安定になった為に、部品の質が殆ど音に
影響しなくなった為だと思われます。事実、私もバランス基板をセラミックにして
毎日聴いていますが、個人的にはこの方が好ましいとさえ思っています。

  平野氏や私の感想が即座に信じられないかも知れませんが、コレクタホロワ化は
これまでのオーディオの常識を覆す程の効果があると言う事です。外観の事を横に
置けば、このプリを買って絶対損をする事はないと自信をもって言えます。 

1282川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri Dec 23 22:00:00 JST 2011
CDの音をより良く聴く方法は?

 前項で、CDをコピーしたCD-Rを作り、オリジナルCDを直接聴くより、デジタル的な余計な音を
極力減らしてより良い音で聴く事が可能であるとご報告しました。勿論、その前提にはアンプの
安定性を高めて、正しく評価出来るアンプシステムを前もって構築して置く事が必要になります。

 WRアンプは、アンプ内のエミッタホロワをコレクタホロワで置換する事により、又特許回路に
よってアンプ内の負性抵抗を抑える事によりその域に十分達しており、その微妙ながら、しかし
重要な音の上質感を正しく見抜く事が出来るようになっています。

 今回はリッピング時に、ドライブの有する特殊機能「ピュアリード」をファームウェアを一時
的に書き換えて可能にし、さらにデジタル的な不安定な音を抑える事が出来る事を報告致します。

 この「ピュアリード」はパイオニアのドライブに備わった機能で、CDに刻まれた本来の信号を
出来る限り正しく読み取る事を可能にします。CDプレーヤーは、盤質の欠陥の為に読み損なった
データを補完して、大きなノイズになる事を防いでいますが、このドライブは安易に補完せずに
様々な読み取り方法で、正確に音楽データを読み取る事を目指します。

 これがメーカーが言うように本当に効果があるのか、次のソースで比較実験をして見ました。

  小澤征爾/ボストン響:プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」(423 268-2)

 この録音は、1986年にボストンで、独グラモフォンの名バランス・エンジニアであるハンス−
ペーター・シュバイクマンによって行われています。小澤征爾も現役バリバリで脂がのっており
演奏・録音共に優秀です。

 しかし、オリジナルCDを再生すると録音の良さは十分に分かるものの、あちこちで際どいデジ
タル的な嫌味が感じられ、暫くすると耳が疲れて来ます。プリとパワーアンプをコレクタホロワ
にしてから大分改善され、許容範囲には入ったのですが未だ生音のレベルではありませんでした。

 先ずは普通の方法でリッピングして、CDのコピーが改めて有効であると感じ、前回のレポート
になった訳ですが、その後に息子がこの方法に気付いたのです。もう一度リッピングをやり直し、
出来る限り元の音楽データを正確に読み取って、そのファイルをもう一度CD-Rに焼き直して来た
のです。

 そのCD-Rを聴いてびっくりしました。普通にリッピングしたものより遥かに雑味、嫌味が無い
のです。今度こそ、デジタル臭は殆ど無いと言えるでしょう。普通は生の演奏会でしか聴けない
名手が奏する雅やかな楽器の音が味わえたのです。そしてこの音の安定感は隔世の感があります。
こうなると、やはり科学技術の成果であるデジタル録音は古典的なアナログ録音を凌ぐと言って
も良いと思います。仕様の圧倒的な優越性がやっとモノを言ったのだと思います。

 今日も息子と色々と試聴をしていましたが、この音の成果は偶然が重なった訳では決してなく、
WRの研究の方向性が正しかった事を示している、と言う事で一致しました。息子がもう少しだけ
良くなるかも知れないと言って、次回は画面上の不必要なアイコン等を消して作業して来るそう
です。既に予備的な実験は済んでいて、微妙に良くなることが期待出来ます。90% が99% になる
ような気がしています。

 以前だったら、こんな微妙な音の違いはアンプの不安定性に埋没して正しく判断できなかった
と思います。今は、それが可能になった為に、岐路では常に正しい路を選択でき、益々好結果に
繋がっていると思います。

 プリもパワーもコレクタホロワになさった方はまだ限られていますが、いい録音なのに今一つ
いい音で聴けないと言うCDが有れば、是非コピーを任せて下さい。これまでに聴いたことがない
CDの音が聴けると思います。CDの音ってこんなに素晴らしかったのか?とお思いになるでしょう。

 CD梱包封筒にCDと 200円分の切手を入れて定形外郵便で送って下さい。その封筒を再利用して
返送致します。CD-R代金はサービスとします。奮ってご応募下さい。定形外郵便では不安な方は
宅配便でも結構です。着払いで返送致します。

 もう、ワンランク、いや最上ランクの音を目指しませんか?


告知:普及部品を使用したコレクタホロワ型安定化電源付きプリはほぼ完成し、意外にいい音で
   鳴っているようですが、詳細発表はもう少しだけお待ち下さい。  

1281川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Dec 19 17:00:00 JST 2011
WRC-ΔZERO/FBの普及版は如何ですか?

 先日マスターズの平野氏から、シャーシごと新デザインプリにアップグレードされた方の
シャーシを無駄にしない為にも、普及部品を使って、安定化電源付きのプリを試しに作って
見てはどうかと提案がありました。(シャーシごとのアップグレード代は約20万円です)

 私も最近のコレクタホロワ式安定化電源を使えば、相当いいものに仕上がると思いました
ので、賛同し直ぐに基板を作り始めました。完成した基板は既に彼の所に行っており、間も
無く組み立て配線が始まる頃だと思います。

 最近の掲示板でもお分かり頂けますように、特にコレクタホロワ化されたパワーアンプを
使用されている方に取って、相当の効果が期待出来ると思います。一番分かり易くその効果
をご説明しますと「余計な音がしなくなる」と言う事だと思います。それがオーディオ再生
には必要なのです。好き嫌いでは有りません。

 これまでCDの音やトランジスタアンプが嫌われた最大の理由は、この余計な音が余りにも
多かったからでしょう。余計な音は耳に不快な刺激を与えます。それがデジタル臭であった
り石の音は硬いと言う表現となって、半ばオーディオの常識として定着してしまったのです。

 その最大の原因は、アンプ内部に存在するエミッタホロワの類(真空管:カソードホロワ、
バイポーラ:エミッタホロワ、MOSFET:ソースホロワ)にあったと私は結論付けました。

 最近WR録音の色々な音源を息子と一緒に聴いて見て、この結論はほぼ正しいと思うように
なりました。息子も同様な感じ方をしています。少し前まではどうしてもWR録音もデジタル
的な音がしていましたが、マイクプリからインタフェース用電源、Mac 用電源、ドライブ用
電源を全てコレクタホロワ式安定化電源で賄うようにし、エミッタホロワを全て取り除いた
アンプシステムでモニターするようになってから、一気に余計な音が激減してアナログ的な
柔らかさが味わえるように改善されました。

 蛇足になりますが、このシステムを使えばCDのコピーも上手く行くのではないかと言う事
になり、市販CDのコピーをやったところ、明らかにCD再生から余計な音が減って、空間性が
かなり向上する事が分かりました。音像が距離感をもって綺麗に定位します。

 私はCDのコピーを随分工夫してやって来ましたが、最近は必ずしも良くはならないと思う
ようになっていました。しかし、CDプレーヤーの信号の読み取り方とCD-ROMの読み取り方は
明らかに違いますし、CDとCD-Rの読み方も又違います。其処に音が改善される余地は残って
いると思っています。

 事実、少なくても我が家のプレーヤーとDAC では、市販CDを直接掛けるより、今回コピー
したものの方が、余計な音が減るのです。これは大収穫でした。デジタル録音の本来の姿が
味わえるようになります。コピーには2通りの方法がありリッピングしたファイルをWR録音
と同じ工程で焼く方法と、オンザフライでそのままコピーする方法がありますが、どちらも
余計な音は確実に減ります。

 このような細かな音の差が判別出来るようになったのは、エミッタホロワの類がシステム
を不安定化させ、音を混沌とさせていた状況に、終止符を打つことが出来たからだと思って
います。もし、これぞと思うCDが有りましたら、WRユーザーの方に限り無償でコピーをして
差し上げますのでお申し付け下さい。但し、個人所有のCDに限り、郵送代と簡単な感想文を
お願いします。皆さんの評判が良ければWRのルーチンワークにして行きたいと考えています。

 話が脇道に反れてしまいましたが、CD再生に絶対効果のあるコレクタホロワ式安定化電源
を積んだ普及版WRプリにご興味のある方は、早めにお申し出下さい。価格は WRC-ΔZERO/FB
の半額程度を予定しています。完成次第HPにアップする予定です。型番を強いて付けるなら
WRC-ΔZERO/ST(ST:Standard)と言うところでしょうか。機能はFBと全く同じです。

 電源をコレクタホロワにしてから、SEコンをセラミックに載せ代えた状態で何時も聴いて
いますが、全く不満がないばかりかサラッとした音は寧ろリアルな音に近い気もしています。
システムからエミッタホロワが完全に無くなってから、部品の悪さが余り目立たなくなって
います。従って、BGコン、ERO コン、ニッコームこそ使っていませんが、かなり期待できる
音になると思っています。


参考:今回のプリの安定化電源を、非安定化電源で賄っているプリがWRC-α2/FBALで、機会
   あって霞仙人さん宅でモニターして貰いましたが、結構いけると言うご報告を頂いて
   います。  

1280川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Dec 17 16:40:00 JST 2011
ふなさん、再びご投稿ありがとうございます。

 WR掲示板に再びご投稿頂けたと言う事は、プリのアップグレードが意外に大きな効果があると
お感じになった為と推察致します。私も一聴した時から良いとは直感しましたが、聴くに連れて
種々の美点に気付いたと言えます。

 勿論、プリ自体の音質が良くなった事が大きな要因ですが、もう一つ、WRアンプシステムから
全てのエミッタホロワが無くなった事により、システム全体が階段状にワンランク安定度が高く
なったからだと思います。私が、WRのプリとパワーアンプをセットにしてのご購入をお勧めする
所以です。何処かにエミッタホロワの類を残していると、並のアンプの良さに甘んじる事になり
ます。本当はCDプレーヤーやDAC からも完全にエミッタホロワの類を取り除きたいくらいです。

 それではふなさんのお言葉について、私なりにコメントしたいと思います。

> 更に音の伸びが良くなっているように感じます。
> 今回のプリの電源のコレクタフォロア化が CD再生に非常に効果的だった
 確かに、私もこのように感じます。その理由はシステム全体の安定度が増して、デジタル的な
音の損傷が減った為と考えられます。音そのものは音源(CD)に正確に記録されていても、再生
時に、余計な音を付加して来る為に、音が濁る、汚れると言った結果に、これまでは残念ながら
なっていたのだと思います。

> 他に比較して圧倒的にノイズに強いと感じていたWRプリですが、
> 電源レギュレータのコレクタフォロア化によりより安定な動作をするようになった
 其処には使用するCDプレーヤーやDAC の質が大きく関与して来ますが、其処が幾ら良くなって
も、システムの安定度が悪いと(エミッタホロワの類を含んでいると)、デジタル的な音の損傷を
多かれ少なかれ被って、清らかさでは中々LPに勝てなかったのだと思います。殆どのオーディオ
マニアはこの清らかさに憧れています。逆に言えば清らかさが無く何がしかの異常音で汚された
デジタル音は嫌われるのです。

 今回のプリのアップグレードで完遂したWRアンプシステムは、この点で市販システムとは本質
的に異なり、大げさに言えば、デジタルの音で初めて、LP並の清らかさが得られるようになった、
と言う事が言えると思います。もう少し言えば、これまで嫌われて来たトランジスタアンプの音
及びデジタル音源の音が、プリのアップグレードで一挙に解決したと言う事になります。

 そもそも古典的な真空管アンプやLPが、トランジスタアンプやCDより人気が有る事自体、技術
の未熟さを示す何ものでもありません。其処を打破してこそ、真のオーディオ技術だと思います。
今此処に、それが完遂できた事を宣言したいと思います。それを信じるかどうかはユーザーの方
の耳に掛かっています。少なくても、ふなさんはその第一号だと認定されるべきでしょう。

> チャールズ・ミンガス、ギル・エバンス、ショスタコービッチ、と並べると、続
> けて聴くには疲れそうですが、これらの演奏の面白さが改めて感じられるように
> なりました。
 続けて聴くと疲れる、と言う事はこれまでよく経験して来た事ですが、特にアンプシステムが
不安定で耳に異常な圧迫を与える音を出していると、余計に耳が疲れる事になります。

 音が前へ前へと出て来るのはその証拠です。どんな曲想でも、どんな楽器でも、何時も一定の
距離感を以って聴こえるべきなのですが、エミッタホロワを含んだシステムでは多かれ少なかれ
部分的に異常音が飛び出して来てしまいます。音源がCDだと余計です。遠近感、空気感、安定な
定位感が尊重される所以です。

 プリをアップグレードすれば或いは新規にWRのアンプシステムを揃えれば、耳が疲れると言う
事はかなり少なくなります。即ち、遠近感、空気感、安定な定位感に優れた再生音が得られます。
しかも、CD音源でもそれが可能になるのです。

> 演奏者の仕掛け一杯の以下のCDが更に楽しくなりました。
> 矢野顕子,「ひとつだけ」, ESOB1776  (CD)
 このジャンルは詳しくありませんが、矢野顕子がピアノの演奏者である事は知っていますので、
仕掛けにはピアノ音の再生が重要なファクターになっていると推察します。そうです、この度の
プリのアップグレードによって一層ピアノ音の再生に安定感が加わって、強い打鍵でも高音域の
早いトレモロでも異常音が全く発生せずに、ピアノがクリーンに再生出来るようになっています。
だから楽しく聴けるようになったのだと思います。

> 以下のCDでは、ライブの雰囲気と、出演者の掛け合いがより楽しめるようになり
> ました。
> PAVAROTTI & FRENDS, POCL-1289 (CD)
 ライブの再生には、遠近感、空気感、安定な定位感が必要になりますが、余計な音を付加して
来る不安定なシステムで聴きますと、部分的に音が飛び出したり、音が右往左往する事によって
遠近感、空気感、安定な定位感が大きく損なわれる事になります。これでは複数の歌い手の掛け
合い等はとても楽しめないと思います。

> 打ち込み系の以下のCDも「底が見える」ような聞こえ方になりました。
> 浜崎あゆみ、"Duty", AVCD 11837 (CD)
 私が殆ど聴く機会のない音楽ですが、打ち込みと言えども、余計な音を付加しても良いと言う
道理はありません。これまで、WRアンプはアコースティック楽器の再生に向いていると吹聴して
来ましたが、そろそろ撤回しても良い頃だと思います。信号に余計な音を付加する事も損なう事
もないWRアンプは、今や万能だと言っても良いでしょう。苦手と思われてきた打ち込み系ですら
ふなさんによって「底が見える」ように聴こえると、太鼓判を押して頂きました。

> 聴きなおすのが楽しい日々を過ごしています。
 皆さんも、アップグレードするなり新規に揃えるなりして早く完璧なWRアンプシステムを手に
入れて下さい。もう迷っている場合ではないと私は思います。これはバランス化より本質的には
重要な位置付けだと私は思っています。そして、お持ちの音源をふなさんのように、期待に胸を
膨らませていろいろ聴き直して見て下さい。ダメだと思っていたCDが蘇るかも知れません。必ず
新しい発見があると信じています。  

1279ふなさん(サラリーマン) Tue Dec 13 22:20:45 JST 2011
川西先生、舌足らずな感想にコメント頂きありがとうございます。

その後1週間以上経過しましたが、更に音の伸びが良くなっているように感じま
す。

今回のプリの電源のコレクタフォロア化が CD再生に非常に効果的だったことか
ら推測するに、他に比較して圧倒的にノイズに強いと感じていたWRプリですが、
電源レギュレータのコレクタフォロア化によりより安定な動作をするようになっ
たということかと想像しています。

チャールズ・ミンガス、ギル・エバンス、ショスタコービッチ、と並べると、続
けて聴くには疲れそうですが、これらの演奏の面白さが改めて感じられるように
なりました。

演奏者の仕掛け一杯の以下のCDが更に楽しくなりました。
	矢野顕子,「ひとつだけ」, ESOB1776  (CD)
以下のCDでは、ライブの雰囲気と、出演者の掛け合いがより楽しめるようになり
ました。
	PAVAROTTI & FRENDS, POCL-1289 (CD)
打ち込み系の以下のCDも「底が見える」ような聞こえ方になりました。
	浜崎あゆみ、"Duty", AVCD 11837 (CD)

聴きなおすのが楽しい日々を過ごしています。
  

1278川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Dec 10 20:30:00 JST 2011
日フィル12月定期を聴く

 今月の指揮者は、ラザレフの腰痛による降板の時に、代役を買って出た山田和樹であった。
2009年のブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した逸材である。ヨーロッパの中堅どころ
のオケを振って評判も良く、現在ベルリン在住である。日フィルの団員の受けも良い。

 出しものはドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、モーツァルト「交響曲第31番 パリ」
ベルク「ルル組曲」、ラベル「ラ・バルス」であった。ルル組曲のソプラノ独唱は林 正子
で、休憩を挟んで2曲ずつに分けられていた。

 「牧神の午後への前奏曲」は何回か生で聴いた事があったが、私の好みではなく積極的に
LPやCDを買った事がない。私が子供の頃、兄の友達が「牧神の午後への前奏曲」とラベルの
「道化師の朝の歌」がカップリングされた10インチLPを我が家に持って来た事があった。

 当時はSPからLPへの端境期で、LPは珍しい存在で興味津々で聴かせて貰ったのだが、表も
裏も唯モヤモヤしているだけで「全然面白くない!」と兄の友達に言って見たら、「テッチ
キリンには分からないの!」と言われてしまった事を、今でも思い出す。

 フランス音楽が好きな人には、このモヤモヤ感が何とも言えないのだろうか。弦の弱音と
それに絡む木管や金管は、それなりに美しいとは思うのだが、もう一つはっきりしない音楽
に、やはり釈然としなかった。同じドビュッシーでも「海」は面白いと思うのだが、やはり
音楽こそ人の好みを強く反映したものだと思う。

 2曲目の「交響曲第31番」は好演だったと思う。弦楽パートはちょっと堅めに聴こえたが
ffで硬直はしていなかったし、全体のバランスもまずまずだった。モーツァルトの交響曲
はオーディオ的には難しい部類に入ると思う。特にバイオリンパートは大体頑張り過ぎるの
か、モーツァルトの音域が高いのか、きつい音の録音が多い。しかし変な言い方ではあるが、
山田/日フィルの演奏はコレクタホロワアンプのように、余計な音(ひずみ)は極力出さない
ように統率されていた。

 このところのコレクタホロワ化でその点(余計な音がしない点)が改善されているはずだ
と思って、今日2種類の音源を聴いて見た。どちらも昔はある程度我慢しながら聴いていた
音源である。

 1.マリナー/アカデミー モーツァルト後期交響曲集: LP(18PC-31〜38)

 2.クリップス/コンセルトヘボウ モーツァルト交響曲31番他:CD(426 063-2)

 どちらも音質的に問題なく聴けるようになっていた。どうしても曲の性格上、バイオリン
パートの音が目立つが聴き苦しさは殆どない。前者は編成が小さく演奏の品がいい。LPなら
ではの柔らか味や遠近感などが魅力的である。後者は大編成の現代的モーツァルトでホール
のタップリした残響と共に音がゴージャスに聴こえる。どちらも日フィルより演奏は上手い。
そのせいか、再生音楽なのに昨日聴いた音と大きな違和感なしに聴く事が出来た。

 15分の休憩を挟んで苦手なベルクであった。やはり、ドイツ正統派に慣れた耳には十二音
技法は馴染めない。ウェーベルン等と共通した雰囲気がある。編成は大きく贅沢ではあるが、
そして金管や打楽器が縦横無尽に活躍するが、心地良いリズムに乗って親しみ易いメロディ
が現れるロマン派の音楽とは世界が違い過ぎる。根本的に頭の構造を変えないと楽しめない
と思った。独唱の林 正子は日本人離れした声量があり、ワーグナーに向いてると感じたが、
曲が曲なので正確な判断は出来なかった。

 最後の曲は、たった12分程の楽曲であったが、最後の取りを務めるには十分なものだった。
この曲は昔、ボレロを買ったら付録で付いて来たと言うのが本当のところであるが、ボレロ
に勝るとも劣らない感動を覚えたのだった。その音源を紹介すると

 ハイティンク/コンセルトヘボウ LP:412 934-1  CD:438 745-2

である。フィリップスの録音が最も冴えていた頃(1975年)のもので、素晴らしい音源である。
低音タップリで金管、打楽器が冴え渡る音にはある種の快感がある。その事を重々承知の上
で昨夜は臨んだのであるが、やはり生の音の強みと、ラザレフに依って鍛えられた日フィル
の高度な技術が、私を感動させたのである。特に、最後の畳み掛けるところは一糸乱れずの
快演だった。「この精緻な演奏は凄い!」と思ったのである。そこまで日フィルをやる気に
させた指揮者も凄いと言う事になるだろう。

 普通は、その感動を引きずったまま自分の家で聴くと、色褪せた音に聴こえるものである
が、先に示した音源は裏切らなかったのである。LPは柔らか味と遠近感に優れ、CDは現場の
熱気を伝えるエネルギーに富んでいるが、どちらもそれぞれこの曲の魅力を余すところ無く
再現させて見せたのである。やはりコレクタホロワは良い。余計な音がしない。そうそれが
特長なのである。

 余計な音がしないから

 1.ひずみ感が少ない。
 2.例えば、ピアノがスムーズに聴ける。
 3.もやもやした録音も細部まで聴こえて来る。
 4.きつい録音も耳を異常に刺激しない。
 5.残響が心地良く響き、遠近感がよく出る。

と言う事になるのだろう。但し、コレクタホロワなら何でも良い訳ではなく、帰還で生じる
負性抵抗をきちんと取り除く事が絶対的に必要である。それを可能にするのがWRの特許回路
である。

 因みに、コレクタホロワ化はWR録音に於いてもかなりの効果が有った事をご報告して置き
たい。例えば、ショパンのピアノ協奏曲第1番(室内楽版)も、当初あちこちでピアノの音
が耳に「ビーン!」と来たのであるが、今やもう殆どその面影はないし、ストバイ始め弦の
音が堅く如何にもデジタル録音と言う感じであったのが、今やアナログ録音かなと思わせる
ようなしなやかさと美しさが出て来ている。

 息子も、やっと思うような録音が出来るようになったのではないかと思う。もしも、録音
システムからエミッタホロワを取り除かなかったら、この音を得る事は不可能であったろう。
それはミックスダウンする時のモニター音が余計な音でマスクされてしまう為に、どの音が
本当の音なのかと言う判断が出来ない為に、正解に辿り着けないと言う事と、ミックスした
音がそもそも余計な音を含んでしまっているからである。

 話が横道に反れてしまったが「ジャジャ・ジャジャ・ジャン!」とラ・バルスが終わった
途端、凄まじい拍手が起こった。それはルルが終わった時の比ではなかった。やはりこれが
私に取っての音楽である。そして生音楽の醍醐味である。場内の興奮状態は暫く続いたので
あった。  

1277川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Dec 7 23:45:00 JST 2011
ふなさん、プリのアップグレードとご感想ありがとうございます。

 プリのアップグレードはパワーアンプと違って、最初からアンプ部分にはコレクタホロワ
を採用して来ましたので安定化電源部分のみになります。その為、そもそもプリアンプだし、
アンプ部分は関係ないし、安定化電源くらいでは大した効果は出ないのではないだろうかと
考える人が多いかも知れません。

 確かに私自身も予想以上の収穫があって、プリの安定化電源が全体の音質にこんなに影響
しているのか! とある種の感嘆があった事を認めざるを得ません。ふなさんの感想文には
あからさまには書いてありませんが、行間からかなりの改善があった事を窺い知る事が出来
ます。私が掲示板で書いてきた事は、そんなに大げさな事ではなかった事が、第三者の方に
よって、しかも全く異なるシステムで確認された事になります。

 この結果は論理的・科学的に論じようとはしない、ある意味いい加減なオーディオ界では
画期的な事であり、エミッタホロワのコレクタホロワ化が一般論として音質の向上に資する
事が、ある程度証明された事になります。このような結果を無視せずに、きちんとフィード
バックして行けば、客観的な事実が積み重ねられて、オーディオは着実に前へ向かって進む
事が出来ると思います。

 しかし面子、立場、やっかみ、などが障壁になり、それは個人の好みの問題だと切り捨て
てしまう体質がオーディオ界には根強く残っている気がします。そう言って無視しても済ま
されるのは、オーディオには確固たる物差しが無い為です。物差しが有れば、まさか1mを
2mと平気で読み違える事は出来ないでしょう。だから、私は生の音を物差しにして音質を
評価しています。

 さて話をふなさんの感想文に戻して、私なりに逐次コメントをさせて頂きたいと思います。

> アナログ、CDとも良くなりました。
> 確かに川西先生のおっしゃるように歪み感が減ったと思います。
 アナログとはLPのことだと思いますが、両者には相反する性質もあり、共に良くなる事は
当たり前の事のようで、実はそうでもないのです。両者とも健全に動作してこそ、着実に音
の改善が見込めるのです。その意味でもプリの責任は重大です。

 ふなさんが真っ先にご指摘になったのが、ひずみ感の減少です。音の滲みが減ってクリア
になったからだと思います。これは結構大きな収穫だったと私も思います。滲みはアンプの
不安定性が原因で起きると考えられますが、当然の事ながらアンプを支えている安定化電源
の不安定性も無視出来ないでしょう。

> クラシックの弦の粒立ちが更に細かくなり、残響と混じり合ったフヮーンとした
> 気持ち良い響きがより良く出るようになりました。
 音の木目が細かくなると、肌合いが絹のような感触になり、弦楽器特有の柔らか味が空気
に浮遊するように聴こえて来る、そしてその音にうっとりとして気分が良くなる、ふなさん
もきっとそう想われたのだと推察します。これは生の演奏会でしか、普通は味わえない感覚
ですが、アンプの不安定性が解消し過渡特性が良くなると徐々に聴こえて来ます。

> 音場感は、前後、上下の広がりが更に広く感じられます。
> 以下のCDでは ホールの高さ制限が外れてアナログと同じように広がります。CD
> では初めてです。
 生の音楽会の雰囲気はホールトーンで決まります。それが装置からどれだけ感じられるか
は大切な事です。ムジークフェラインのような音響効果の優れたホールが好まれる所以です。
しかし再生装置の調子が悪いとホールの残響が裏目に出て音が濁り、広がり感どころか寧ろ
ひずみ感に悩まされます。

 だから、残響タップリの録音は意外に再生が難しいのです。安定化電源を含めたアンプの
動作が不安定ですと、色々な反射音を分離して聴く事が出来ず、混濁した音を聴く事になり
ます。それがひずみ感です。逆にひずみ感が少ないと言う事は綺麗に音が拡散し、ホールの
残響と楽器の音が溶け合って聴こえます。ふなさんのテストCD中のヘンデル合奏協奏曲集の
括弧書きにone point edition とあるのは、多分、この録音がワンポイントで録られた事を
意味しているのだと思います。そうだとすれば今回のアップグレードによって空間の再現が
上手く出来るようになったのだと推定出来ます。

 話はちょっと反れますが、ホールトーンをタップリ入れたワンポイント録音の再生よりは
マルチマイクで各楽器の音を直接録った方が、録音も再生も易しいのです。しかし、空間で
合成せずに電気的にミックスした音には自然なホール感、空気感、遠近感等がなく、人工的
にリバーブを掛けて誤魔化す事になります。私はこのような音では音楽的には楽しめないと
思っています。ワンポイントを基本とし、細部をサブマイクで拾うのが理想だと思います。

 ふなさんが、CD再生に於いても広がり感が十分に確保されるようになった、しかもそれは
初めての経験だと仰っているのは、多分CD再生の方に何らかの事情(デジタル系の諸問題)が
有るからでしょう。だからこれまで音の広がり感に限界を感じられたのだと思います。高級
で上質なLP再生が出来る方は、だからLPの方が音が良いと仰るのだと思います。

 しかしふなさんのご感想は、そのCDが有するハンデをある程度乗り越えたと言う事を意味
しており、これはある意味画期的な事なのだと思います。LPにもアナログが故に有する欠点
があります。それがCDが本質的に有する欠点とバランスして、ケースバイケースでどちらも
条件次第で、同等に音楽が楽しめるようになるのが理想なのだと思います。そうすれば財産
として持っているLPもCDも分け隔てなく楽しめるのです。ふなさんはプリのアップグレード
によって、その域に達せられたのではないでしょうか。

>  付き合いで10年来演奏会に通っている団体のCDも、和楽器のタッチ、残響の雰囲
> 気が良く出るのに加え、この団体独特のドライブ感(箏曲にドライブ感というの
> も変ですが)まで感じられるようになりました。より演奏の場に近づいた感じが
> します。
 このコメントの「残響の雰囲気が良く出る」と言う部分は、これまで述べて来た通りの事
ですが、「和楽器のタッチ」とか「独特のドライブ感」と言う部分は、寧ろその事とは相反
する感覚です。「タッチ」は直接音ですし「ドライブ感」もどちらかと言えばそれに近いと
言えるでしょう。

 このような一見矛盾するような感覚が改善されるのは、結局安定化電源を含めたアンプが
安定に動作するようになったからなのです。アンプさえ安定に信号を増幅出来れば、ソース
に入っているどんな音も正確に聴こえて来るのです。それが正しいアンプの姿です。アンプ
は表面的な音の好みで選択されるべきではなく、正しく増幅するアンプを選ぶべきだと私は
思います。先日述べた「寝ぼけた録音がシャキッとし、きつい録音が聴き易くなる」と言う
問題も同じ理屈で説明が出来ます。

>  また、学生の頃は良く聴いていたのに、社会人になってからなんとなく苦手で遠
> のいていた以下のアルバムが、記憶の中にあるよりも良い演奏で安心して聴くこ
> とができました。ほとんどジャズに手を伸ばすことがなくなっていたのですが、
> これから聴く機会が増えそうです。
 社会人になってから苦手になると言う事は良くある事ですが、その一因は再生音が煩くて
生理的に受け付けなくなる事があるのだと思います。記憶より安心して聴けるようになった
と言う事は、再生音が耳に優しくなったと考えるのが一般的です。そして、聴くのを止めて
いたジャンルに再び興味が出て「これから聴く機会が増えそうです」と仰って頂けて本当に
良かったと私は思います。それだけ人生の歓びが広がるのですから、今回のアップグレード
も捨てたものではないと思います。

 私ごとで言えば、ピアノ音楽が身構える事なく普通に楽しめるようになった事は、今後の
音楽ライフに大きな福音です。これまでずっと長い間、ピアノが出てくると、何処かで必ず
耳に異常な刺激を受けて不愉快な想いをしました。だからピアノ音楽はクラシックばかりか
ジャズでも無意識に避けて来た気がします。今は、それが嘘のように何の問題もなくピアノ
が自然な音で再生出来ています。勿論これはプリのアップグレードだけで得られるものでは
なく、パワーアンプのコレクタホロワ化と相まって可能になったものですが、プリのアップ
グレードは重要な鍵を握っている気がします。

 これまでずっと旧型を愛用して頂いている方には、そのような物を提供したのは私である
事を先ず謝罪した上で、出来れば今よりもっと良い音で聴いて頂きたいので、伏してアップ
グレードをお願いする次第です。同時に基板に使われている部品の種類や数値のチェックも
して、測定をやり直し他に問題点がないか点検も致します。

 旧型のご愛用者の方には愉快な話ではないと思いますが、そこを曲げてアップグレードを
して頂きますようにお願い致します。それだけの効果が約束されています。将来を見据えて、
どうか賢明なるご判断を頂きますようにお願い申し上げます。  

1276ふなさん(サラリーマン) Sun Dec 4 23:24:12 JST 2011
安定化電源のコレクタフォロア化をお願いしていた WRP-α1 mk II/FBAL が届き
ました。5日程経ち、音も安定したようなので、感想を書かせていただきます。

<使用機材>
  ADP:  Technics SP-15 + SH-15B3 + EPA-100
  MCトランス:   Technics SH-305MC x 2 (モノラル使い)
  カートリッジ: YAMAHA MC-3, Technics EPC-205CIII, Shure V15III他
  CDP:  DENON DCD-S1 Ikeon Special Z201C version
  プリ:  WRC-α1 mk2/FBAL (電源コレクタフォロア化品)
  パワー:  WRP-Δ Super Custom (日立製 MOS-FET 2パラ, コレクタフォロア)
  スピーカー:  Technics SB-10 (networkのC交換、Sound Accelerator追加品)
  ケーブル:  Gotham GAC-4/1(バランス), 星電線 スターソフト  2平方mm

アナログ、CDとも良くなりました。
確かに川西先生のおっしゃるように歪み感が減ったと思います。

クラシックの弦の粒立ちが更に細かくなり、残響と混じり合ったフヮーンとした
気持ち良い響きがより良く出るようになりました。
音場感は、前後、上下の広がりが更に広く感じられます。
以下のCDでは ホールの高さ制限が外れてアナログと同じように広がります。CD
では初めてです。

  イタリア合奏団, ヘンデル/合奏協奏曲集 [one point edition], COCO9739
  五島みどり+ベルリンフィル, バイオリン協奏曲(ブルッフ, SICC 123
  シュワルツコップ&セル、「四つの最後の歌」、TOCD7239

付き合いで10年来演奏会に通っている団体のCDも、和楽器のタッチ、残響の雰囲
気が良く出るのに加え、この団体独特のドライブ感(箏曲にドライブ感というの
も変ですが)まで感じられるようになりました。より演奏の場に近づいた感じが
します。

  宮城合奏団、委嘱作品集「響」、VZCG8837〜8

また、学生の頃は良く聴いていたのに、社会人になってからなんとなく苦手で遠
のいていた以下のアルバムが、記憶の中にあるよりも良い演奏で安心して聴くこ
とができました。ほとんどジャズに手を伸ばすことがなくなっていたのですが、
これから聴く機会が増えそうです。

  チャールズ・ミンガス、"LET MY CHILDREN HEAR MUSIC",  25DP-5313(CD)
  チャールズ・ミンガス、「直立猿人」、CS-8171(LP)

短期にバージョンアップの対応を頂きありがとうございました。  

1275川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Dec 3 16:30:00 JST 2011
お知らせ−−−電話窓口の開設について

 この度、ウエストリバーでは電話によるご相談、ご質問、クレーム等をお受けする事に
致しました。

 インターネットは見るぐらいならするが、自分から積極的に文字を書き込むのはあまり
気が進まない、と言う方の為に用意させて頂きました。確かに、文字を書き込んでも直ぐ
に応答がある訳ではなく、何処か心許ないと言う気がしないでもありません。

 昔から手紙より気楽に使える事で発展して来た電話を、ウエストリバーでも新たに設置
して対応させて頂く事にしました。電話は相手の感情を文字より感じ取り易いと言う長所
があります。電話で話す内にお互いが理解できる事もあるでしょう。文字で説明するより
口で言った方が手っ取り早いと言う事もあるでしょう。そこから新しい動きが始まる事も
あり得ます。

 電話をしたら何か責任を取らされる等と言う恐れは全くありませんから、どうぞお気軽
にご利用下さい。意志に反してアンプの押し売りなどは絶対しませんので安心してお電話
を頂ければと思います。原則的な受付時間は10:00 〜 20:00となっております。無理難題
も話して見なければ何も始まりません。

 電話番号は、下記の「ご注文」「ご質問」のページの下部に表示してあります。

http://west.river.jp.org/order.html  

1274川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Dec 1 17:00:00 JST 2011
プリアンプの安定化電源を含む完全コレクタホロワ化で蘇った音源について−−−その1

 オーディオは情緒的な趣味であり、形容詞で修飾された曖昧な表現で語られる事が多いのが
実情です。一方で、アンプは電子工学に基づいた客観的な代物で、その間をもう少し科学的に
取り持ちたいと常に私は考えています。アンプの出来不出来を人の好みの問題として片づけて
いては、オーディオの真の発展はあり得ません。結局、堂々巡りしているだけです。

 これまでも、WRアンプの評価を単なる形容詞で主観的に表現するのではなく、客観的な事実
として表現して来たつもりです。前項でも例を挙げてご説明したように今まで耳に異常な刺激
があって聴き辛かった音源が完全コレクタホロワ化以降、随分と蘇って楽しめるようになって
います。

 これからも折に触れて蘇った音源が見つかり次第、此処で紹介させて頂いて、皆様のご参考
に供して行きたいと思います。今回は以下の音源を取り上げさせて頂きます。

 ★チェッカート/カンパネッラ/モンテカルロ歌劇場管 リスト:ハンガリー幻想曲

 この録音はフリップスが1970年にモンテカルロで行ったものです。15分ほどの短い曲ですが
リストの魅力が凝縮された名曲です。原曲はリストのハンガリー狂詩曲第14番ですが、これを
元にリスト自身がオケ伴を付け、より洗練されたものになっています。冒頭部分にラコッツイ
行進曲(ハンガリー狂詩曲第15番)のメロディーの一部が散りばめられていますし、後半部分
も何処かで聴いた事のあるハンガリーのメロディーに溢れています。

 私はこの音源のメディアを以下の3種類入手していますが、何れも最後まで聴き通した事は
まず、ありませんでした。入手順に書きますと

 1.LP: FH-6 日本フォノグラム 1978年発売

 2.LP: X-7568  日本フォノグラム 1975年発売

 3.CD: 461 096-2 BELART 発売日不明

となります。BELARTはポリグラムのソースをドイツの会社が発売しているレーベルのようです。

 1は日本フォノグラムがマスターテープ(サブ?)を取り寄せて、日本でカッティングした
もので、オーディオ・クリニック・シリーズとしてカッティングレベルをギリギリまで上げた
デモ用のLPです。A面には同じリストの「死の舞踏」が入っています。

 2は、サンサーンスの第4番のP協がさらにカップリングされていて、本国でカッティング
されたものです。これがオリジナルの形で、輸入メタル原盤を取り寄せて日本でプレスされた
LPです。

 3は、この3曲の中からハンガリー幻想曲だけが、他のハンガリー狂詩曲(オケ伴)などと
共ににカップリングされたCDです。

 先ず1の音源ですが、普通のLPより少なくても3dB ほどレベルが高く、ひょっとすると多少
f特も持ち上げている可能性があります。最初に一聴しただけで度肝を抜かれます。ピアノの
音が凄いです。当時のスタインウェイは本当に輝かしい音がしますし、リストの面目躍如たる
ものがあります。

 正直、もうこの音は現代では生でも聴けないと思います。しかし、始まってから3:22頃から
のピアノのフレーズは嫌な音が出やすい音域であり奏法なのです。以前は耳に異常な威圧感が
あり、特にカッティングレベルの高い1やそれに似た音のする3では、私の許容範囲に収まり
ませんでした。

 ところが昨日LP棚を物色している最中に2の音源を偶然発見し、この曲を聴いて見たのです。
昔、ピアノの音で嫌な印象をもった事を思い出していました。2は1に比較してレベルが低く、
装置の調子が悪いと1の凄い音が耳にこびり付いているのでなんとなく覇気のない音に聴こえ、
鳴かず飛ばずの音だと感じていたのです。

 しかし今聴いて見るとサントリーホールで聴くような感じ、いやピアノはそれ以上に聴こえ、
気になっていた3:22以降も全く問題なく、本当に素晴らしいハンガリー幻想曲が楽しめるよう
になっていました。モンテカルロの美しい木管、輝かしい金管、力強さはありませんが美しい
弦、日本のオケとは一味違います。これは貴重なLPだったのだと改めて認識させられました。

 因みに現用中のカートリッジはアントレのEC-1で、これが結構いけるのです。ヘッドアンプ
の安定化電源をコレクタホロワ化してから見直しました。2のLPはサンサーンスを入れた為に
ハンガリー幻想曲は死の舞踏の後、即ち内周に入っていて最後の方は30分を越えていますので
終曲部分の音がどうなるかちょっと心配でしたが、全く遜色なく聴く事が出来ました。流石に
本国のカッティング技術のレベルは高いと思いました。そう言えば英国デッカのカッティング
レベルも決して高い方ではなく、ピークで決して飽和しません。この辺りにLPのカッティング
の秘訣がある気がします。

 翻って1や3を聴いて見ましたが、問題点が克服されている事に変わりはありませんでした
が、全体から受ける音楽的な印象は2に敵いませんでした。1は明らかにオーディオ的ですが、
音楽を楽しむ音ではありません。奥行きと言うかホール感と言うか音がダイレクト過ぎますし、
メリハリがなく出ずっぱりと言う気がします。

 勿論、ある程度音量を揃えて聴いた事は言うに及びません。3は1より音楽的ですが、限り
なく1に近い感じがしました。やはり理想的に再生されればLPに分がある気がします。しかし
LPにも酷いものも多くあり、一概にLPとCDの良し悪しを論ずる事は出来ないでしょう。

 参考に書いて置きますが、1のLPの解説の中に、先行発売された2は録音の良さは分かるが
本領が発揮されていない、そして、このハイレベルカッティングで本当の音を聴いて欲しいと
言うような意味の事が書かれていますが、当時のアンプでは、そのように感じても仕方のない
事だったのだと思います。私もエミッタホロワ時代にはそう感じていましたから。

 以上、例を挙げてなるべく客観的にコレクタホロワ化のメリットをご説明しました。自分で
発売して置きながら、今更言い難いのですが、やはりどう見てもエミッタホロワ時代より問題
点が少なくなっています。またより音楽的に聴けるようになっています。今までお蔵入りして
いる貴重な音源の中にもコレクタホロワ化で蘇るものが出て来る可能性が高いですし、今現在
お聴きになっている音より、より聴きやすくより音楽的に聴けるものが増えると思います。

 出来れば、未だエミッタホロワでお聴きの方は、なるべく早くアップグレードをなさる事を
お勧め致します。WRアンプの本質的なアップグレードはこれで終わりですから、どうぞ皆様の
ご理解を切にお願いする次第です。所有されている音源を最大限に生かして音楽をより楽しく
お聴きになりませんか?  

1273川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Nov 28 15:30:00 JST 2011
何故、寝ぼけた録音がシャキッとし、きつい録音が聴き易くなるのでしょうか?

 一見矛盾するようなこの説明に納得出来ない方もあろうかと思い、少し説明を加えさせて
頂こうと思います。

 まだ寝ぼけた録音は実害が少ないですが、きつい録音は耳が異常に刺激され精神衛生的に
も良くありません。そんなものは聴かなければ良いのかも知れませんが、演奏が良くて捨て
難い古い録音も実はあるのです。先ず、次の2つの例を見て下さい。

 1.クリュイタンス/ベルリンフィル:ベートーベン 交響曲第7番 イ長調

 2.セル/フルニエ/ベルリンフィルフィル:ドボルザーク チェロ協奏曲 ロ短調

 これらはどちらも立派な演奏で、もし音質が良ければ古今東西の中でも最優秀盤と言って
も過言ではない位のものですが、どちらも古い録音で音に少し難があります。

 1は多分私がこの曲を初めて聴いて感動したレコードだったのだと思います。とは言って
も当時LPは高嶺の花でラジオで聴いたのです。それまで「禿げ山の一夜」や「中央アジアの
草原にて」などの小曲しか聴いていなかった私に取って、カルチャーショックに近い感動を
覚えた記憶があります。丁度高校を卒業するかしないかの頃でした。

 その後、種々のベートーベン交響曲全集が発売されて、このレコードについては暫くの間
記憶から抜け落ちる事になります。LP時代にはバースタイン/ウィーンフィルを聴いていた
気がしますが、その他に単発ものとして、ショルティ、クライバー、デービスなどを気分に
応じて聴いていました。

 何時しかCD時代になり、ベートーベンの交響曲全集はクーベリック、デービス等で聴いて
いましたが、ある時CDを物色中に変な輸入盤を見つけたのです。それには、ベートーベンの
交響曲第7番とシューベルトの序曲が何曲か入っていました。勿論、注目したのは7番の方
です。確かに、クリュイタンス/ベルリンフィルと書いてあります。(ROY 701152)

 直ぐ購入して家で聴いて見ると、昔の感動が鮮やかに蘇ったのです。しかし、バイオリン
パートがきつく、それだけが飛び出して来て、左チャンネルのスピーカーが悲鳴を上げます。
これを何とかしたいと思ったのです。その後、いろいろな技術を投入する度に、テストCDと
して聴いて見ましたが、良くはなっても完全には満足出来るまで行きませんでした。

 その後、変なCD(Royal Classics)が良くないのかも知れないと思い、正規盤である EMI
の全集盤(4 83412 2) を買って見たのですが、殆ど変わりませんでした。今になって見れば
当たり前で、変なCDはどうもEMI の廉価盤らしく、プレスのロット番号のようなものが同じ
形式で刻印されているので、無謀なマスタリングが行われている訳では無かったのです。

 昨日の事です。ふとこのCDの事を思い出して久し振りにクリュイタンス/ベルリンフィル
の7番を聴いて見ました。なんと、バイオリンパートがほぼ完璧に再生されるようになって
いるではありませんか。「やった!」と思いました。長年の努力が報われた瞬間でした。

 このCDは平均レベルが高くそれも再生を難しくしている一因ですが、最大レベルがクリア
されればメリットもあります。それは弱音部がアナログ並に綺麗に聴こえる事です。理屈は
弱音部に寄与するビット数が増えるからです。当時(1959年頃)は高周波ノイズ問題も殆ど
なく、録音自体が非常にクリアに録れている事も幸いしています。最近再び使い出した DAC
Accuphase DC-91 も良いのかも知れません。

 最近のへなちょこ録音より余程まともな音がします。これに気を良くして思い出したのが
2の音源です。この音源に出合ったのは、LP時代に買ったヘリオドール盤(MH5013)でした。
これはグラモフォンの廉価盤です。その後CD時代になって、他の曲も入った CD(447 349-2)
を買い直してありました。このCDも7番と同様にバイオリンパートがきついのです。どちら
もベルリンフィルです。裏を返せば、ベルリンフィルのバイオリンをまともに再生するのは
難しいのかもしれません。

 この録音は1962年頃ですから7番を録音した直ぐ後になり、ほぼ同時代の録音だと言える
でしょう。カラヤンは既にベルリンフィルを振っていたはずですが、まだその影響を強くは
受けていなかったと思います。戦前からの伝統を色濃く受け継いでいた頃のベルリンフィル
の魅力があります。当時の日本のオケとは月とすっぽんだったでしょう。

 LP時代は5チャンネル6ウェイの大型装置で聴いていたので、そんなにバイオリンパート
が気にならなかったのですが、CDになり、小型SP、それも結構中高域にエネルギー感のある
B&W805MATRIXになって、バイオリンパートが気に障るようになったのです。バイオリンだけ
もう少し綺麗に聴こえて欲しいと常に思っていました。

 ところがです、このCDも殆ど問題なくバイオリンが綺麗に抜けて聴こえるではありません
か。長年の懸案事項が解決してちょっと感激でした。これも結構レベルが高いです。2つの
音源は別の会社(ドイツエレクトローラとドイツグラモフォン)によって録音されたはずです
が似たような感じに録れています。フルニエのチェロも素晴らしいし、セルのオケ伴も立派
です。2つの名演が蘇った瞬間でした。どちらの録音も一流エンジニアが担当しているので
すから、当初からバイオリンパートの音がバランスを欠いていたはずはないのです。

 私は幾ら名演でも、音が悪い状態では聴きたくありません。サントリーホールでの生音並
とは言いませんが、それに準じた音のクオリティがなければ、演奏の本当の良さを評価でき
ないと思っています。音の細部が分からなくて何で名演と言えましょう。聴こえない部分を
自分で良い様に補っているだけではないでしょうか?

 前置きが長くなりましたが本題に入りましょう。表題の件ですが、これはアンプの調子が
悪い時を基準にして、良くなった時の状態を言い現したから、このような言い方になったの
です。良い状態を基準にして言い換えれば、寝ぼけた録音もきつい録音もどちらも許容範囲
に入り録音の癖程度の問題で済んでしまう、と言う事になります。ところがアンプの調子が
悪いとメリハリの無い録音はアンプの不安定性故にモヤモヤした感じに聴こえ、アクセント
の強い録音は、アンプの不安定性故に何処かが出っ張って聴こえ、聴き苦しく感じると言う
事になるのです。

 その意味でWRアンプは、完全コレクタホロワ化に依り殆どのソースがまともに再生出来る
ようになったと言えるでしょう。これは本来ならば普通のことなのですが、オーディオには
余りにも難しい問題が横たわっていましたので、多かれ少なかれ問題を含む事が半ば常識化
或いは常態化していたのです。そしてそれを基準にしてしまっていたのです。それを根本的
に覆したのが、帰還アンプの負性抵抗に着目したWRアンプの高周波ノイズ理論です。それが
完全コレクタホロワ化で完結したのです。

 特に、優良なセラミックを組み合わせた今回の組み合わせ(WRC-ΔZERO/FB 同等品+WRP-
ΔZERO/BAL)では、ひずみ感の極小と言うメリットが上乗せになっています。セットで購入
される事をお勧めします。今そのキャンペーンを行っていますので、思い切って決断されて
見ては如何でしょう。オーディオで一番大切なのはアンプです。アンプが異常動作していて
は話になりません。全てがぶち壊しになります。それをカバーする為のアクセサリーなんて
論外です。

 それでも、異常動作するアンプを固定して、今までのオーディオの常識を何時までも引き
ずり続けますか? そして同じ所をくるくる回って、結局無駄な出費だけが残ると言う事を
繰り返しますか?  

1272川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Nov 24 14:30:00 JST 2011
新デザインによる新型プリアンプ WRC-ΔZERO/FBの音質について−−−ジャズ編

 私がジャズについて書くのは、ちょっと場違いかも知れませんが、WRアンプユーザーの
中でもジャズをお聴きになる人が多いのが実情ですから、偶にはジャズに関する情報発信
も必要かと考えました。

 確かにジャズのLPもCDも余り持っていませんから、お話しする材料も多くないのですが
出来る範囲内で書かせて頂こうと思います。今回は次の5枚のCDについてコメントしたい
と思います。

1)「WE GET REQUESTS」 THE OSCAR PETERSON TRIO(J33J 25058)

2)「THE NEARNESS OF YOU」 DIANNE REEVES(C32J-5020)

3)「HOMAGE TO DUKE」 DAVE GRUSIN(MVCR-139)

4)「J.S.BACH PRELUDES AND FUGUES Vol.2」 JOHN LEWIS(826 698-2 32JD-71)

5)「BLUES ette」 CURTIS FULLER(COCY-9006)

 先ず、1枚目はオスカー・ピーターソンの中でも有名なアルバムで、LP時代からテスト
レコードとして使われて来たと思います。中でも6曲目の「YOU LOOK GOOD TO ME」 は超
の字が付くくらい有名な曲です。ジャズでは珍しいベースを弓で擦る奏法で始まるこの曲
はオーディオ的でもあります。

 しかし、ベースとドラムスは全く問題ないのですが、ピアノの音は頂けません。当時の
ジャズのピアノの音を代表する音で、冴えないモコモコの音です。それはこのトラックに
限った事ではなくて、全曲を支配しています。

 そもそもピアノの音の再生は耳に異常な音圧を与えやすく、大方のシステムではボロを
出します。このソースは録音がそれに輪を掛けていますのでまともな再生は非常に難しい
のです。しかし、今回の新型プリWRC-ΔZERO/FB と新型パワーアンプWRC-ΔZERO/BALとの
組み合わせで聴きますと、ピアノの音が悪いながらも安心して聴けるようになっている事
が分かります。これまでは、無意識にピアノの音に対して身構えていたように思いますが
その必要性がなくなりリラックスして聴けるようになりました。これは音楽を楽しむ上で
非常に大切な事です。

 2枚目の音源は特に再生が難しいと言う程の問題はないのですが、ダイアン・リーブス
の声が威圧的で、エレキベース?のだらしない低音と相まって、余り楽しめませんでした。
それにご多分に漏れずピアノの音が結構厳しいのです。だから最初の2曲くらいを聴くと
「もういいや」と言う気になってしまっていました。今回、聴き直して見て、ダイアン・
リーブスの良さが分かり、3曲目以降も嫌気もせずに楽しむ事が出来るようになりました。
声質を微妙に変化させる歌い方は独特です。やはり再生システムは音楽が心から楽しめて
「なんぼ」の世界ではないでしょうか?

 3枚目はGRP 録音の凄さを思い知らされる音源です。タップリした低音にオンマイクで
録った各種楽器を極限までの音量で聴かせます。先ずは、グルーシンのピアノがあちこち
で耳にビーンと来ます。それだけで今までは「降参!」と言う気になってこの音源も最初
の1、2曲目で聴くのを止めていました。

 ところが久し振りに聴き直して見て改めてGRP 録音の凄さにシャッポを脱ぐ想いでした。
オリジナルはアナログ録音らしいのですが、よくも此処まで録れるなと感心します。他の
トラックもデューク・エリントンの名曲ばかりで、それそれが楽しめるようになっていま
した。もうこのCDも怖くありません。

 4枚目も超有名なソースです。演奏は非常に良いのですが、教会の残響の中でルイスの
ピアノが異常に響きます。その上、伴奏のギターの中低音までもが膨満感一杯に不自然に
広がります。安定化策が取られていないアンプでは、どんな楽器が何処で演奏しているか、
皆目検討がつかないでしょう。そのくらい調子の悪いアンプでは混沌としてしまいます。

 2、8曲目が特に難しいです。霞仙人さんも昔、このCDには難儀をしたと仰っています。
このピアノが楽しめるように鳴れば、再生システムとして先ずは合格だと言えるでしょう。
新型アンプで聴くと、昔苦労した事を殆ど意識する事無く、ルイスのフーガが楽しめます。
ピアノの音も昔のジャズに比べれば断然よい事が分かります。

 5枚目は昔懐かしいSAVOY レーベルです。私がまだ学生の頃、杉並の実家によく高校の
先輩がジャズのLPを持って訪ねて来てくれましたが、その時に初めて見たレーベルでした。
特に「FIVE SPOT AFETE DARK」が気に入りました。音も良かったと記憶しています。

 これがCDで復活されたのを機に買って見たのですが、やはり一昔前(1959年)の録音だ
と言う印象が強かったのです。この録音は有名な録音エンジニアRUDY VAN GELDER のもの
で当時はHiFi録音だったのでしょう。しかし、ピアノは1枚目と同様に余りスッキリしま
ません。他の楽器は普通に録れているのに不思議です。

 当時アメリカのピアノには余り良いものが無かったのか、或いはジャズではこのような
音が好まれたのでしょうか。もしかするとアップライトが使われていた可能性もあるかも
知れません。その点、何故かカウント・ベーシの音は切れがあって冴えています。好みの
問題なのでしょうか?

 さて、この音源を改めて聴いて見ると全体に底上げされて聴こえます。古さが気になら
なくなりました。カーチス・フラーのトロンボーンは朴訥として、ちょっと空気が抜ける
ような鄙びた佇まいが何とも言えませんしベニー・ゴルソンのテナーサックスは見違える
ほど素晴らしくなりました。以前は全くそんな感じを受けずに聴いていたのですが、音が
良くなると演奏が映えて聴こえます。やはり、出来る限り音を良くして聴くべきだと思い
ました。

 コレクタホロワを全面的に採用した、新型のプリアンプとパワーアンプの組み合わせは、
くすんだ音は冴え、出過ぎた音は上手く抑制されると言う理想的なオーディオシステムを
構成します。それはソースがクラシックであってもジャズであっても同じです。

 要するにアコースティック楽器の音を音響空間で捕らえて録音する、と言う原則が同じ
であれば、音楽ジャンルに関わらず、新型のWRアンプは絶大な効果を発揮します。どうか
自分の再生装置の音に自信を持てない方、いろいろ遍歴してオーディオを一度は諦めた方、
真空管とかトランジスタとか、ノン帰還アンプとか高帰還アンプとかそんな事を超越した
WRの新型アンプをお試しになって見て下さい。きっと救われると思います。

 旧型アンプをお使いの方も、プリアンプとパワーアンプを新型基準に引き上げるアップ
グレードを出来るだけお早めにお申し込み下さい。いよいよ、BGコンも枯渇して来ました
のでBGの補修は不可能になります。此処に謹んでお知らせ致します。アップグレードの暁
には、今よりもっと音が良くなる事をWRアンプの開発・設計者が保証します。  

1271川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Nov 20 15:30:00 JST 2011
新デザインによる新型プリアンプ WRC-ΔZERO/FBの音質について−−−その2

 新型プリアンプ WRC-ΔZERO/FBの音質テストが済んだ今も、未だ元に戻す気が起こらず、
ずっとそのまま聴いています。兎に角今までで一番ひずみ感が少なく、問題ありと思って
いたCDも、比較的綺麗に再生され、音楽が楽しめるようになっているのです。

 例えば、シノーポリ/ウィーンフィルの「ベルディ:序曲・前奏曲集」は、トラックに
よっては聴き辛いものがあります。その中でも「ナブッコ」序曲は音が汚い方の代表格で
気持ちよく楽しめませんでした。

 ところがこのプリと、新しく採用した国産セラミックを使って基板を作り直したパワー
アンプWRP-ΔZERO/BALとの組み合わせで聴くと、結構楽しめるのです。勿論このトラック
だけが例外ではなく、「アッティラ」前奏曲、「ルイザミラー」序曲も同様です。又この
CDに限った事ではなく、全てのソースが色々な意味で底上げされて綺麗に、ひずみ感なく
安定した音で楽しめます。

 一つ例を挙げますと、マリナー/アカデミーのロッシーニ序曲全集(473 967-2) の3枚
組です。LP(15PC-205-08) も有りますが、残念ながら一部に大きなハムが乗っていてダメ
です。この録音は1974年頃、1976年頃、1979年頃に分かれて行われており、当然、音質が
かなり違います。

 1974年頃が一番シャキっとしていてロッシーニらしいです。1976年頃は、少し寝ぼけた
感じに録れており、1979年頃はかなり低音雄大です。このCDの2枚目の6曲目には1976年
に録音された「ランスへの旅」が、7曲目に1974年に録音された「セビリャの理髪師」が
並んでいます。前者は寝ぼけ後者はキツイ音がする、これが今までの印象でした。明らか
に音の違いが有ったのです。

 しかし、「ランスへの旅」はメリハリが出て楽しめるようになり、「セビリャの理髪師」
は出過ぎた音が抑制され、この音を初めて聴いた人はその差に気が付かないのではないか、
と思える程に両者とも常識的なバランスで鳴るようになったのです。やはりこれが正しい
再生なのではないでしょうか? 極端な差が出るのは、やはり装置に何か問題を内包して
いるからなのだと思います。

 歳を重ねて耳が老化してくると、ひずみを含んだ音には生理的に拒否反応が出て、何は
ともわれ、ひずみの無い音で聴きたくなります。プリの安定化電源からエミッタホロワを
取り除いたお陰でSEコンでなくても良質のセラミックなら使えるようになり、逆にひずみ
感では勝るとも劣らない音質を得る事が出来るようになりました。

 セラミックは強誘電体です。強誘電体は当然ながら非線形性を有しています。余り酷い
ものを使うと、音に変な粘りが出てスカッと抜けずに耳にへばり着く音になります。昔は
比較的誘電率の低いチタン酸バリウムが使われていましたが、最近は省スペースのために
かなり誘電率の高いものも使われており要注意です。なるべく耐圧が高くて容量の小さい
ものを選ぶべきでしょう。

 あとはリード線が非鉄金属のものを選んだ方が良いはずです。何故か抵抗は安価なもの
でも非磁性体が多いのですが、安価なコンデンサーは十中八九、ケミコンも含めて磁性体
のものが多いのです。イタリアコンは非磁性体でしたし、今回選んだ国産の物も非磁性体
です。余談になりますがトランジスタにも2通りあり、出来る限り非磁性体のものを使う
ようにしています。

 ところで一人よがりは良くないと思い、この音を息子に聴いて貰いました。開口一番に
「ビロードのような滑らかな音!」と言う表現が飛び出しました。私は全くそんな風には
思っていなかったので、感じ方は人それぞれなのだなと改めて思いました。

 そう言えば昔、千葉さんにWRP-αZERO/STUDIO をお貸しした事があったのですが、その
時のご感想で「ビロードのような音」と言う形容詞を聞いた事があります。私がSTUDIOに
対してもつ印象と、どう折り合いがつくのか、実は今まで少々謎でありました。

 しかし息子のこの言葉で点が線に繋がったのです。STUDIOはイタリアコンを主に使って
います。その意味で両者に共通性があります。即ち良質なセラミックコンを上手く使うと
ひずみ感の少ない滑らかな音が得られるのでしょう。

 息子は、SEコンの方が包み隠さずに曝け出す傾向があると言います。だから録音の良い
ものは堪えられない快感がある一方で、録音の悪いものは多少聴き辛くなると言うのです。
そう言われて見ると、確かにそう言う傾向があるのかも知れないと思いました。

 その意味では、WRC-ΔZERO/FB とWRC-ΔZERO/FBSE とは音の傾向が少し変わると言える
でしょう。しかしこれは相当ハイレベルな話であって、基本的にはどちらでもハイエンド
の素晴らしい音質が得られる事に変わりありません。

 音の安定感と言う意味ではこの WRC-ΔZERO/FBは素晴らしい特性を有しています。録音
が良ければ何処までも音を大きく出来る気がする程です。事実昔ならこの辺りはもう少し
音が崩れていたはずだと思うところも、何事も無かったように普通に通り過ぎて行きます。
息子が持って来たテストCDである、アバド/シカゴの「マラ7」やカラヤン/ベルリンの
「タコ10」等はどの部分を聴いても全く怪しいところがありません。気持良いくらいに
各種楽器が聴こえて来ます。ここまで鳴れば下手な生オケより感動できるかも知れません。
その安定感と言う意味では生の音に近いと言えるでしょう。FBSEがオーディオ的であると
するなら、FBは生音的と言えるかも知れません。

 懸案のエミッタホロワをコレクタホロワで置換し、良質のセラミックコンを使った結果
WRプリWRC-ΔZERO/FB も一段階飛翔出来た気がします。確実に、新型プリアンプの音質は
高められています。価格は確かに安くはありませんが、これだけのパフォーマンスがある
のなら決して無謀なお買いものではないはずです。

 この音の本当の良さはWRのプリとパワーアンプのセットで得られるものです。6ヶ月間
の猶予があります。出来るだけ多くの方のご賛同とご応募をお待ちしております。 

1270川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Nov 14 14:10:00 JST 2011
新デザインによる新型プリアンプ WRC-ΔZERO/FBの音質について

 計測データに現れる仕様には基本的に変更が無いとは言え、音質的にはどうなのだろうか?
と言う素朴な疑問は皆様の中にあるのではないでしょうか。WRC-ΔZERO/FBSE の方は引き続き
SEコンを使用しますから良いとして、SEコンを使わない場合の音質は保証されるのだろうかと
言う一抹の不安にお答えしたいと思います。

 現在新デザインシャーシの製作を依頼しているシャーシ屋さんが非常に混んでおり、暫くの
間私が完成させた基板が未だ手元にありますので、良い機会だと思いまして改めて現用プリの
基板(SEコン仕様)と交換してヒアリングテストをして見ました。全く同じ条件になっている
とは言い切れませんが、かなり WRC-ΔZERO/FBの音に近いはずです。

 勿論、予備テストをして大丈夫だと納得したからこそ、SEコン不使用のWRプリを誕生させた
のですが、本格的に全ての基板を揃えてのヒアリングテストは行っていませんでした。テスト
で重要な事は音量を揃える事です。音量の違いが音質の違いに感じる事はよく知られています。
常用のプリに対して今回のプリのゲインが1.5 倍有ったので、発振器を使ってどれだけ目盛り
を下げれば良いか、予め前面パネルに印を付けてから行いました。

 問題はWRC-ΔZERO/FB の小容量補償コンデンサーに何を使うかです。それ以外はBGクラスの
ケミコン、ERO 、ニッコームは同等に使いますから問題はありません。少し前まではSEコンの
代わりとしてイタリアコン(セラミック)を使っていましたが、ディスコン(本国でディスコン
になったかどうかは不明)になって入手不可ですので、他に何か探さなければなりません。

 今更スチコン(何故か斜陽化している)でもないし、やはりセラミックの中から探すべきだ
と思いました。日本製では、村田製作所、太陽誘電、TDK の御三家が有り、海外製も含めると
品種は豊富です。全てを買い集めて音質テストをするのは至難の業です。

 そこは、長年の経験を生かした部品選びのノウハウで、これぞと思ったものを現在2つ選定
しています。一つは海外製で一つは日本製です。今回の新型プリの基板には未だ少々残存する
イタリアコンとこれらを適材適所に使いました。今度の海外製の音質傾向は大人しく安定して
おり、日本製は本の少しだけですがキラっとした艶があります。

 アンプや安定化電源にエミッタホロワを使っていた頃はその不安定性の影響を受けて、部品
が有する癖がモロに出ていたので、極端な事を言えば、WRアンプはSEコン抜きでは成りたたな
かったのです。WRアンプ発売当時、もう少し安く作れないかと言う声があり、いろいろやって
見たのですが、結局、開発設計者が納得する音にはついぞ成らなかったのです。

 SEコン以外のコンデンサーを使い始めたのはイタリアコンに遭遇してからですが、本格的に
使い始めたのは準コン式のγアンプ辺りからです。今から思えばエミッタホロワが半分減った
ので、イタリアコンでも普通に聴けるWRアンプを作る事が出来たのでしょう。

 その後、思い切って準コンの思想を徹底させて、プッシュプルの上下段共にインバーテッド
ダーリントンにし、完全にエミッタホロワを無くしたのです。現在はそれを安定化電源にまで
拡張して、アンプシステムから一切のエミッタホロワを取り除いてしまっています。

 この事により部品の音質に与える影響は一掃低下し、確かに音は違っても許容範囲に納まる
ようになったのです。従って上記2つのセラミックをどのように組み合わせても大勢に影響は
ありませんが、問題は、SEコン仕様と比べて音が違うのか、違わないのかでしょう。

 オーディオは何をやっても音が変わります。その意味からすれば音が違うと言えるでしょう
が、問題は音のランクが落ちるかどうかだと思います。多少の音の違いは、例えば、使用する
プレーヤーやスピーカーの癖に埋没し吸収出来る程度ですから、余り拘っても仕方ありません。
唯、音質のランクが落ちるのは困ります。

 昨日、最近のWR録音を含む聴き慣れたCDやLPを片っ端から掛けて見ましたが、どう聴いても
SEコン仕様の音と比べてランクが落ちたとは思えませんでした。組み合わせるパワーアンプに、
一番現実的なWRP-ΔZERO/BALを使って見ましたが、十分問題なく、又違和感無く楽しめました。
パワーアンプの方もこの試聴の為に、イタリアコンや上記2種のセラミックを織り交ぜて作り
直してあります。

 正直な感想を言えば、全てをエミッタホロワ方式に依っていた頃と比べて、音質のランクは
明らかに上がったと言えるでしょう。それは感覚的な問題ではなく、理性的に判断できる問題
なのです。一例を挙げましょう。プーランクの「オルガン協奏曲」です。正確には

 「オルガン、弦とティンパニーのための協奏曲 ト短調」

で、演奏はロバート・ショウ指揮のアトランタ響(CD-80104)です。

 これは良く録れたテラーク録音ですが何せオルガンの重低音がffで重畳されるので、アンプ
システムが不安定ですと混変調を受け、弦の音がひずんで聴こえてしまう部分が有ったのです。
ずっと懸案事項でした。テラーク録音なので、ちゃんと録音されているんだろうなとは思って
いました。

 この曲は25分もあり、何処でそれが起きるのか忘れていた事もあって、25分間緊張して聴き
入ったのですが、結局、何処で音が崩れたのかを発見できませんでした。どうやら新システム
になって、殆どSEコンを使わないアンプでもこの問題はクリアされていたのです。意外ですが、
プリの安定化電源のコレクタホロワ化が大きく影響しているようです。

 それにしてもこの録音が正しく再生され、サントリーホールで聴けばこんな感じに聴こえる
んだろうな、と思いながら聴いていました。因みにこの録音は有名なボストン・シンフォニー
ホールで録音されています。この録音が問題なく再生されたと言う事は、他のCDでも又LPでも
そのような混変調が起き難くなったと言えると思います。それは再生が難しいと思われた殆ど
のソースでひずみが軽減されて聴こえる事からも分かります。このシステムで聴くと CD-DAが
有する能力の極限までも引き出す事が出来る気がします。ピアノ、バイオリン、ホルン、合唱、
オルガン何が来ても恐くありません。プリを未だアップグレードされていない方に強くお勧め
する所以です。

 結論的に言えば、これまでSEコンに拘り、所謂SEコンの音しか受け付けないと言う人以外は
敢えて高額なSEコン仕様にする必要は無いと言えるでしょう。微妙なニュアンスは違うとして
も音質のランクは変わりませんし、寧ろスッキリしていると感じる事もあります。開発設計者
として自信をもってお勧め出来るプリ、パワーアンプだと思います。今日からこの組み合わせ
で聴きなさい、と仮に言われても全く動じないばかりか私は喜んで従うだろうと思いました。

 最後に、この音のプレゼンスはWR製のプリとパワーを組み合わせたから得られたとも言える
のです。どうか出来る限り組み合わせてお使い頂きたいと思います。以前の組み合わせ価格は
70万円程でしたが、現在は技術革新により50万円程にコストダウンされ、音質も明らかに向上
しています。音質とは直接関係ありませんが、少々難の有ったプロテクション基板も全く問題
が起きないように最近改良され、一分の隙もないアンプシステムが完成しています。

 組み合わせてのご購入を後押しする為に、現在お得な特典付きキャンペーンを行っています。
この機会を是非有効に生かされ、これから先、楽しい音楽ライフを一生お続け下さいますよう
お勧め申し上げます。

注) この組合せでご試聴になりたい方はメールでお申し込み下さい。 

1269川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Nov 12 15:00:00 JST 2011
日フィル11月定期を聴く

 今月は久し振りのラザレフであった。震災の日が丁度ラザレフであったのだが、行く事も
出来ずに聴きそびれ、その後の香港公演で腰を痛めて、半年ほど指揮活動を中断されていた
のだった。震災の日に予定されていたプロコフィエフの交響曲は後日行われる予定であるが、
プロコフィエフの交響曲チクルスは一応終了し、今回からラフマニノフが始まった。

 今日は、交響曲第1番ホ短調作品13であった。ラフマニノフには有名な2番を含む3曲の
交響曲があるが、この曲は若き日の習作であろうか。勿論、本日の公演はこの1曲だけでは
なく、その前に岡田博美が独奏するショパンのピアノ協奏曲第1番が置かれていた。

 この曲は室内楽版とは言え、WR録音を行って耳に胼胝が出来る位に何回となく聴いて来た
ので、正直、気持ちの上ではちょっと食傷気味であった。しかし始まって見るとやはりオケ
の響きで聴くと雰囲気が変わる。そんな事は何処かに消えていた。

 岡田博美はイギリスを中心に活躍する日本人演奏家の一人で結構評価が高いらしい。特に
先入観なく聴いたのであるが、今時珍しい演奏スタイルだと思った。テンポを自由に変えて
強弱のダイナミズムを大切にする、言って見れば19世紀的な演奏、あるいはロマンティック
な弾き方である。

 ショパン弾きはこれ見よがしに、ピアノが飽和せんばかりに叩き付けるようにバンバンと
直線的に弾く人が多いように思うのだが、この人のffはそんなに大きな音もしないし、飽和
もせずにあくまで美音を保ったまま、決して感情に溺れて暴走することがない。鍵盤を叩き
付けるのではなく、瞬時に鍵盤をはじく感じである。同じ力積を得るのに、力を大きくして
時間を短くする方が綺麗なタッチになるはずである。それには持って生まれた筋力とセンス
が必要であろう。音は大きく感じないが魅力的な鋭い音が出るのである。

 聴かせどころではテンポを落としてゆっくり丁寧に弾き、切り込むところは胸がすくよう
に早い指回しで難なく弾きこなす。これが余り繰り返されると鼻に着くのであるが、やはり
非凡なものを有しているのだろう。サントリーホールのスタインウェイはこんな綺麗な音が
したっけ?と思ってしまった。一口にピアノと言っても弾き手によって大きく音が変わる事
を思い知ったのだった。食傷気味は何処へやら全くストレス無しに楽しむ事が出来た。5月
にイギリスでフィルハーモニア管と「皇帝」を演奏して来たそうで、この人のベートーベン
も聴いて見たいと思った。

 オケ伴の方は出だしこそ少々硬直していたが、次第に弦も馴染んできて岡田の演奏に的確
に連れ添っていた。コンサートマスターは日フィルきっての腕利き(と私は思うのだが)の
扇谷泰朋で、やはり良く統率してると思った。この人の時の日フィルの弦は特に素晴らしい。

 15分の休憩の後は、先にも記したラフマニノフの交響曲第1番だった。のっけからホルン
の特殊奏法?と思わせる早いパッセージが吹かれちょっと驚嘆する。この曲はワーグナーの
動機程ではないが、ビオラパートにワルキューレを思い起こさせる動機が何度となく現れて
全ての楽章を支配する。

 この曲の難度は結構高く、グラズノフによる初演は大失敗に終わったそうである。オケが
空中分解したに違いない。近代オーケストラの高度なテクニックを以てして初めてこの曲の
真価が分かると言う曲作りである。まだラフマニノフのロマンチシズムは殆どなく、先輩の
チャイコフスキーを意識した作曲技法になっている。それが後のショスタコにも通じている
ような気がしたから不思議である。これがロシアの伝統であろうか。

 だから音響的な魅力満載である。トランペットとトロンボーンの絶妙なフォルテに大太鼓
シンバル、小太鼓と来れば正しくオーディオの王道である。これ以上の音響バランスはない
と言っても良い程の音の洪水であったし、演奏に一分の隙もない。まあ見事な演奏であった
と思う。ここでも弦はあくまで透明、微塵の濁りも無ければ詰まりもない。大げさに言えば
一流オケ、そうイスラエルくらいの評価をしても良いと思った。ラザレフの統率力とそれに
応えたオケの腕は凄いと思ったのである。オケと言えば、オーボエのトップ候補として入団
していた女性オーボエ奏者がこの日から晴れてトップになっていた。音が大きくて中々良い。
今後が楽しみである。

 しかし、感動はマーラーの3番を聴いた後とは雲泥の差だったのである。曲の格が違うの
だろう。幾らオーディオ好きの私でも音響的な快感だけでは感動できないのである。だから
この曲はラフマニノフに取っては習作なのだと思ったのである。何が足りないのか、先ずは
メロディーらしいメロディーが無い事ではないだろうか?

 古今東西の名曲は例外なくメロディーが豊富である。どの楽章も、初めから終わりまでも
口遊める程である。そして、名曲は初めて聴いても一つや二つ位のメロディーが自然に耳に
こびりつくものである。それが全く無かったのである。やはりロマンティックと言うよりは
頭で理性的に作曲したのではないだろうか? やはり音楽に取ってメロディーは大切である。

 それにしても、現場であんな魅力的な音がするなら、録音してもいい音で録れるはずだと
思ったのである。当日はデッカツリーをメインにマルチ録音が行われていたので、何時かは
発売されるはずである。   

1268川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Nov 9 16:40:00 JST 2011
外部シンクを使って、より高音質に。

 先日のKoike Strings さんの録音の第一弾が届いてから数日後に第二弾が届きました。何でも
同期信号をMacBook 本体のものを使わずに、インターフェースMOTU/Traveler が有する同期信号
を使ったのだそうです。同期信号と一口に言っても精度は区々で、Travelerの方が精度が良いの
だそうです。 

 この話は昔からよく言われていた事で、専用のマスタークロックジェネレーターなる物が発売
されています。普通のCDプレーヤー等に搭載されているものは50PPM 程度の精度ですが、専用の
ジェネレーターではその10分の1以下の精度を有しています。高価なものは 100分の1以下にも
達しています。

 問題は、その精度の良さが音の違いとして認識できるかどうかです。他にも音質を害する部分
は幾らでもある訳ですから、闇雲に同期信号だけの精度を上げても意味がありません。今回息子
がこのような考えに至ったのは「やるべき事は全てやった」と言う自負が有ったからでしょう。

 これまでに行った音質向上へのハード上の努力は概略

1.MOTU/Traveler の電源をWR式安定化電源にした。

2.MacBook の電源をWR式安定化電源にした。

3.外付けHDD の電源をWR式安定化電源にした。

4.安定化電源の制御回路をインバーテッドダーリントン(コレクタホロワ)にした。

となりますが、今回、これに加えて

5.マスタークロックをMOTU/Traveler の高精度のものにした。

を行った訳です。この5の効果ですが、はっきりその差が確認できました。この録音は音楽が
ブラームスであり、非常に厳しくかなりバイオリンの激しい音が入っています。しかも低音部
はチェロだけですから、現場で聴いても決して心地良い音ではありません。忠実に録音すれば
中高域に何らかの強調感が出てしまいます。

 それを家庭で聴いてブラームスの室内楽を如何に楽しめるようにするかが求められるのです。
第一弾でも楽しめないと言う程の問題はなかったのですが、もう一つしっくりしない所があり
ました。第1バイオリンと第2バイオリンから出る不協和音のような音が多少耳に着くのです。
多かれ少なかれ仕方のない事ですが、正直、もう少しスムーズにならないかと思っていました。

 それにしてもブラームスの弦楽四重奏曲第1番ハ短調は凄い曲です。中期に差し掛かる頃の
力作です。演奏もかなり難しいと小池さんも仰っていました。だからこそ、出来る限りいい音
で聴きたいのです。今回のミックスはより精度の高いクロックを使う事によって、ほぼ理想的
なミックスに仕上がったと思います。息子はもう少しチャレンジすると言っていますが、ほぼ
録音システムとしても完成されたと思っています。

 一口に録音と言っても、聴き易い曲或いは美しい曲を録音するのと、今回のような厳しい曲
を録音するのとでは雲泥の差があります。弦楽四重奏曲と言う音のバランス上も難しく、且つ
ブラームスと言う厳しい音楽の録音は、たとえメジャーレーベルが録音しても中々上手く行く
ものではなく、これまでにも余り良いものは無かった言えます。

 私も昔何か買った憶えはありますが、余り聴く気がせずにお蔵入りになっていました。再び
この名曲を聴く機会に恵まれた事は非常に良かったと思います。演奏を含めて市販のCDに勝る
事はあっても劣る事は決してないでしょう。今、改めて聴き直して見てそう確信しました。

 これでWRの録再システムはほぼ完成した事になります。この2回は録音についてのコメント
でしたが、全てWRアンプで聴いた結果ですから、決して、再生の問題に無関係ではありません。
此処で述べられた事は基本的には、プリアンプとパワーアンプから成るWRアンプに関係する事
です。録音は自分には関係ないと思わないで下さい。基本原理が共通する録音・再生システム
を通して、総合的に評価する事こそ大切な事だと思っています。


注)共通する基本原理とは、帰還ループに於ける負性抵抗を排除し、エミッタホロワ単体での
 負性抵抗の発生を嫌って、出力回路をコレクタホロワに統一する事。この事によりシステム
 の安定性が確保され、高周波ノイズに誘発されない超安定なシステムを作る事が可能になり
 ます。
 
  その結果、必ずしも高級部品を使わなくてもいい音のアンプが作れるようになり、普通の
 オーディオの常識が通用するようになります。摩訶不思議な現象は最早起きなくなると思い
 ます。   

1267川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計) Sat Nov 5 17:05:00 JST 2011
先日の録音のDVD-AUDIO とCD-Rのメディアを聴いて見ました。

 オリジナル録音は96KHz/24bit で行われましたので、そのままDVD-AUDIO に焼き、多分同じ
ソフトでCD-Rにも焼いたのだと思います。即ちCD-DA に落とす為に特別なソフトを別途使った
訳ではないと思います。情報の間引きを単純に行うのかウェイティングを掛けて意図的に工夫
するのかの違いがあります。メジャーレーベルのCDの多くは後者ではないかと思います。

 さて、最初はDVD-AUDIO で聴くのが何時もの習わしです。一聴してこれまでとは違うと思い
ました。前回お話した「デジタル臭」がありません。不自然にザラザラ、ギラギラする嫌な音
が殆どないのです。この音があると不愉快であるばかりでなく、耳が凄く疲れます。

 話はちょっと逸れますが、録音をして来た翌日に近所の中学の文化祭に自治会の役員をして
いる関係でやむを得ず行って来た時の事です。どうせならと思って吹奏楽の時間帯に合わせて
顔を出したのですが、まだ前の演目が終わってなくて体育館に備え付けられたPAがガンガンと
鳴っていて、それを全校生が聴いていました。

 この音が凄まじく、先程の「デジタル臭」がモロに出ていて耳を覆いたくなる気がしたほど
でした。私も高校の頃は放送部で裏方を務めていましたので、拡声器から出る音は随分聴いて
来ましたが、あの当時は音は悪くてもあのような耳を異常に刺激する音は無かった気がします。
電磁環境の悪化及びCD再生とエミッタホロワを使った拡声機器のせいでしょう。オーディオに
おける技術の進歩とは一体何なのでしょうか? オーディオが斜陽化するはずだと思いました。

 やっと吹奏楽が始まりました。編成はよくは憶えていませんが、フルート7、クラリネット
及びサックス6、ホルン6、ユーホニューム及びチューバ5、トランペット6,トロンボーン
及びバストロンボーン6、それに舞台に乗り切れない大太鼓、ドラムス等が土間に配置されて
いたと思います。

 最近の中学生は器用で突飛もない音なんかありません。極普通に音楽が楽しめるレベルです。
編成が大きい事もあって音量も豊かでしたが、直前まで鳴っていたPAの音とは天地の差でした。
大体音のエネルギーバランスが違い、中域に集中しています。中高域のチャラチャラした音は
全くありません。これが生の音です。一見高域の音は聴こえて来ないのです。

 サントリーホールで聴くクラシックの場合はストバイがあり、フルートがあり、ファゴット
等の倍音も聴こえてきますので、もう少し中高域の成分はあるのですが、それでもオーディオ
装置から出て来る音のエネルギーバランスとは違います。もっと落ち着いています。

 先日録音して来たKoike Strings さんの弦楽四重奏曲及び弦楽六重奏曲も、やはり中域から
中高域に掛けてのエネルギー成分が多かったと思います。だから生で聴いてもちょっとドライ
な感じで聴こえて来ますし、鋭い音も飛び出して来ます。それでも耳が疲れるような、そんな
感じはありませんでした。それが生の音です。

 DVD-AUDIO に続いてCD-Rを聴いて見ましたが、従来のように明らかな音質劣化や聴き苦しい
音はなく、僅かに微妙なニュアンスが削ぎ落とされている感じがしたくらいです。こればかり
は仕方ないでしょう。情報量が激減しているのですから。しかし逆にCD-Rの方が聴き易い気が
したのも事実です。

 両者のメディアをとっかえひっかえして、また四重奏曲と六重奏曲を行き来して、いろいろ
な角度から聴いて見ましたが、耳が疲れてくる事はありませんでした。それだけでも一歩前進
です。一歩と控えめに言いましたが、この一歩は大きな差です。やはりPC及び周辺機器の電源
は疎かに出来ません。安定化電源のコレクタホロワ化は相当の威力が有ったと確信しています。
スイッチング電源なんて以ての外です。そんなものを使っている限りはハイエンドオーディオ
は無理でしょう。そう言う事が今回の録音ではっきりと分かりました。

 直接アナログ信号を増幅するアンプの電源ではないのに、何故これ程までに効果があるのか
不思議といえば不思議ですが、この辺りにもデジタル処理の音質に関する問題が潜んでいると
思われます。勿論、直接アナログ信号を扱うプリアンプやパワーアンプではもっと大きな効果
がある事は言うに及びません。

 私はオーディオとは高忠実度が基本だと思っていますが、そこはオーディオ心地良く聴ける
事も需要だと思います。昔よく言われた「ドンシャリ」もその一つです。さすがに今更それは
ないと思いますが、多少は聴き易くする事は必要だと思います。

 だから録音現場の音に基本的には忠実に従いながら、繰り返して聴くメディアは最終的には
楽しく聴けるようにミックスダウンす事も許されるのではないかと思います。まだこれからも
別のミックスが試みられ、何通りかメディアが出来上がって来ると思います。何処で折り合い
をつけるかは、バランスエンジニアの腕と感性に掛かっていると言えます。  

1266川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Nov 3 00:20:00 JST 2011
新デザインプリアンプ発売記念・特別特典セール開催!!

 新デザインプリアンプをお買い上げの方に限り、6ヶ月以内にお申し込み頂く事を条件にして、
次に購入予定の新デザインパワーアンプを2割り引きにさせて頂きます。これにはカスタム仕様
も含みます。この特別特典セールの期限は2012年の6月30日までとさせて頂きます。又この逆で
先にパワーアンプを購入し、後からプリアンプを購入する場合にも同様に適用させて頂きます。

 この機会に新しくデザインされたプリアンプとパワーアンプをセットでご購入下さい。基本的
な仕様は旧型と変わりませんが、アンプ内で使用される全てのエミッタホロワがコレクタホロワ
化されており、一層、音の安定性が高められています。自然で聴きやすく、心から音楽を楽しく
お聴き頂けます。セット購入でその効果が100%発揮されますので、是非ご計画をお立てになって
このチャンスをものにして下さい。

 新デザインプリアンプには標準で下記の2機種が用意されています。

1.WRC-ΔZERO/FB (\252,000)

2.WRC-ΔZERO/FBSE SEコン仕様(\357,000)


 新デザインパワーアンプには標準で下記の2種類が用意されています。

1.WRP-Δ30/BAL 30〜40W程度の非安定化電源アンプ(\199,500)

2.WRP-ΔZERO/BAL 50W程度の安定化電源アンプ(\304,500)

 又、カスタム製品としては、例えば、WRP-Δ120/BAL 等(40万円程度)がございます。使用する
パワー素子は基本的にEMe 型のバイポーラトランジスタですが、お好みでルネサス又は東芝製の
MOSFETにする事も可能です。ご購入時にお申し出下さい。

 半年以内に標準品をショッピングサイトからご購入の場合は、購入時価格は上記のままですが、
セット購入である事が判明次第、内部操作により20% 引きに価格を訂正させて頂きます。又この
セール期間中は、新デザインアンプに関する他のセールを実施する事はありません。

 半年あるとは言えセットで購入するのは勇気が要ると思いますが、余程変わったご趣味でない
限り、必ずご満足頂けるようなハイレベルにWRアンプは仕上がっております。一生ものとしても
十分にお役に立つと確信しています。どうぞ、大船に乗った気持ちでアンプの事はお任せ下さい。
回り道をしない分、結局はお安い買い物になると信じております。


 ご購入例:

★初めに新デザインプリWRC-ΔZERO/FB を2012年6月30日までに定価\252,000で購入し、6ヶ月
以内に新デザインパワーアンプWRP-ΔZERO/BALをご購入になりますと、この場合は後からお買い
になるパワーアンプが20% 引きになり、\243,600でお買い求め頂けます。差額 \60,900がお得に
なり、セットで\495,600でお求め頂ける事になります。

★★初めに新デザインパワーアンプWRP-Δ30/BALを2012年6月30日までに定価\199,500で購入し、
6ヶ月以内に新デザインプリWRC-ΔZERO/FB をご購入になりますと、この場合は後からお買いに
なるプリアンプが20% 引きになり、\201,600でお買い求め頂けます。差額 \50,400がお得になり、
セットで\401,100でお求め頂ける事になります。


ご注意) 現在、新デザインシャーシの製作がかなり遅れています。年内にアンプを手にされたい
方はなるべくお早めにお申し込み下さい。 

1265川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Oct 29 16:10:00 JST 2011
コレクタホロワ化されたPC周辺機器用電源を使って録音してきました。

 先日コレクタホロワ化された電源を使って、既に録音されたファイルからミックスダウンを
やり直し、さらにCD-Rライターに焼き直した事をご報告しました。勿論、音がスムーズになり
生独特の弦の柔らかさも一部で再現できて、これは有望だと思いましたが、録音されたものは
エミッタホロワを使った旧型の電源を使ったものであり、これだけはどうしようもありません。
新しい録音の機会を待っておりました。

 幸い、昨日その願いが叶えられました。Koike Strings さんの自主公演が、大久保の教会で
行われ、録音を依頼されたからです。今回の出しものはオールブラームスで

 1.弦楽四重奏曲 第一番 ハ短調 作品51−1

 2.弦楽六重奏曲 第二番 ト長調 作品36「アガーテ」

 3.アンコール曲 交響曲 第二番から第三楽章(小池 弘之編曲)

と言う結構ハードな構成でした。

 開演は夜の7時でしたが、G.P.(ゲネプロ)は3時から始まると言う事でしたので、我々も
3時前に行ってセッティングを始めました。今回は編成が小さいのでメインとサブだけで録る
と息子が決めていました。従って、2組のマイクプリを使う事になりました。マイクには何を
使ったか等に関しては、息子のレコーディング・レポートを参照して下さい。

 その他に、MacBook 用電源、MOTU(インターフェース)用電源を使いました。保存用外付け
HDD はMac 本体に接続するので敢えて別電源を用意しませんでした。コレクタホロワ化された
数は

 1.マイクプリ:2つの正負電源とファンタム電源 → 計10個 → 2台で20個

 2.Mac 用電源:正電源 → 計2個(パワーTRがパラなので実質3個)

 3.インターフェース用電源:正電源 → 計2個

となっています。個数もさる事ながら、3カ所の電源が変更になるのですから、音質に影響が
出ないはずはありません。

 ところで、私が期待するのは、俗に言う「デジタル臭」を極力減らしたい、出来たら無くし
たいと言う事です。そうすれば周波数特性は別にして、アナログの音と同列に比較できるよう
になると思うからです。

 霞仙人さんや、ふなさんが「LPの方が音が良い!」と言う背景には多分に「デジタル臭」の
問題が含まれていると思います。これは最低限クリアしないと録音以前の問題に成り下がって
しまうと、最近思うようになりました。

 その意味では先ずオリジナルの音をよく聴いておく必要があります。リハ最中に誰も居ない
客席でじっくり聴いて見ました。曲が凄いので、相当耳に来る音があります。よく聴くと我々
が「デジタル臭」と呼んでいるザラザラした、ギラギラした音が生音にも僅かながら含まれて
います。

 これは新しい発見でした。この事を息子に言うと息子も同じように感じたと言っていました。
そして、システムの弱点が重なって、この「デジタル臭」の素が2乗、3乗・・と増強されて
結局、CDで再生した時に耳に不快に感じる音となってしまうのでしょう。ピアノの異常音も又
その素となる音は生音にあります。

 要は、その素を殆ど増強しないような録再システムを構築する必要があります。少なくても
そのような再生システムを用意できれば、録音の優れている音源を使うと言う条件付きですが
アナログに引けを取らない音が再生できるはずです。一例ですが、パガニーニ・アンサンブル
の「煙が目にしみる」(COCO-70819)は優秀録音だと思います。

 現場で生音をじっくり聴いた後に、モニタールームに戻って録音中の音を高級ゼンハイザー
製ヘッドホンで聴いて見ました。ヘッドホンはスピーカーより振動板の動きが微少なので有利
に働きます。両耳効果もありますが一般的にスピーカーよりいい音に聴こえます。

 特にオーディオ的に綺麗な音に聴こえるものを使うと騙されるので要注意です。その意味で
スピーカーでモニターすべきですが、モニタールームが狭いので今回はヘッドホンでモニター
したのです。息子が今までの音とちょっと違うと言ってヘッドホンを渡してくれました。

 録音中の音をリアルタイムで聴けば悪いはずはないので、ここでいい音だと思っても予断は
許されません。しかし、これまでに何回となく行った録音の時のモニター音とは若干違う気は
します。現場の生音より耳に来ません。聴きやすくなるように息子がマイクレベルを調整した
からでしょうか。

 本当のところは下駄を履くまで分かりません。CDに落として見て初めて分かる事です。CDは
確かに情報が欠落しますが、どうもそれが本質的な問題ではないように最近思うようになって
います。情報は欠落しても変な「デジタル臭」さえ大幅に増やさなければ、かなり期待出来る
音に仕上がるはずです。そう確信しています。「デジタル臭」はコレクタホロワ化された電源
を使う事で、耳ではっきり分かる程度に減る事は既に分かっています。

 来週早々にはCD-Rに焼かれた媒体が出来上がって来ると思います。それが凄く楽しみですが、
試聴したら、又改めてご報告します。


注) オリジナル録音は今回は96KHz/24bit で行なわれました。88.2KHz で行なう事もあります。 

1264川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Oct 23 14:00:00 JST 2011
日フィル10月定期を聴く

 9月初めから少し間が空いてしまったので、久しぶりの生の音楽会だった。それでも耳に
特別の違和感はない。昔と違って自分の装置の音がライブの音と私の頭の中で同化してると
言えるだろう。此処まで来るのに一体何年掛かった事か、特にお金を掛けなくても、長い間
に蓄積された技術が解決してくれたと思っている。その技術の本質は「エミッタホロワ」を
使わないで、全ての回路構成を妥協無く成し遂げた事である。

 負性抵抗を排除し安定性を十分に確保した上で、低ひずみ、低出力インピーダンスを実現
したと言っても良いだろう。これがアンプの理想郷である。ストレートワイヤーと言う概念
に一番近いものだと言っても良いと思う。アンプでいい音を作り出す、なんて言う考え方は
捨てるべきで、如何にソースの音を損なわないアンプを作るかが大切なのである。音源より
いい音なんて有り得ないからである。

 今月の出しものは、シューベルトの習作と言っても良い交響曲第3番、ブラームスの唯一
のバイオリン協奏曲ニ長調、そして滅多に演奏される事のないR.シュトラウスの町人貴族
「組曲」であった。指揮は実力派の広上淳一。

 シューベルトの交響曲と言えば「未完成」「グレート」それに「第5番」だろう。一応は
ケルテス/ウィーンフィルの全集(430 773-2) を持ってはいるが、実はこれ以外は聴いた事
がなかった。シューベルトは歌曲の作曲で頭角を現したが、オーケストラの作曲は素人並で、
何でも映画アマデウスでその存在が有名になったサリエリに師事していたと言われている。

 この3番も正にその影響を強く受けたもので、イタリア様式の明るい雰囲気を有している。
広上の上手い指揮に応えた日フィルの好演であったが、楽しくはあっても深みに欠け充実感
は無かったと言えるだろう。オケの構成はハイドンに近く、曲から受ける感じも黙って聴か
されれば「ハイドンかな?」と思わせる曲想だった。ティンパニーとトランペットが入って
賑やかではあったが、ハイドンのロンドンセットには遠く及ばないし、シューベルト独特の
ロマンティックな感じも殆ど無かった。

 今回はクラリネットのトップを新米の次席が努めたが、慣れのせいか当初より音量も吹き
方も許容範囲に入っていたと思う。同様にファゴットのトップも新米だったが、並程度には
こなせていた。従って、木管アンサンブルは当初のスタート時点よりは聴けるようになって
いた。一時は先が思いやられると心配したが、何とか聴ける水準に達して良かったと思う。

 今月の圧巻は何と言っても独奏者にボリス・ベルキンを迎えた、ブラームスのV協だろう。
私は日頃シェリングが独奏するハイティンク/コンセルトヘボウ管 (LP:SFX-8638 CD:PHCP-
3543) で聴いているが、演奏内容、音響的満足感に全く違和感を感じなかった。協奏曲では
生の演奏会に行ってガッカリする事が実は多い。独奏楽器が霞んでオケとのバランスが悪い
場合があり、オケの迫力も今一つと言う事が多く、その辺りを上手く録音した音源に比べて
充実感に欠ける事が多いからである。

 しかし、今回のブラームスは独奏者のテクニック、音量、音質どれを取っても文句の付け
ようがなく、それに応えてオケも充実感のある音で支えていたので、稀に見る秀演となった。
この曲にはオーボエの独奏が重要な役割をするところがあるが、ベテランの次席(現在首席
は欠員)が朗々と吹いていた。国内オケでも一流の独奏者を迎えれば、こんな演奏が出来る
ようになったのである。もう外来オケを何でも有り難がって聴く時代ではないのではないか
と思った。ブラームスのオケ伴が努まるところに意義があると思う。

 案の定第3楽章が終わった途端の拍手は凄まじく、何回もB.ベルキンが呼び出されては
暖かい拍手に包まれていた。やはりオーボエのトップがスタンダップされていた。久し振り
に充実した音楽会を堪能した。今日は、これで帰っても良いとさえ思ったのである。

 15分の休憩後に、自分の席に戻って見ると、期待に反して舞台の上はこぢんまりした楽器
配置になっていた。R.シュトラウスだから大編成だ、と思いこんでいたからである。弦は
2プル程度、管は2管編成に近いがトランペット1、バストロンボーン1と言う変則である。
左側にティンパニー等の打楽器が寄せられ、ストバイの後ろにハープが配置されている。

 町人貴族は、元はその劇中劇として「ナクソス島のアリアドネ」を含んだ形で上演された
ようであるが大失敗に終わり「ナクソス島のアリアドネ」はオペラとして独立し、町人貴族
は演劇の付随音楽に生まれ変わったと言う経緯がある。付随音楽の中から9曲を選び出して
組曲にしたものが、今回演奏されたものである。

 最初は弦楽八重奏が主になってそれに2管編成に近い管が絡む形で進行する。暫くの間は
2プル目の人はお休みだった。ストバイは2プル目はなく、コンミスとトップサイドの2人
だけである。それでもストバイの音は目立つのでバランスは悪くない。この曲にはコンミス
の独奏パートがかなり有ったが、ベルキンに刺激されたのか堂々と弾いていた。R.シュト
ラウスのオタクなら喜びそうな曲である。よく聴けば「ドンキホーテ」や「ばらの騎士」の
テーマが鏤められていたはずであるが、そもそもR嫌いの私にはよく分からなかった。正直
魅力に乏しい曲に感じてしまったのである。

 しかし意外にも、最後の「宴会」が終わると結構の拍手が巻き起こった。その理由は明確
ではないが、謂わば日フィルの腕達者の労に報いる、冷静な拍手だったのではないだろうか。
指揮者も、舞台が少人数で動き易かったので、この時とばかりに日頃握手が出来ない団員に
まで手を伸ばしていた。帰路の頭の中はブラームスのメロディーが浮かんでは消えていた。  

1263川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Oct 18 17:00:00 JST 2011
PC周辺機器用安定化電源をコレクタホロワにして見たら?

 日曜日に3台有った安定化電源をコレクタホロワ化して息子に届けて来ました。暫くして
息子から随分変ったと言う良い報告がメールで来ました。効果がある事は半ば分かっていま
したが、大層な結果に気を良くしました。

 真価は録音からやり直さないと分かりませんが、録音されたもののリミックスでも相当の
効果があったようで、デジタル系にもWRのコレクタホロワ式安定化電源は価値ある存在だと
改めて思いました。

 録音は、例えば左右合わせて6チャンネル有ったとして、それらのレベルや遅延時間等を
ミックスダウンされて来る音を頼りに細かく調整します。バランスエンジニアの腕の見せ所
です。最適だと思ったところで、その設定値を保存します。従って、その保存ファイルさえ
有れば、それを元に、もう一度ミックスダウンをやり直す事が出来ます。

 このようにして作り出された2トラック用のステレオファイルを、もう一度CD-Rに焼けば
安定化電源の改造前と改造後の音が比較できる事になります。この比較で、勿論効果がある
事が分かったのですが、余りにも変化が激しかったので、ミックスの仕方そのもの自体まで
に影響が及び、結局もう一度ミックスを最初からやり直す羽目になったそうです。それだけ
全体の印象が大きく変ったと言う事です。デジタルの世界も、事オーディオに関しては恐ろ
しい限りです。

 今日、そのやり直したCD-Rが届きました。モノは「ショパンのP協1番(室内楽版)」です。
一聴して弦のザラツキが減り滑らかで柔らかくなっています。元の録音は96KHz/24bit なの
ですが、CDフォーマットに落すとデジタル録音の欠点が耳に着いてきます。しかし、今回は
意外にもCDの音がアナログっぽいのです。ピアノの音も右手の細かな動きが一音一音クリア
です。曖昧さが微塵もありません。録音からやり直したら、と思うとワクワクします。

 これだけ違うとデジタル機器の電源も軽視できません。これまでスイッチング電源よりは
普通の安定化電源(エミッタホロワ使用)の方がずっと良かったのですが、それよりさらに
コレクタホロワ式安定化電源の方が良い事が分かりました。これを聴いたらもう後には戻れ
ないでしょう。

 小生のコレクタホロワ化も最終段階になりましたが、パワーアンプ、プリアンプ、ヘッド
アンプ、そしてPC周辺機器用安定化電源と進んできましたが、どれ一つ例外なく良い結果に
恵まれました。エミッタホロワに始まって、エミッタホロワの除去に終ると言う私の研究も
大詰めです。

 これからは、お金の無い人にも、有る人にも、それ相応のWRアンプをご提供し、普く人に
不快な音に嫌気する事無く音楽を楽しんで頂けるように、WRアンプの啓発に余力を費やして
行きたいと考えています。

 他社のアンプと比較して同じスペックではより高額かも知れませんが、オーディオアンプ
はスペックだけでは決まりません。結局は「音を聴いてなんぼの世界」です。一度は聴いて
見て下さい。「WRアンプを聴かずしてオーディオを語る事なかれ」とは、ちょっとオーバー
で不遜ですが、正直に言えば、それが私の今の気持ちなのです。  

1262川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Oct 12 15:30:00 JST 2011
WRのコレクタホロワ型アンプは何故、音質の面で優れているのでしょうか?

 パワーアンプ、プリアンプ、ヘッドアンプと逆に遡って、完全コレクタホロワ化を進めて
来ましたが、今現在はさらに遡って、録音系にまで手を伸ばしています。録音系には、先ず
マイクプリアンプが有って、既に保有してる4台の改修が終わりました。

 マイクプリの回路構成はヘッドアンプをバランス化して前段とし、さらトータルゲインを
約40dBにする為に、ゲイン10dBの後段を付加していますが、安定化電源は基本的にはヘッド
アンプと同じ2段構成です。しかし、それ以外にマイクプリにはファンタム電源が必要な為、
合計5つの安定化電源を抱えている事になり、結局10個のエミッタホロワをコレクタホロワ
に変更しました。4台で、その数は40個に達します。

 この後はMac 用、インターフェース用、さらに外付けHDD 用に特別に製作した安定化電源
の改修が待ちかまえています。インターフェース用はCD-Rを焼く時にはライターの電源にも
活用されます。これらを近々、無事終えたいと考えています。

 今月の下旬に大久保で行われるKoike Strings さんの演奏会の録音から、新装なった電源
を使って録音する事にしており、録音系電源のコレクタホロワ化の効果がどの程度あったか
は11月にご報告出来ると思います。これまでの経緯からすれば、相当の成果が期待できると
思っています。

 これで私の周りからエミッタホロワは完全に無くなりますが、コレクタホロワにしたから
音が良くなる、と言う単純な話ではありません。コレクタホロワ自体は、極普通の増幅回路
ですから、それを使う事だけで音が良くなると言う訳ではありません。コレクタホロワでも
2段重ねて使えば発振もします。

 では、何故WRのコレクタホロワを使ったアンプの音はいいのでしょうか? それは2つの
特許回路が生きているからです。既に何回も説明しておりますが、帰還が多量に掛けられた
アンプは殆どの場合、入力インピーダンスや出力インピーダンスに負性抵抗を包含します。

 Z = -R+jX( R>0 )

となるのです。この実部は、一度起きた振動の過渡項が発散するか減衰するかを決定付ける
大切な要素です。符号が負であれば当然の事ながら過渡項は収斂せずに発散します。それは
音楽信号に余計な過渡信号が随時加わって来る事を意味します。当然、音は濁りひずむ事に
なります。

 伝統的な高帰還アンプも発振対策は取られて来ましたが、従来の安定判別法だけではこの
負性抵抗を完全に防ぐ事は出来ません。その事を明らかにした論文を私が公に発表したのは
1992年にJAS Journal 32(5) 50-56 に掲載した

「高周波雑音に対する2段帰還増幅器の一補償法」

及び、1997年6月にAES 東京コンベンションで発表した

「エミッタホロワを有する3段帰還増幅器の一高域補償法」

です。後者は4ページと言う制限が有った為、従来の安定判別法では何故不足なのかと言う
理由部分が割愛されています。その事までも明らかにした英文論文をAES に投稿しましたが
何の理由も述べられる事無くリジェクションされました。仕方なく共立女子短期大学の紀要
に発表してあります。本来、リジェクションするなら正当な理由が述べられて然るべきだと
思います。即ち、裏を返せばオリジナリティが無かった訳でも間違いが有った訳でもないと
思っています。

 前者の論文で入力インピーダンス、後者で出力インピーダンスの負性抵抗をそれぞれ阻止
する特許回路が考案されています。その頃は、パワーを扱うステージにはエミッタホロワは
必須であると考えていたのです。一種の固定観念だったのだと思います。だから、エミッタ
ホロワを使う事を前提にして、アンプの回路を検討していたのです。

 しかし、実際のアンプは理想的には行かなかったのです。等価回路にはエミッタホロワの
実際の問題点、例えばコレクタに若干のインダクタンスが入る等、細かな配慮に欠けていた
為に、結果的に私の理論は未消化だったのです。その事は例えばピアノの異常音が取り切れ
ない、等と言う現象に現れたのです。その後の経過はこれまでこの掲示板に散々書いて来た
通りです。

 そして、エミッタホロワによる2段ダーリントン回路を、インバーテッドダーリントンに
置き換えて、私の初期の目的が達成されたと思っています。インバーテッドダーリントンは
まだPNP の石が殆ど無かった頃に考案された苦肉の策だったはずですが、それがWRアンプを
救済してくれたのです。今度こそ、本当に負性抵抗から解放された帰還アンプが完成出来た
と思います。

 話はちょっとずれますが、負電圧で本質的に動作する真空管が無い以上、インバーテッド
ダーリントンは真空管では実現不能です。どう逆立ちしても真空管で同等なプレートホロワ
型パワーアンプを作る事はできません。カソードホロワを一部に使ったOTL にするか、出力
トランスを使わざるを得ないのです。どちらにしてもそれぞれ問題点を抱えます。この点で
トランジスタは真空管に対して有利な立場に立てるのです。 

 パワーアンプに引き続き、プリアンプも同様なデザインに一新されて、新たなWRアンプの
歴史がスタートしました。SEコンの思わぬ高騰と、コレクタホロワにした事により必ずしも
SEコンが必要でなくなった為、プリの価格を2つに分けてあります。普通の使用には安価な
方で十分だと思いますので、新デザイン型パワーアンプをお買いになった方には特にお勧め
致します。

 当初は、プリもパワーもSEコン使用を余儀なくされましたが、結果的にSEコンを使わなく
ても立派なアンプを完成させる事が出来ました。要するに、高帰還アンプの不安定性が一掃
された事が大きく効いているのではないかと思います。多分、オーディオの七不思議も今後
かなり解決するのではないかと、密かに期待しています。

 最後に旧型プリをお持ちで新型シャーシに移行されたい方の為に、基板等をそっくり移植
するサービスも承り始めました。費用は旧型プリの状態を見ないと一概には言えませんので、
カスタム扱いになりますが20万円程度です。勿論、コレクタホロワ仕様に生まれ変わります。
詳しくはメールでお問い合わせ下さい。

 尚、安定化電源のコレクタホロワ化を含めて新型プリの型番と価格等はWRのショッピング
サイトに既に反映されていますので、Web からお申し込み頂けるようになっています。皆様
のご応募をお待ちしています。  

1261川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Oct 9 13:40:00 JST 2011
メールアドレスについてのお願い

 最近大掛かりなサイバー攻撃が増えているご時世が関係しているのかも知れませんが、
私のところに今まで届いていたメールが、ある日を境に届かなくなる事が現実に起きて
おります。

 話が一方通行になったりで、お客様のリクエストが届かなくなり、結果的にご迷惑を
お掛けしてしまう事が最近ありました。普通12時間以内に返信を差し上げていますので
どうも変だなと思われた時は、以下のメルアドに出し直すか或はCCに書き添えて頂くと
メールの確実性が向上します。どうか皆さまのご協力をお願い致します。


1.kawanisi@mail.ne.jp

2.audio_and_music@yahoo.co.jp

 これらのメルアドは現在のメールサーバに結果的に転送されますので、読み忘れ等は
起きません、どうぞご安心下さい。現時点でどちらのメルアドも正しく転送されている
事を確認してあります。どうぞ、よろしくお願い致します。  

1260川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Oct 5 21:00:00 JST 2011
ヘッドアンプの安定化電源をコレクタホロワにして見たら?

 私はアンプ屋ですので、MCカートリッジの昇圧には当然ヘッドアンプを使っていますし、
WRユーザーの方にも使って頂きたいと願っております。標準的な昇圧トランスに比較して
特に安定化電源方式のものは高価ですので、そう多くのユーザーはいらっしゃいませんが、
その中に霞仙人さんが居られます。

 去年の秋でしたか、霞仙人さん宅にコレクタホロワ型の120Wパワーアンプを試しに持参
した事がありましたが、その時ついでに安定化電源方式のヘッドアンプもお持ちしました。
既にバッテリー方式のヘッドアンプはご購入頂いておりましたが、安定化電源駆動の方が
音が良いと思ったからです。

 その時の試聴記にも書きましたが、霞仙人さんが偶々入手されたオラクルの高級ターン
テーブルが素晴らしく、久しぶりにと言うか、寧ろ初めてLPの安定再生に出会う事が出来、
甚く感心したのでした。この音は安物のターンテーブルでは再生出来ない、とさえ思って
しまった程でした。

 その時の結果が良かった事もあって、霞仙人さんには安定化電源方式のヘッドアンプに
買い換えて頂きました。そしてバッテリー方式より断然良いと評価して頂きました。それ
以来、安物のターンテーブルしか持っていない私は、LPを全く聴く気がしなくなり、つい
最近までLP再生の方はご無沙汰をしていました。

 ところが、最近になってプリアンプの安定化電源をコレクタホロワ化して好結果を得た
ものですから、順序として、次はヘッドアンプと言う事になったのです。ヘッドアンプは
ご丁寧にも安定化電源が2段重ねられています。コレクタホロワ化すれば、効果は2乗で
効いて来るかも知れません。

 僅かな望みを糧に、正負合わせて計4つの安定化電源をコレクタホロワに改造しました。
これだけで8個のエミッタホロワを無くす事が出来ます。それでも、大きな期待感はなく
完成した電源を接続して、兎に角LPを半ば義務的に再生して見ました。

 最初、少々気になっていたワルター/コロムビア響「田園」(OS-194)を掛けて見ました。
ワルターを余り高く買わない盤鬼西条卓夫氏が推薦していた名演です。この盤は中高域が
煩く感じられ、ストバイのffが聴き辛い傾向にあります。

 それがかなり改善されて楽しめるようになっています。以前は直ぐ針を上げてしまった
のですが、ずっと聴いていたい気がします。音が安定していて、スクラッチノイズも気に
なりません。まるで高級ターンテーブルで聴いているような感じです。

 そう言えば、霞仙人さん宅でもスクラッチノイズは殆ど気になりませんでしたし、第一
円盤が回っていると言う感覚が全くありませんでした。それだけ安定して再生されていた
のです。丁度その時の感覚に似ているではありませんか。直感的にこれは行けると思った
のです。

 それから、思い付くまま、手当たり次第に色々なLPを引っ張り出して聴いて見ましたが、
最初に受けた印象は変わりません。久しぶりに、いや我が家で初めてLPから安定した音が
聴けた気がしました。録音にもよりますが、概ねLPの音を此の侭聴き続けたいと言う気に
なるから不思議です。何千枚と言うLPを持っている私にはこの上ない朗報です。

 ターンテーブルは機械的な事ですしヘッドアンプは電気的な事ですから、単純には同等
の効果が生まれるはずはないのですが、事「安定化」と言う意味ではまんざら異質なもの
ではありません。最終的に得られる音に対しては、かなり近い働きがあるのではないかと
今は思い始めています。この事は多くの方々の耳をお借りしないと証明出来ない事ですが、
もしこれが多くの方によって等価的な働きがあると認められれば、かなりお安く高度なLP
再生が可能になる事になります。

 そう言われても俄かに信じられないと思いますが、次のように考えれば説明がつかない
訳ではありません。

1.ターンテーブルが機械的に安定していると混変調等が起き難く、アンプの不安定性が
 励起されずに済み、信号が正しく増幅される。

2.アンプが安定していると、多かれ少なかれあるターンテーブルの余計な振動等が信号
  とアンプ内で相互干渉を起こす事が無く、結果的に信号が正しく増幅される。
 
 要するに、LPに刻まれた信号が正しく増幅される事が、最終的に求められているのです
から、ターンテーブルを良くしてアンプで手を抜くか、或いはターンテーブルはそこそこ
にしてアンプを安定なものにするか、どちらかの方法で目的を達成すれば良い事になると
思います。当然後者の方がお金が掛からないはずですから画期的です。

 LPの安定再生を安価に実現されたい方は、是非、WRの安定化電源方式のヘッドアンプを
お試しになって見て下さい。超高級ターンテーブルは必要ないかも知れません。  

1259川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Oct 2 14:30:00 JST 2011
安定化電源までもコレクタホロワ化されたWRプリ(WRC-α1/FBAL)の音質は?

 WRプリ自体は元々コレクタホロワだったのですが、さすがに安定化電源だけは、伝統的な
エミッタホロワで設計されていました。パワーアンプのアンプ部分、そしてその安定化電源
と順次コレクタホロワ化が進み、最後まで残っていたプリの安定化電源がコレクタホロワに
つい最近変更されたのです。

 まだ第三者の方の評価を頂いていませんし、前2回の私自身の感想だけでは信憑性が低い
とお考えの方もいらっしゃると思い、第三者ではありませんが、息子に聴いて貰った結果を
少し書かせて頂きたいと思います。

 このところパワーアンプのコレクタホロワ化で、既に何回か息子に聴いて貰っていますが、
ソースには息子が日頃気になっているものを数枚持参して貰っています。全てクラシック系
のオーケストラものですが、オーケストラは楽器数が豊富で、単純には行かない場合が多く、
やはり再生が一番難しいと申せましょう。従って、オーケストラが本当に一人前に再生でき
れば、再生装置としての必要十分条件をほぼ満足していると言えると思います。

 それらのソースは私の記憶によれば

1.シノーポリ/フィルハモニア「イタリア」「未完成」(グラモフォン)

2.アバド/シカゴ響「マラ7(夜の歌)」(グラモフォン)

3.ジョン・ウィリアムス/ロンドン響「ザ・ハリウッドサウンド」(ソニー)

4.カラヤン/ベルリンフィル「タコ10」(グラモフォン)

等です。

 圧倒的にグラモフォン録音が多いのが分かります。グラモフォン録音は一般的には再生が
難しく、日本の評論家には余り評判が良くありません。大体は、混濁したり、引き攣れたり、
硬かったり、人によって受ける印象は違うでしょうが、問題の音が多いレーベルで、良い音
で再生できない事が多いようですが、録音そのものは決して出来損ないではありません。

 上記の録音も多分、それぞれが問題を多く抱えているからこそテストCDに選ばれているの
でしょう。これまでのパワーアンプのコレクタホロワ化で、大分満足に再生できるようには
なっていましたが、まだ部分的には多少の問題点を残していたようです。

 それがプリの安定化電源のコレクタホロワ化でどうなったか、そこを聴いて貰った訳です。
私は脇で何時も聴いているのですが、脇で聴いていてもやはり今回が一番スムーズで問題点
が殆ど解消されていると感じました。

 案の定息子の評価も上々で、全てが難なく再生され録音の特徴がよく分かるようになった
と言っていました。これまでは全体に共通した癖のようなものを感じたと言うのです。悪く
言えば色が付いていたと言う事でしょう。それが綺麗に払拭されたそうです。例えば、同じ
グラモフォン録音でも、1はクラウス・ヒーマンのワンポイントに近い録音の特徴が、2は
ネーグラーのそして3はギュンター・ヘルマンスのマイクアレンジが手に取るように分かる
ようになったそうです。

 これまでの癖は、パワーアンプの補償コンデンサーにSEコンが殆ど使われていないからだ
と勝ってに思っていたそうですが、実はそうではなく、結論的に言えばプリのせいだったと
言う事になりました。この癖を「勢いがある音」と取る人も居るかも知れませんが、設計者
として今となって見れば不本意ではあります。

 私は「絹の肌合い」と言う表現で、これまでとは違って、階段的によくなったと申し上げ
ましたが、息子も似たような感触を持ったようです。やはりプリアンプはパワーアンプでは
カバー出来ない某かの効能を有しているのでしょう。通り一遍の音ではなく深く掘り下げた
音を求めるなら、やはりちゃんとしたプリが必要だと思います。

 パワーアンプは既に新デザインシャーシになりましたが、プリの方は10月中に新デザイン
を発表させて頂く予定にしています。勿論パワーアンプとバランスするデザインになります。
内容的には安定化電源がコレクタホロワ化される以外大きな変更はありませんが、SEコンが
高騰している為に、ノーマルバージョンとSEバージョンに分けるかも知れません。ノーマル
バージョンは従来よりお求め易く、SEバージョンは少々お高くなると思います。その暁には
αシリーズはディスコンにさせて頂く予定です。  

1258川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Sep 29 15:00:00 JST 2011
ついにWRプリ(WRC-α1/FBAL)の安定化電源もコレクタホロワ化しました。−その2

 手持ちのWRプリの安定化電源をコレクタホロワにしてから、1週間近くが経過しましたが
その後全く問題なく愛用しています。パワーアンプで技術的問題をクリアしていたと言う事
も幸いしているのでしょう。

 よくある事ですが、ちょっと良くなったと思っても、暫く聴いていると元の木阿弥になる
ケースがオーディオにはありますが、今回のプリの一件は決してそのような事はありません。
それどころか、何回聴いても、どんなソースを聴いても最初に受けた印象は変わりません。

 なかなか音の改善ポイントを文字で言い表すのは難しいのですが、これまでパワーアンプ
で受けた音の改善とは、少し質的に違うような気がします。勿論、音の出方が安定になった
と言う点では共通しているのですが、より音楽が楽しく聴けるのです。

 冷静に考えれば、プリの問題を残したまま幾らパワーアンプを磨いても、ある種の限界が
ある訳で、その限界が最終的に解決して一段上のランクに上がったのですから、受ける印象
が変わっても仕方ないのかも知れません。

 生の演奏会では舞台の上から客席まで一定の距離があり(噛り付きを除く)、音はその距離
を保ったまま私たちの耳に達します。どんな楽器にもその事は適用されますので、如何なる
曲想でも音が飛び出して来る事はありません。

 設計の悪いホールでは定在波が立ったり、壁に強く反射したりして、ある楽器の音だけが
誇張されて聴こえて来る事がありますが、私が聴いているサントリーホールの中央前寄りの
席では殆どそのような事は起こりません。

 このような生の音に耳が慣れると或いは一度でもそのような味を知ってしまうと、当然の
事ながら自分の再生装置でも耳が勝手にそのような音を求めてしまいます。人間は味覚でも
一度美味しい物を食べてしまうとその味が基準になって、美味しい不味いを判断するように
なってしまうと思います。

 確かに、パワーアンプを改良していた時も「音がより安定になった」とは思っていました
が、何処かに限界を感じていたのでしょう。無意識の不満が有ったのだと思います。それが
プリの改善で完全に払拭され、全ての楽器が一定の距離感をもって聴こえるようになったの
です。音の表情が絹のような滑らかな印象です。

 個々の楽器の音も勿論良くなっているのでしょうが、今回は全体から受ける音のレベルが
ワンランク上がったと言う感じです。一定の距離感を保っていると言う事は、どんな楽器の
音も崩れていないと言う証です。アンプの過渡特性が悪くある楽器の音が何処かで崩れると、
最早この絹の感触は得られなくなります。それが、普通のオーディオ装置の音なのです。

 我々はどこかで、オーディオは所詮機械もの「ちょっと位部分的におかしくても仕方ない
のでは」と譲歩してしまっているのではないでしょうか。私はその譲歩が出来なくて、最後
まで徹底して、アンプに完璧な動作を強く希求してしまったのだと思います。

 マーラーの交響曲第3番の第6楽章を等身大の音量で聴くと、ffでも鳴っている全ての
楽器が聴こえてくるようで、恐ろしくさえなります。今まで影になって聴こえなかった楽器
もちゃんと鳴っているのが分かります。もしかしたらマルチ録音のご利益で生よりも色々な
楽器の音が分離して聴こえてる可能性があります。それだけマーラーが表現したかった音楽
に近付いていると言えるかも知れません。だから恐ろしくなるのでしょう。

 改めてプリの存在も大切だと思いました。今夏コレクタホロワ型WRパワーアンプをお買い
上げ頂いた方には、ちょっと無理をしてもWRプリのご購入をお勧めします。アップグレード
された方も、どうせならプリもアップグレードして下さい。コレクタホロワ化の本当の意味
がお分かり頂けると思います。道半ばでは勿体無いと思います。

 そうしたくても「WRアンプは高値の花だ」とお思いの方は、WRP-Δ6/miniとプリとしての
WRP-α9/A (コレクタホロワ版)を組み合わせても、十分なパフォーマンスが得られると思い
ます。その先鞭をつけたsnrhさんのコメントを是非参考にして下さい。

 snrhさんのコメントや、息子が「WRP-α9/A をプリに使ったら凄く良かった!」と言って
いた事は、今から思えば当然の帰結だったのかも知れません。

 私の長いオーディオの旅は「エミッタホロワを使わないアンプ!」に到達して、終わりを
告げようとしています。その本質に一番近かった物は、結局真空管アンプだったのかも知れ
ません。(カソードホロワを一部に用いたものを除く)今でも一定の真空管アンプファンが
居ると言う事実は、私の結論と全く無縁ではないと思います。

 日本音響学会に原著論文「エミッタホロワの安定性に関する理論的検討」を発表したのが
1986の3月でした。それから四半世紀を経てやっと初期の目的を達成出来たのですが、随分
回り道をしたものだと思います。そしてその分だけWRアンプユーザーの方にご迷惑をお掛け
してしまいました。私の力不足であり、此処に改めてお詫び申し上げます。

 乗り掛かった船、どうせならプリのアップグレードまでお付き合いして頂けませんか?  

1257川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Sep 24 17:01:00 JST 2011
ついにWRプリ(WRC-α1/FBAL)の安定化電源もコレクタホロワ化しました。

 パワーアンプのコレクタホロワ化に納得できるまでは、絶対プリの方は弄らないと決めて
いましたが、やっとパワーアンプの方が上手く行き、もうパワーアンプについて当面はやる
事がなくなりましたので、どの位影響があるかは別にして、プリの安定化電源の方も改造に
踏み切る事にしました。

 最近の音を聴く限りこれでも十分かなとは思ったのですが、システムの中でプリの電源に
のみエミッタホロワが残っているのは、やはり精神衛生上よくありませんし、思想に一貫性
がありません。音質改善の為にと言うよりは、取り敢えず形式的な意味で行う事にしました。

 プリの安定化電源基板は部品密度が高く、改造に多少手こずりましたが特に問題なく終了
しました。早速、ちょっと気になっていたCD-R(最新WR録音)を聴いて見ました。それは9月
初めに府中ウィーンホールで再録音した「ショパンのP協1番(室内楽版)」です。

 録音現場でも気になっていたのですが、生の音の時からピアノの音がある音階で耳に来る
違和感があり、案の定再生音にもそれが多少残っていたのです。この不安定な音がどうなる
かが、興味津々でした。ピアノの音は、生の音でも、調律の問題とホールの定在波によって
耳に異常に響く事があるのです。

 さて、プリの改造が終わり先ずはそのCD-Rの気になる所を聴いて見ました。やはり効果が
有りました。耳に来る違和感がかなり改善されていました。オーディオは正しいアプローチ
であれば、やればやるだけ状況は改善されます。

 オーディオの音の改善は、双曲線関数のように漸近線に限りなく近付くような感じになる
のです。最初の内は急激に、工夫を重ねる毎にその変化は徐々に緩やかになります。プリの
安定化電源のコレクタホロワ化によって、僅かかも知れませんが、さらに一段と漸近したと
言えると思います。オーディオは此処で終わりと言う事がないようです。

 次の日、普段聴くCDを片っ端から聴いて見ました。本質的に当を得た改良を行えば、どの
CDもそれなりに良くなるはずです。確かに、どれを聴いても「いい感じ」に聴こえ、自然に
頬が緩みます。よく経験する事ですが、同じソース源なのにいい音に聴こえる曲と聴き辛く
聴こえるものがあります。それが、プリのコレクタホロワ化によって差が縮まった気がする
のです。例えば、もやーっとした録音は細部が聴こえて情報量が増えますし、きつい録音は
柔らかさが出てずっと聴き易くなります。不思議と言えば不思議ですが、これが正しく補正
された場合の結果なのです。

 録音側のちょっとした問題が、再生側のアンプが不安定だと、誇張されて聴こえてしまう
のでしょう。逆に、再生側のアンプが安定であれば、録音側のミスは目立たなくなるのです。
この事がよく分かった気がします。

 それにしても今までよりCDを聴く楽しさが倍増した気がしました。本当にどれを聴いても
楽しく音楽が聴けるのです。パワーアンプとの相乗効果でしょう。正直に言って、此処まで
効果があるとは思っても見ませんでした。最初はどちらかと言えば形式を追求したのですが、
実際は効果絶大でした。たかがプリですが、されどプリです。プリを侮ってはダメだと思い
ました。いずれはヘッドアンプ等の電源もコレクタホロワ化する事になるでしょう。

 WRC-α1 系のWRプリをお持ちの方で、この一件が気になる方には、アップグレードさせて
頂きます。これまでのオーディオの常識では、安定化電源にエミッタホロワを使う事は当然
の事でしたので申し訳ありませんが、パワーアンプ同様に、有償で受けさせて頂きます。

 まだ定番化していませんのでご希望の方はショッピングサイトの「カスタムメイド」から
「プリのアップグレード」としてお申し込みになって下さい。金額は\38,850 とさせて頂き
ます。どうぞよろしくお願い致します。安定化電源基板の点検、必要なら補修を兼ねて行い、
総合的な特性チェックも行いますので、今後の安心の為にも宜しいのではないかと思います。
特に、既にパワーアンプをコレクタホロワ化されたWRユーザーの方にお勧めです。

 尚、新規にWRプリをご注文になる場合は、特に指定がない限り「コレクタホロワ」で製作
させて頂きます。  

1256川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Sep 20 14:30:00 JST 2011
日比さん、ご投稿ありがとうござます。

 今夏、雨の降りしきる夜、分かり難いところをおいで頂いて、ありがとうございました。
試聴する事がメインではなかったので、ちょっと中途半端でしたし、まだブリッジ接続用
アンプも完成していませんでしたので、今思えば最高の音をお聴かせ出来なくて少々心残
りです。もう道もお分かり頂けたと思いますので、是非叉いらっしゃって下さい。お待ち
致しております。

 さて、今回は生演奏会の話題ですが、オーディオの原点は「生演奏会の我が家での再現」
だったと思います。初めは皆オーディオを志す者はそう言う高い志をもってスタートした
はずだったと思いますが、幾らやってもやっても目的が達成できず、結局諦めと共に少し
ずつ目的が変節して行ったのではないかと思います。

 何時しか生演奏会や生の音とは無関係に、聴いて心地よい音を求めてオーディオは別の
道を走り出したように思います。そして今やそれがオーディオの本道のようになっていて
生演奏会の音とは無関係にオーディオは発展?しています。

 オーディオの趣味を持ちながら、生演奏会(ライブ)に行って生の音を聴いた事がない
人が増えていると思います。そうなると、オーディオの物差しは一体どうなるのでしょう。
物差しのない所では、科学的な判断はできず、着実な進歩がありません。全てが感覚勝負
です。

 確かにオーディオは耳で聴く訳ですから、感覚が入り込むのは当たり前ですが、果して
好き好き、趣味の問題だと言って、全てを割り切って良いものでしょうか? 少なくても
ソース源(ハード面)、プレーヤー、アンプそしてスピーカーまでは、全て科学で割り切れ
る世界です。頑張れば音の世界を含めて、科学的に良し悪しを云々出来るはずです。

 それを敢えて避けて好き好きの問題で割り切るしかないのは、音に対する物差しが無い
からでしょう。生演奏会の音はホールや演奏家によって多少の幅はありますが、繰り返し
体験すれば、十分に物差しとなる資格があると思います。

 私はオーディオの原点をあくまでも守り、生演奏会の音を基準にして、それになるべく
近付けるように研究を積み重ねて来ました。その為に長きに亘ってコンピュータで計算し
帰還アンプを全く別の視点から評価する方法を見出して、2つの特許を取得しました。

 その特許をアンプの回路に生かし「WRアンプ」として世に問うて、既に10年以上が経過
しています。その間、生演奏会を聴きに行く頻度を増やし、常に我が家での再生音と現場
の音を比較して、自分なりに評価を繰り返して来ました。

 その結果、最近になって「やはりエミッタホロワを見直すべきだ」と思うようになった
のです。もし、私が生演奏会に足繁く通わなかったら、見直しは行われなかったかも知れ
ません。その決断が出来たのは生演奏会と言う確かな物差しがあったからです。

 どうか皆さんも、クラシック、ジャズを問わず生演奏会のチャンスがあったら是非足を
運んで下さい。そして現場で聴いた音のイメージを大切にして下さい。装置から出る音が
そのイメージに近いかどうか、評価して下さい。生の音を知らないと自分の装置の不自然
さに気が付かないのです。

 1回や2回では無理かも知れませんが、それを繰り返している内に、何時か自分の装置
の音の良し悪しが見えて来ると思います。それが科学的アプローチです。そうすれば着実
に装置の音は良くなって行くと思います。少なくても泥沼に陥る事はないでしょう。必要
なら、最新のWRのコレクタホロワ型パワーアンプを利用して下さい。WRのコレクタホロワ
型パワーアンプは完成度が高いので、アンプに関する悩みは一切無くなるはずです。

 日比さんが、本当はジャズがお好きなのにクラシックの音楽会に参加された事は多少の
お義理が有ったにせよ、尊い行為だと思います。どうか皆さんも日比さんに倣って可能な
限り、生演奏会に参加して下さい。兎に角、生の楽器の音を聴いて下さい。

 何でもそうですが、原点に立ち戻る事が大切なのです。  

1255日比さん(給与所得者) Thu Sep 15 23:15:36 JST 2011
とりとめのない話題ですが

 昨晩、友人の作曲家、笠松泰洋氏のモノオペラ「人魚姫」を東京文化会館の小ホール
で見てきました。クラシック(かな?やや現代音楽?)の話題は前にこの掲示板に書い
た東京フィル以来ですが、興味深く鑑賞しました。

 昨年は笠松氏の同じ東京文化会館での朗読と音楽の「四谷怪談」を鑑賞しましたが、
今回は弦楽4重奏+ハープにソプラノとバリトン(せりふも)という構成です。人魚姫
が王子の愛を得られずに王子を殺してしまうという筋立ての、ちょっと面白い構成劇で、
とりわけソプラノの中嶋彰子さんの歌唱と演技力のすばらしさには目と耳を奪われま
した。僕は詳しくありませんが、この人オーストラリアとかのクラシック畑でかなり活
躍してきたベテランのよう。

 同じ演目で、9/17(土)北本市文化センター、9/24(土)兵庫県芸術文化セ
ンターと公演が続くのであるいは鑑賞されては如何でしょうか。笠松泰洋氏のブログは
以下を参照。
http://blogs.yahoo.co.jp/synlogue

 で、昨夜の記憶をもとに僕の持っているレコードで聴いてみたくなったのがシェーン
ベルクの「浄夜」。25歳の作ということが影響してか、現代音楽のようでいて、和声
がさほど違和感のないこの曲は、なかなか良いと思いました。弦もつややかで美しいセ
ラフィムレーベルのレオポルド・ストコフスキー晩年の指揮。アナログレコードです。
 
 これなども、物語がある音楽のようですが、必ずしもそれを知らなくても充分楽しめ
る楽曲と思います。

 僕のアンプはαZEROですからちょっとこの掲示板の話題とはずれていますが、以
前、川西先生のご自宅に伺ってデルタの音を聴いた印象では、音が本当に屈託なく出て
くるという感じ。バージョンアップを、とは考えていますが、そこは急がないのが得策
と心得ています。

 しかし、モロに現代音楽というのは敬遠しつつも、不協和音満載のフリージャズと分
類されている、ピアニスト藤井郷子の作品などは割と素直に受け取れるというのは、自
分ながら不思議といえば不思議。「分かる」「分からない」の境界はどこにあるんでし
ょうか。これは一人音楽のみならず、芸術一般に共通するテーマだとは思っていますが。

 ちょっととりとめのない話題ですが、近況報告まで。

 ついでに今週末、9/17(土)入間市の文化創造アトリエ「アミーゴ」で、「ジャ
ズ収穫祭」というフリードリンク・フリーフード付きのライブが行われます。詳しくは
以下のHPをご覧下さい。このライブに伴って、私の書作品の展覧会も行うという妙な
イベントです。http://www.sakasou.co.jp/club/kokuti12.html
  

1254川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Sep 14 20:30:00 JST 2011
コレクタホロワ型パワーアンプに対する皆様のご感想

 4月から新シャーシ記念限定特価及びアップグレードの為の改造をお受けしてから、10人程の
方が申し込まれ、既に完成したアンプはそれぞれの方に引き渡されています。お申し込み頂いた
方には大変感謝致しております。改めて、厚く御礼申し上げます。

 お申し込み頂いただけで十分なのは百も承知しておりますが、欲を言えばアンプを聴いた感想
をお寄せ頂ければ、直一層有り難く思います。ユーザーの方のご意見はコレクタホロワ型アンプ
を検討されている方には大変参考になると思います。多分、お申し込み頂いた方々もWR掲示板を
参照されて、ご決断になったのではないでしょうか。

 しかし現在までにWR掲示板にご投稿下さった方はお三方で、少し寂しい気がします。私の意見
よりユーザーの方々のご感想の方が百倍も参考になるのではないでしょうか。多分多くの方々が
皆さんのご意見を首を長くしてお持ちになっていらっしゃると思います。

 そうは言っても、これは強制でも何でもありませんので、皆様の自発的なご投稿をお待ちする
しかありません。色々な意味で投稿は容易くはありません。ご投稿までは行かなくてもメールで
簡単な感想を送って頂く方も中には居られます。

 少しでもユーザーの方の生の声をお届けしたいので、直近で頂いたメール文から、その主旨を
抜粋して掲載させて頂きたいと思います。この方は、コレクタホロワ型ハイパワーアンプをカス
タムでご注文なさっています。

* * * * *

> 最初の感想は、非常にやさしく聴きやすい
> 音と思いました。
 ・
 中略
 ・
> 肩の力を抜いた、ストレスを感じない音の
> 出方で、自然な音です。
> 2〜3日と音を出して、なじんできたようで
> 自然な音に加えて、さらに骨格のしっかりした、
> バランスのとれた音になりました。その上、
> ストレスを感じない音で自然に音が耳に
> 入って来るようです。非常に満足してます。

* * * * *

 これをお読み頂いてお分かり頂けると思いますが、何はともあれ、コレクタホロワ型アンプは
聴きやすい、ストレスを感じない、自然な音がすると言う事です。この事はコレクタホロワ系の
パワーアンプをお買いになった方、ほぼ全員の共通したご意見だと言っても過言ではありません。

 真空管が製造中止になり、世の中のアンプがトランジスタに切り替わった頃の、トランジスタ
アンプに対する大方のご意見は「音がかたい」と言うものでした。この事は、その後ずっと尾を
引いて現在に至っていて、未だに解消されているとは言い難い状況です。

 だからそれを嫌って、製造中止になったはずの真空管が何時の間にか蘇り、技術雑誌の記事を
埋め尽くし、多くのガレージメーカーが真空管アンプを売り出す事になっているのです。確かに
真空管アンプの音は柔らかいかも知れませんが、ノン帰還か軽い帰還の為に出力インピーダンス
が下がり切らず、スピーカーを制御して鳴らし切るところまでは行っていないのが実情です。

 音が柔らかくて且つスピーカーをコントロール出来る、この2つの相反するような事象を両立
させるアンプは、これまで世の中に存在しなかったと言っても過言ではないでしょう。少なくて
一般消費者が買う事は出来なかったと思います。

 スピーカーを垂れ流し状態で使うと、音の切れ、音の芯、締り、凄み等がなく、ぼやけた音に
なるはずです。上記の感想文中に「骨格のしっかりした」と言う表現がありますが、これは正に
スピーカーが上手くコントロールされている証だと思います。

 もう少し聴き込んで頂ければ、個人の好みに応じて

◎低音(コントラバスなど)が素直で、綺麗に響く。

◎ピアノの音が耳の鼓膜を威圧する事なく綺麗に転がる。

◎バイオリンが引き攣れたり、詰まったりせず、綺麗に伸び切る。

◎声(特にソプラノ、テノール、バリトン)のffが人間らしく、煩く感じない。

◎片耳を圧迫するような違和感がなく、ホルンが距離感をもって定位する。

 等々、書き出したら枚挙に暇がありませんが、これらの音の改善点は、アンプが正しく動作し、
ソース源の原信号が忠実に増幅されてスピーカーに送られている証拠だと考えられます。

 コレクタホロワ型アンプが気になっている方、ご心配に及びません。お買いになった方、ほぼ
全員が満足なさっています。特に基本的に真空管アンプの方が好きだとお考えの方、その線上に
在ってさらに進化したアンプだと言っても過言ではない、WRのコレクタホロワ型パワーアンプを
是非お試しになって見て下さい。

 言って見れば、WRのコレクタホロワ型アンプは理想的に出来た真空管アンプの音なのかも知れ
ません。貴方がずっと夢に見て来た理想のアンプに遭遇するはずです。  

1253川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Sep 8 23:30:00 JST 2011
コレクタホロワ型パワーアンプのブリッジ接続について

 WRP-αZEROの頃から、ブリッジ接続に何回か挑戦してきましたが、確かにパワーは増大する
ものの、世間で言う程音質が改善するとは思いませんでした。と言うより寧ろ音質は単体より
落ちるのではかと思っていました。即ち、細かな情報が欠落し、音に精彩が無くなる気がして
いたのです。

 平野紘一氏によれば、ブリッジ接続は交流信号がアースに流れないので音質には有利になる
はずである、と言う事でしたが、私には良くなる兆候を感じませんでした。しかし、パワーが
稼げる事は魅力に思っていました。

 ステレオアンプで300W/8Ωのアンプを作るのは容易ではありませんが、ブリッジ接続ならば
しっかりした100W/8Ωアンプを作れば、モノラルではありますが取り敢えず300W/8Ωのアンプ
に早変わりしてくれるので、2台同じものを作る必要はありますが、大出力ハイパワーアンプ
を気楽に作れるメリットがあります。

 此処で、スピーカーから見たノーマル接続とブリッジ接続の違いについて簡単にご説明して
置きます。ノーマル接続は対アースで交流信号が変化しますが、ブリッジ接続はアースを中点
にして対称に交流信号が変化します。

 スピーカーを長いゴム紐に例えると、ノーマル接続の場合は片方の端(マイナス端子)を固定
し、もう片方を持って振動させるような感じになります。一方、ブリッジ接続は両端を持って
対称に振動させるイメージになります。従って、スピーカーの中点は原則的には動かない事に
なります。

 同じアンプを使用するとすれば、ブリッジ接続は2つのアンプで逆向きに振動させる訳です
から2倍の振幅が可能になり、理論的にはその2乗で4倍のパワーを出す事が出来ます。実際
は3倍程度に落ち着くので、100Wのステレオアンプは300Wのモノラルアンプに化ける事になり
ます。

 しかし、パワーが増大する陰には負荷抵抗の低下と言う問題が発生します。即ち、各アンプ
から見ますと、スピーカーの中点から半分がそれぞれの負荷になりますので、その為、半分の
負荷抵抗になってしまいます。従って、アンプに取っては厳しい動作が強いられ、当然ひずみ
率は悪化します。

 もう一点大切な事があります。スピーカーの中点が完全に動かないようにするには、2つの
アンプは逆相に動く以外は全く同じに動作する必要があります。不安定性が大きいアンプでは、
予想外の動作が起きるので、その悪影響は倍増されてしまい、完全対称性を満足する事が出来
なくなります。この事も音質をぼやけさせる一因になります。

 これらの問題点があるので、ブリッジ接続が一概に音が良くなるとは言えないのです。音の
繊細感が減る等の所以なのです。これらの事が有る程度克服できるアンプを使わないと、音質
の良いブリッジ接続は実現出来ないはずです。

 では、コレクタホロワアンプはどうかと言いますと、当初の予想より低負荷に強いと言う事
を申し上げた事があります。120Wアンプを作った時に4Ω負荷の最大パワーを測定しましたが、
意外にも従来型アンプよりパワーが大目に測定されたのです。

 アンプの安定性についてはもう言うに及びません。エミッタホロワを使った従来型より断然
有利ですし、明らかな音質の向上も認められています。これまでに多くの方がコレクタホロワ
型アンプの良さを指摘されています。

 即ち最新のコレクタホロワ型アンプならば、ブリッジ接続も成功するのではないかと思った
のです。そこで急遽、100Wのコレクタホロワアンプ2台を製作したのです。まだ出来上がった
ばかりでしたが、先日の日フィル定期で聴いた「マラ3」を我が家で再現したいと思い、前縞
で書いたように、迷い無くこのブリッジ接続を選んで聴いたのでした。

 結果が非常に良かった事は既にお話しした通りです。一回限りの試聴ではいけないと思って
もう一度「マラ3」の第6楽章を何回か聴いて見ましたが、何回聴いても弦の力強さ、金管の
輝き、木管の繊細感、ティンパニーの凄み、コントラバスの安定感、何を取っても決して生に
負けない感覚を味わう事が出来たのです。特に最後のコーダの部分は圧巻でした。聴いた後に
ちょっとした幸福感に浸れます。オーディオ研究を頑張って来て良かった・・・と思うのです。

  「マラ3」だけではありません。日常的によく聴くCD、例えば「パガニーニ・アンサンブル」、
「ベルディ:序曲、前奏曲集」、「ベルシャザールの饗宴」、各種WR録音等々、どれも確かに
底上げされています。

 やっと自身が納得できるブリッジ接続に出会えた気がします。このアンプを全ての皆さんに
無理にお勧めするつもりはありませんが、ブリッジ接続に耐えるアンプとしてのWRのコレクタ
ホロワ型パワーアンプを是非皆さんに聴いて頂きたいと思っています。  

1252川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Sep 3 17:40:00 JST 2011
日フィル9月定期を聴く

 いよいよ秋の音楽シーズンが始まった。とは言え、台風の影響で蒸し暑くとても「秋」とは
思えない気候であった。今月の指揮はピエタリ・インキネンで地震と原発の影響で前回は代替
指揮者だったので、久しぶりの登場であった。指揮者のせいか曲のせいか、1階の左右の一角
の席は殆ど埋まっていた。アルト独唱はアンネリー・ペーボ、女声合唱は栗友会合唱団、少年
(児童)合唱は杉並児童合唱団であった。

 出しものはインキネンが行っているマーラー交響曲全曲演奏の一環としての長大な「マラ3」
であった。何しろ100 分程度掛かるのであるから、気楽に聴ける曲ではない。私はメーター/
ロスフィル(LP:K20C 8689/90 CD:443 030-2)を相当前から持っているのだが、何時も第1楽章
の途中で針を上げていた。

 出だしがデモ向きでよくテストには使うのであるが、真面目に音楽を楽しんだ事がなかった
のである。オーディオ屋の悪い癖である。生の演奏会で改めて全体像を知ることが出来たので
これからはもう少しマーラーの音楽を真剣に楽しみたいと思う。

 舞台に楽団員が登場して気が付いたことは、第1ティンパニーに外人奏者が座っていた事と
逆にトランペットのトップが外人奏者ではなく日本人であった事である。又編成が大きいので
舞台上に所狭しと団員が配置されているのだが、左右の後方に行くほど雛壇が高くなって行き
バイオリンとビオラの一番後ろの人はかなり高い位置に座っていた。

 聴き慣れた第1楽章が始まった。耳慣れたホルン群の呼号が響き渡る。ロスフィルで何度も
聴いた感じと大きな違和感がない。それは音の質と演奏の質と両方について言える。まもなく
トロンボーンのソロが現れるがこれも然りである。日フィルの金管セクションは相当絞られた
のであろう。金管と同じ位に大切なティンパニーに、わざわざインキネンの知り合いを連れて
来たのだろうか。音的には特にいい音だとは思えなかった。

 もっともこの日の湿度から考えると、楽器の音が湿り勝ちだったのは仕方ないところだろう。
空調が効いて徐々に解消した感じを受けた。最終楽章のティンパニーはかなり改善されていた
と思う。この楽章も含めてこの曲にはバイオリンソロがあちこちで現れる。今日はコンサート
ミストレスであったが、「しっとり」と言うよりちょっと刺激的に聴こえた。同様に弦合奏も
滑らかと言うよりトゲが少しあるように聴こえていた。

 これは湿気のためか、コンサートミストレスのせいか、等と勝ってに思っていたのであるが、
今日、ロスフィルを聴き直して見て納得した。同様の、酷似した音色だったのである。普通は
大編成の曲を聴いてきた日は、大体がっかりするのが通り相場であるが、どうしてロスフィル
の上手さもあるのだろう。そして最新のハイパワーコレクタホロワ型アンプ(ブリッジ接続で
各チャンネル300W)のご利益もあるのだろう。がっかりする要素は殆どなかったのである。

 我が家のB&W805MATRIXでマーラーの交響曲が満喫できるようになるとは、正直期待していな
かったが、「ここまで来たか」と言う感じである。昔はいい音で鳴っていると思っても、立ち
上がったりすると、途端にスピーカーから出る音に違和感があったりするのであるが、何処の
場所で聴いても楽器の本来の音がそれらしく聴こえて来る。生の楽器はそもそもがそうなので
ある。これはパワーアンプの動作が安定になった為、クリップまで本当にリニアに音が延びる
ようになったからだろう。

 約30分の長い第1楽章が終わると私の殆ど知らない世界に突入した。第2楽章はレントラー
である。オーストリアの優雅な舞曲風に音楽が進行する。マーラーもちょっと第1楽章でやり
過ぎたと反省したのかも知れない。快感とストレスの入り交じった第1楽章の後は、いま風に
言えば癒しの音楽である。確かに、ちょっと眠くなった。

 第3楽章は歌曲集「少年の不思議な角笛」からの何曲かを、器楽曲に書き直したものである。
そのせいか何処かで聴いたような曲想が現れて、この楽章も聴きやすい。特筆すべきは舞台裏
で吹かれるポストホルンである。開始6分頃から、何だかエコーの聴いたラッパが鳴っている
と思ったのであるが、暫くしてこれは舞台裏だと直感した。

 何処だろう?と思って見上げると、舞台の左上に存在する2階席の後方にある出入り口の扉
が開放されていた。普通は閉められているはずであるから、扉から少し下がった所で、吹いて
いたのだろう。これが何とも言えない効果を上げて「角笛」らしい雰囲気を感じさせてくれた。
この達者な奏者が、何時もトランペットのトップを吹いている客演主席の外人奏者だったので
ある。最後によく出来た奏者を指揮者がスタンダップさせる時に、ポストホルンを携えて登場
して露見?したのである。

 第4楽章は、何故かニーチェのツァラトゥストラに付曲したアルト独唱の為の楽曲になって
いる。楽章が始まる直前にアンネリー・ペーボが舞台に登場した。歌い出した瞬間に「マラ2」
の第4楽章を想い出した。雰囲気が酷似している。ペーポの声質は深く、太く、大らかに会場
に響き渡る。日本人とは体格が違うと思ったのである。ゆとりのある声が聴衆を魅了した。

 第5楽章で初めて合唱が加わった。此処でも「少年の不思議な角笛」からの「3人の天使が
やさしいうたを歌う」が使われて、何故か親しみ易い気がしたのである。マーラーは4番でも
同様な歌曲を多用しているので、知らず知らずのうちに頭の中に入っていたのだろう。しかし
音楽的に充実しているとは思えない。その辺のところをマーラーも気が付いていて、5番から
は取り敢えず歌曲と一線を画したのではないだろうか。

 第6楽章は前の楽章から殆ど切れ目無く始まる。当時としては珍しいアダージョの最終楽章
である。これ又長大で30分近く掛かる息の長い音楽である。マーラーには9番のような優れた
アダージョ楽章があるが、この3番では其処までの深みは感じられない。そうは言っても流石
マーラーである。聴くうちにどんどん惹き込まれる。

 そしてコーダに向けて徐々に盛り上がって行く。この最終部分をロスフィルで聴いて見たが
負けず劣らずの迫力である。この楽章には、深く沈む印象的なコントラバスのピッチカートが
現れるが、この小型スピーカーでも実演の感触と同等以上のプレゼンスが得られた。以前とは
明らかにアンプの質が向上している。

 それにしてもこの録音は超優秀である。録音エンジニアはJames LockとSimon Eadon である
が、ドギツイ録音の多いJames Rockとしては最高の出来栄えではないだろうか。デッカ録音で
あるからマルチマイクの不自然さは有るが、だからこそ、オーディオ的には面白く聴ける。

 指揮者の手が下りた瞬間に拍手と共にブラボーが飛び交った。日フィルも頑張ったと言って
もよいだろう。インキネンの統率力があったからだとは思うが、日本のオケも此処まで頑張れ
るようになったのだ。生は生の感動があるが、音だけの事なら、優秀録音は必須にしても我家
に居ながらにして、小型SPでも生音に負けない音が楽しめるようになった。これが長い間孤軍
奮闘して持続して来たオーディオ研究の成果である。


* * * * *

 宜しければ皆さんもコレクタホロワ型パワーアンプを試して見ませんか。そして、出来れば
バッファ効果の高いWRプリアンプを組み合わせて、より完璧なものにして頂けたらと思います。  

1251川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Sep 1 18:00:00 JST 2011
磯村さん、ご投稿ありがとうございます。

 磯村さんは、新デザインシャーシ記念特別限定セールに、安定化電源付きでご応募頂いた最初の
方でした。当初、全く想定していませんでしたので「成る程、そう言う手もあるのか」と感心した
事を思い出します。結果的には、非安定化電源方式よりずっと多くのご注文を頂いたのでした。

 私がこれまでパワーアンプの電源は安定化電源であるべきである、と言う持論をずっと展開して
いたと言え、価格が10万円も違うのでまさかこのような結果になるとは予想もしていませんでした。
それだけ、WRアンプ=安定化電源付きと言うイメージが定着しているのかも知れません。有り難い
事だと思います。

 さて大変気に入ってご使用頂いているようで、開発・設計者としては至極光栄であり、嬉しくも
あります。我々は、ビジネスを本来の目的としてアンプを頒布させて頂いている訳ではありません
ので、一人でも多くの方がいい音で音楽を楽しんで頂けている事が分かりますと、生き甲斐になり、
励みにもなります。

 そしてご本人の口から直接ご感想が語られる事に意義があると思っています。掲示板に書く事は
慣れないと勇気が要り大変な事だとは思いますが、アンプを手にして本当に良いと思われた時には
是非、ご投稿をお願いしたいと思います。

 何処の馬の骨か分からないアンプを買う時は誰でも不安なお気持ちになるでしょう。そんな時に
WR掲示板に先人の感想が載っていれば、非常に参考になると思います。ご投稿頂ければ又その文章
を読んだ方が後に続く事になり、極端な場合はオーディオの泥沼から抜け出て救われる事に繋がる
かも知れません。助け合い運動とはちょっと大げさですが、WR掲示板にはそんな側面があります。

 WRアンプは、伸るか反るかの際どい魅力的な音を楽しむ為のアンプではありません。そのような
一過性の楽しみではなくて、もっと一般的で、大地に足の着いた普遍性のある音を追求しています。
ソース源に忠実に応答するアンプと言っても良いかと思います。

 案外、世の中には忠実に応答しないアンプが数多く存在します。磯村さんが「持ってたアンプが
スピーカーをならせきっていない」と仰っている事でも分かります。鳴らし切っていなくても偶々
いい音に感じる場合がありますが、ソースが変わればがっかりする事も少なくありません。

 それが一般のオーディオだと思います。WRアンプはソースさえしっかりしていれば、その等身大
の電気信号をスピーカーに送る事ができます。これも私の持論ですが、スピーカーに致命的な欠陥
がある事は少なく、ちゃっとした信号さえ入力すれば、それなりの音で鳴るはずです。

 「音が悪い」と感じる場合は、スピーカーを疑う前にアンプを疑うべきです。スピーカーは受動
型機器ですから悪くても知れていますが、アンプはエネルギーが無限に供給される能動型機器です
から、悪さが始まったら収拾がつかないのです。

 磯村さんが「ボリュームを上げても、スムースに聴くことができ」と仰っているのは、アンプが
正しく動作している証なのです。そのパワーアンプも出来れば良質のプリアンプを使って頂ければ、
そのバッファ効果により、よりスムーズな音になると思います。

 ふなさんが強く仰っているように、WRプリアンプは優れた効果を発揮します。出来ればWRパワー
アンプは、WRプリアンプと組み合わせてお使い頂ければ、その能力を最大限に発揮するはずですし、
さらに素晴らしい音で音楽をお楽しみ頂けると思います。



* * * お陰さまで個人としては多額の寄付をする事ができます! * * *

 東北・関東大震災復興の為にWRアンプの売り上げの5%を寄付させて頂く予定ですが、売り上げに
ご協力頂いた方々に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。半年経過しましたので、9月からは
売り上げの2.5%を寄付させて頂く事に致しました。

 これからも、どうぞ皆様のご協力をお願い致します。  

1250磯村さん(会社員) Sun Aug 28 13:28:33 JST 2011
非常に気に入って使用させていただいています。ありがとうございました。

1199新デザインシャーシ記念で購入しました。
届いてしばらくたちますが、掲示板に書かれているように
聴くことができていると思います。

持ってたアンプがスピーカーをならせきっていないことと
若干の違和感があったことで、今回購入しました(安定化電源にカスタム)。

ボリュームを上げても、スムースに聴くことができ、
非常に自然にリスニングできると感じています。

表現が難しいですが、製品大変気に入って使っています。
感想、遅れました。また、購入する機会があると思いますので
そのときはよろしくお願いします。
(掲示板の話の前後が踏まえてなく申し訳ありません。) 

1249川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Aug 25 17:05:00 JST 2011
WR式コレクタホロワ型パワーアンプも微妙に成長しています。

 最初に皆様の前に当アンプが姿を現したのは、確か子安市民センターで行われた試聴会の時で
あったと思います。ですからかれこれ1年になりますが、その間コレクタホロワの技術は確実に
進歩を遂げて来ました。

 そして現時点でほぼ問題点を吸収できたと思っています。言い訳になってしまいますが、技術
は最初から100%の出来映えに達する事は少なく、部分的改良を経て成熟して行くのだと思います。
勇気を出して早めにWRのコレクタホロワ系パワーアンプをお買い上げ頂いた方々、或いはアップ
グレードのお申し込みを頂いた方々の中には、致命的ではないにしても多少の問題を含んだ物が
無いとは言い切れません。

 もし、私のコレクタホロワ型アンプへの評価に大きな疑問をお感じに成られている方は、一度
気楽にご相談になって下さい。お話からその原因が、使い方、使用環境、組み合わせ機器などの
原因とは考え難いと私が判断した場合は、無料で診断させて頂き、必要と思われる手当をさせて
頂きます。

 最近、最新のコレクタホロワ型ハイパワーアンプ(100W以上)を何台か製作、或いは改修して
見て感じたことですが、SEコン不使用でも肌のきめ細かな音、言って見ればアナログっぽい音に
なった気がします。そんな物が実際に存在するか別にして、息子は非常に良く出来た管球アンプ
のような音だと言っていました。殆どの管球アンプはプレートホロワですから、当たらずと言え
ども遠からずです。

 この音がCDの音?と言う気がする時があります。一時はCD-DA 方式に限界があると思った事も
ありましたが、パワーアンプの調子が良くなると「CDでも十分ではないか」と思えて来ますから
不思議です。昔から同じLPやCDの中の曲でも、いい音のする曲とそうでない曲があると言う経験
をして来ました。皆さんもそのような経験がお有りでしょう。

 これには録音側の問題も大きく絡んで来ますが、再生側にも責任がある場合があります。より
アンプの弱点を突いてくる成分を多く含む曲は再生が難しくなります。この事は曲の作り方にも
大きく影響しています。

 一般論ですが、リムスキーコルサコフとブラームスの曲を比べれば、ブラームスの方が再生が
難しいと思う方が多いと思います。それは多分、不協和音の問題と音階の問題ではないかと思い
ます。金管の咆哮と同時に大太鼓を始めとする打楽器が打ち鳴らされれば、耳に心地よく聴こえ
ますが、バイオリン群のハイポジションが不協和音を伴って幾重にも重ねられると、耳に不快に
聴こえるでしょう。

 前者と後者が同じCDに入っていたとすれば、前者は心地良く聴けるのに対して後者は耳に不快
な刺激となって「音が悪い」と言う事になるでしょう。実演でも差があるのですから、ある程度
は致し方ないのですが、アンプの具合が悪いとその差がもっと広がってしまいます。

 このような事は殆どの方が経験されていると思いますが、WR式コレクタホロワ型アンプで聴く
と、この差が縮まる気がします。例えば、優秀録音と言っても良いDENON のCD「煙が目にしみる」
(パガニーニ・アンサンブル COCO-70819) の第1曲目は、差し詰め前者に相当し第2曲目は後者
に相当します。

 即ち、第1曲目の「煙が目にしみる」は普通の装置だと多分バイオリンの音が神経質に聴こえ
るでしょう。一方、第2曲目の「カルメン幻想曲」は普通の装置でもそれなりに心地良く聴こえ
るはずです。第1曲目は高度な編曲によるバイオリンのハイポジションが、複雑に変化するので
どうしても耳に刺激的に聴こえますが、第2曲目は耳の神経を逆なでする要素が全くありません。

 ですから、実演でこの演奏を聴いてもその差はあると思いますが、そう言う音に弱いアンプで
聴くとこの差はもっと広がって聴こえてしまう事になります。ですから、私もこのCDを買った時
は「カルメン幻想曲」ばかり聴いていましたが、コレクタホロワが煮詰まってからは逆に「煙が
目にしみる」ばかりを聴くようになりました。

 正直、このCDを買った当初は楽しめなかった第1曲目が、今は凄くいい感じで聴けていますし、
最初は「編曲が悪い」なんて勝手に思っていたものが、今では「いい編曲だな」と思えるように
なったのですから、演奏評価と再生音の質は切っても切れない関係にあると思います。

 耳に不快な音がする状況で、その演奏を正しく評価できるのか、と言う問題があると思います。
SPの混濁する音から、どうしてコルトーの演奏は素晴らしいとかフルトベングラーの演奏は凄い
とか判断できるのでしょうか? それは多分、自分の耳でいいように補って聴いているからでは
ないかと思います。そう言う能力に長けていなければ、正しい判断はつかないはずです。

 凡人が、演奏を正しく評価して聴くためには、やはり出来る限り正確な再生音で聴くべきだと
思います。それを可能にするためには、どんな信号が来ても決してアンプの動作が阻害されない
ような、安定で強固なアンプを使うべきでしょう。その資格のあるアンプがWRのコレクタホロワ
系アンプなのです。

 このところの集中的な経験で意を強くしました。もうアンプの問題は殆ど解決されたと言って
も過言ではないと思います。WR製のコレクタホロワ系アンプを買って、もし満足できないような
場合が有りましたら、単純な使い方ミスや、酷過ぎると思われるプレーヤー、プリ、スピーカー
等との組み合わせを除いて、返金させて頂いても構いません。

 どうぞ、安心してWRのコレクタホロワ系アンプをお買い求め下さい。また、アップグレードを
心よりお勧め致します。