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1536川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Sep 4 14:30:00 JST 2014
旧型プリ(WRC-α1MK2、WRC-α1MK2/FBAL、WRC-ΔZERO/FBSE等)のアップグレードについて2

 項番1530で旧型プリアンプのアップグレードに関してお知らせ致しましたが、この度アップ
グレード価格が決まり、受け入れ態勢が整いましたので、改めて告知させて頂きます。

 ◎バランス型(XLRタイプ):\47,520(税・送料込み)→ 商品番号30

 ◎アンバランス型(RCAタイプ):\32,400(税・送料込み)→ 商品番号31

となっております。プリアンプは、電源部、接続ケーブル、プリ本体の3点をマスターズまで
お送り下さい。最近の宅配は振動・衝撃が結構ありますので梱包は厳重にお願いします。天板
に傷がつくなどのトラブルも増えていますので、十分にご注意をお願い致します。

 では、作業内容を簡単にご説明致します。到着したプリ本体から、安定化電源基板とライン
アンプ基板(バランス型は2枚、アンバランス型は1枚)を取り外し、私の住所に発送します。
マスターズでは基板が戻って来るまでに、ラインアンプ基板以外の基板(バランス変換基板や
EQ基板)に供給する電源ラインにデカップリング抵抗を入れて、供給電圧が±15~16V になる
ように準備をして置きます。これは安定化電源の電圧が±18V に上がる為に必要になります。

 私の方は受け取った安定化電源の基準電圧を変更して±18V になるように出力電圧を調整し
ます。ツェナーダイオードの交換で対応します。又、出力電圧が3V上がった為、安定化電源に
掛かる電圧がそれだけ下がるので、安定化電源の前に入っているパイ型フィルターの抵抗値を
加減して、それを補正します。

 ライン基板を2段差動化します。使用されている基板は1段差動用なので、一石を下配線で
付加して対応します。基板自体をEQ基板に変更する事も検討しましたが、新たにリレー基板を
増設する必要があり、コストの面で断念しました。下配線は部品が宙吊りになりますが、実際
にやって見ると付加したトランジスタ、抵抗、コンデンサーは機械的に安定して取り付けられ
ましたので、振動・衝撃で互いに接触する事は起こり得ないと判断しました。

 この作業で、2段目の共通エミッタ抵抗を挿入する為にパターンの一部を切り、抵抗の足を
入れる穴をミニドリルで空ける等の工夫が必要になります。又、2段差動化に伴って変更する
必要のある抵抗や耐圧の関係で使えないケミコン等は交換します。ケミコンにはBGが使われて
いる可能性が高いですが、最早入手不可ですので原則的にはVISHAYになります。BGより低音が
少しスッキリする傾向にあります。

 使用されている部品は原則的には交換せずに使用します。又、設定されているゲインの変更
も致しません。もし、ゲインの変更を望まれる方はお申し込みの時にメールでその旨をお伝え
下さい。原則的に無償で行います。旧型WRプリのゲインは

 1.0dB

 2.3dB

 3.6dB

 4.10dB

の4種類の中から選べます。基本的な音質は変わりませんが、一般的に帰還が多くなる程音は
締まって来ます。そして何より再生の難しいソースのひずみ感が減少します。その事も考慮の
上、ご判断下さい。WRプリは標準的には6dB でスタートしていますが、10dBにした時期もあり、
もし現在のゲインが不明な方は、現在の値から3dB 下げる等の相対的なお申し出でも結構です。
原理的に設定不可能な場合は、現物を見てからご連絡し、改めて相談させて頂きます。ゲイン
を変更したかった方はこの機会をご利用下さい。

 安定化基板、ラインアンプ基板の改造が終了し、直流的なチェックに合格したら基板をマス
ターズに送り返します。マスターズでは受け取った基板をプリ内に納め、動作テストを行ない
ます。先ずは直流値が適切かどうかをチェックしてから、交流動作の点検に移ります。

 所定の出力電圧は出るか、波形に問題はないか、ひずみ率は適正か、左右バランスは取れて
いるか、残留ノイズは極小か、等々総合的にプリとしての機能に問題がないかチェックを行い、
最終的には、テストCDで簡単なヒアリングを行ってから出荷致します。

 新規アンプの場合に比べて、アップグレードの場合は比較的納期は短縮されますので、10日
程度でお戻しできると思います。アップグレードの効果については項番1530の方をお読み頂き
たいと思いますが、一言で言えばこれ以上の音質のプリは他にも滅多にないと思われるレベル
に仕上がっております。それは電源電圧を上げた事、2段差動にして出力回路をプッシュプル
にした事の相乗効果だと考えております。

 これで旧型プリ+α系(Δ系含む)パワーアンプでも、Εシリーズに勝るとも劣らない音質が
得られるようになりました。どうぞ、奮ってお申し込み頂きますようにお願い致します。  

1535川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Sep 1 20:00:00 JST 2014
電源ランプのLED について(お知らせ)


 何時も、WRアンプをご愛用頂きまして誠にありがとうございます。つきましては、電源ランプ用に
使っております青のLED を緑のLED に戻す事になりました。WRアンプに使用しております青のLED は
小型の為か電気的ショックに弱く、稀に点灯しなくなるトラブルがあります。

 トラブルは減らした方がお互いに良いと思いますので、今後は原則的に丈夫な緑のLED に戻させて
頂く事に致しました。緑のLED は電流を食う割には暗く、明るく点灯させますとノイズを発生する事
もあり、青のLEDが普及してからは青に切り替えておりました。

 しかし、電流値を2mA 程度に抑えればノイズの問題は殆ど無く、E-10のプロトタイプでずっと実験
して参りましたが、点灯しなくなる故障も音質への影響も無い事を確認致しました。9月から原則的
に切り替えさせて頂く予定です。

 これは絶対的なものではありませんので、例えば他の機器とのバランスでどうしても青が良いとか、
などのご希望があれば、ご注文の時にお申し出下さい。青のLED にさせて頂きます。因みに青の LED
は1mA 以下でも十分明るく点灯しますので、その場合は、少し暗めにさせて頂く予定でおります。

 故障の原因は、多分、LED の電源になる直流に含まれるリップルにあると推定しています。LED は
電源SWをOFF にした瞬間に消える必要がありますので、電源平滑回路のコンデンサーの容量を減らす
必要がありますが、そうしますと直流のリップルが増えてしまいます。リップルはLED にストレスを
与えると思われます。

 逆に容量を増やしますとコンデンサーに多量の電荷がチャージされ、SWをOFF にしても瞬時に LED
は消えません。容量を減らしても増やしても問題が発生し、正しくジレンマに陥るのです。リップル
の絶対値を減らすには、結局、整流前の交流電圧を低くすれば良いのですが、その為には豆トランス
を余計に積む必要がありコスト高に繋がります。そこまでして青のLED に拘る必要があるのかどうか、
今後の課題として検討してみたいと思います。

 以上、ご理解を頂きたく此処にお願い申し上げます。  

1534川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri Aug 29 23:00:00 JST 2014
小野寺さん、ご投稿ありがとうございます。

 小野寺さんはアマオケのコントラバス奏者であられ、コントラバスの音を身近に聴く事ができる
貴重なお方だと思います。我々はホールの客席でしか聴く事ができませんが、全く違った角度から
コントラバスの音をお聴きになっている事になり、それがアンプの音の評価に少なからず影響して
いると思います。

 私がホール客席でコントラバスに関して注目するのは、やはり何と言ってもピッチカートの音だ
と思います。如何にダンピング良く、低く深く綺麗に抜けるかと言う点です。これは量よりも質が
優先されます。一番困るのはブーンと詰まったり篭ったりする音です。勿論、弓で擦る音も魅力的
ですし、それらしく聴こえると本当に嬉しくなります。

 コントラバスと言うと大型スピーカーが有利だと思われると思いますが、それは一般論であって
詰まったり篭ったりする音を避ける意味では、寧ろ小型スピーカーの方が無難なような気がします。
確かに、小型スピーカーは低域のレベルは確実に下がってきますが、量より質が重んじられる低音
では、意外に有利な点があると思います。

 日本家屋で大型スピーカーを設置する場合、部屋の大きさの問題から十分な壁からの距離を保つ
事ができ難いと言う問題があります。壁からの距離が取れないとある帯域の低音が強調される傾向
にあり、低音の篭りが生じ易いのです。その点B&W805MATRIXくらいの大きさですと壁から、少なく
ても1mは空ける事ができます。

 小野寺さんもB&W805系の CDM-1をお使いのはずで、比較的楽に低音再生ができるのではないかと
思います。こう書きますと、大型スピーカーをご愛用の方から16cm足らずのスピーカーで何が低音
だ!とお叱りを受けそうですが、質を重んじれば必ずしもそうではないと、最近、特に思うように
なりました。

 その昔、36cmx2のスーパーウーハーを擁する大型マルチからヤマハのテンモニ(NS-10M)に変えた
時は、本当に低音不足で困ったものです。その時、口径が小さいのだから当たり前だと思っていた
のですが、実はアンプの研究を重ねる内に、次第に低音不足を感じなくなって行ったのです。

 以前からお話していますように、スピーカーは単体では音が決まらないのです。アンプ次第では
低音も出るようになるのです。低音が出ないと感じる一つの原因はアンプの中高域が煩くて低音が
マスキングされる事にあります。次に、低音のダンピングが悪い為に力のある本当の低音が出ない
ので、低音として実感できないと言う問題があります。余りある量だけの低音は論外です。

 これらはアンプの安定性の改良で少しずつ良くなって行きますが、通常の帰還アンプでは限界が
あります。過と言って無帰還真空管アンプでは、量的には何とか出ても質は望むべくもありません。
出力インピーダンスが低く下がり切らないので、スピーカーの制御が上手く出来ないからです。

 そう言う私も、本当に満足できるようになったのは比較的最近の事であり、相当にアンプを追い
込まないと満足の行く低音を感じる事はできません。満足行くか行かないかは、サントリーホール
の一階中央の上席で聴いたプレゼンスと余り違わない、と言う事で判断しています。あるいは生の
ピアノを至近距離で聴いた時の、左手の極低音の質で判断します。小型スピーカーだから妥協して
いる訳では決してないのです。質の良い低音ならばレベルが低くても満足感が得られると言うのが
最近の私の持論です。

 WRアンプは、今やこのような低音を提供できるアンプに成長したと言っても過言ではありません。
それは、小野寺さんもお持ちのヘッドアンプWRP-α9/A でも可能だと言えます。添え字の/Aはこの
ヘッドホンアンプのシャーシ構造の話で、WRP-α9 と電気的性能に本質的な差はありません。

 小野寺さんはこのWRP-α9/A からスタートされて、E-10をご購入になり、暫くの間WRP-α9/A を
プリに転用されてお聴きになっていたと思いますが、EC-1の発売と共にプリをランクアップされて
今現在、WRP-α9/A は休閑中だったようです。

 多分私の記事をお読みになり、改めてWRP-α9/A を検証する気になられてi-Phone とヘッドホン
(イヤホン?)の間にWRP-α9/A を繋いで聴かれたのだと思います。そうしたら、その音の余りの
違いに驚かれたのでしょう。味気ない音が一気に精気を取り戻し、豊かな音楽を楽しむ事が出来た
ようで、WRP-α9/A の良さを再認識して頂いて本当に有り難く思います。実際の音を間近で聴いて
おられる小野寺さんが仰るのですから説得力があります。

 普段、小野寺さんがお聴きになっていらっしゃるE-10はWRP-α9/A よりパワーが出る事と電源が
安定化電源で供給されている為に、さらに音が安定になっていて曖昧な甘さが減っています。生音
を再生するには欠かせない性能です。だから小野寺さんは「メインシステムはもっとすごい!」と
仰っているのだと思います。

 皆さん、生音を聴きにライブに行きましょう! そして生の音の良さや凄さを肌で感じて下さい。
そしてその音を基準にして(物差しにして)オーディオの音の良し悪しを判断して行くようにすれば
オーディオはもっと楽しく、健康的になると思います。ライブは高いお金を出すコンサートばかり
ではありません。無料のコンサートが市民会館や公民館で行われています。アマチュアの演奏でも
生音は生音です。学生の吹奏楽でも良いと思います。面倒くさがらずに是非足を運んで下さい。

 そうすれば、何かが変わってくるでしょう。  

1533小野寺さん(ウエストリバー愛好者) Wed Aug 27 05:00:21 JST 2014
久しぶりの投稿になります。

日フィルの正指揮者が山田和樹さんになったのですね。
15年ほど前まだ芸大学生だった山田さんの指導の下で行われたアマオケの
演奏会に当方も参加しまして、圧倒的な才能に驚かされました。彼のドラ
イブ力は凄まじく、下手なアマオケからでも豊かな音楽を引き出すので
す。これはすごい新人が現れたと大騒ぎしたものです。

ところで、眠れない夜にとても久しぶりに埃の被っていたWRP-α9/Aを枕
元に引っ張り出し、iPhoneとヘッドホンをつなぎ驚きました。
iPhoneとヘッドホンだけでは全く気の抜けたビールのような味気ない音。
ここにWRP-α9/Aをつなぐと、優秀な指揮者と同じように、ただの音だっ
たものを豊かな音楽にしてくれる。もう、全然違います。すごい!
(そして、言うまでもなくメインシステムはもっとすごい!)

ヘッドホンで音楽を聞く方には、ぜひウエストリバーのヘッドホンアンプ
を聞くべきです!騙されたと思って聞いてみてください。 

1532川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Aug 24 23:00:00 JST 2014
ヘッドホンアンプの価格改定に関するお知らせ

 項番1527で書きました、Εシリーズの基になったヘッドホンアンプWRP-α9 ですが、今回久し振りに
製作を行って見て、改めて開発当時より材料費が値上がりしていて、これも大幅赤字になっている事が
分りました。このままでは、WRP-α9/A の二の舞になりますので本日より価格を

 \69,120(税込み)

にさせて頂く事にしました。これに伴いバランス入力が可能なタイプWRP-α9/BAL も

 \79,920(税込み)

に改定させて頂きます。

 この価格を見ると「高い!!」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、考え方に依っては必ずしも
そうではないと思いますので、以下の説明文をお読み頂きご理解頂ければと思います。

 このヘッドホンアンプはコレクタホロワ出力で、勿論、高帰還型ですから、音質はぴか一と言っても
過言ではありません。動電型でありながら静電型を凌ぐヘッドホンアンプを探されているのなら、是非
WRのヘッドホンアンプをお勧めします。それに唯のヘッドホンアンプではなく3つの機能を合わせ持つ、
スリー・イン・ワン型の高性能ヘッドホンアンプなのです。

 ヘッドホンの出力端子に直列抵抗を入れて見かけ上のS/N を稼いでいるタイプとは本質的に違い、真
の低ノイズを実現した本格的ヘッドホンアンプです。その為、高帰還と相まって、出力インピーダンス
は広い周波数範囲で安定的に低く抑えられています。

 この事はヘッドホンの振動板を上手くコントロールする能力が高いと言う裏づけになり、想像以上の
音質を実現しています。「動電型のヘッドホンってこんなにいい音だったんだ!」「安価なカナル型も
こんなにいい音で鳴るんだ!」と言う驚きがあると思います。ノイズはカナル型イヤホンでも検知出来
ない程のレベルです。

 次にこのヘッドホンアンプは高S/N 比を生かして、2入力切替可能なゲイン12dBのプリアンプになり
ます。例えばプレーヤーとDAC を切り替える事ができます。WRP-α9/BAL は入力の1つがバランス入力
対応になります。残留ノイズは14uV(DIN-AUDIO)なので、高S/N 比のプリアンプとして十分使えます。

 プリアンプとして使った場合の音質は、これが母体になってEC-1が開発された事からもお分かり頂け
ますように、相当高度な音質になっています。その理由は、WRの正規のパワーアンプ基板を超軽負荷で
使う事にあります。8Ωを接続しても耐えられる回路を、殆ど無負荷状態で使うのですから、直線性が
著しく向上し音質が良くなるのです。下手な専用プリよりも音は良いと思います。プリとしても自信を
もってお勧めできます。

 このヘッドホンアンプはこれだけでは有りません。約4W程度のパワーアンプにもなります。真空管
アンプでは数ワットのものが結構存在しますが、能率の良いスピーカーなら十分に鳴らせるパワーです。
「真空管アンプは質が良いから数ワットでも大丈夫だけど、TRアンプの数ワットはダメじゃない?」と
思ってる方は居ませんか? それは時代錯誤の物凄い誤解です。無帰還の真空管アンプより、余程この
ヘッドホンアンプの方が、スピーカーを上手く制御するする能力に長けていると思います。

 私はE-120 相当アンプと聴き比べをしたと書きましたが、ちょっと絞って聴けば一体どれだけの人が
ブラインドで当てられるかと思ったものです。音の基本が出来ていますから、大音量で聴くとか無理を
しなければ、十分高度な要求に応えてくれえると思います。音質がΕシリーズより少し優しいですから、
そのような音を好む方には特にお勧めです。

 最後に、最近疑問に思っているヘッドホンアンプの傾向について触れたいと思います。それはヘッド
ホンのリード線のアース線を左右独立にし、XLR コネクタを使って「バランス型」とか称しているもの
が有る事です。それは本来の意味での「バランス」とは全く関係ない事を知っていますか。知った上で
お使いならそれはそれで結構ですが、もし騙されているのなら早く目覚めて欲しいと思います。

 もし本当の意味でバランス型ヘッドホンを実現するのなら、ヘッドホンの構造から抜本的に変えない
となりません。バランスは本質的にプッシュプル動作をするもので、振動板の振幅がどちらに振れる時
もバランスした力で同等に駆動する必要があります。そしてその場合は、左右ともにホット、コールド、
アースと3本のリード線が必要になります。

 しかし、動電型にしても静電型にしてもそのような構造のヘッドホンはこの世の中に存在していない
と思います。少なくても商用として販売されていないと思います。左右のアース線を共通にして使う事
は決して良い事ではありませんが、致命的な問題では決してありません。それよりヘッドホンアンプの
動作自体の方がもっと重要だと思います。アース線を独立にしたとしても、駆動するヘッドホンアンプ
の音がプアーでは何にもなりません。

 WRのヘッドホンアンプを使えば、左右共通のアース線を使った方式でも全く問題ない音質が得られる
と思います。特許回路で負性抵抗を抑制し、多量の帰還を広い周波数に亘って安定的に掛ける事に依り
アース線が共通インピーダンスを持つ事の問題より、もっと遥かに重要なアンプの過渡ひずみを大きく
改善しているから、そう言えるのです。

 以上の説明からこのヘッドホンアンプは只者ではなく、十分商品価値のあるヘッドホンアンプである
事がお分かり頂けたと思います。「E-10は音が良さそうだけどちょっと高いし」とか「EC-1は良いかも
知れないけど手が出ないし」と思っている方、WRのヘッドホンアンプWRP-α9 を試して見ては如何です
か? このアンプは潰しが効きますから、取り敢えずヘッドホンで音楽を聴く事から始め、将来的には
別に役立てる事を計画されて見ては如何でしょうか。WR製品の中では一番安価ですが、WRクオリティは
十分保証されていますから入門用にも最適です。 


注)高級マイクロホンの多くはバランス出力ですが、これはマイク自体がバランス構造になっている訳
 ではなく、カプセル内で電気的にアンバランス-バランス変換をしているだけです。 

1531川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Aug 21 16:00:00 JST 2014
紛失したWR掲示板のデータが復旧しました!

 6月半ば過ぎにサーバのHDD がクラッシュして一時的にWR掲示板の一部のデータ(過去の掲示板:
その30とその31)が消失しておりましたが、お陰さまで何とか復旧ができましたのでご報告致します。
この半年ばかりのWRアンプに関する貴重な情報、特にΕC-1 に関する情報が蘇りましたので、どうぞ
参考になさって下さい。

 6月のある日、突然、サーバのHDD ランプが点きっ放しになって、システムがダウンしていました。
多分あるデータを読みに行ったものの、そのデータが読み取れずにHDD がフリーズしたような状態で
システムが止まっていたものと思われます。

 勿論、定期的にバックアップは取っていますが、少しその期間が開いていて、タイミングの悪い時
にクラッシュしたようです。バックアップはHDD(危機を分散する意味で3つのHDD に分けている)の
物理コピーで行っていますが、外した当該HDD をコピーすると、ある所で読み取りエラーでコピーが
中断してしまいました。従いまして、かなり前のデータに戻すしか手がありませんでした。

 これまでも似たようなケースが何回かあり、サーバ上ではクラッシュしたように見えても、物理的
コピーが何とか出来たので事なきを得ていたのですが、今回だけは専門家にデータを拾い出して貰わ
ないとダメかと思いました。しかしHDD を持って行くのも気が重く、何方かがデータを保存していて
くれれば良い、等と他力本願になっていました。しかし、現実はそう甘くありませんでした。

 もう8月も終わりに近づき何とかしなくてはと思い、何処かHDD の復旧を専門とする業者に持って
行く決心をしたのですが、その前に念の為にもう一度物理コピーを試みて見ようと思ったのです。勘
が的中し、何事も無く物理コピーが出来たのです。HDD の温度が下がり状況が変わったのでしょうか。
兎に角、保存されていたWR掲示板用の全てのデータを読み取る事ができました。早速アップしました
ので、どうぞご参照下さい。

 これから、大事なデータは更新ごとに旧データを全然別の媒体に保存して、危機管理に努めたいと
思います。どうぞ、今後ともWR掲示板をよろしくお願い申し上げます。
  

1530川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Aug 19 01:00:00 JST 2014
旧型プリ(WRC-α1MK2、WRC-α1MK2/FBAL、WRC-ΔZERO/FBSE 等)のアップグレードについて

 旧型プリをお持ちのある熱心なユーザーの方から、もう少し音をレベルアップできないか?
と言うご相談を受けました。内心、痛いところを突かれたと思いましたので、自分への挑戦も
含めてお受けする事にしました。

 実は、私もWRC-α1/FBALを持っているのですが、最新のEC-1と聴き比べる多少の聴き劣りが
する事は薄々感じておりました。勿論その差は高度なレベルでの話で、一般的にはどちらでも
水準以上の音はしていますので、誤解はなさらないで下さい。オーディオはレベルが上がれば
又その先が見えて来ると言う、際限のない世界なのですから。

 WRC-α1MK2を送って頂いて、何処から手を付けようかと思ったのですが、先ずは使用パーツ
の見直しをしました。音の太さや厚みを要望されているので、パスコンの容量を1uFから2.2uF
にするとか、ケミコンをBGから敢えてVISHAYにするとかして見ました。BGは低音が少し豊かに
聴こえますが、逆に言えば、低音も含めて軟い音になる傾向があります。もう一つは高帰還化
と言う事で、ゲイン6dB を0dB にすると言う試みも行いました。高能率スピーカーを使ったり
してトータルゲインが余っていれば、6dB であっても帰還に回した方が音はしっかりして力感
が増して来ます。やはり、アンプの出力インピーダンスは出来るだけ下げた方が良いのです。

 パーツを限界まで見直し、高帰還化を行って聴いて頂きましたが、多少は良くなったものの
本質的にはご満足頂けないようでした。勿論はっきりそうお申し出があった訳ではありません
が、頂いたメールの行間から見て取れました。そこで第2弾として電源電圧を±15Vから±18V
に上げる事にしました。そのヒントは、EC-1にありました。EC-1の母体はヘッドホンアンプで
すが、そもそもヘッドホンアンプは±13V 程度で動作します。その電圧でプリ代わりに使って
も全く問題は無かったのですが、さらに充実したサウンドを狙って、これを±18V にしてEC-1
に転用し大きく成功したのです。所謂、濃くのある音になったのでした。

 偶々、付いていたトランスでは無理があったので、トランスから交換する事になり、ついで
安定化電源のツエナー交換を行い、電源電圧を±18V に調整しました。勿論、ラインアンプの
負荷抵抗などの値も変える必要があります。元々、シングル増幅で±15V でスタートしたのは、
エミッタホロワを使わないと言う事に意義を見出した頃の話ですので、それで十分だと言う事
にはならないと思います。ですが、エミッタホロワを使った不安定なラインアンプに比べれば、
当時はずっとスッキリした音であったと思います。

 しかし、高帰還化が進みパワーアンプの音がワンランク上がると、プリに対する要求も上が
ってきます。昔は±15V のシングル動作で十分であっても、現今のWRパワーアンプには物足り
ないと感じる人が居られても不思議ではありません。さて±18V に上げてお返ししたのですが、
やはり良くはなっているものの満足するまでは行かないと言う事でした。未だ足りないところ
あるのでしょう。謙虚にそう考えました。

 こうなるとシングル動作のコレクタホロワで送り出しをする限界と言う事になります。EC-1
はコレクタホロワですがプッシュプル動作です。やはりプッシュプルにするしか手はもうあり
ません。しかしSEPP型にする余裕はありませんし、SEPP型アンプで0dB にゲイン設定した事も
ありません。ラインアンプは2段動作なので、特許回路を使えば安定的に0dB にする事が可能
ですが、SEPPは増幅段数が4段なのでそう簡単には行きません。

 残された手は2段差動しかありません。WRアンプには、旧α系アンプやEQ回路に採用されて
いて慣れてもいます。電源電圧±18V で2段差動にする決意をしました。そうすれば、EC-1に
負けず劣らずの音質になるかも知れないと思いました。濃くがあって力感があって、線の太い
立派な音になる事を期待して、2段差動に踏み切りました。これが第3弾です。

 最初は慣れていないので、2段差動が楽に作れるEQ基板を利用しました。EQ回路を基にして
±18V 用に負荷抵抗などを変更しました。EQ回路は当初からEQの等価素子が負荷にぶら下がり、
とてもシングル動作では無理がある事が分かっていましたので、2段差動でスタートした経緯
があります。これをラインアンプに使えば、その負荷分が軽くなるのですから、いい音になる
可能性は大いにあります。その点はEC-1も似ていて、スピーカーの負荷がなくなるのですから、
音が良くなっても不思議ではありません。兎に角、アンプに取ってその能力からすれば遥かに
軽負荷の場合、動作が色々な意味で安定し、音に良い影響が出ます。

 しかし、EQ基板にはリレーを積んでない事を後から気が付きました。このままお渡しすれば
電源ON/OFF時にショックノイズが出てしまいます。仕方なくユニバーサル基板でリレー回路を
組み上げて、2段差動基板の傍に取り付けショックノイズを防止する工夫をしました。これで
完成です。先ずは測定をして見ました。直流配分は、出口の電圧が±18V に対して0.3Vでした
ので、OKとしました。当然、A級動作です。此処がAB1 動作のSEPP回路と違うところかも知れ
ません。

 次に方形波を観測しました。ほんの僅かですがオーバーシュートが1つ見えましたが、微小
であり系が安定してるので(各補償コンデンサーを多少変えても全く変化なし)、これで合格
としました。これを無理に潰すと音の立ち上がりが鈍くなったりします。ゲイン0dB でも全く
安定です。ひずみはプッシュプル動作なので偶数次ひずみは基本的に出ませんし、身分不相応
な軽負荷ですから、これで全く問題はないはずです。

 こうなると試聴したくなるのが人情です。初めての体験はやはり興味津々です。しかし試聴
するにはゲインが足りません。我が家のシステムはゲイン0dB では何時も聴く音量まで上がら
ないのです。そこで試聴時だけ、ゲインを6dB にして行いました。それでもいい感じで鳴って
くれました。どうしても何時も聴いているEC-1の音が基準になってしまいます。

 しかし殆ど違和感がなく濃くがありますし、音の崩れが殆どありません。録音が悪くて音が
崩れるのは論外として、結構いい録音なのにアンプが弱体の為に音が崩れる事はよくあります。
クラシックの場合は特に独グラモフォン録音にその例が多く、そのせいか日本の評論家に余り
評判が良くないのがグラモフォン盤です。一例を挙げますとシノーポリ/フィルハーモニア管
の「未完成/イタリア(445 514-2)」は良いテスト盤になります。これを音が悪いと判定した
人は、自分の装置を疑って下さい。

 未完成のffでの濁りやひずみ感がどれだけ減ったか、注意深く聴きましたが、EC-1と互角か
勝るかと言う感じに聴こえ、このCDを完璧に近く再生しています。負性抵抗をキャンセルする
特許回路は共通にしても、全く違う回路ですからよく聴けば多少違いはあるのかも知れません
が、2段差動の方が少し品格があるかな?と言った程度で、その差は本当に微々たるものです。
最早同一レベルになったと言っても過言ではないと思います。全く違う回路で同レベルの音が
達成された事で、これがプリの限界なのかとさえ思いました。これに気を良くして我がWRプリ
(WRC-α1/FBAL)も直ぐに同様の改造を行った事は言うまでもありません。最近は毎日聴いて
います。

 奇を衒ったプリは他にもあるでしょうけど、正統派ではこの右に出るプリは殆ど無いと思い
ます。高機能を狙ったデジタルコントロール型は、まず音質は二の次です。たかがプリですが、
されどプリです。又プリで始まってプリで終わると言う人も居ます。確かに、オーディオには
良質のプリが必要です。その本質的な機能はやはりパワーアンプのバッファになって、パワー
アンプの動作をより完全なものにすると言う事に尽きるのではないかと思います。別な言い方
をすればCDプレーヤー(DAC)からの音信号を出来る限り崩さずに、パワーアンプに正確に送り
込むのがプリの働きだと言えるでしょう。新たにお求めになる方はEC-1を、昔からのユーザー
の方は、いずれ具体化されるプリのアップグレードに依って最高の音を手に入れて下さい。

 第3弾をお聴きになったユーザーの方から、これまで難しくて再生不可だったCDが蘇ったと
連絡がありました。音に変な癖がなく端正で、生録の再生は格段に良く、このプリの音を一度
聴くともう後には戻れないと仰っていました。旧来のユーザーの方々にも最高レベルのプリが
提供できるようになったと思います。これで、自分なりに背負っていた肩の荷を少し下ろせた
気がします。


注)近々、旧型プリの2段差動へのアップグレードについて、改めてお知らせ致します。  

1529川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Aug 12 20:30:00 JST 2014
コレクタホロワ高帰還型ハイパワーアンプE-100 を特価にて予定通りご提供致します。

 前回予告させて頂きましたように、高帰還型ハイパワーアンプE-100 は、普通はカスタム扱いになり
もっと高価になりますが、トランスと放熱器に既存のものを使う関係でお得な価格

 特別価格:\172,800(税込み)

とさせて頂く事にしました。トランスと放熱器は経年変化の殆ど無い部品ですので、実質的には新品と
同等品です。良質なハイパワーアンプのご購入計画を立てていらっしゃった方には朗報です。是非この
機会にお求めになって下さい。クリップするまで安定化電源で電源電圧を一定に保ちますので、100Wが
安定的に得られます。このハイパワーアンプのアイドリング電力は20~30W 程度にしますので、発熱は
余りありません。100Wなんか不要と考えている方にも、リニアリティの優れたアンプとしてお使い頂け
ます。余裕ある音を楽しんで見ませんか? 一度慣れるとハイパワー中毒になるかも知れません。

 では、音質を含めたこのパワーアンプの概要をお知らせ致します。機能的には、E-10、E-30、E-50の
兄貴分に当たりますので、その意味では同類のパワーアンプです。ただし、Εシリーズ用シャーシには
E-100 を収納できるものが無い為、WRP-Δ7 で採用したリードのMKシリーズを使います。アンプゲイン
は約12dB(約4倍)で、余り高くありませんのでご注意下さい。他のアンプと大きく異なる所はパワー
TRが2パラになっている点です。2パラの方が重い負荷に強くなりますが、一方で繊細感が損なわれる
とも言われています。しかし、WRの高帰還アンプの場合は思った程その事は気になりません。寧ろ力感
やエネルギー感に圧倒される気がします。

 前面左側に電源SW、右側にボリウムツマミが配置され後面左側にACインレット、中央にSP端子、右側
にRCA端子があります。横幅400mm、シャーシ高50mm、黒色の穴あきボンネット高150mm、奥行き250mmと
なっています。突起物は含んでいませんので、前後の寸法はもう少し大きくなります。シャーシ加工は
未だ済んでいませんので、今なら、多少のカスタム扱い(例えばVRを取るとか左右独立にするとか)も
可能です。納入は9月にずれ込みますので、お支払いは納入時で結構です。代引きも可能です。

 今更ですが、音質について少し説明を加えさせて頂きます。世間の常識に反して高帰還型TRアンプで
ありながら、硬直した音でもなければ、引き攣れたような音でもありません。伸びやかにストレートに
音が出てきます。篭ったような、詰まったような感じは全くなく、俗に言う抜けの良い音です。だから
こそ絞っても情報量が減りませんし弱音が非常に柔らかく美しいのです。中低音もスッキリして軽やか
で切れ味抜群です。ブーミーながらタップリした量感を重視する方には向きません。これは帰還アンプ
に不可避的に生じる負性抵抗を、巧みに除去する2つの特許回路を搭載する事に依り可能になった特質
なのです。

 ソースに依りますがこの事は楽器の音を粉飾なしにストレートに表現する事を意味しますので、普段
生音に慣れていない方には、きつく聴こえる可能性があります。ライブに行くとか、生音の現場に立ち
会ってる人には常識的な音でも、イメージ上の理想音を追っている人には、必ずしも耳に心地よく響か
ないかも知れません。しかし帰還に失敗したアンプのような人工的な不快音では全くありません。何時
しか自然に音の事を忘れ、気が付くと音楽に没頭している、そんな音です。其処が大切なのです。

 WRアンプは、元来ライブに行く習慣があり、ライブの音の魅力に目覚め、それを我が家で再現したい
と願う方の為にあるアンプです。殆どライブには行かずに、自分の殻に閉じこもり、空想上のいい音を
追い掛けている方には、猫に小判的にしか映らないと思います。この事は非常に大切ですので、敢えて
申し上げる事にしました。唯、売れれば良いと言うものでもありませんから。WRアンプは、このような
オーディオとは一線を画しています。

 これまでにWRアンプを正しく評価して頂いた方は、ライブに行くとか、普段、生音を聴くチャンスの
ある方が多いと思います。音場感を知っている方だと言っても良いと思います。そう言う方はWRアンプ
に早く辿り着けてラッキーだったとか、アンプをWRの高帰還型アンプに固定してからオーディオ全体が
見えてきたとか仰って頂いております。要するに他の悪い所が透けて見えて来るようになるのでしょう。

 私は「ライブの感激を我が家で!」がオーディオの原点だと考えていますので、生音を基準にしない
オーディオに懐疑的です。勿論、趣味の世界ですから他人があーだこーだと文句を付ける筋合いはあり
ませんが、それが混迷を深めるオーディオ界の諸問題と無関係ではない、と常々考えています。正確な
物差しを持たない世界には、科学は存在しないからです。科学で全てが説明がつく訳ではありませんが、
何事にも科学的思考は大切だと思います。WRアンプの基本的性能は電子計算機を繰り返し使って数学的
に解明したからこそ得られた結果なのです。

 多分、ライブの音を規範にしている方は、オーディオを趣味とする人の中でも少数派だと思いますが、
WRアンプはそんな方々にお役に立てればそれで良いと思っています。その限りではWRアンプの右に出る
ものは他にないと確信しています。イメージ上の理想音は偶然に出る事が有ると思いますが、ライブの
理想音は偶然に出る事は決して有りません。綿密な計算の上に立ったアンプでしか再現できないと私は
信じています。

 あなたはライブ派ですか? それとも空想派ですか? ライブ派なら、E-100 の良さを100%理解して
頂けると思っています。身近にライブ派の方が居られましたら、この事を知らせて頂けると助かります。

 お申し込み先 →
 
    お電話:042-683-0212

    メール:kawanisi@west.river.jp.org

初めての方はメールが届かない事もありますので、念の為に以下のアドレスをCCに記入して下さい。

    CCアド:kawanisi@mail.ne.jp

以上、よろしくお願い致します。ご質問もお受けしますので、どうぞ遠慮なくご連絡下さい。

 尚、お盆期間中(16日まで)にご成約頂いた場合は、さらに3%引き(\167,616)とさせて頂きますので
お早めにお申し込み下さい。  

1528川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Aug 5 21:30:01 JST 2014
ハイパワーアンプE-100 のお盆特価販売について

 今年もお盆特別価格販売を行う予定です。E-100 の限定1台です。WRの定番パワーアンプには、
E-10、E-30、E-50の3種類ありますが、それ以上のハイパワーアンプは原則カスタム扱いになり
普通、入手し辛い一面があります。ご興味のある方はこの機会に是非お求めになって下さい。

 以前にカスタム注文でお作りしたE-120 に関して、いろいろ感じたことを書かせて頂きました
が、ハイパワーアンプには特有の魅力があります。今回は120Wではなく100Wですが、十分にその
魅力はあると予想しています。今現在、基板を製作中ですが、簡単な仕様を下記に示しますと


 出力方式:全段安定化電源駆動ハーフブリッジ・コレクタフホロワ増幅回路

 最大出力:100W+100W(8Ω)→ 4Ωまでのスピーカーなら使用可

 出力素子:EMe型バイポーラトランジスタ2パラ接続

 出 力:スピーカー1系統
 
 入 力:RCA 1系統(音量調節可):入力インピーダンス18KΩ以上

 ゲイン:約12dB(高帰還型)

 残留ノイズ:30uV以下

 サイズ:400(W)×250(D)×210(H)(突起物含まず)

となっております。

 今回はトランスと放熱器に手持ち部品を使うので、通常のカスタムでお受けするよりお得です。
価格は17万円台を予定しております。コストの関係でシャーシには、WRP-Δ7 で使用したリード
のMK-380の兄貴分に当たるMK-400を使用します。従いまして、風袋はWRP-Δ7 に似ています。

 レイアウトを含めまして、MK-120で経験済みですので、比較的楽に事が運ぶと考えております。
しかしながら、ハイパーアンプは扱う電圧が高く流れる電流も大きいので、E-50以下より高度な
技術が必要になります。従いまして、お盆期間に受注したとしても、完成品をお渡しできる日は
9月にずれ込むと予想しております。当然、お支払いもその時になります。

 音質はどちらかと言えば、しっかりした充実サウンドです。ある意味真空管アンプとは対照的
ですが、煩い聞き苦しいアンプとは全くの別物で、生楽器の再生には必須な各要素を備えている
パワーアンプだと言う事ができます。

 例えば、低音は引き締まりながらも軽く、低く、深く下方に伸び切ります。決してふやけたり
しません。これを低音不足と認識なさる方には不向きなアンプです。中音は充実していて力感が
あります。中高域はスカッと晴れ渡りながらも決して前方へ飛び出てきません。エネルギー感や
存在感、実在感がありながら、距離感が掴めます。高域は決してチリチリせずあくまで自然です。
ツイターの存在を忘れるようです。

 このように、伝統的な帰還アンプや真空管アンプとは一線を画す音質です。このパワーアンプ
の性能を100%発揮させるには、ある程度以上のCDプレーヤーやDAC が必要になります。さもない
と、それらの欠陥を露呈する事になり、思わしい結果が得られない事があります。

 それに反して、スピーカーは大抵のもので大丈夫だと思います。スピーカーは単体では音質が
決まりませんので、一般の評価を気にする必要はありません。WRアンプで駆動すればスピーカー
が上手くコントロールされて、その性能が開花するはずです。ある程度以上のスピーカーならば
私は性善説を唱えます。一般のアンプは残念ながら、価格に依らず最悪説です。

 また、組み合わせるプリアンプの性能も問われます。できれば、EC-1と組み合わせてお使いに
なる事をお勧めします。このパワーアンプの特質がより高められます。今は無理でも将来的には
組み合わせてお使いになる事を強くお勧めする次第です。

 ご質問はお受け致しますが、まだ予約はお受けできません。お盆に入る頃に、もう一度告知を
させて頂きますので、十二分にお考えの上、その時にご応募をお願い致します。  

1527川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Jul 31 16:00:00 JST 2014
久しぶりにWRのヘッドホンアンプWRP-α9 を試聴してみました。

 ウエストリバーにもヘッドホンアンプがあるのですが、WRP-α9/A がディスコンになってから
は、影に隠れてしまっていました。しかしWRP-α9 はどっこい生きています。最近、久しぶりに
WRP-α9 のご注文を頂き、改めてWRP-α9 を見直しています。

 機能的にはスリー・イン・ワン型でヘッドホンアンプ以外にも、プリアンプ、パワーアンプの
能力が備わっています。発売当初はα9/A に比べて2万円高でしたので、幾らシャーシが見栄え
が良いと言ってもWRP-α9 の方は敬遠されていました。しかし消費税アップ時に価格を据え置き、
実質的には値下げを行っていますので、音質を含めた性能を重視する方には十分にターゲットに
なり得る存在だと思っています。
 
 WRP-α9/A はシャーシをコストダウンして、ギリギリの価格に設定した事もあって結構売れた
のですが、残念ながら利益がマイナスで、常に赤字決算でした。その為、一緒に仕事している方
に余り迷惑を掛けられないと言う事情もあって、思い切ってディスコンを決意したのです。

 しかし、このヘッドホンアンプこそが今現在のE-10やEC-1の礎になっている事を忘れる訳には
行きません。もし、このWRP-α9 を開発していなかったら、今でもαシリーズに拘り続けていた
のではないかと思います。そう考えますと意義深い機種であったと改めて感じます。開発当初は、
まさかWRの路線を大きく変えてしまうとは夢にも思っていませんでした。

 何が本質的だったかと言えば「高帰還化技術の具現」だと思います。伝統的な高域補償法では
絶対失敗するであろう帰還量を、安定的に確保している点に大きな意義があるのです。戦後急速
に帰還技術が採用されておきながら、結局「トランジスタアンプは音が硬い!」と言うレッテル
を貼られ、廃れたはずの真空管アンプに回帰した人が少なからずいたと言う事実は誰も否定でき
ないと思います。

 この事はオーディオ界の呪縛みたいなもので、もうその呪いを解く事は容易ではありませんが
「帰還」そのもには何の罪も無い事を証明する意味でも、このヘッドホンアンプで開発した技術
は貴重な切り札になると思っています。WRP-α9/A が相当数売れた事は伊達ではなく、ユーザー
の方々の先見の明があったと言う事だと思います。

 例えば、WR掲示板ではお馴染みの千葉さんはこのWRP-α9/A を高く評価されています。高級な
WRP-α1MK2/BALと聴き比べても、そんな大きな遜色はないとまで仰っています。片手で軽く持ち
上げられる風袋でありながら、音は本格的なWRクオリティを保有しています。

 今回久しぶりにWRP-α9 用の基板を作成しましたので、丁度アンプ基板を他の用途に転用して
空になっていた我が家のヘッドホンアンプのシャーシに収納して、先ず最大出力の測定を行って
みました。偶々搭載されていた電源トランスでは、無信号時の電源電圧は±14V でしたが、その
時の最大出力は片チャン動作で4.5W、両チャン動作では3.5Wでした。3.5Wに下がるのは正弦波の
ような連続波に対してですから、瞬間的に変化する音楽の場合は実質的には4.5Wx2の実力がある
と思っても良いと思います。

 両チャン動作でパワーが下がるのは、電源が非安定化電源である為、最大出力時に電源電圧が
大きく降下してしまうからです。その点、E-10以上のアンプは安定化電源を搭載していますから
その変化は僅少になります。最大出力以外にも方形波特性や残留ノイズなどを測定して見ました
が、全く問題はありませんでした。

 こうなりますと音を聴いてみたくなるのが人情です。今まで接続されていたE-120 相当アンプ
を外し、このヘッドホンアンプを挿入してみました。プリはEC-1で何時も聴く音量、時計の針で
言えば1時の位置で聴いてみました。パワーアンプのゲインは皆同じですから、同じ音量で鳴る
はずです。

 普段聴くテストCDを掛けて見ると、ほんの少し優しい音です。聴き易い感じですが、両チャン
で3.5Wとは思えないパフォーマンスです。音量に応じて電源電圧が下がってしまうので、音の芯
が多少甘くなっていますが、この違いをブラインドで聴かせられたら、一体どの位の人が正確に
言い当てられるでしょうか。120Wとのパワーの差は物凄いものがありますが、その割には音質の
差は少ないと言えます。高帰還化技術恐るべしです。

 テストCDを次から次と掛けて行きましたが、最後に最近テストCDの仲間入りをした新顔に登場
願ったのです。それは、先日の日フィル東京定期で聴いてきた「マノン・レスコー」の「第3幕
への間奏曲」です。私が取り敢えず選んだCDは、シノポーリ/フレーニ/フィルハーモニア管の
全曲盤(477 6355-6)です。

 何故これにしたかと言うと、一つは息子が貸してくれたグラモフォンのシノーポリ/フレーニ
のアリア集にこの「マノン・レスコー」から1曲が入っていて比較的音が良かった事ともう一つ
は、シノーポリなら結構良い演奏をしてくれるのではないかと期待したからです。

 結果は私の望みの80% くらいは満たしてくれたと思っています。あとの20% はオケがもう少し
格上、例えばウィーンフィルだったらもっと良かったであろうに、と思う部分があります。力感
とか厚みとか、言葉では言い表せない音楽特有の特質に多少の不満があるのです。それは贅沢な
望みかも知れません。

 唯、この間奏曲の音質は最高の部類に入りその意味では全く不満はありません。流石クラウス
・ヒーマン、面目躍如たるものがあります。オケの厚み以外は全て良く、ffでも微塵も濁らずに
奥深い舞台が見えるようです。コントラバスのピッチカートが軽く深く低く静かにそして距離感
をもって沈み込んで行く様は真に見事です。それがこの「間奏曲」の最後に出てきます。

 この音は良く録れたピアノ録音の左手の極低音にも共通する魅力です。もっとも、私がこの音
に目覚めたのは比較的最近の事で、何回も書きますがFeastrexにお邪魔して500 万円のSPの音を
聴かせて貰ってからです。その音が高帰還化後に我が家でも聴こえるようになったのでした。

 即ち、以前のαシリーズとB&W805MATRIXの組み合わせではハッキリ認識できなかったのですが、
コレクタホロワと高帰還化技術によって、この音が明瞭に聴き取れるようになったのです。この
事を一般化して見ますと、パワーアンプとスピーカーの過渡特性の積が、ある一定以上のレベル
にあるとこの音が認識でき、あるレベル以下だとこの音は曖昧にしか聴こえない、と言う法則に
纏められると思います。まだ定性的な事しか言えませんが、Εシリーズのパワーアンプを使えば
かなりの確立で聴こえるはずです。聴こえない場合は、残念ながら使用スピーカーの過渡特性が
悪いか、設置の仕方が適当でないと思ってもよいと思います。

 一度味をしめるともう元には戻れないのがオーディオです。全てのCDにこの音が入っている訳
ではありませんが、偶々この「間奏曲」には、明瞭に聴き取れる程に収録されています。それが
最終部に出てきます。今回の試聴でも、このポイントに注目して聴いてみました。

 正直に言ってやはりE-120 程には明瞭にくっきりと聴こえてきませんが、そもそも低音が濁る
アンプに比べればずっと良い音で再生されたと言えると思います。やはり電源の問題があるので
音の芯が多少ぼやけるのは仕方ないところです。でなければ、苦労して安定化電源にする必要が
ありません。それにしてもこの「間奏曲」は本当にいい曲です。5分程の曲ですが名曲だと思い
ます。期せずして、9/28(日)の14:30 から同じ日フィルの名曲コンサートでこの「間奏曲」が
演奏されます。広上淳一で演奏したばかりですから、きっと良い演奏になると思います。

 皆さん、「E-10を欲しいけどちょっと高価で手が出ない」と尻込みされているなら、是非この
ヘッドホンアンプWRP-α9 をお試し下さい。特に、ヘッドホンで音楽を聴く習慣のある方に強く
お勧め致します。ヘッドホンの音は高帰還化アンプへのダイレクト接続ですから、制動の利いた
今まで聴いた事もない音で鳴るはずです。ヘッドホンは静電型が優位だ、と言う常識は覆された
と言っても過言ではありません。WRP-α9 なら高価なヘッドホンは必要ありません。そこそこの
ヘッドホンでも凄くいい音で鳴ると思います。ヘッドホンもスピーカーと同様に、単体ではその
音質は決まらないのです。アンプと組み合わせて初めて性能が決まるのです。

 又このヘッドホンアンプは高能率ホーンを使ったマルチシステムにも良いと思います。ノイズ
は14uV(DIN-AUDIO)と低く、オフセット電圧は2~3mV程度で、DCドリフトは殆どありませんから、
電源が揺すられる可能性の低い高域と中高域の帯域には安心してお使い頂けると思います。  

1526川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Jul 26 14:00:00 JST 2014
日フィル夏休みコンサートを聴いてきました。

 日フィルが子供を対象にした夏休みコンサートを始めてから、今年で40周年だそうで随分と
昔からやっていたのだと、改めて歴史の重みを認識しました。その頃私は30代になったばかり、
一体何をしていたのか全く思い出せません。そろそろ真空管アンプに決別し、TRアンプに切り
替えた頃だったかも知れません。

 私が夏休みコンサートに行き始めたのは極最近の事で、定期演奏会に通うようになってから
です。初めは府中の森の芸術劇場大ホールだったと記憶しています。勿論、孫を含めた家族で
行きました。その時は「くるみ割り人形」だったと思いますが、第二部でバレエがあり、孫が
喜んで見ていたのを憶えています。唯、指揮者が誰であったか定かではないのです。

 その後暫くご無沙汰だったのですが、サントリーホールでもやっているので、一度孫たちを
日本を代表するホールの一つに連れて行きたいと思い、家族全員でサントリーホールに行った
のです。定期会員は先行予約ができるので、ほぼ中央の6列辺りの結構良い席に皆座れました。
このような企画でもなければ、未就学児童を一流ホールに連れて行く事はできないでしょう。

 その時も第2部は「くるみ割り人形」でした。おもちゃの兵隊を楽団員がお面を被って演出
したり、子供たちは大喜びでした。この時の指揮者は、はっきりと憶えているのですが、最近
神奈フィルの常任になった、新進気鋭の川瀬賢太郎でした。東京国際指揮者コンクールで1位
無しの2位になった逸材です。広上淳一の弟子で師匠ゆずりの聴かせる音楽を上手く組み立て
る才能がある気がします。夏休みコンサートと言う子供相手の演奏会でも決して手を抜かない
真剣な演奏には、正直感動しました。

 今回は、初めて夏休みコンサートが八王子のオリンパスホールに来ると言うので、またまた
家族全員で行く事にしたのです。繰り返し行って見たいと思わせるような、そんなコンサート
なのです。地元に住んでいながらオリンパスホールにはこれまで行った事がなく、どんな音が
するホールなのか、好奇心も手伝っていました。今回はバレエではなく、日本女子体育大学の
新体操部メンバーによる新体操でした。ここはオリンピックにも代表を送り出す由緒ある大学
です。

 第1部は、ヘンデルの「水上の音楽」から「ホーンパイプ」とブリテンの「青少年のための
管弦楽入門」の2曲でした。最初音が出た瞬間、先ずは硬い音だと感じました。多分、それは
ホールで聴く音は「こう言う音」と言うイメージが出来上がっていて、サントリーホールの音
が自然に私の耳の規範になっているからだと思います。

 暫く聴いている内に耳が慣れて、硬さは取れた気がしたのですが、ハード気味の音には違い
ありません。木質系のホールとは一線を画す音です。締まっていて全く淀みやダブつきがあり
ません。ひずみ感もありません。座った席が前から数列目だったのでオケの音がストレートに
腹に来ます。言って見ればもの凄いハイパワーアンプで聴いているようなある種の快感があり
ます。川瀬賢太郎/日フィルの真剣な演奏もそれに一枚噛んでいたと思います。

 毎回そうですが、バレエや新体操を舞台上で行う為に、舞台の前方部分は大きくスペースが
空けられます。その分だけ舞台に乗れる団員は少なくなります。コントラバスは5人でしたし、
多分、他の弦パートも少なくなっているはずです。長丁場の夏休みコンサートですから、仕方
ありませんが、主席が居ないパートもあります。ですから、東京定期と比べればオケの実力は
確実に落ちていますが、それをカバーするくらいの熱演であったと認めても良いと思いました。

 第2部は、その空スペース上で音楽に合わせて新体操が繰り広げられました。曲目はルロイ
・アンダーソンの「舞踏会の美女」、ヨハン・シュトラウスⅡの「美しく青きドナウ」、毎年
プログラムに上ってきた「くるみ割り人形」の「トレパック」、この3曲が新体操による群舞
によって表現されました。

 動きにはバレエの要素も入っており、色取り取りの衣装は子供たちの目にはさぞ綺麗に見え
た事と思います。次のビゼーの「アルルの女」の「間奏曲」はソロダンスで終始怪しい雰囲気
を漂わせ、この曲にはこんな一面もあったのかと改めてこの間奏曲を見直しました。ゆったり
と身を動かすソロダンスも、全く笑顔のない仮面のような冷たい表情と上手くマッチして良か
ったと思います。最後はまた群舞に戻り「ベト7」の第4楽章に合わせて全員で踊るのでした。

 第3部は皆で歌おうと言う感じです。司会の江原陽子が上手く会場の子供たちをリードして
「さんぽ」「夏の思い出」「勇気100%」の3曲を全員で合唱したのです。江原は芸大声楽科の
出身だけあって、声質はあくまで透明、決してがなったりしないので聴き易かったと思います。
引っ込み思案の会場を上手く乗せて進行するのは難しいはずですが、スムーズに事が運んだの
は長年の蓄積があったからでしょう。古い「夏の思い出」を入れたのは親子孫3代で来る家族
も多いからでしょう。番外に40周年記念メドレーと称して、今流行っている「アナと雪の女王」
等の新曲を取り入れたサービスも会場を盛り上げていました。

 最後は又オケの演奏に戻り、ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」から「スイス軍の行進」
とアンコールを兼ねたシュトラウスⅠの「ラデツキー行進曲」の2曲が演奏されました。どの
曲も決して手を抜かない、川瀬/日フィルの演奏は子供たちにもその気持ちが伝わったのでは
ないでしょうか。どの曲を聴いても、ハードではあるが微塵のブレもないタイトな音はある種
の快感となっていました。オーディオ的な音だと言っても良いかも知れません。ティンパニー、
大太鼓がffで強打されてもその低音はあくまで透明で深く低く力強く腹に来るのでした。全く
膨満感のないこの安定感は何にも比肩できないでしょう。唯、これだけの音響を聴かされると
私は冷静には聴けず、音楽が疎かになる気がしないでもありませんでした。

 帰り際にロビーで指揮者の川瀬賢太郎や団員が出て、子供を中心にした質疑応答が行われて
いました。我が孫たちも最前列に座って真剣に聞いていました。質疑応答終了後に、指揮者の
サイン会があり、今回のコンサートの演奏曲目を収録したCD(\1,000)の中にサインを貰って
孫たちは上機嫌でした。そろそろ前半が終了しますが8月3日までこのコンサートは続きます。  

1525川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Jul 20 15:00:00 JST 2014
ハイパワーアンプはやはり魅力的か?

 最近カスタムでE-120 のご注文を頂き、暫くの間ハイパワーアンプの事は忘れていたのですが、
またちょっと火が点いた感じです。台数はそう多くはありませんが、明らかにハイパワーアンプ
志向の方は居られて、過去に何台かは作って納入しております。

 私は今現在、ブリッジ接続で300Wくらい出す為に100Wアンプを2台保有していますが、高帰還
アンプでのブリッジ接続は、折角下がった出力インピーダンスを倍にしてしまうからなのか期待
した程の音では鳴ってくれませんでした。この事はWR掲示板でもちょっと触れた事があります。

 それ以降100Wアンプは半ば眠っていたのですが、今回出来上がったE-120 をモニターしていて
100Wアンプの1台を120Wアンプに改造する決意をしました。ブリッジで使わないのなら、2台を
揃えて置く必要はない訳です。20W の差がどれ程あるかは別問題として、EMe 型パワーTRを使う
限りにおいては上限の、120Wにしたいと思ったのです。

 そんな簡単に100Wアンプを120Wにパワーアップ出来るものではありませんが、偶々100Wアンプ
の1台は120Wアンプが作れる電源トランスを積んでいたのです。WRアンプは安定化電源方式です
から、高出力のトランスを抑えて使う事はある程度可能なのです。

 具体的に言えば、安定化電源の出力電圧を±46Vにすれば100Wアンプに、±50Vにすれば120Wに
なるのです。但し、それに応じてアンプ基板の方も若干の手直しが必要になりますが、基本的に
余り多くの変更をせずに120Wアンプに仕上げる事が可能です。

 120Wアンプはそんなに魅力的か?と問われれば、「絶対いいですよ!」とまでは言えませんが、
ある種の魅力がある事は確かです。その魅力とは、やはりグッと伸びてくる音が全く怯まないで
直線的に突き抜けて行く感じが堪らないのかも知れません。私はバイオリンパートの合奏が何処
までも伸びてくる音に感動しますが、その踏ん張りがハイパワーアンプの方が一枚上だと思うの
です。

 これは音楽を聴くと言う事からするとほんの僅かな部分の事であって、この為に120Wアンプを
使う事はある意味馬鹿げているかも知れません。しかし、何とも言えぬ余裕感や安定感は確かに
オーディオとしての魅力ではあると思います。

 スピーカーの能率の割りにリスニングルームが広く、また相当大きな音量で聴きたいと思えば
物理的に120Wのアンプが必要になる場合もあるでしょう。しかし、日本の標準的な家屋ではまず
そのような事は殆どないと思います。寧ろ、120Wの大半は使わないで、その余裕感を楽しむのが
一般的だと思います。

 一般にアナログは、微小変化の範囲は完璧にリニア動作をするので、効率の問題は別にしても
ハイパワーアンプの一部の能力を使う意味は大いにあると思います。リニアの世界では、全ては
ノーインタラクションで動作するので、高周波雑音が絡んだ混変調とかのノンリニア特有の現象
は起きないのです。これが線形系の一大メリットです。

 その事が音の余裕や安定感、又底力に繋がっているのではないかと思います。しかし、いい事
ばかりではありません。WRアンプは、出来る限りアイドリング電流を絞っていますが、それでも
無信号時の消費電力は大きくなりますし、直流の100Vを扱う訳ですから、その危険性は必然的に
高まります。(電源電圧が±50VでもパワーTRには100V耐圧が必要になる)

 E-30やE-50は作りなれている事もありますが、電圧が低い事が全てを楽にしてくれます。殆ど
製作時の失敗はなく、問題も滅多に起きません。しかしE-120 ともなると日頃作り慣れていない
せいもありますが、一度や二度は大電流が流れてパワーTRを飛ばすとかの問題が起きます。大体
は初期不良的な事が殆どで、軌道に乗ってしまえば後は問題なく動作してくれますが、落ち着く
までに一苦労する事が多いです。

 そんな苦労を乗り越えて完成した120Wアンプには、自然に愛着が湧きます。そう言う心理的な
事もオーディオには必要です。「このアンプはいい音がする!」そう思って聴く事もある程度は
必要だと思います。しかし自己陶酔的な思い込みで聴き続ける事はお勧めできません。何故なら
その人のオーディオは何時まで経っても進歩しないからです。やはり何事も前に進む事が必要だ
と思います。

 こんな事を書きますと、E-10のご愛用者から「じゃー10W アンプはどうなんですか?」と言う
ご質問が来そうですが、これは決して詭弁ではなく、E-10はそれなりに頑張っていると思います。
上述しましたように、120Wアンプでのメリットは、音楽全体からすれば極狭い範囲の事であって、
大半はE-10でご満足頂けるものと確信しています。また繊細感は絶対的に優れていますから聴く
人によっては、E-10に軍配を上げる方が居ても全く不思議ではありません。

 唯、力で押したい音楽や、力で押したいマルチの帯域には、ハイパワーアンプは有効だと思い
ます。そのような事に思い当たる方で、50W を越えるアンプをお望みであれば、カスタムで何W
でもお作り致します。常識的にはE-80、E-100、E-120の三種でしょうか。勿論、中間出力も可能
です。

 最後に付け加えさせて頂きますが、WRアンプは帰還アンプに不可避的に生じる負性抵抗を回避
する2つの特許回路、コレクタホロワ、高帰還化技術、安定化電源方式等、伝統的な回路に頼る
他社アンプとは本質的に相違する回路技術を満載されています。従いまして、E-10の10W も中身
の濃いものになっていて、10W ギリギリまで駆動しても音の崩れは僅少で済みます。普通、音楽
聴取の平均パワーは2~3W くらいですから、10W が保証されていればノープロブレムなはずです。

 どうか、他社アンプと比べる時に、最大出力の数字を単純に比較なさらないように、切にお願
いする次第です。


注)私は4Ωなどの低インピーダンス・スピーカーも一般に低能率スピーカーと見なしています。
 従って、ハイパワーアンプが必要になる場合が多いのだと思います。  

1524川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Jul 13 15:00:00 JST 2014
日フィル7月定期を聴く

 今月の指揮者は久しぶりに広上淳一で、普段余り聴かない小品ばかり6曲でした。7月は夏休み
コンサートがあるので毎年10日頃に設定されていて、6月定期が終わったばかりなのに直ぐに7月
定期が巡ってきます。

 定期演奏会の演目は、普通長大なメインの曲が後半に置かれますが、今回強いてそれを挙げれば
ストラビンスキーのバレエ曲「プルチネッラ」で、この曲とて25分程度しかありません。聴く側は
聴いた気がしない、あるいは物足りないと言う読後感?があった事は否定できません。

 しかし、普段は聴けないような曲が多かったので、偶にこのようなプログラムがあっても良いの
かな、とも思いました。では、その6曲をご紹介して置きましょう。

 1)モンテベルディ:オペラ「オルフェオ」よりトッカータ 約2分

 2)デュティユー:コレスポンダンス → ソプラノ:谷村 由美 約22分

 3)ベルリオーズ:序曲「海賊」 約8分

 4)プッチーニ:交響的奇想曲 約16分

 5)プッチーニ:オペラ「マノンレスコー」より第3幕への間奏曲 約5分

 6)ストラビンスキー:バレエ曲「プルチネッラ」約24分

 以上のような、ちょっと玄人好みの選曲でした。では、順を追って感じた事を書いて行きたいと
思います。

 先ずご覧になって分かるように、ドイツ音楽が排除されていて、全てはイタリア、フランス系の
曲で統一されています。ストラビンスキーはロシアの作曲家ですが、彼のバレエ音楽はフランスと
切っても切れない関係にありますし、この曲のタイトルもイタリアの道化師を差しています。

 モンテベルディは、バロック以前と言っても良い、我々が普通に聴く音楽では最も古い方に属し
ます。今回演奏された「オルフェオ」のトッカータですが、勿論オリジナルではなく、現代オケ用
(2管編成)に編曲された版が使われました。トッカータはバッハの曲等でお馴染みですが、此処
ではその意味ではなく「序曲」と言う意味のようです。

 のっけから鄙びた感じの音色に、如何にもバロック以前の香りを感じました。ファンファーレ的
な金管処理が行われているので、トランペットを始とした金管の迫力が、摩訶不思議なバランスで
その鄙びた香りと均衡を保っていました。僅か2分で終わるには勿体無い気がした程です。拍手を
受けた広上も、この程度で拍手をして貰うのは申し訳ない、と言う風に半身だけ客席の方に向けて
軽く会釈していました。

 デュティユーと言う名は正直知りませんでした。フランスの現代作曲家(昨年5月に死去)です
ので、私が知らないのも無理はありません。この「コレスポンダンス」は往復書簡を意味しますが
銅鑼(ドラ)の音に関する詩や宇宙的舞踏に関する詩が続いたかと思えば、ソ連で追放されたソル
ジェニーツィンの話が語られたり、絵画のゴッホの話が語られたり、やはり凡人には理解できない
内容です。

 これをソプラノの谷村由美がオケ伴に乗って歌うのでした。谷村はフランスに留学し、国際的な
コンクールで幾つもの賞を獲得している逸材です。声質はあくまでも柔らかく滑らかで、恵まれた
才能を有しているように見受けました。曲も、不規則なリズムや不協和音が続く現代曲とは違って
聴き易いものでしたが、正直、最後の方は睡魔に襲われてしまいました。

 前半を締め括るのは、今回のプログラムの中では演奏の機会の多いベルリオーズの「海賊」です。
この曲には思い入れがあって、どうしてもそれとの対比で聴いてしまいます。デュトアの名が日本
で急速に知れ渡った頃に、モントリオール響を伴って来日したので、家族揃って勇んで聴きに行き
ました。メインが何だったかもう憶えていないのですが、スターンがベートーベンのV協を弾いた
事だけは確かです。

 しかし、コンチェルトは一般にそうですが、自分の家で聴くより迫力が劣り、大概物足りなさを
感じて幻滅する事が多いのです。私はその当時はオイストラッフ/クリュィタンス/フランス国立
管で聴いていましたが、その感じが出ないのです。スターンも全盛期を過ぎて切れを欠いていたし、
モントリオール響のベートーベンが何とも軟弱で、がっかりしてしまいました。

 デュトワ/モントリオール響は、英デッかの録音に助けられているのかも知れない、そんな風に
思っていたところ、アンコールがありました。それがこの序曲「海賊」だったのです。始まるまで
全く期待していなかったのですが、何とこれまでの雰囲気は一変し、あの速い刻みの弦楽パートの
音が天井まで昇華するかのように、舞い上がったのでした。その瞬間、自分が何処に居るのか全く
分からなくなったのです。宙に浮いたような気分になりました。

 デュトワ/モントリオール響は水を得た魚のように、縦横無尽にこの曲を演奏したのです。全く
文句のつけようも無い程の名演でした。英デッカでCD化されていますが、こちらは録音が足を引っ
張っていて、その時の感じの半分も出ていません。もう私の中では永久欠番のような存在になって
いて、今後何を聴いても駄目な気がします。勿論、広上/日フィルも水準以上の演奏をしていたと
思いますが、舞い上がるような弦の音にはなりませんでした。

 15分の休憩を挟んでプッチーニの数少ない管弦楽曲である交響的奇想曲です。この曲はビゼーの
ハ長調交響曲のように、ミラノ音楽院に在学中に作曲されていますが、何故か2台のピアノ版以外
のスコアは出版されなかったようです。作曲者自身がオケ版を禁じたようで、実際に世の中に出た
のは、割と最近の1970年代になってからだそうです。

 曲は如何にもイタリアオペラと言った感じで、劇的でメロディックで魅力的です。プッチーニに
限らず、ベリズモオペラにもよく出てくる音楽のフレーズを垣間見るような感じです。結構面白い
曲なのに演奏の機会が少ないのは、「プッチーニの管弦楽曲?」と言う疑問符と、オケ版の発表が
遅れた事でしょう。もう少し演奏されても良い気がしました。

 次もプッチーニです。歌劇「ボエーム」では、今ひとつ交響的な響きに欠け、軟弱な歌劇と言う
イメージがありましたが、「トスカ」はベルディと比肩できる力作だと言えると思います。「蝶々
婦人」もカラヤンが演奏すると結構劇的な迫力を満喫できます。何と言っても「トゥーランドット」
がやはり最高峰かと思いますが、カラヤン/ウィーンフィルの右に出るものはないでしょう。第一
録音が素晴らしいです。

 「マノンレスコー」は比較的初期の作品で、私はLP、CDの類を持っていません。ですから、この
第三幕への前奏曲も持っていませんでした。殆ど聴いた事がなかったのです。間奏曲ですから僅か
5分程度の曲なので余り期待していなかったのですが、半ば辺りからの弦楽パート、特に第一第二
バイオリンの地に足をつけたような厚みのある、エネルギー感に富んだ音に圧倒され痺れてしまい
ました。今回のプラグラムの中で一番心を揺すられたように思います。

 「カバレリア」の弦も素敵ですが、こちらの方が面で押してくるようなより太く重厚な弦が聴け
ます。この弦の音は日本のオケでは到底無理なはずですが、今の日フィルなら大丈夫です。やはり
ラザレフの訓練のお陰なのかも知れません。コンマスが扇谷泰朋であった事も良かったのでしょう。
早速、この曲のベストCDが何かを探す気になりました。この弦の音が再現できるか、新たな目標が
できました。

 最後の曲は「プルチネッラ」です。「春の祭典」を発表した後、第一次世界大戦が勃発し、自身
はスイスに逃れますが、1919年にディアギレフからバレエ音楽を依頼されます。元はペルゴレージ
の作品を大規模なバレエ音楽に仕立て上げるように頼まれるのですが、何故かストラビンスキーは
古典的スタイルで作曲を始めたのです。

 当時、ヨーロッパには新古典主義の流れが起きていて、ストラビンスキーもその流れに乗ったの
でしょう。プロコの「古典交響曲」はその代表的な楽曲です。「プルチネッラ」の楽器編成は規模
が小さくクラリネットを欠いています。モーツァルトがクラリネット無しの楽曲を幾つか作曲して
いますが、それに習ったのかも知れません。

 指揮者の至近距離に、第一、第二バイオリン、チェロ、コントラバス、ビオラのトップが並んで、
室内楽の雰囲気を狙っていました。フルート2、オーボエ2、ファゴット2は定位置ですが、クラ
の所にホルン2が陣取ります。その左にトランペット1、トロンボーン1が並びます。あとは弦楽
5部が人数を減らして、それらを取り囲むように並びます。

 音が出始めると、何か懐かしさを感じました。モーツァルトだったり、ハイドンであったり、又
時にはバロック的な響きがするのです。暫くの間、所謂ストラビンスキー臭さを封印していたよう
に感じましたが、トランペットやトロンボーンが活躍し始めると、「ペトルーシュカ」を連想する
ような和音が奏されました。最後の方になると、最早古典の曲では有り得ないトロンボーンの強奏
やトランペットとトロンボーンの競演があり、ストラインスキーの面目躍如たる音楽に盛り上がる
のでした。  

1523川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Jul 6 17:00:00 JST 2014
ハイレゾに関する一考察

 気が付いて見たら、何時の間にやらオーディオの世界は「ハイレゾ」の時代になっていました。
ハイレゾのマークが付いていたら安心、付いてないものは買わない、と言うような極端な考えを
する人も多いと聞き、私の考えを此処で述べて見たいと思います。

 まず、元来ハイレゾと言う言葉が独り歩きするようになった原点は、やはりCDの発売ではない
かと思います。少なくてもアナログ時代には余り使われない言葉でした。それは殆どのアナログ
アンプは、イントラドライブの無帰還アンプでもない限りハイレゾが当たり前だからです。逆に
帰還アンプで本質的なナローバンドアンプを作るのは至難の技です。

 1970年代の後半に、デジタル技術やCDに関する論文発表が相次いで行われるようになりました。
私も当時は真面目に日本音響学会で論文発表を行っていましたが、今でも記憶に残っているのは
CDの上限再生周波数をどうするか、と言う論争でした。

 人間の耳に聴こえる周波数はどう頑張っても20KHz 止まりですから、20KHz にすべきであると
言う意見が多数派でした。その一方で、その上の周波数も音楽再生に大切だからもう少し伸ばす
べきだと言う意見もありましたが、多勢に無勢で押し切られたように思います。

 それにはCDの最大再生時間(約73分)の問題も影響していました。第9をCD1枚に入るように
する、と言う目標があったのです。もし20KHz 以上の再生を可能にすると、それは到底叶わない
事になります。しかし一説に依りますと、人間の耳は過渡音ならば20KHz の音にも反応するかも
知れないと言われていますから、20KHz 以上を考慮したソースも意味がないとは言い切れないと
思います。

 伝統的に電話やオーディオに関する理論計算は、取り扱われる信号が正弦波であると言う仮定
で行われてきました。だからCDの上限再生周波数を決める際に、正弦波を仮定する事はある意味
筋が通っていた事になりますし、その限りにおいてそれは正しい判断だったと言えると思います。
こうして、44.1KHz と言うサンプリング周波数が必然的に決まったのでしょう。

 サンプリング周波数の他に、もう一つ量子化の問題があります。日本で最初にデジタル録音を
実用化したデノンのPCM 録音は、当初は14bit でスタートしたはずですが、世界的には16bit が
主流になり、結局、16bit に合わせる形になりました。デノンは当初 14bitでも十分に行けると
説明していました。

 量子化ビット数を増やすと2倍、4倍、8倍とどんどん情報量が増えて行くので、当時メモリ
の価格がまだまだ高価であった時代、できるだけ情報量を減らしたかったのでしょう。デノンも
含めて、最大限の努力の結果16bit に落ち着いたのだと思います。こうして、44.1KHz/16bit と
言うCD-DA の仕様になったのです。

 問題は、高レベルの音楽再生にこの数値は不足なのか、と言う問題です。結論から先に言えば
私は「必要十分条件を満たしている」と最近は感じています。未だWRアンプが旧型アンプだった
頃は、確かにWRレコーディングを96KHz/24bit でDVD-AUDUIOに焼いて聴くと、CDに焼くより良い
感触を持つ事が多かったと思いますが、本当にハイレゾの良さを理解していたかどうか怪しいと
思っています。

 しかしコレクタホロワ化と高帰還化によってWRアンプが理想的な帰還アンプになった事、及び
96KHz/24bit → 44.1KHz/16bitにダウンコンバートする最善の方法を息子が研究した事、そして
なにより多チャンネル録音から2チャンにトラックダウンする、位相ひずみのない理想的な方法
を息子が考案した事、録音に使うマイクプリにも、コレクタホロワ化や高帰還化技術が生きた事、
これらの複数の事が重畳されて、CDクオリティが劇的に向上し最早DVD-AUDIO の必要性が薄れた
と言うのが現実なのです。

 今考えて見るとコレクタホロワ化や高帰還化技術が確立された事で、先ず音取りのクオリティ
が上がり、同時にモニターが正確に出来るようになった事で、相乗的に正しい録音法が確立でき
た事です。オーディオの基本には、正しい音を再現できるアンプの存在が必須なのです。これが
ないと基準が定まらないので、何をやっても五里霧中の中を彷徨う事になります。逆に此処まで
来ればソースがハイレゾかどうかは余り問題にはなりません。

 誤解のないように申し上げておきますが、DVD-AUDIO(ハイレゾ)が劣っている、と言う事では
決してなく、CDでも音楽を楽しむのに十分な音質で鳴ってくれる、と言う意味です。CD-DA 仕様
がフルに発揮されれば、生の音楽の感触を必要にして十分な程度に再現できる、と言えると思い
ます。生演奏会のエネルギー感を除けば、質的にはかなりの部分が我が家でも聴ける状態になり
ました。一例を挙げれば、弦パートの匂い立つようなフアッとした音、軽く深く沈み込むダブル
ベースのピッチカート、目の醒めるようなピアノの右手の音、軽く下方に伸びるピアノの極低音、
等々枚挙に暇がありません。

 翻って見ると、市販されているCDの多くは、多かれ少なかれ録音に失敗してるものが多い上に、
世の中の標準的なアンプでは、まともに再生できない事が多いと言う、不幸な状況にあるのだと
思います。それで44.1KHz/16bit がやり玉にあがっているのであって、私は濡れ衣を着せられて
いると思います。ハイレゾ、ハイレゾと言う前に、もっとやるべき事があるのではないでしょう
か? 逆に言えば、基本的な対策を施さないで上辺だけハイレゾを取り入れても、オーディオの
本質的な解決にはならない、と言う事なのです。

 考えて見ると一時は電材を無酸素銅化すると言う事が流行り、今はハイレゾが流行っています。
これはオーディオ産業の問題と無関係ではありません。それが正しいことかどうかより、商売を
優先にしているオーディオ業界の何時もの手口なのです。もうどうして良いか分からないくらい
にオーディオは病んでいると思います。そう言うお遊びが趣味の方は結構ですが、本当はいい音
で音楽を楽しみたいと思っている方には気の毒な話です。

 そう言う事に、薄ら薄ら気が付いている方は、WRアンプをお買いになり、是非正攻法で良い音
を実現して下さい。少し気の利いたブックシェルフSPとプレーヤーをお持ちなら、EC-1とE-10の
組み合わせで十分です。勇気を出して、オーディオの柵から脱出して見ませんか?  

1522川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Jul 1 19:00:00 JST 2014
シューベルトの「未完成」

 本来は、この日の記事内容は「日フィル6月定期を聴く」になるはずでしたが、定期の次の日に
前橋で姪の結婚式があり、往復車で行く予定でしたので、体力を温存する意味で定期の方は息子に
代わって行って貰いました。

 披露宴は前橋の比較的新しいホテルで行われましたが、改めてこれが今風の結婚式かと思うほど、
我々の時代からは想像もつかない催しが盛り沢山でした。閉口したのは、大スクリーンによる映像
とそれに同期するPAの大パワーでした。途中で耳に指を入れて遮音しないと神経が参りそうでした。
最近の披露宴には耳栓を持参した方が無難です。よく皆さん大丈夫だなと思ったのでした。因みに
BOSEの音響システムでした。

 ところで、定期の演目は3月11日の大震災当日のプログラムの再演だったのです。当日演奏会は
強行されたのですが、お客さんは10人台だったと聞いています。つまり、殆どの方は聴けなかった
訳ですからリベンジは有り難かったのですが、私には縁が無かったのでしょう。指揮はインキネン
で曲目はシベリウスの「夜の騎行と日の出」とマラ6でした。どちらも聴きたかったのですが残念
でした。

 さて、前回シノーポリの「未完成」が立派な演奏だと書きましたが、何回聴き直してももの凄く
真面目で力一杯演奏しています。敢えて欠点を言えば、その真面目さが少し息苦しさを感じさせる
点でしょうか。もう少しふあっとした雰囲気も未完成には必要かなと思います。

 私が「未完成」を聴いて良い曲だなと思ったのは、中学校時代の昼休みの時間でした。校内放送
で「未完成」が流れていたのです。当時はSP盤だったはずですから、ワルター/ウィーンフィルの
演奏だったに違いありません。そう言えば、「未完成交響楽」と言う映画があり、多分、課外授業
として学年で大挙して見に行った記憶があります。当時、「未完成」は人気があったのです。

 未完成のメロディは甘美で、中高校生の心を捉えて放さない何かがあります。青春にはピッタリ
の曲だと思います。そんな事もあって、高校の放送部主催のレコードコンサートでも取り上げたの
です。当時はMP盤(25cmLP)と言うものがあって、30cmLPが 2,300円の頃に1枚千円で買えたので
割りに気楽に集められました。

 キングレコードがロンドン・レーベルを、コロムビアレコードがダイヤモンド・シリーズを発売
していました。そんな中にベーム/ウィーンフィルのモノ盤(英デッか録音)があって、そのMP盤
が放送部にあったのです。この演奏がもの凄く厳しく引き締まっていて、素晴らしい「未完成」で
した。当時、「未完成」はウィーンフィルと相場が決まっていました。

 放送部には結構オーディオや音楽好きが集まっていて、ダイヤモンド・シリーズを含めてMP盤が
10枚以上ありました。今でも記憶に残っていますが、オーマンディのシャブリエ/狂詩曲スペイン
は素晴らしい演奏でした。アイネクライネを初めて聴いたのも放送部のMP盤でした。昼休みになる
と部員が三々五々と集まって来てワイワイやっていました。私も全校放送の連絡を読んだ事があり
ます。クラスに戻ると女の子に冷やかされました。青春のいい想い出です。

 そんな放送部の連中が集まって「レコードコンサートをやりたい!」と言う事になり、学校側に
交渉したのです。何故か学校側の許可が下りたのでした。もしかしたら音楽評論家の三浦淳史先生
が英語教師として在籍されていたからかも知れません。全学を集めるには講堂(体育館)でやるしか
ありませんが、アンプには放送部にあったイントラドライブの 807PPをPK分割に直し、NFを掛けた
記憶があります。SPには8PW1をコーナー型バスレフ式キャビネットに入れたものを使ったのですが、
予想以上の音量で鳴ってくれました。ピックアップカートリッジは、プリモのクリスタルでしたが
そこそこいい音がしていました。当時は高周波ノイズが少なかったので、適当でもいい音がしたの
だと思います。

 今でも想い出しますが、曲が終わると彼方此方で啜り泣きの声がしたのでした。当時の生徒たち
は純粋だったのです。放送部が学校側に交渉をして、全校生徒を対象にしたレコードコンサートを
開くには、それなりの苦労があったのですが、皆が感激している様子に、疲れも一気に吹き飛んだ
のを憶えています。昔の高校は古き良き時代だったのか、教育現場にも、それなりの自由と遊びが
ありました。それは大学も同じでしょう。

 少し話が横道に反れますが、古き良き時代の大学には旧制高校を卒業した雰囲気をもった教授が
多かったし、自由な討論が研究室の片隅でコーヒー飲みながら語られていました。音楽好きの先生
のところではクラシックも流れたりしていました。研究にも教育にも余裕があり、セコセコと論文
を書く嫌な雰囲気なんか微塵も感じませんでした。だから腰を落ち着けて壮大な研究に没頭できた
のだと思います。状況を変えた一因は学生数の減少による財政難だと思います。お金を握る事務方
が優位に立ち、教員は大きな事が言えなくなりました。そして世知辛い大学になって行ったように
思います。その直前で大学を退職できたのは不幸中の幸いでした。今の学生は管理、管理の大学で
可愛そうだと思います。

 夢が一杯の大学に進学した頃にウィーンフィルが度々来日するようになりました。ベームと来日
した時には副指揮者だったムーティの公演(NHK ホール)しか買えませんでしたが、ショルティの
時には本命の上野文化会館の公演を入手できました。そのプログラムに「未完成」があったのです。
3階席の右手前方の席でしたが、生のウィーンフィルを上から見下ろし、その「未完成」を聴いて
本当に感無量でした。英デッかで聴いてるショルティ/ウィーンフィルが目の前にあったのです。

 それ以来最高峰を登り詰めたと言う気がしたのか「未完成」への執着心が薄れ、特にLPを集める
とか、「未完成」を聴きに行くとかと言う特別な事はしないまま、歳を重ねて行きました。そして
偶然、演奏会で「未完成」に出っくわすと、大した演奏じゃないなと何時も思うのでした。

 最近の日本では「未完成」の重要度が落ちたのか、プログラムに上ってもメインではなく、前座
に置かれる事が殆どです。正直に言って、オケの前座の演奏には充実感が不足します。30分程度の
曲をメインにもって来るのは気が引けるのかも知れませんが、音楽の重要度は時間の関数ではない
と思うのです。30分の曲でも「未完成」は立派な完成品です。堂々とメインの曲として取り上げて
最高の演奏をして欲しいのです。手を抜いた「未完成」なんて聴きたくありません。曲が短くても
充実感を味わえればお客さんは満足するし、もし時間が余るなら番外でアンコールもいいかも知れ
ません。定期でアンコールを聴くと得した気分になりますから。

 その意味でシノポーリの「未完成」は好感がもてます。このレベルの演奏を生演奏会でもやって
欲しいと思うのは、私だけでしょうか? 前回はE-50で聴きましたが今回はE-10で聴いて見ました。
当然ながら、力感や安定感はE-50が上ですが、E-10も思ったほど弱くありません。繊細感は優れて
いるように思います。この録音のバランスエンジニアはクラウス・ヒーマンですが、ホールの残響
がかなりあって、そのせいか結構再生は難しいと思います。普通の装置では、ffで混濁すると思い
ます。しかし、E-50やE-10で聴くと本当に素晴らしい「未完成」が聴けます。WRアンプの存在価値
は十分あると自負しています。  

1521川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Jun 25 18:00:00 JST 2014
プロテクション回路の不安定動作について(お知らせ)

 Εシリーズに移行した頃の、初期のE-50の修理がありました。先日急に気温が上昇し、その為か
プロテクション回路が働いてしまう、と言うトラブルでした。プロテクション回路は、基本的には
スピーカー端子に直流分が検出された時に動作するようになっています。シャーシが熱くなっても
普通は動作しないはずです。

 その話を聞いてピンと来るものがありました。プロテクション回路は旧型アンプ当時(WRP-α1)
から採用しているものですが、使用している基板が違うので当初旧基板に行っていた対策を怠って
いたのです。途中で気が付いて慌てて対策をしましたが、未対策のまま出荷されたものがあります。
これはΕC-1 も含めて全て共通です。

 もし、シャーシが熱くなるとプロテクションが働いたり、訳も無く音が出なくなったりした場合
は、取り敢えず私宛にメールでご相談下さい。通常の使用で特に問題がない場合は、無理に対策を
行う必要はありません。お手数をお掛け致しますが、該当の方は無償で修理させて頂きます。

 さて修理が終わったE-50ですが、念には念を入れる為に私の所でもテストして見る事にしました。
実は製品版のE-50を聴くのは久しぶりです。自分の思ったような音が出るのかどうか、音質の方も
気になっていました。

 先ずは気楽にジャズ等の非クラシック音楽を聴いて見る事にしました。大体、1枚のCDから2曲
くらいを聴くのが気分も変わって適当だと思いました。聴いたCDを羅列して見ます。殆どが好録音
です。

1)FARAMERS MARKET BARBECUE  COUNT BASIE BIG BAND(J33J-20056)

2)IN THE DIGITAL MOOD  THE GLENN MILLER ORCHESTRA(VDP-1157)

3)KING OF SWING  BENNY GOODMAN BAND → AUREX JAZZ FESTIVAL '80 LIVE(CP35-5010)

4)DUKE'S BIG4 / DUKE ELLINGTON BIG4(J33J-20009)

5)the nearness of you  Dianne Reeves(CJ32-5020)

6)As Time Goes By  CHRIS CONNOR with HANK JONES TRIO(ALCR-111)

7)GRP ALL-STAR BIG BAND(MVCR-99)

8)All About HAWAIIAN  バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ(TECD-25289)

9)TANGO BEST20  STANLEY BLACK(K30Y 4033)

 非クラシック音楽のテスト盤として、座右に置いて聴くものが多いのですが、1)からは2、3
トラックを聴きました。セントルイス・ブルースはスローで弱音を大切にした独特の演奏スタイル
に惹かれるところがありました。次のビーヴァー・ジャンクションはビッグバンドの醍醐味が味わ
える輝きと迫力がありました。何時聴いてもベーシーはいいですね。

 グレンミラーは子供頃からSP盤で聴いてきたので、本当に懐かしく、特にこの演奏はオリジナル
に比較的忠実に演奏しているので、子供の頃の思い出がそれこそ走馬灯のようにくるくると回って
頭を過ぎっていました。今回は4、5トラックの真珠の首飾りと茶色の小瓶を聴きました。

 ベニー・グッドマンも子供の頃から聴いていたので懐かしさは格別です。このCDは晩年に日本を
訪れた時のライブですが、まだまだテクニックも衰えていないし、気持ちよくスイングしています。
録音は東芝に所属されていた行方氏によるものですが流石です。非常によく録れています。武道館
ライブなので、壁からの変な反射が無く音が素直で綺麗です。

 デューク・エリントンは普通はビッグバンドで聴く事が多いですが、これは珍しくビッグフォー
で、デュークのピアノソロが聴けます。ベースは名手レイ・ブラウンですから切れがあって、沈み
込むような深い音が楽しめます。1のコットンテイルを聴きましたが、意外にデュークのピアノは
綺麗に澄んでいました。

 ダイアン・リーヴスを聴く時は何時も4トラックの「FOR ALL WE KNOW」を聴きます。冒頭に出る
ピアノの音の再生が難しいからです。上記2つのピアノ、ベーシーもエリントンも綺麗に演奏して
いますが、このピアノは装置の調子によっては耳に来ます。最近は殆ど問題は無くなっていますが、
お世辞にもよく録れているとは言えません。これを除けば、ダイアンの声質もいいし、途中で出て
くるサックスなどのジャズらしい演奏も魅力的です。第一、この曲は本当に名曲だと思います。

 クリス・コナーも子供の頃から名前は聞いていたので、このCDを録音した時は還暦を過ぎていた
はずです。声質に多少の陰りはあるものの、落ち着いた歌い方は、タイトル曲には相応しく映画の
ワンシーンを思い起こさせてくれました。それにしてもイングリッド・バーグマンは素敵でした。

 最近は下火になったのでしょうか、一時はGRP のCDが多く制作されていましたが、このCDもその
1枚です。この中では何と言っても6トラックのサイドワインダーだと思います。リー・モーガン
の名曲を見事にビッグバンドにアレンジしていて、徐々に迫力を増して行く演奏は素晴らしいです。
グレンミラーもそうですが、GRP の録音は大抵は成功しています。しかし、アンプが駄目だと何処
かで馬脚を現す厳しい録音が多いです。
 
 ハワイアンは、若かりし頃にダンスバーティーに行って生で結構聴いたので、これも懐かしいの
一言です。バッキー白片も行ったはずです。その他、大橋節夫とハニーアイランダースが多かった
と思います。このCDは過去のライブラリーからの寄せ集めらしく、録音の良し悪しが多少ある気が
します。何時も聴くのは9トラックの南国の夜と最後のアロハ・オエで、比較的良く録れています。
昔の壁の華を思い出しながら聴くハワイアンもまた格別です。

 さらに懐かしいのは、このコンチネンタル・タンゴの名曲を集めたアルバムです。遡ることうん
十年前の事ですが、兄が請け負ったセパレート型アンプ一式が完成して、まだ珍しかったLPを再生
した時の話です。オイルダンプ・アームにバリレラ型カートリッジ、12吋のLPは紺色のレーベルで
あった事まで憶えています。プリはタンノーバーとロールオフを別々のツマミで調節するタイプで、
パワーアンプはGT管が並んでいました。多分、6F6 か6V6PP ではなかったかと思います。

 その時、注文主から借りて来たLPがコンチネンタル・タンゴだったのです。演奏までは分かりま
せんが、アルフレッドハウゼ辺りだったのでしょう。曲は多分、碧空、バラのタンゴ、夜のタンゴ、
などの典型的なコンチネンタル・タンゴだったはずです。と言うのは、既に聴いて知っていたから
です。

 我が家は戦後まもなく何の楽しみもない頃に家庭ダンスパーティーを親父が始めて、学校の先生
や隣近所のハイカラな小父さん小母さんが集まっていました。戦前からあった2台の電蓄でSP盤を
掛けて社交ダンスもどきをやっていたのです。ダンスにはタンゴは必須で、それにコンチネンタル
タンゴが使われていたのでした。だから、子供の耳にも残っていたのでしょう。

 このCDの演奏はスタンリー・ブラックで、多少ダンスの国のお国柄かテンポを真面目に刻む傾向
がありますが、概して昔の懐かしい演奏を彷彿とさせてくれます。実は、このCDは難物で弦の音が
悲鳴を上げる有様でした。大きな音では楽しめずにいました。今回、急に思いついて掛けて見ると
何と、殆どの曲が大音量でも楽しめるようになっていたのです!

 概してコンチネンタル・タンゴの再生は難しく、他にも格好なものはないはずです。しかしこの
CDは、少なくてもWRアンプでは殆どクリアできますので、思いっきり楽しめます。ストリングスの
ffやバンドネオンの切れ味鋭い叫びは、本当に胸が空きます。木管がオンマイク過ぎたりしますが
腐っても英デッカ録音だと今回初めて思いました。もうこのCDは売ってないでしょうが、別のCDに
生まれ変わっているかも知れません。コンチネンタル・タンゴ好きの方は注目です。

 ラ・クンパルシータ、エル・チョクロが特に素晴らしいです。意外に良かったのが、真珠採りの
タンゴです。これはリカルド・サントス盤が一世を風靡しましたが、残念ながら録音が古くてHiFi
では楽しめません。他の盤は演奏が今ひとつで感じが出ません。リカルド・サントスの正式名称で
あるウェルナー・ミューラー盤もありますが、全く演奏スタイルが違います。その意味でこのCDは
合格だと思いました。

 ここまで非クラシック音楽ばかり聴いてきましたが勿論クラシック音楽も聴いてみました。その
中で注目は、結構厳しい録音だと思っていたシノーポリ/フィルハモニア管の未完成(445 514-2)
が殆ど問題なく鳴った事です。このCDは、シノーポリの独グラモフォンへのデビュー盤と言っても
良いもので、シノーポリの実力を世界に知らせしめたCDです。普通、フィルハモニア管は少し弱い
のですが、このCDの演奏はシノーポリに鼓舞されて、凄く立派な演奏をしています。この位の品質
で聴けるのなら、「未完成」のベスト盤だと言っても過言ではないでしょう。但し普通の装置では
上手く再生できない可能性が高いです。

 日頃聴くクラシックとは全く違う世界で音楽を楽しみました。ここまで聴いて見て製品版のE-50
は素晴らしく、引き締まっていて微塵の弛みとかひずみ感がなく、力感がありながら難物も難なく
再生する能力に、我ながらいいアンプを作ったものだと思ったのでした。因みにプリにはΕC-1 を
使いました。このプリは凄く評判が良いです。皆さん表現こそ違いますが、私が最初に書いた濃く
のある音、と言う意味の中に包含されるような気がします。
 
 世間でよく行われる「音質部品」を使った、包み隠すような音作りとは 180度違い、あるべき姿
を包み隠さず出した上で、嫌な音は出さない、と言う音作りになっています。それは倉太郎さんも
「輪郭をぼかして不快感を和らげるようなアプローチは採られていない」と仰っています。皆さん
この違いをよくお考えになって見て下さい。  

1520川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Jun 19 22:00:00 JST 2014
倉太郎さん、数多くのWRアンプお買い上げと、ご投稿ありがとうございます。

 倉太郎さんからお電話を頂いたのは、もう半年以上も前の事でした。生の演奏会で聴いた
音と自分の装置から出る音の落差にがっかりされている、と仰っていたと思います。その時、
お使いの装置に関して伺った要点を整理して見ますと、

1.ゴトーユニットを使ったマルチアンプシステムで、主にクラシック音楽を聴いている事。

2.機器間は全てバランス接続をしている事。

3.低音と中低音は2つのドライバーを使いそれぞれ2台のパワーアンプで駆動している事。

4.オーディオ用に200Vの電力線を引いている事。

5.3P電源ケーブルのアース端子を、強力な地中アースに落としている事。

6.信号ラインに7Nを使っている事。

となると思います。

 1、2、4は特に問題なく対応可能であるとお伝えし、5もアースがループにならないよう
に気をつければ、ハムなどの問題はないだろうと申し上げましたが、7Nだけは諦めて頂きたい
とはっきり申し上げました。これまでの経験から7Nを使う以上WRアンプの本領が発揮されない
事が分かっていたからです。

 しかし普通の方は、高価な7Nに多大な投資をしている訳ですから、すぐさま「分かりました」
と素直には応じられません。何回かお電話で連絡を取らせて頂きましたが、一度はWRアンプを
諦めると仰ったのでした。こちらも本領が発揮されない事が分かっていながら、7Nの継続使用
を認めれば、自ずと結果は見えているので、ビジネスとして割り切る事は出来なかったのです。

 その時に申し上げた事は「理由は兎も角も7Nはアンプの悪さを隠す便法ですから、従来型の
アンプを幾らお探しになっても、抜本的な改善は望み薄です!」と言う内容だったと思います。
普通の方はそれで終わりになるものですが、倉太郎さんのお偉いところは、従来のオーディオ
から脱皮すると言う堅い信念をお持ちだった事です。

 2、3日後に連絡を頂き、7Nを諦めてWRアンプに掛けて見たいと言うお話を頂いたのでした。
それで急遽話が纏まり、バランス入力、VR無、200V電源使用、3P電源ケーブルのアース端子を
生かす、と言う仕様でE-10を取り敢えず1台お作りする事になりました。去年の秋の事だった
と思います。

 その頃はそろそろアンプの受注が増え、しかもカスタム仕様ですから相当納期が掛かり始め
ていました。その間に手元にあった高帰還化WRアンプを2台ばかりお貸し出しして、WRアンプ
をマルチに入れて使った時の音の感触を確かめて頂く事にしたのです。確か、中音域にお使い
になったはずです。又、バランス接続ケーブルと電源ケーブルはWR推奨のものをお貸しした事
は言うまでもありません。

 倉太郎さんから、これまでお使いのパワーアンプ2台を、WRアンプで置き換えた場合の試聴
結果がメールで送られてきました。五里霧中の中にあって2台だけ変えても、そう大きな改善
は期待できないはずですが、それでも「少し演奏会の雰囲気が感じられるようになった!」と
前向きの返答を頂いたのです。

 やはり日頃、生演奏会を聴きに行っていらしゃる方は違うと思いました。ご自分の装置から
生演奏会で聴いた事のある感動的な音が少しでも出ると、例えそれが微々たるものであっても
識別できるものなのです。自分の装置から今までは聴こえなかった生独特の魅力的な音が認識
できると、本当に嬉しくなります。

 11月の末辺りに最初のパワーアンプが納入され、引き続き、ご注文を頂いてトータル6台の
パワーアンプをお作りする事になったのでした。1台が2台、2台が4台、4台が6台と増え、
全てのアンプが納入されたのはもう5月の連休が終わった頃でした。

 途中、それまでお使いになっていたパッシブ型のプリも気になると仰ったので、手元のWRC-
α1/FBALをお貸し出ししたところ、音の表情が豊かになって、音楽性が向上したと言う報告を
頂きました。最新型のEC-1はアンバランス型でゲインも高いので、従来型のプリにして頂く事
にしました。そもそも高能率型ホーンを使ったシステムはトータルゲインが高いのです。結局、
WRC-ΔZERO/FBSE を少しゲインを落としてお買い上げ頂く事にしました。

 こうなると、残るはチャンデバです。チャンデバには7Nがふんだんに使われていて、おまけ
に低音用のスピーカーの為に、ゲインアップ用のアンプが入っているとの事です。7Nを4Nにし、
アンプを取り除くと言う改修をお願いしたところ、快く承諾して頂けました。結局は、新しく
チャンデバをご注文になったのですが、ご他聞に漏れず納期が大幅に遅れつい最近納入された
と言う連絡を頂きました。やはり、見通しが俄然良くなりスッキリしたそうです。

 全てが完成したら一度お邪魔させて頂くと言うお約束でしたので、先日、WRレコーディング
を主にしたテストCDを10枚程度持参して、普段は殆ど耳に出来ない大型オールホーンシステム
を聴くべく、立派な一戸建てのお宅を訪問させて頂きました。装置の概要はWRのホームページ
の「リスニングルーム拝見」をご参照下さい。

 最初、倉太郎さんが用意されたソースを2、3枚聴かせて頂きましたが、一聴して見通しの
良さを感じました。それは倉太郎さんの仰る「ア)音が綺麗なこと」に通じるように思います。
耳に嫌な音がしない、ひずみ感(ノイズ感)が少ない、その結果、演奏家の気配が感じ取れる
事になるのでしょう。所謂、マルチの嫌らしさがありません。その一つの要因はチャンデバの
スカート特性にあると思います。アナログ式の6dB/oct.ですから、基本的に位相ひずみが起き
ないのです。私もマルチ時代は伝達関数1の6dB/oct.を使っていました。そう言えば故高城氏
も最後は6dB/oct.を自作されていました。もう一点挙げるとすれば、全てのホーンを同軸上に
並べた事でしょう。各帯域のつながりが俄然良くなります。

 唯、私が何時も聴いている音量よりは小さいのと、中高音域のレベルが抑え気味に聴こえる
のです。そう申し上げると「できるだけ嫌な音が目立たないように、自然に抑え気味になって
しまう」と仰っていました。その気持ちはよくわかりますと申し上げてから少し音量を上げて
聴かせて頂く事にしました。

 アンプその他が温まった事もあるのでしょう、音もこなれてきていい感じで鳴るようになり
ました。持参したテストCDも違和感なく聴く事ができたのです。そして、弦楽合奏のテストCD
からは「イ)音が立体的であること」の中に書かれている「弦楽合奏の響きが宙に漂う浮遊感
をイメージできる」音が聴こえて来たのです。これが聴こえれば一人前です。私も嬉しくなり
ました。最初の倉太郎さんとのやり取りで大口を叩いたので、少しは責任を果たせたかも知れ
ないと思いました。

 ピアノのCDを聴いている時に、倉太郎さんが「以前はこんなに芯のある中高音は出なかった」
と仰ったのです。私は何時も自宅で聴く感じだったので特に感慨は無かったのですが、倉太郎
さんに取っては、当たり前の音ではなかったのです。この芯のあるカチッとしたピアノの音を
以ってして「ウ)剛体感を感じたこと」の代表的な音であると感じられたのです。唯、極低音
の音が我が家より少し重たいのです。もう少し気持ち良く下方に低く伸びるはずです。これは
メーカー製のアクティブ式サブウーハーを使っている限界だと申し上げましたが、倉太郎さん
にも納得して頂けた事と思います。

 音の感じ方は人それぞれですが、しかし其処には最大公約数的な共通の感じ方はあるのだと
思いました。倉太郎さんは「モーツァルトのピアノソナタや弦楽五重奏曲が聴ければよかった
」と仰って主体は室内楽ですが、私はどちらかと言えばオケの音に拘ります。剛体感もオケで
感じる事が多いのです。日比さんは、ジャズを聴かれて「剛性感のある音、といいましょうか、
カッチリした音がでます」と仰っています。

 こうして、あっと言う間に3時間が経過してしまいました。楽しい一時は速く過ぎ去るもの
です。お暇を告げて倉太郎さん宅を後にしました。大役をやり終えた安堵感で、帰りの電車に
気持ちよく揺られて帰ってきました。


お願い:

 昨日、サーバのHDD がクラッシュし、過去のWR掲示板のその30(datawr30.html)及びその31
(datawr31.html)が消失してしまいました。壊れたHDD からデータを復旧できる可能性は未だ
残されていますが、何方かデータを丸ごと保存された方がもしいらっしゃいましたら、どうか
よろしくご提供をお願い致します。  

1519倉太郎さん(モーツァルトと一緒) Sat Jun 14 08:45:20 JST 2014
システムの詳細(「リスニングルーム拝見」参照)とWRアンプの感想

システムの紹介

電源      オーディオ用専用電源、専用アース(接地抵抗0.97Ω)

BDPプレーヤー Oppo BDP 95+データーSSD(esata接続)

DAC       Mytek Stereo 192 spdif接続(以下全てバランス接続)

プリアンプ   WRC-ΔZERO/FBHY

チャンデバ   特注 アナログ5チャンネル6db/oct.

スピーカー     5KHz以上  ゴトーユニット SG-188BL 
        1-5KHz  ゴトーユニット  SG-3880BL  クラフトマンオーディオ木製ホーン
               1KHz-200Hz  ゴトーユニット SG-570BLダブル  同上
        200Hz以下  ゴトーユニット SG-38WNSダブル  同上
               50Hz以下  Yamaha YST-SW-1000ダブル

パワーアンプ  高音      WR E-10
               中高音  WR E-10  
        中低音  WR E-10ダブル  
        低音    WR E-30ダブル

オーディオルーム 適度な防音と防振(自己流)
ホーンの背面      徹底的なデッド(ホーンの前面は普通にライブ)


WRアンプの感想

私は結構熱心なモーツァルトのファンですが、電気技術に関する造詣が深いわけでは
ありませんので、必ずしもオーディオファンというわけではありません。
したがって、システムづくりが一段落した今、なぜこのような大掛かりなシステムに
なってしまったのか、自分でも呆れています。

結婚して自立した息子の部屋を改装してオーディオルームを作ったのですが、
その息子は跡形もなくすっかり変わった元の自分の部屋を見て、“何だ、この道楽部屋は!”
といってショックを隠しきれない様子でした。

私としても本当は、モーツァルトのピアノソナタや弦楽五重奏曲が聴ければよかったのです。
しかし、感動的なあのライブの音を道標として改善を重ねていくうちに、
気がついてみたらこんなことになっていたという次第です。

そして、その過程でそれを実現するためのすぐれた製品や経験者の方々のアドバイスに
恵まれたことに感謝しています。
そのなかで、大きな回り道をする前にWRアンプに出会えたのは、大変幸運なことでした。
ライブ音の再生というゴールへ、もちろん道のりはまだ長いのですが、
それでも大きな前進をしたものと思っております。

そのような訳で、一人でも多くの方とWRアンプに対する気持ちを共有したいという思いで
掲示板に掲載をお願いしたという次第です。
技術的な背景は川西様が丁寧に説明されておりますので、私はWRアンプについて
自分自身の耳で感じ取ったことだけを手短かにお伝えしたいと思います。

ア)音が綺麗なこと

生の楽器の音はどれをとっても綺麗です。特に西洋楽器の音は不自然なほど綺麗です。
何をもって綺麗かというと、それは哲学的な問題ですが、オーディオ的には、
不愉快でない音といったほうがわかり易いかもしれません。

オーディオショップでは、しばしば刺激的で不愉快な音を耳にします。
しかしゴトーユニットとWRアンプの組み合わせでは、音の一粒一粒がとても綺麗です。
綺麗な音は常習性があって、またオーディオのスイッチを入れようという気にさせます。

綺麗な音という感覚には、すでに立体感が意識されているのかもしれませんが、
ここで触れたいのは立体感以前のことで、音に不愉快成分が少ないということです。
不愉快成分が何かというのは技術的には詳しく分析されることだと思いますが、
素人的に一括りにノイズ感という言い方にします。

ノイズ感というのは音に混じっていても案外わからないのですが、解消されてみると
とても気持ちが良くなります。ノイズ感が除去されると、音は静かになり透明感を増し、
さらさらとこなれたような感じになります。

また同時に音の背景も静かになり、その結果演奏家の気配をより身近に感じることができます。
WRアンプの導入によって、より一層演奏家の一音一音に対する思い入れを感じるようになりました。
当たり前のことなのですが、音楽鑑賞にとっては貴重なアンプだと思います。

イ)音が立体的であること。

立体感は次のようなときに感じられます。

単体の楽器に感じる立体感
生の楽器の音には、音の幅・奥行き・広がりなどの立体感があります。WRアンプはこの立体感を
非常にうまく表現します。ヴァイオリンなどの弦楽器のふわっとした感じは、オーディオでは
無理なものとあきらめていました。しかしWRアンプはこの雰囲気を再現するので正直驚きました。
したがって弦楽合奏の響きが宙に漂う浮遊感をイメージできる数少ないアンプだと思うのです。

オーケストラの配置が見えるような立体感
WRアンプでは、オーケストラの個々の楽器の配置が縦、横、奥行きの3次元に感じ取れます。
この立体感は川西様が言われる音場感に近いものと思いますが、このためには、定位が良いとか、
解像度が良いとかオーディオ的に必要な要素が揃っている必要があるのだと思います。

これはサブシステムの小さなJBLの2Wayで聴くとよく確認できます。マルチシステムは
音のスケールはもちろん違うのですが、この立体感ではまだ改善の余地があると思っています。

ウ)剛体感を感じたこと。

マルチのアンプは約半年をかけて少しずつ増やしてきましたが、低音、中低音の
バイアンプ駆動を含めてすべてのアンプがそろって、最後に確認できたのがWRアンプの剛体感です。
この言葉は川西様が使われるボキャブラリーですが、私なりに、音の芯や輪郭がしっかりしている
ことと理解しております。

WRアンプは、ノイズ感がなく静かで、ふわっとした音が鳴ります。しかし輪郭をぼかして不快感を
和らげるようなアプローチは採られていないものと感じます。したがって音はあまり制御されずに
伸びやかになりますが、芯がしっかりしていて揺るぎのない音に聴こえます。

生のピアノやヴァイオリンの高音はきらきらと輝きます。このきらきら感を再現するのは
やはりオーディオでは無理と考えていましたが、WRアンプの最後の一台が設置された段階で、
確認することができました。キーキー音ではないきらきら感の再現は非常に難しく、
ごまかしの柔らかさで覆われたアンプでは再現が不可能だと思うのです。
これは芯がしっかり定まっていないと再生できないもので、これが剛体感かと直感したわけです。

以上、WRアンプが再生する音の綺麗さ、立体感、そして剛体感。WRアンプが勢ぞろいした直後の
感想をまとめました。また、気が付いたことがあれば報告します。  

1518川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Jun 10 17:30:00 JST 2014
オーディオの音の良し悪しの表現について---オーディオは順調に発展しているか?

 オーディオでは日常的に音が良いとか、悪いとかと言う言葉を使います。その限りに於いては
特に問題はないのですが、「音の良いアンプ」とか「音を良くする」と言う言い方には多少問題
を孕んでいます。

 比較の意味で、「このアンプはあのアンプに比べて音が良い」とか「もう少し音を良くしたい」
と言う風に使えば何も問題はありません。では、どう言う時に問題を孕んでしまうのでしょうか。

 それは、あたかもソース源の音を越えて、音が良くなるような印象を与える時です。ソース源
の音をさらに良くする技術はオーディオにはありません。ソース源の音を100%とすると、どんな
に高価なものを揃えても100%を越える事は有り得ないと言う事です。

 だから本当はオーディオ機器の評価は減点法が相応しいと言えます。このCDプレーヤーは80点
とか、このアンプは60点とか、このスピーカーは70点とか、1次元的に表す事の是非は兎も角も
それが本来の姿だと思います。

 私は予てからこの事が気になり、アンプの研究に減点法を取り入れてやって来ました。アンプ
の良さに注目するのではなく、欠点に着目します。例えば、ピアノの異常音によって耳に不快な
刺激があるかないか、或いは減ったか増えたか、そう言う聴き方をする事で客観的にアンプの音
を追求して来ました。

 バイオリンパートが引き攣れて、スピーカーに貼り付く度合いを見る事によってアンプの調子
を判断して来ました。どの楽器に着目するかは、その人がどの楽器に敏感に反応するかで決って
きます。木管や金管の音を聴けば直ぐ音の良し悪しが分かる人も居るでしょう。

 音の良さは当てになりません。良さには色々な段階があるし、一律に良さの度合いを決める事
は難しいからです。其処に好みも入り込みますし良さのお手本があるかどうかも問題です。その
日の気分で変わってしまう事もあるでしょう。

 しかし、不愉快な音は比較的単純に判断がつくものです。耳への生理的に不愉快な刺激は冷静
に判断できます。WRアンプの開発には、この減点法を早い段階から取り入れたお陰で、高帰還化
技術に辿り着く事が出来た訳ですし、開発当初の音からは明らかな進展があります。これは何方
にも認めて頂ける事でしょう。

 翻って、オーディオ界を眺めて見ると減点法は皆無に近く殆どが加点法です。オーディオ製品
に夢を与え、楽しい雰囲気を添える事によって商品を売りたいと言う気持は分りますが、この事
が誤解を生んで、オーディオ機器で音を100%以上に良くする事が出来るような錯覚を与えている
と言う気がするのです。

 無限に音が良くなるような錯覚に陥るから、あんな高価なケーブルに投資しようとする気持が
芽生えるのではないでしょうか? そんな事は決してなく仮に大成功を収めたとしてもせいぜい
元のソース源の音に近付くだけなのです。

 そのソース源も、殆どの録音は失敗している、と言ったら驚かれるでしょう。その理由は音場
でマルチマイク録音を行うと、必ず位相ひずみが生じると言う不都合が原因です。ワンポイント
録音はこれを避ける一つの方法ですが、多くのワンポイントマイク録音は、力感に乏しいと言う
致命的欠陥があります。ひずみ感は少ないかも知れないが、遠くに霞んだオケの音で満足できる
のでしょうか? 生オケのエネルギー感を表現するには物足りないと思います。

 アナログ時代に、マイクの置き方やレベル調整などを工夫し、最終的に納得できる優秀録音を
やってのけた天才は数を数える程ですし、そのエンジニアでさえ出来不出来が有って、必ずしも
成功するとは限らなかったのです。私は3000枚を越えるLPを集めましたが、その中で優秀録音と
言えるものは本当に少ない事からも、その事は分ります。況や、凡人が録音しても複雑な音場を
捉え切る事は殆ど不可能に近いと思います。

 デジタル時代になって、ディレーを掛ける事によってある程度の位相ひずみを取る事は可能に
なりましたが、それでも100%解決できる程、音場の位相問題は単純ではありません。その証拠に
デジタル録音がこれまでのアナログ録音を、結果的に凌駕できたと言う客観的事実はありません
し、優秀録音が録れる確立が上がったと言うデータもないでしょう。結局、最終的には技術では
なく、エンジニアの天才的センスなのです。

 如何にも優秀録音があるかのような評論家先生方の評価の中には、無限大を示唆する加点法に
よる形容詞の羅列によって引き起こされているケースがあります。逆に、WRアンプで聴けば優秀
録音と判定できるソースが、評論家先生方に高く評価されなかったケースも多々あります。特に
独グラモフォン録音に多くありました。商業主義がオーディオ技術の真の発展を阻んでいる場合
がある事を知って欲しいと思います。

 こう言ってしまうと夢も希望もないと言われるかも知れませんが、それが現実であり早くこの
事を直視すべきなのです。原理的にオーディオに加点法はそぐわないのです。加点法を採用する
限り、オーディオの真の発展はないのではないでしょうか。

 オーディオは順調に発展して来たでしょうか? 確かに、デジタル技術には目を見張るものが
ありますが、デジタルスピーカーの質の良いものが無い限り、アナログアンプは不可欠であって、
其処がオーディオの要になっている、と言う事実は暫く引っ繰り返らないでしょう。

 ではオーディオアンプはオーディオ全盛期から順調に発展したでしょうか? 結局、同じ技術
を繰り返し、焼き直して使っているに過ぎないと言われて反論できるでしょうか? 其処が問題
なのです。私は加点法を採っている限りオーディオの本質的な発展は有り得ないと思っています。
加点法ではアンプの本質的欠陥を見抜けないからです。

 私は孤軍奮闘ですが、こう言う事は過去に往々にして存在した事です。少数派が間違っている
とは限らないのです。どちらが正しいのか、それを判断するのはあなた自身です。


参考)音が良い確立が高いと思ったプロデューサー・エンジニア

◎カルショウ、ゴードン・パリー
◎ウィルキンソン
以上、英デッカ

◎ヴィットリオ・ネグリ
◎フォルカー・シュトラウス
以上、蘭フィリップス

◎ペーター・シュヴァイクマン
◎クラウス・ヒーマン
以上、独グラモフォン  

1517川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Jun 5 14:00:00 JST 2014
hibiさん、Εシリーズのアンプご購入とご投稿ありがとうございます。

 hibiさんには、WRアンプの殆ど全てのものをご注文頂いており、WRアンプ最大の理解者
のお一人と認識しております。WRアンプは、バランス化、コレクタホロワ化、高帰還化と
徐々にステップアップして来ました。その過程から、新シリーズの高帰還アンプが生み出
されています。

 ですからhibiさんは、αシリーズのアンプの音から、バランス伝送による音、コレクタ
ホロワ化された音、そして最後の高帰還化の音、全てを体験して頂いております。その上
で新シリーズのパワーアンプΕ-10 及び高帰還プリアンプΕC-1 もお買い上げ頂き、文字
通りWRアンプの全てを知り尽くされています。本当に有り難い事だと感謝しております。

 このような支持者の方々が大勢居られたお陰で、やっとWRアンプも完成の域に達する事
が出来たと思っています。関係各位に改めて感謝を申し上げたいと思います。

 今回は、hibiさんのプリアンプの調子が悪いと言う事が切っ掛けで、その切り分けの為
にお貸し出ししたΕ-10 をお聴きになったのが、そもそもの始まりでした。そして、

★これが全く違う世界を描き出すではありませんか。

と言うような、これまでのWRアンプの音とは大いなる違いをお感じになったのです。その
時にお聴きなったのは

★オスカーピーターソンのソロピアノでしたが、α6とはまるで違うスケール感で、それ
★まで特に不満なく聴いていたところが、これは参ったな、という思いでした。

と言う事で、最初はピアノの音の違いに驚かれたのです。具体的には、

★α6にわずかながら感じられた付帯音(比較しなければたぶん気がつかない)が、E-10
★では全くなく、スケール感と言いましたが、なんと言いますか、ダイナミックレンジが
★拡大したかのように低弦の充実した、実に雄大なピアノが再現されるのには驚いた次第。

と述べられています。付帯音とはピアノの音に付き纏う耳に不愉快な刺激を与える音だと
思います。これは、私がアンプの研究を始めた頃から気になっていたものと同じ音を意味
していると思います。ソース源にもその素となる音が録音されていますが、アンプ自体の
安定性の問題がこの音を誇張してしまい、酷い時は耳を覆いたくなったりします。

 又ピアノのダイナミックレンジが広がって、雄大な低弦の音が再生されるようになった
と仰っています。これも高帰還化のお陰だと思っています。以前にも書きましたが、普通
のアンプで普通のスピーカーを鳴らした場合、まず聴く事ができない音です。スピーカー
からは鳴っているのかも知れませんが、耳に認識できる音圧になっていないのでしょう。

 私がこの音を体現したのは、旧型のWRアンプで超高級スピーカーであるfeastrexと言う
フルレンジを山梨の工房で聴かせて頂いた時に遡ります。しかも音源ソースは息子が録音
した4手の為のピアノ連弾による「チャイ4」だったのです。我が家では聴こえない低音
でした。この音の存在に気付いたのは、元々録音現場では耳に入っていたからです。

 この事は一旦忘れていたのですが高帰還化を進めていたある日、今まで聴こえなかった
あの低音が鳴ってる事に気付いたのです。B&W805MATRIXでも鳴るんだと思いました。過渡
特性にずば抜けたスピーカーしか再生できないのかも知れないと思っていたのが、アンプ
次第では鳴る事が分かったのです。一体、世の中にこれに適合するアンプはどの位あるの
でしょうか?

 そしてhibiさんは、

★こんな音で鳴る、ということを知ってしまうと落ち着いてはいられなくなるのが人情と
★いうものでしょう。

と思われれて、αシリーズの高帰還化に踏み切られ、一気にセカンドシステムをΕ-10 +
ΕC-1 になさると言う決断をされたのです。やはり、男は「いいと思ったら即決断」です。
敬意を表したいと思います。もっと良いものがあると欲を張ってると結局貧乏クジを引く
ものです。

 メインシステム(αシリーズ)の高帰還化で一番変わったところは

★主に低域の変化。実にたっぷりと低い方が出てきます。
★低音が重々しい感じがせず、軽々と出てくるんですね。

と言う風に、hibiさんは低域の改善を先ず挙げられています。何だかんだ言っても、音の
基礎は低域です。安定した低域の上に、中低音、中高音が乗るのですから、当然と言えば
当然です。高帰還化によって低域は確実に改善されますが、出力インピーダンスが下がる
高帰還化の特長と無縁ではないでしょう。WRアンプの高帰還化が成功している証だと思い
ます。

 但し従来アンプのような不安定性が伴う高帰還アンプではこの効果は出ず、寧ろ不安定
なドロドロした重い低音になってしまいます。低音の質はあくまでも軽さを伴う事が必要
です。強引に出す低音は重く切れが悪いのが相場です。

 質の良い低音が出れば量は余り問題にならないのです。その証拠に、今まで使っていた
サブウーハーは

★サブウーファーはフォステクスの25センチのものですが、最近ほとんど電源を入れて
★いません。

と言う事になったそうです。私は元々サブウーハーで量的に低音を補う事には懐疑的です。
市販のサブウーハーに質を求めるのは、技術的に無理があると思うからです。アンプ部分
をWRの高帰還アンプで作れば、話は別だと思いますが。

 さて、納入されたΕ-10 のご感想ですが、

★小型のブックシェルフ(プロアック タブレット50)とは思えないスケール感
★ウッドベースのソロなんか聴いてみても、余裕たっぷりの低音域、スピーカー自体も
★優秀なんでしょうが、たいしたものだと感心してしまいます

との事で、ご満足頂けている事が分ります。続いてΕ-10 にピッタリのプリアンプである
ΕC-1 が導入されて、一層の進展があったようで

★音の格が数段上がったような感じがして、ちょっと試すつもりがつい聴き入ってしまう、
★というのがここ数日の経過です

との事です。「音の格が数段上がる」とは相当なご評価であり、私が音に濃く出ると申し
上げた事と同一線上の表現かと思います。この事はこれまでに何人かの方にご指摘頂いて
おり、ΕC-1 の評価も高い水準で確定しつつあります。ちょっと試すつもりが、つい音楽
に聴き入ってしまうと言うご報告、大いに分る気が致します。オーディオが本来の目的で
健全に進行されている証だと思います。オーディオは音楽を楽しむ道具でありたいと私は
思うのです。

 「音の格」とは何かと、日比さんは自問自答されていますが

★音の減衰やら立ち上がりといったファクター、動的なところでの歪みなどの要素が総合
★して感じられるものなんだとは思います

と言うご見解。私も正解にかなり近いと思います。オーディオで大切なのは動的なひずみ
(過渡ひずみ&位相ひずみ)なのです。アンプの場合は過渡ひずみであり、録音や音場再生
のような音空間では、位相ひずみが大切になります。これが狂うと酷い事になります。
 
 最後にΕC-1 にはEQオプションが可能です。hibiさんから事前にご相談を頂きましたが、
EQ素子には他の部品とグレードを合わせてSEコン仕様ではなくスチコン仕様をお勧め致し
ました。それでも、

★音はかなりいい線行っていると思っています。剛性感のある音、といいましょうか、
★カッチリした音がでます。

と言う風にご満足頂いています。この剛性感は大切なファクターで生音には独特の剛性感
があります。これがカッチリと出ないと音の存在感がありません。皆さんもライブに参加
して、よくお手本を聴く事から始めて下さい。空想上の音を追ってる方にはWRアンプの真
の良さはご理解頂けないかも知れませんが、生音は空想上の音より遥かに魅力的なのです。

 今回のhibiさんのご感想をお読みになって「ピン」と来たら、即、ご決断頂ければ有り
難いと思っています。  

1516川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat May 31 17:00:00 JST 2014
日フィル5月定期を聴く

 今月の指揮者は首席指揮者のラザレフで、スクリャービン・チクルスの最終回です。最後の曲
は交響曲第5番「プロメテウス」です。この曲との関連で、リストの交響詩「プロメテウス」が
前座に置かれていました。「プロメテウス」が共通項です。

 「プロメテウス」は人間界に「ゼウス」の反対を押し切って「火」を与えた事で知られる男神
で、ゼウスの怒りをかって岩山に縛り付けられたところを、ヘラクレスによって救われたと言う
神話が残っています。

 「プロメテウス」と聞いて直ぐ思い出すのは、ベートーベンの「プロメテウスの創造物」序曲
ですが、今夜の「プロメテウス」は2曲とも聴き慣れず、感動を得るまでには至りませんでした。
リストの「プロメテウス」は、リストらしく金管が活躍するメリハリの利いた曲ですが、ピンと
くるものがありませんでした。滅多に演奏される事がなく、CDも少ないようです。まだ「前奏曲」
の方が楽しめると思いました。日フィルも、過去20年以上も在籍されている方でさえ、この曲を
演奏した記憶がないそうです。

 スクリャービンの「プロメテウス」は4管編成の壮大な曲で、独奏ピアノ、ハープ、オルガン、
そして混声合唱を伴うもので実質的には単一楽章のピアノ協奏曲です。無調と不協和音の割には
聴いていて不快感はありませんでしたが、楽しめるところまでは行きませんでした。今回は取り
上げられませんでしたが、オリジナルは神秘和音による色光ピアノが使われるようになっていて、
アバド/ベルリンフィルやアシュケナージ/NHK 響で、光が交錯するような試みが行われた事も
あるようです。尚、混声合唱は「晋友会合唱団」で舞台の後の席、所謂P席に陣取っていました。
ピアノの独奏は若林顕でした。

 15分の休憩の後は本日のメインプログラムの「ダフニスとクロエ」第1、第2組曲です。この
曲にも混声合唱が入るので、スクリャービンの「プロメテウス」と組み合わせるには格好な選曲
だったと思います。それに、演奏会終了後のラザレフご本人の解説によれば、スクリャービンは
楽譜への書き込みをロシア語でもイタリア語でもないフランス語で指定したそうで、少なからず
フランス音楽への造詣があった事になります。この選曲にはその繋がりも重視されたのではない
かと思います。

 今回は珍しくも指揮者自身によるアフタートークがあり、スクリャービンに関する補足説明と
これから始まるショスタコービッチ・チクルスに関する興味深い解説がありました。通訳の方は
音楽の専門的な話を上手くこなしていました。タコ4は作曲されてから30年もの間机の中で鍵を
締められて眠っていたとか、タコ8は既に演奏されたタコ7と同様に戦争を画いているが、その
内容は対照的だとか、色々と話されていました。

 「ダフニスとクロエ」は元々は全3部からなるバレエ音楽です。演奏時間短縮の為に全曲から
冗長部分と言うと叱られますが少し省略し、短くしたのが組曲で、その為に楽器編成を変えたり
編曲したりする事は、原則的には無かったと言う事です。第1組曲は「夜想曲」「間奏曲」から
第2部「戦いの踊り」まで、第2組曲は第3部の音楽がほぼそのまま移行してるそうです。

 全曲版もそうですが、第1、第2組曲も切れ目無く演奏されます。「夜想曲」が始まりました。
如何にもフランス音楽と言う風情が伝わって来ます。弦の使い方がドイツ音楽とは違って、軽く
浮き上がるようです。円やかで透き通るようなフルートが散りばめられ別世界に誘ってくれます。
昔の日本のオケでは味わえないフランス風の趣を強く感じました。やはり木管の質の向上に要因
があると思います。

 「間奏曲」に移る直前に座っていた合唱団の方々が一斉に立ち上がりました。神秘的な間奏曲
が始まり、台詞のない合唱の見事に調和するハーモニーがホール全体に浸透します。実に澄んだ、
美しい混声合唱です。パワーが有りながら決して飽和しない合唱、「晋友会」が世界で活躍する
理由が分りました。全く威圧感がないのに存在感があるのです。素晴らしいと思いました。

 この演奏レベルを保ったまま「ダフニスとクロエ」の謂わば美味しいところが繰り広げられて
行きました。第2組曲の最終部はこの曲の最大の山場です。独特のリズム、各種楽器があくまで
も濁らずに交錯し、それに合唱が上手く絡んで最高の音楽を形成します。しかし、美しいものは
短命です。ドイツ音楽やロシア音楽のように、終わるのを躊躇するようなダメ押しはなく、時間
にして5分であっさり幕切れとなるのでした。

 そうそう、この曲をポピュラーにしたのがCD黎明期に発売された、デュトワ/モントリオール
響の全曲盤です。当時、途中にPQ信号が打ってなく、全曲がワントラックだったのです。その為
聴きたい最終部まで我慢するか、早送りをするか苦労したものです。この盤は今や、プレミヤが
付いているようです。

 その後に小澤/ボストン響のLP(15MG 3082)を見つけて買ったみたら、録音・演奏共に凄い事
が分り、それならとCD(437 648-2)も探して手に入れたのです。今はこのCDが、愛聴盤になって
います。これは1974-75 年に掛けて録音されており、独グラモフォンの録音が鮮鋭化し始めた頃
の名録音です。故高城重躬氏が当時何て評論したかは定かではありませんが、氏の口癖であった
「デジタル顔負け」の音です。

 さて絢爛たる「ダフニスとクロエ」組曲の音楽が終わった瞬間、例によって物凄い握手が湧き
起こりました。ラザレフはご機嫌で独奏者をスンダップさせ、遠い奏者には自ら近付くサービス
振りです。当然の事ながら、晋友会合唱団の指揮者を指揮台に登壇させて讃えていました。時折
親指で指しながら、「これは私の功績ではない、オケが上手いんだ!」と言わんばかりの仕草を
していました。壇上の団員の顔も綻んでいます。皆でいい音楽を作り上げたと言う満足感を共有
しているかのようでした。こうでなければ聴衆を感動させる事はできないと思いました。冷めた
団員は一人も居なかったと思います。

 何回かのカーテンコールの後、ラザレフが指揮台に登り何かオケに指示を出しました。まさか
のアンコールだったのです。演奏のトータル時間が短かった事もありますが、実はこれはある種
の必然だったのです。バイオリンパートのフラジオレット奏法が始まり、「一体これは何?」と
思った瞬間、聴き覚えのあるメロディーが奏でられたのです。そう「ダッタン人の踊り」でした。

 実は「ダフニスとクロエ」の最終部「全員の踊り」はラベルのボロディンに対するオマージュ
ではないか、と言う説があるのです。当日配られた小冊子の解説にそう書かれてありましたので、
頭の隅に「ダッタン人の踊り」の事は無くはなかったのですが、まさかの出来事でした。本当に
嬉しい誤算でした。

 この曲を合唱付きで聴くチャンスは滅多にありません。オペラ第2幕と同じような形式で演奏
されたのでした。「ストレンジャー・イン・パラダイス」に編曲されたメロディーは、誰も一度
や二度は聴いた事があるでしょう。木管が織り成す極上の世界、これが静まると独特のリズムが
刻まれて踊りが始まります。音楽はリズム、メロディー、ハーモニーが完璧に揃うと物凄い魅力
に到達します。正に「ダッタン人の踊り」はそれに相応しく且つオーディオ的です。金管、木管、
弦などが眩いばかりに躍動し、それに打楽器群が強いアクセントを付けて命を与えます。大太鼓
が特に印象的です。ラザレフの手の動きに合わせて全員が強烈なリズムを刻むのでした。

 今夜の演奏会は正直のところ前半は我慢の音楽でしたが後半は極楽でした。ダフニスとクロエ
とダッタン人の踊りだけでも十分お釣りが来るかも知れません。舞台上にはマイクが何本も吊り
下げられていたので、いずれCD化されるのでしょうが、この感動は再現されないでしょう。特に
日本人エンジニアのセンスと技法では無理だと思います。現状で使えるマイクプリのクオリティ
の問題や、あのマイクの数だけの位相を、どうやって位相ひずみ(過渡ひずみ)無しにトラック
ダウンするのでしょうか?

 生の威力は凄いです。オーディオは取り敢えずシャッポを脱ぎましょう。しかし3大レーベル
(グラモフォン、フィリップス、デッカ)に優秀録音がもし有るのでれば、70% 位は我が家でも
この感激は再現できると思います。2つの特許回路に依る高帰還化技術は、そこまで来ていると
思っています。


お詫び)

 日比さんご投稿ありがとうございます。本来は先にお応えを書くべきところ、最近はもの忘れ
し易いので、先に演奏会の感想を書かせて頂きました。この後、日比さんにお応えする形で書く
つもりでおりますので、どうかお許し頂きたくお願い申し上げます。   

1515hibiさん(WRユーザー) Tue May 27 19:42:36 JST 2014
久々に投稿します

 すでに4ヶ月ほど前の話になりますが、メインシステムのプリであるWRC-α1/FB
の調子がどうも思わしくなく、川西先生に相談したところ、本当にプリが不調なのかを
確かめる意味で、WRC-ΔZERO/FBとE-10のプロトタイプを貸し出していただき、
しっかり確認するという事にさせていただきました。試聴用のE-10プロトタイプが
H.Tさんのところへ行く前だったろうと思います。

 結局、プリ自体の不調ではなく、サブウーファーに繋いでいたケーブルに不具合があ
り、これが原因でプリの動作に影響していた、という結論を得ましたが、せっかく
E-10までお借りしたので、これをセカンドシステムのパワーアンプであるα6のミニ
アンプとつなぎ替えて聴いてみました。プロトタイプで筐体も頼りなく、パワーも10
ワットということなので、こっちと比べるのが相当だと思ったからです。

 さて、それで聴いてみたら、これが全く違う世界を描き出すではありませんか。特に
感心したのがオスカーピーターソンのソロピアノでしたが、α6とはまるで違うスケー
ル感で、それまで特に不満なく聴いていたところが、これは参ったな、という思いでし
た。

 試したときから返却まであまり時間がとれませんでしたので、さほど詳細な試聴は出
来ませんでしたが、比較してみると、ピアノ音ではα6にわずかながら感じられた付帯
音(比較しなければたぶん気がつかない)が、E-10では全くなく、スケール感と言い
ましたが、なんと言いますか、ダイナミックレンジが拡大したかのように低弦の充実し
た、実に雄大なピアノが再現されるのには驚いた次第。

 セカンドシステムの部屋はわずか6畳の、しかも本棚で一面ふさがれた書斎兼制作部
屋、スピーカーも13センチウーファーの2ウェイブックシェルフ、さほど多くは望め
ないところですが、こんな音で鳴る、ということを知ってしまうと落ち着いてはいられ
なくなるのが人情というものでしょう。

 そんなわけでメインのWRP-αZERO/FBを高帰還化、セカンドシステムにEC-1と
E-10の導入と相成った次第。

 メインシステムの高帰還化で感じたことは主に低域の変化。実にたっぷりと低い方が
出てきます。解像感も上がった気がしていますが、うちのスピーカーのビクターSX-L7
は、この間、あるオーディオショップで名機ですねと言われ、気をよくしましたが、低
域がちょっと緩い?このサイズくらいのトールボーイのバスレフでは仕方がないのかも
しれませんが、まあこれが何とかならないのかとあれこれやっているところです。

 しかし、なんというんですか、低音が重々しい感じがせず、軽々と出てくるんですね。
これは前に投稿したときにも書きましたから、高帰還化の恩恵とばかりは言えないと思
いますが。その時はデノンのアンプの重い低音との比較だったと思います。

 サブウーファーはフォステクスの25センチのものですが、最近ほとんど電源を入れ
ていません。オルガンの低域が入っているものとかの、特殊なソース以外はほとんど必
要を感じないからです。その特殊なものを聴くときにも近所から苦情が出ないように、
などと気を遣いながらになってしまいます。

 セカンドシステムは全くの別物になった感じです。先にE-10が納品されましたが、
小型のブックシェルフ(プロアック タブレット50)とは思えないスケール感、これ
は前にプロトタイプで聴いたときの感想と同様です。ウッドベースのソロなんか聴いて
みても、余裕たっぷりの低音域、スピーカー自体も優秀なんでしょうが、たいしたもの
だと感心してしまいます。

 実はこの間、八ヶ岳南麓に旅したついで、といってはいささか失礼に当たりますが、
茅野にあるスピーカー工房、WOODWILLの柴田さんを訪ねて、スピーカーの試聴
と製作のお話を伺ってきました。

 以前柴田さんとご一緒したのは、軽井沢の霞仙人さんの別荘でのWRアンプ試聴会で
したが、あれはもう何年前のことだったでしょうか。あのときに聴いたウィングという
名の、弦楽器が実につややかに鳴る小さなスピーカー、柴田さんはそのときの試聴会
で、これをWRアンプで鳴らしたら、小さいながら低域が充実して、このスピーカーの
隠れた実力を再発見した、とおっしゃっていました。

 今はウィングも進化して第2世代、ネットワークの部品を高品位なものにするとさら
に質の向上が望めると、実験を繰り返しておいでのようでした。ということで、WRア
ンプの低域は、高帰還化される以前からかなりの実力だった、ということなのでしょう。

 さて、先日EC-1が納品され、プリとして使っていたヘッドフォンアンプとつなぎ替
えると、なんと言いますか、音の格が数段上がったような感じがして、ちょっと試すつ
もりがつい聴き入ってしまう、というのがここ数日の経過です。元のシステムと値段も
違うのだから当たり前だろうとのご意見もありましょうが、この掲示板で皆さんのおっ
しゃることが嘘ではないなとの実感を持った次第。

 しかし自分で言っておいて、ちょっと変ですが、「格」って、いったいなんですかね。
評論家ならこれをうまく表す術を持っているのでしょうが、僕にその能力はない。音の
減衰やら立ち上がりといったファクター、動的なところでの歪みなどの要素が総合して
感じられるものなんだとは思いますが。

 CDプレーヤー(DCD1650ARを相島技研でクロック交換・制振加工)が突然不調に
なってCDを読まなくなり、今はほとんどレコードで鑑賞していますが、ハムも全く引
かず、実に克明な音がします。

 EC-1にはフォノイコを仕込んでもらっています。プレーヤーはテクニクスSL-01、カ
ートリッジはデノンDL301Ⅱ、昇圧トランスAU-320という、まあよくある製品の組
み合わせですが、これでバランスがとれているのか、音はかなりいい線行っていると思
っています。剛性感のある音、といいましょうか、カッチリした音がでます。

 音楽はジャズを中心にクラシック少々、ロックも聴きます。どの分野が得意というよ
うな評語はこのアンプには当たらないと思います。  

1514川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri May 23 13:30:00 JST 2014
オーディオの常識・非常識

 オーディオ熱は、昔に比べると明らかに冷めてきています。勿論、他に面白いものが数多く
出現した事もその一因ですが、オーディオそのものが面白くなくなったと言う側面も否定でき
ないと思います。

 それはオーディオ産業の斜陽化と無関係ではありません。オーディオ熱が一気に高まった時
に、理想的なアンプが提供できなかったと言う事があります。各社、挙って多種多様なアンプ
を売り出しましたが、当時の電磁環境では通用しても、次第に悪化するノイズ環境の事までは
考慮されていなかったのです。

 その結果、何時の間にか自分の装置からいい音が出なくなり、飽きも手伝ってオーディオは
衰退して行ったのでしょう。其処にはもう一つの問題が垣間見られます。それはオーディオの
目的です。唯、胸の空くような音を追い求めただけだったのか、或いは同時に音楽を楽しもう
としたのか、その点が分水嶺になった可能性はあるでしょう。

 音楽を聴きたいと言う欲求はそう簡単には諦められません。多少音が悪いのを我慢してでも
音楽を聴きたいと思うのが人情です。私事ですが、ベートーベンやブラームスは音が悪くても
それなりに楽しめたのです。そう言う方々は音質の如何に拘わらずオーディオを続けて来たの
ではないでしょうか?

 この事は大切な事です。音楽を抜きにしたオーディオは、どちらにしても表皮的で長続きは
しないと思います。また、その音楽もライブを規範としたアプローチなら言う事はありません。
何故なら、ライブと言うお手本、或いは物差しが決まるからです。音の基準がはっきりします。

 音楽とは掛け離れたオーディオの場合は、どうしても、妄想上の架空の音を夢想し勝ちです。
そうなると基準が明確でない為に、今聴いている音よりもっと良い音があるはずだと欲張って
しまう事になります。その結果、現在の装置に飽き足らず、買い替えや高額なケーブルに頼る
ようになってしまうのです。

 そうなったら、一生彷徨い続けるか、途中で挫折するか行く末は見えています。そして多額
の投資だけが残る事になります。ご自分の遍歴を顧みれば多かれ少なかれそうした事に対する
反省が思い起こされると思います。

 そうした事にストップを掛ける事ができるのがWRアンプです。オーディオの要はアンプです。
オーディオの中で唯一アクティブ素子を有するアンプは、悪さの桁が他の受動的機器とは比較
になりません。それは電気エネルギーが無限に流入する可能性がある事からも明らかです。

 昔のオーディオはスピーカーこそが命であると言う教えが優先していました。しかし、世の
中の電磁環境は確実に悪化しています。不完全な帰還アンプは馬脚を現し、悲鳴を上げるよう
になっています。最早、どんな優秀なスピーカーも、不完全な帰還アンプで駆動する限り本領
は発揮されません。

 では帰還を嫌った真空管アンプなら大丈夫でしょうか? 高調波ひずみ率はなんとかなった
としても、出力インピーダンスが下がり切りません。この事は定電圧駆動を前提に設計された
スピーカーに取っては致命的です。言い換えればスピーカーは垂れ流し状態で、制御されずに
勝手に動いてしまう事になります。特に最近の実効質量の大きな能率の悪いスピーカーはお手
上げです。

 低音はブーミーになり篭り勝ちになります。一見、量的には充足してるように聴こえる事も
ありますが、ライブの音を知っている人に取っては気持が悪くなるような音に感じる事がある
でしょう。低音の質を見極められない人が、仮にこれで満足してるとすれば、それは悲劇では
ないでしょうか?

 何でもそうですが学習しなければ、その事を真に理解する事はできません。生の良質な低音
に痺れて初めて低音の本質が分るのです。低音に限りません。中低音も中高音も全ては生音楽
から学習する事が大切です。弦合奏が醸し出す、あの独特の柔らかい浮き上がってくるような
音を聴いたら、心の底から感動します。それは妄想上の架空の音を完全に凌駕すると思います。
往々にして、事実は虚構を超越するのです。

 WRアンプは、研究当初から高周波ノイズの影響と、帰還の安定性を追及しながら開始された
のです。そして、自動制御理論から脱却し、独自にアンプ内に生じる「負性抵抗」に着目して
研究が進められてきました。その結果、自動制御論では安定と判別されても、なお「負性抵抗」
が存在する事を突き止め、帰還アンプから「負性抵抗」を除去する特許回路を考案したのです。

 この特許回路を用いると、従来の常識より帰還を多く掛けても、系が不安定になる事はあり
ません。それが最近のWR高帰還アンプとして結実しています。従来のWRアンプに比べて14dB程
帰還が深くなっています。その分だけひずみ率も減りますが、何より重要なのは出力インピー
ダンスがより低くなる事です。その分スピーカーを理想的に駆動できるようになります。即ち、
スピーカーが本領発揮されるようになるのです。

 皆さん、スピーカー端子をオープンにしてコーン紙を叩いた時と、端子をシャントした場合
を比べて見て下さい。明らかにコーン紙の響きが違います。この事実はアンプの出力インピー
ダンスによってスピーカーの音質が大きく変わる事を意味しています。前者の場合はコーン紙
の自由振動を許し、音楽信号とは無関係な過渡ひずみが加わってしまいます。だからモヤモヤ
混濁するのです。

 理想的なアンプの条件は、何より入力インピーダンスが無限大で、出力インピーダンスが零
と言う事が大切なのです。大体、帰還アンプはこの条件に近付くのですが、その代表的なもの
がエミッタホロワの類です。昔カソードホロワが無闇に使われた事がありましたが、結果的に
成功した例は殆どないはずです。何故ならば、理想的な特性の陰に「負性抵抗」が現れていた
からです。エミッタホロワの類は「負性抵抗」と裏腹の関係にあります。

 市販のパワーアンプの大半は、この危険性の高いエミッタホロワの類を出力段に重ねて使用
しています。多段に重ねるダーリントン接続は「負性抵抗」の危険性をより高めてしまいます
から、オーバーオールの帰還ループとは別に「負性抵抗」が局部的に生じる可能性が出て来る
のです。WRアンプをコレクタホロワ化したのは、実はこれを避ける為だったのです。

 WRアンプは「特許回路」「コレクタホロワ」「高帰還」の3つの技術によって、真に理想的
なアンプに成長しました。現今の電磁環境下でもアンプは正常動作をしてスピーカーをフルに
駆動します。その結果、ライブで聴く音の家庭での再現が100%とは言えないまでも、70% 位は
実現できるようになったと思います。パーセンテージは兎も角も、WRの高帰還アンプユーザー
の多くの方が、この事を体現されています。此処まで来れたのもWRアンプユーザー皆々様方の
ご支持のお陰と深く感謝しております。

 貴方も、昔の「常識」に縛られていないで、「非常識」を受け入れて見ませんか? きっと
その先には明るい日差しが見えて来る事でしょう。 

1513川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu May 15 16:00:00 JST 2014
H.Tさん、WRアンプのお買い上げとご投稿ありがとうございます。

 H.Tさんのお言葉をお借りすると、WRアンプはクラシック音楽愛好家が対象で、しかも生の
演奏会によく通う方にターゲットを絞っている、と言う事になりますが、確かに私の文章を読む
限り、そのように受け取られても仕方ないと言う気がしています。

 WRアンプも例外ではなく、10年以上も掛けて発展してきましたので、その過程では自分自身の
体験を書くしかなく、結果的にそのような印象を皆様に与えてしまったのだと思います。しかし
これまでにWRアンプをご購入になられた方を分析しますと、寧ろジャズをお聴きになる方の方が
多いはずですし、最近では主にロックをお聴きになる方も増えています。

 WRアンプも、パワーアンプΕシリーズやプリアンプΕC-1 の完成によって、ほぼ完遂の領域に
達して、そろそろ自分の体験上の話で説明する事を止め、一般論で話をすべき時に来ているので
はないかと思うようになって来ました。

 論点は2つあります。一つは音楽ジャンルであり、一つは聴き方の問題です。音楽ジャンルに
ついては最早、クラシックとかジャズとか、特別のジャンルを挙げる必要はなくなって来ている
と思っています。極端に言えば、打ち込み音楽でもOKだと思います。

 その理由は、誰も文句の言えない、原信号に忠実にスピーカーを駆動すると言う命題に対して
WRアンプは最適なアンプであるからです。最適な理由は帰還アンプに不可避的に生じる負性抵抗
を抜本的な方法で取り除く技術が確立している事、その為に可能になる高帰還によって、アンプ
の出力インピーダンスを極小に出来ていると言う事実です。言い方を変えれば、理想的なアンプ
に近付いている訳です。

 聴き方の問題は、私が区別をしている「楽器派」と「音場派」の問題です。オーディオ入門を
果たした人の多くは楽器派からスタートするのが普通です。楽器派と音場派の本質的な相違点は
音を1次元で捉えるか、2次元以上で捉えるかだと思います。

 だから極端に言えば、楽器派はモノーラルでも目的を達成できるはずです。昔ステレオ創生期
に、下手なステレオで質の悪い楽器の音を聴く位なら、良質なモーラルの方が余程真の楽器の音
を再現しやすい、と豪語した人も居るくらいです。極論すれば、楽器派の人にはステレオは必須
ではないのです。

 打ち込み音楽が増えて来ていますが、これは典型的な無次元の楽器です。アコースティックな
楽器と本質的に違います。これをステレオで再生しても、それは擬似ステレオの域を出ない事に
なるでしょう。

 しかしH.Tさんも仰っていますが、生演奏会(ライブ)に通い出しますと、弥が上にも音を
多次元で捉えるようになります。耳がそのように自然に訓練されてしまいます。そのような耳に
なった時に、自分の装置から出て来る音が立体的に聴こえないと、無意識の内に欲求不満に陥り
ます。立体的と言うのは、錯覚も含めてライブで聴いているような感覚を指します。

 ライブで耳が訓練されると音の判断基準が明確になり、自分の装置の音の良し悪しを、比較的
冷静に判定できるようになります。しかし、妄想上の架空の音を追いかけていると、要求が法外
になり、何時も何かを変えていないと落ち着かず、無駄な投資を繰り返す事になり勝ちです。

 その意味でライブに余り行かない方々に取っては、WRアンプの価値は半分位しか理解されない
事になります。それでも、WRアンプで音楽を聴くようになれば、もしかしたら耳は徐々に音場を
理解できるようになって行くかも知れないと思っています。ライブに殆ど行かなくても、音場の
再生を苦手とするアンプに違和感を持つようになるのではないかと、淡い期待をしています。

 楽器の音は、そもそも3次元空間に音が放射される訳ですから、モノーラルでも良いと言った
もののやはり本来は3次元空間で音を捉えて聴くべきですが、その事より音の美しさ、滑らかさ、
清々しさ、瑞々しさのような1次元的形容詞で飾られる事が巷では重要視されるように思います。

 H.Tさんはもう一つ重要な事を仰っています。それは

★LIVEで聴くふくよかで厚みのある音

と言う行です。

 生演奏会に行って、我が家の音と何処が違うかと考えて見ると、やはり圧倒的なエネルギーを
感じる中低域でしょう。この部分は陳腐な装置では決定的に痩せてしまい、大きな違和感の元に
なります。所謂、腰の高い音になってしまうのです。

 アンプの過渡特性が悪いと、耳に着き易い中高域に嫌な音が発生し中低域をマスキングする事
になります。また、中低域の音が腰砕けになりしっかり腹に来るようには鳴ってくれないのです。
この2つが重なって腰高の音になるのですが、ΕC-1 と組み合わせたΕシリーズの音は十二分に
中低域が豊かに聴こえるように出来ています。その意味で、H.Tさんの場合は

★中低域 ~ 500HzをJBL 2012H(40L 密閉箱)

の帯域が大切になると思われます。

 「中低域は箱とユニットを交換する予定があり、これに合わせて次のWRアンプをお願いする
つもりでおります。」と仰っていますように、直近の課題としてΕ-50 の導入計画が進行中です。

 さてH.Tさんは、マルチシステムの場合はパワーアンプの良し悪しが出難いと思われていた
そうですが、3台のお貸し出しアンプによって、決してそうでは無い事に気付かれて、アンプを
全とっかえされる予定とお聞きしております。そして指し当っては真ん中の3帯域を優先される
との事です。音楽の重要な成分を含む帯域を優先される事は当を得ていると思います。

 お貸し出しをして一つ感心した事は、行き成りマルチに入れるのではなく、先ずは一発で聴か
れた事です。2wayくらいまでのスピーカーは、圧倒的に音場感が自然です。アンプさえ良ければ
音場が手に取るように分ります。

★クリアなのにしかも細くならず、しかもプレヴィンとの距離が分かる気がします。

細くならないと言う事は言い換えれば音の厚みが出ると言う事ですが、これは音場が再現されて
初めて可能になると思っています。多次元的雰囲気がそうさせるのではないかと思います。勿論
プレヴィンとの距離が分る、と言う事は音場再生の基本的な問題です。

 もう一つ、

★ただクリアだとかリアルだとかいうだけでなく楽器の持つ質量感を実に巧みに表現するのです。

と言うところは注目に値します。「ただクリアだとかリアルだとか」と言う表現は1次元的だと
も考えられますが、「質量感」と言う言葉は1次元的な音からは汲み取れないものだと思います。
「質量感」は、私がよく言う「剛体感」と同義語のように思います。これとは対極にあると思わ
れる、弦楽合奏で偶に聴こえるファっと舞い上がるような柔らかな音も、実は音場が正しく再現
されて初めて聴こえてくるものなのではないでしょうか。H.Tさんはライブに通う内に或いは
録音に立ち会われている間に、単純な楽器派から完全に脱皮されていたのだと思います。人間の
耳は徐々に高度な音を識別して行く事になります。

 最後に、

★アンプを変えるのはそれなりに労力を要するのですが、3台のWRアンプの音は実にまとまり
 良く収まりました。

とあります。マルチの調整は昔から大変な労力を要する事で知られていますが、難しさの原因の
中に、アンプの過渡特性の悪さが含まれていたように思います。即ち、アンプによる過渡ひずみ
とチャンデバの位相のずれから生じる過渡ひずみの区別がし難いのです。苦労をしなくてむ済む
事に余計な神経を裂いて来た事になります。WRアンプは、マルチシステムにも最適なアンプだと
言う事が出来ると思います。

 一発で聴く方は勿論の事、マルチをやっている方も手頃なΕ-10 が有りますので、是非一度は
WRアンプをお試し頂きたく思います。その意志の有る方には、アンプの貸し出しも行っています。
高周波ノイズに汚染された電力事情(特にマンションは酷い)では、いい音のするアンプが偶然
に誕生する確立は、非常に低いはずです。かと言って真空管アンプではひずみは兎も角も、出力
インピーダンスが十二分に下がり切りませんので、真に豊かな中低域は望めないのです。理由は
理想的な定電圧源にならないからです。

 「真に豊かな」と言う意味は、量は豊富でもブンブンしてスピーカーを制御仕切れないような
音ではなく、それこそライブで聴くような腹に来るような、充実した中低音が聴けると言う意味
です。回り道は程々にして、最新のWRアンプを導入して音楽を楽しむ事に専念されて見ては如何
でしょうか。WRアンプは貴方をオーディオから解放してくれると思います。  

1512H.Tさん(会社員) Sat May 10 22:43:00 JST 2014
  初めて投稿させていただきます。

  WRアンプの存在はずっと以前から知っておりましたし、使用素子や、回路技術
 による音質改善効果等に興味を持っておりましたが、いざ、聴いてみるとなると
 どうやらクラシックを愛好する方々に広く支持されている様でもあり、小生の聴く
 ソースはJAZZが大半で、川西様のお言葉を拝借すると、「楽器派」の人間と思
 われる小生には向かないのかな、と重い腰を上げずにおりました。
  しかし、生来の音楽好きが嵩じて、オーディオ趣味と並行して実際のLIVEに
 通うことが多くなり、さらに最近は直接ミュージシャンと共にアルバム製作まです
 る様になると、自宅で追及してきたJAZZサウンドとLIVEで聴くふくよかで
 厚みのある音のギャップに、もどかしさを感じる様になっておりました。

  自宅のシステムもかなりの年季で、何しろ5Wayマルチアンプシステムなので
 トラブルも多くなり、何か手を打たねばと思っておりましたところ、こちらのホー
 ムページでEシリーズ発表との内容を知り、給与生活者である小生でも手の届く価
 格であることもあって、試聴のためにE-10の貸出をお願いしたのが今年の2月
 半ばの事です。
  E-10を聴いてから、自分が常識と思っていた世界が一変し、WR党となるの
 に時間はかかりませんでした。それまで、パワーアンプによる差は、特にマルチア
 ンプの場合それほど出ないと思い込んでおりました。

  今回の投稿に先立ち、小生の複雑なシステムを言葉で表現するのは難しいので
 リスニングルーム拝見欄に、予め川西様に掲載のお許しを得ましたので、恥ずかし
 いのですが、そちらをご覧いただければと存じます。

  JAZZファンでオーディオマニアとなれば、まずALTECかJBL、聖地は
 岩手県一関のJAZZ喫茶「ベイシー」と相場が決まっておりますが、考えてみる
 と小生もその路線を基本的に歩んで来た様に思います。もちろんあちらとは「月と
 すっぽん」くらいの違いはありますが。
  低域  ~ 130HzをALTECの515-8G(250L 密閉箱)
  中低域 ~ 500HzをJBL 2012H(40L 密閉箱)
  中域  ~3500HzをJBL 2450J+タテマツ音工製ホーン
  中高域 ~8000HzをFostex D1400+Fostex製ホーン
              (最近まではJBLの2426Jでした) 
  高域  8000Hz~をJBL2450Hで聞いております。
      (写真には長いこと使っていたFostex T-500Aツイータ
 がウーファーの前に置いてありますが、先の震災で落下し破損してしまいました。)

 基本的にはJAZZのホーン群を鳴らし切るために2450Jに多くの帯域を受
 け持たせ、ウッドベースのピッチカートのリアリティとスピード感を活かすため
 に低域、中低域はそれなりに考えてこのような構成としております。
  駆動するアンプは球アンプをいろいろ試した中では最も結果の良かった、OTL
 を中域、中高域にもってきて、後は出力トランス付球アンプ、半導体アンプを様々
 組み合わせておりました。自己流の極みではありますが、それなりに鳴っていたと
 自負しておりました。
  しかし、なにしろ同時に30本の出力管が駆動するので、発熱と消費電力が半端
 ではありませんし、古くなってきて当然トラブルも多くなり、音を聴くのにプレー
 ヤーから始まって、10か所ほどもスイッチを入れるのは、自身も歳をとってきて
 精神的にもこの様なシステムを駆動させるのに違和感を感じつつあったことも確か
 です。もっと軽く、発熱も少ない音の良いアンプは無いものか、と思案をはじめて
 おりました。

  最初、E-10の試作機をお借りした第一印象は「ずいぶん小さくて軽いなあ」
 という事でした。まず、サブシステムの12cmのフルレンジで聴いてみました。
 楽器の音は「個性」という言葉でごまかせますが、人の声はそうは行きませんので
 まずは日ごろ聴いているダイナ・ショアをアンドレ・プレヴィンが伴奏したアルバ
 ムで音を出しましたが、いつも気になっていた、いわゆる「サ行」の発音がまるで
 気にならず、極めて自然です。クリアなのにしかも細くならず、しかもプレヴィン
 との距離が分かる気がします。今まではべたっと一線に張り付いていた印象でした
 から、ぎょっとしました。これはすごいぞ、と思い、自身が製作に関わったサック
 ス奏者のアルバムを聴いてみました。彼の生音は日頃散々聴いておりますので、イ
 メージはばっちり頭の中にあります。聴いてみると12cmのフルレンジではあっ
 ても、音のたちは彼の音そのものです。
  E-10恐るべし。いてもたってもいられなくなり、追加で川西様にお願いして、
 2台のWRアンプをお借りし、マルチアンプの中低域、中域、中高域に投入しまし
 た。ムリを承知で?広い帯域を受け持つ中域の2450はE-10を入れてみまし
 た。2450がいくら高能率のユニットとはいえ16Ωですから、せいぜい最大出
 力で6~7Wくらいしか出ないので、さすがに苦しいのでは、と思いましたが、フ
 ルレンジで聴いた時と全く変わらず、破綻するどころか極めてスムースで、気にな
 る部分がありません。ただクリアだとかリアルだとかいうだけでなく、楽器の持つ
 質量感を実に巧みに表現するのです。ドラムスのハイハットは空気を押し出す
 「フッ」という感じが実際に空気が動いているかの如く出るかどうかが、ポイント
 なのですが、3台のWRアンプはその表現力を遺憾なく発揮しました。
 とにかく嫌な音、気になる部分が無く、アルバムを最後まで聴き通してしまう日々
 が続きました。
  全JAZZファンがそうだというと叱られますが、基本的にはJAZZファンは
 どちらかというと大音量派が多く、ベースはゴリゴリ、サックス・トランペットは
 眼前で「ビャー」と炸裂してほしい、と思っていますが、実演の音はいくら近距離
 で大音量であっても(PAがダメなら別ですが)、うるさい音と感じさせない豊穣
 さがあります。これがスピーカーから聴けるのですから、これはこたえられません。
  マルチアンプシステムですから、アンプのレヴェルを合わせたり、位相をチェッ
 クしたり結構アンプを変えるのはそれなりに労力を要するのですが、3台のWRア
 ンプの音は実にまとまり良く収まりました。逆に他の帯域とはちょっと差がついて
 しまった感じです。
  現在はボリュームを省いて頂いたE-10とE-30がそれぞれ中域、中高域を
 奏でています。中低域は箱とユニットを交換する予定があり、これに合わせて次の
 WRアンプをお願いするつもりでおります。中低域、低域は上のホーン群と能率が
 かなり違うので、そこは慎重に川西様にアンプのゲインと出力に関し相談させてい
 ただき、決定するつもりでいます。

  最初の投稿から、長文になり恐縮です。JAZZをマルチアンプで聴いている方
 は大勢おられますが、WRアンプとの組み合わせは数少ないと川西様から伺い、投
 稿することに致しました。
  これから、プリも含めWRアンプでシステムを統一した場合、果たしてどこまで
 到達できるのか、大変楽しみではあります。     

1511川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun May 4 16:30:00 JST 2014
何故、使えるフィルムコンデンサーは少ないのでしょうか?

 WRアンプが発足した当時は、良好な部品が潤沢に入手可能でした。良好なと言う意味は
アンプの音質に悪影響が殆ど出ないものを指します。発売当初から、部品の音質に与える
影響には敏感になっていて、とっかえひっかえした結果、ERO コンを選んだのでした。

 特に、ERO の1826型は小型で基板実装に最適で、幾つ積み重ねて使っても決して音質に
悪い影響が出ませんでした。そのERO コンが数年前にディスコンになり、慌ててかなりの
数を買い貯めしたのですが、消費税アップの駆け込み需要もあって、とうとう使い切って
しまいました。残るは、在庫のRIFA(MMK)のみなってしまったのです。

 コレクタホロワ化や高帰還化技術によりアンプの動作もかなり安定して来たので、通常
入手可能なフィルムコンでも行けるかも知れないと漠然と考えていました。事実、最近は
ケミコン、抵抗、セラミックコン等による、音質への影響は少なくなっていました。

 しかし、フィルムコンだけは、そう簡単に問屋が卸してくれない事が分りました。国産
のフィルムコンなら苦労なく入手可能です。3社の代表的なフィルムコンを試したのです
が、それぞれ問題が生じる事が分かりました。大きく整理すると、過渡ひずみが出て音場
が乱れるものと、音場は乱れないが音色が大きく変ってしまうものに分けられます。

 テストはΕ-10 のアンプ基板と安定化電源の電源ラインに入れているパスコンを、良品
と交換する形で行いました。同等の音質が再現されれば合格です。容量は 0.47uF~1.0uF
のものを使いました。良品とは、ERO は勿論の事、マロリー(0.68uF)やRIFA(0.47uF)の
事です。悪い事にマロリーも同時に尽きたのです。

 1)パナソニック:TFコン→一見良くなったように感じるが、音の中高域が強調された
  ように聴こえ、ナチュラル感が失われる。教会で録音したような感じ。過渡ひずみ感
  はない。

 2)ニッセイ:MMT →ギリギリ使えるかなと言うレベルだがやはり中高域に張りがあり、
  迷った末、使用を断念した。過渡ひずみ感はない。

 3)指月:SMC →中高域の張り出し感はないが、過渡ひずみがありストバイが左のSPに
  張り付く感じ。音場が基本的に乱されて使いものにならない。

 3社をテストしてこの有様。国産を諦め、海外製品で唯一健在なWIMAをテストして見ま
した。

 4)WIMA:MKS2→過渡ひずみが出て、音場感が台無しになる。

 WIMAは昔から中高域に変な癖があったのでどうかと思ったのですが、やはりダメでした。
これは過渡ひずみが生じる方で、音が汚くなります。何故このコンデンサーがディスコン
にならないのか不思議です。「悪貨は良貨を駆逐する」の例え通りなのか?

 その他、昔秋葉原で買いだめした黄色の外国製品の1uF もテストして見ましたが、WIMA
と似たような結果でした。確率的にも良い物の方が少ない感じです。それにしても、悪い
ものに2通りあるのは興味深いところです。何故そうなるのか、科学技術が発達した現在
でも、本当の理由は説明できません。オーディオの奥の深いところです。

 これら5種類のフィルムコンデンサーに共通するのは、足が鉄製である事です。磁石で
調べると直ぐ分かります。逆に、良品は全て非磁性体の足で作られています。これが根本
原因とは思えませんが、抵抗の足は非磁性体が殆どなのに、何故コンデンサーには鉄製が
多いのでしょうか、理解に苦しみます。ケミコンも高価なBG等は非磁性体でしたが、安価
なものは全て鉄製です。鉄製とは、鉄等の磁性体を含む合金と言う意味です。

 足が鉄製だとトランスの漏れ磁束に反応する事は事実です。そこからノイズが入り込む
なんて事が有り得るのか、もう少し若かったら研究したいところです。多分コンデンサー
単体の特性を幾ら測定しても、この謎は解けないと思います。基板実装して初めて起きる
現象ではないでしょうか。

 過渡ひずみが出て、ストバイがひずみっぽく聴こえ、左のスピーカーに張り付く感じは、
電源ケーブルの悪いものを使った時に似ています。要するに音場感が台無しになるのです。
電源ケーブルも電源ラインに入れるパスコンも、電源に関係すると言う意味では共通項が
あります。

 電源と言えば高周波ノイズの混入です。普通、電源ラインにはケミコンとフィルムコン
の並列素子をパスコンとして入れます。電源インピーダンスの上昇を防ぎ、高周波ノイズ
を吸収する目的があります。今の高性能なケミコンは別にして、普通のケミコンは 10KHz
くらいからインピーダンスは反転して上昇して行きます。つまり、可聴周波数内から既に
コンデンサーの機能を失い、単なるインダクタンスになって行ってしまうのです。

 これを補うのがフィルムコンです。勿論フィルムコンも100KHzを越えると怪しくなって
来ますが、少なくてもケミコンより高性能なので、高周波ノイズの抑制に効果があるはず
です。従って高周波ノイズの抑制効果がどのくらいあるのか、その効果がどの程度の帯域
に亘って有効なのか、コンデンサーの質によって、その辺りに差が出て来る可能性はある
と思います。

 コレクタホロワ化や高帰還化を行っても、基本的にやはり電源はインピーダンスが低く
ノイズの混入が少ない、と言う条件は必須なのでしょう。

 フィルムコンデンサーは結局、ディスコンのERO かRIFAに頼るしかないようです。幸い
まだERO でパスコンに使えるものが入手できましたので、在庫のRIFAと併せればまだ暫く
は大丈夫ですが、早くERO に頼らなくても良いようなフィルムコンデンサーを作って貰い
たいものです。

 Ε-10 に入れてテストすれば、その良し悪しは一目瞭然です。他にヘンな音を出す部分
がないので、純粋にその部品の良し悪しが判定できます。誘電体やメタリコンの技術にも
勿論、影響されるでしょうが、是非、非磁性体の足を使ったものを発売して欲しいと思い
ます。

 フィルムコンも電源ケーブルも音に悪影響を与えないものは非常に少ないので、それを
正しく選ぶ事をしていない、或いは正しいものを見つけられないメーカーの製品が、偶然
に良い結果になる確率は非常の低いはずですし、確固とした帰還技術をもっていなければ、
さらに結果は悲惨なものになるだろうと予測されます。

 偶然に音の良いアンプなんて、この世の中には存在しません。今のオーディオはそんな
生易しいものではないのです。泡のような夢は捨て、早く本物を見つける事です。それが
唯一、いい音で音楽を楽しむ事を可能にします。

 確かな技術と訓練された耳で、正しく部品がチョイスされているWRアンプは、安心して
お選び頂けるアンプです。これまでにWRアンプをお買いになって、ある程度の音で音楽が
楽しめるようになった方は、どうかそのまま色々な音楽ソースを楽しんで下さい。

 どうしても再生の難しいソースに出くわした時、或いはライブで聴いた音がどうしても
自分の家で再生できない時に、改めて装置の事を考えるようにして下さい。具体的な事例
が出るまでは手持ち無沙汰だからとか、何かやっていないと落ち着かないとか、そう言う
オーディオチックな癖は封印して下さい。目的がはっきりしない内にあーだこーだと弄る
と泥沼から這い出せなくなると思います。

 もう一つの問題はオーディオ仲間です。殆どのオーディオマニアは架空の音を追及して
いますから、無責任に「この音は違う!」とか「もっと艶がある!」とか嫉妬から適当な
事を放言します。それを真に受けて自分を見失い、高価なケーブルで音造りをするような
お金の掛かるオーディオに引き込まれてしまう恐れがあります。そんな不幸な路を辿った
WRアンプユーザーを私は知っています。皆さんも呉れ呉れもご注意下さい。どんな高価な
ケーブルを使っても、オーディオが根本的に解決するなんて事は絶対にないのですから。

 オーディオはマイペースで進め、人の意見はあくまでも参考にする程度に止めて下さい。
せっかくWRアンプに辿り着いた事を大切にして頂きたいと思います。  

1510川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sun Apr 27 14:30:00 JST 2014
日フィル4月定期を聴く

 今月は正指揮者の山田正樹で、出しものはストラビンスキーの「火の鳥」全曲版とニールセンの
交響曲第4番「不滅」でした。指揮者自身によるプレトークで、今夜はメインディッシュが2つも
あるような曲の構成だと聞いて、最後まで緊張感を持って聴けるか多少不安になりました。前半は
約45分、後半は約36分もあります。

 普通、「火の鳥」は1919年版が演奏される事が多いのですが、これはスイスロマンド管の創設者
アンセルメの勧めに依って、作曲者が全曲版から抜粋版に書き下ろしたもので、自分自身は音楽的
に割り切れないものがあるので、だから今夜は全曲版を指揮するのだと言う風に話されていました。

 導入部は独特のコントラバスの重低音が大太鼓の刻みと同時に奏され、夜の森の不気味さを表出
します。今夜は何時もよりコントラバスが重々しく感じたのですが、あとで分った事ですが此処は
5弦のコントラバスを使うようになっているからなのでしょう。当り前ながら、大太鼓とコントラ
バスがちゃんと分離して聴こえました。やはりサントリーホールの音響設計は完璧に近いと改めて
思ったのでした。

 全曲版は長いとか退屈するとか言われる事もありますが、確かに前半部分の王女達のスケルツォ
までは、著しく魅力的なメロディーが出る訳でもなく、大きな音がするでもなく、ある意味淡々と
進むので、あの魅力的な「カスチェイの部下の兇悪な踊り」の部分だけを期待するような低レベル
な聴き方をすると、そうなってしまう気がします。

 しかし、バーバリズムを取り入れながらフランス音楽的なアプローチで書かれたこの曲の魅力の
一つは、この前半部分に主要点があるように思えるのです。弦奏法にフラジオレットを取り入れて
独特の繊細感を醸し出し、美しい木管とのバランスを上手く取りながら「火の鳥」の描写が繊細に
行われているのです。それにしても日フィルの木管は急速にレベルを上げています。弦は以前から
相当のレベルにあると思っていますが、客員首席のトランペットと優秀なトロンボーン首席に引っ
張られて、金管のレベルも確実に上がっています。

 そう言う私も不覚にも前半、スッと眠気に負けそうになったのも事実ですが、次の日に復習する
目的でデービス盤を聴いて、そう強く思ったのでした。CDも有ったはずですが見当たらず仕方なく
LP(X-7960)を聴いたのですが、意外にも音が良く実演の70% 程度は再現できていると思いました。
重低音は勿論の事、弦の繊細感、木管の美しさ、金管の厚みなど、いい感じ鳴ってくれます。今回
はΕC-1 +Ε-10 で試聴しましたが、全くパワー不足だとは感じませんでした。

 デービスはストラビンスキーの3大バレエを録音していますが、「火の鳥」は1978年に一番最後
に録音しています。このLPが発売された頃、ラ技誌上で高城重躬氏が最高ランクで褒め称えていた
のですが、当時の自分の装置では余り冴えた音では鳴らず、このLPも棚晒しになっていました。

 その後、30年以上「火の鳥」は買った事がなく、本当に久し振りに引っ張りだしたのです。この
オケはコンセルトヘボウ管で、これ以上ない組み合わせだと言っても過言ではないでしょう。3大
オケの中でフランス風音楽を一番上手く演奏するのはコンセルトヘボウ管だと思います。シャイー
がコンセルトヘボウ管と来日した時に、「ダフニス」を聴いたのですが、その舞い上がるような音
の洪水に心の中まで魅せられてしまったのでした。本当に凄い音を出すオケです。

 実演の話に戻しますが、女王達のスケルツォが終わるとイワンが現れます。此処はホルンの独奏
で子守唄風のメロディーが奏でられます。これ以降よく耳にする聴き憶えのあるメロディーが次々
に現れて音楽も徐々に盛り上がってきます。これらの魅力的なメロディーは、実は前半部分で無垢
のままで既に現れていたと言う気がするのです。だから、前半部分は大切なのではないでしょうか。
抜粋版では省略されている部分にこそ、この曲の本当の肝があるのかも知れません。

 それと一つ付け加えるなら、ソロ楽器が効果的に使われている事です。最初に気付くのはビオラ
ですが、バイオリン、ホルン、オーボエ、クラ、フルート、チェロ、ファゴット等々、心に滲みる
メロディーを伴ってタイミングよく出現します。

 オケもffで奏される機会が増え、いよいよ「カスチェイの部下の兇悪な踊り」に到達するのです
が、この辺りの音は本当にオーディオチックで胸が空きます。やはり、ストランビンスキーは天才
です。4管編成でこれだけ多くの楽器が同時に鳴っているのに、全く混濁感がありません。山田の
指揮も当を得ていてオケを上手く鼓舞しつつ、素晴らしい音を引き出していました。日本のオケが
フランスものをやると、何処か野暮ったくなるのですが、全くそのような危惧を感じませんでした。
そうそう、今回の全曲版ではトランペット等のバンダが登場しました。

 2階の左右の最前列にトランペットが一人ずつ、ホール左手の3階にトランペットが一人、あと
2階のトラペット奏者の脇に何か打楽器があった気がします。デービス盤にはトラペット3としか
書いてないので、全曲版にも色々あるのかも知れません。今回はトランペット6でした。

 カスチャイの魔力が消えたあとの、豊麗な響きの饗宴と終結部は圧巻でした。まるで今夜の最後
の曲が閉じられたかのような錯覚に陥るほどの拍手とカーテンコールでした。日本のオケでこんな
洒落た音楽が心行くまで楽しめるようになったのです。下手な外来オケはもう不要になったと思い
ます。このレベルを明らかに越えるオケは、世界広しと言えどもそう多くはないと思ったのでした。

 15分の休憩の後はニールセンの「不滅」です。本当に昔、6RA8PPで遠い親戚の音楽愛好家の方に
アンプを作って差し上げたのですが、その時、その方が「不滅」が良いとか何んとか言っていたの
を憶えているくらいで、LPやCDを買う機会も、その気もなかったように思います。

 勿論、大作曲家でなくても、殆ど単発もので有名になった曲、例えば「惑星」とか「道化師」や
「カバレリア・ルスチカーナ」は全く偏見もなく聴きますが、「不滅」はその気にならなかったの
です。これまでに実際に聴いたのか、食わず嫌いだったのか、その点も定かではありません。

 編成が大きく、2つのティンパニーが使われる、どちらかと言えばオーディオ的には面白いはず
ですが、どうも捉えどころがないのです。美しいメロディーがある訳でもなく、魅力的なリズムが
刻まれるでもなく音楽が素直に入って来ないのです。ある意味不思議な存在です。オリジナリティ
がある、と言えばそれまでですが、普遍性や一般性と言う意味で?マークの付く曲だと思いました。
やはり難解な曲の一つではないかと思います。

 しかも、36分ほどの間、切れ目無く演奏が続くので、長大な難曲を聴かされ続けると言う苦痛が
無いと言えばウソになるでしょう。これは私の感性での事で、この曲こそ素晴らしいと感じる方が
居られても不思議ではありません。それが芸術と言うものでしょう。

 そんな訳で、ゲストティンパニストの叩き方が強烈だな、なんて言う程度の低次元な聴き方しか
出来ませんでした。唯、演奏自体は力のこもった熱演だった気はします。時計を見ると正に休憩が
終わって約36分が経過するところでした。やっと解放されると思った瞬間に曲が終わったのでした。
それでも2階席から「ブラボー」と言う声が聴こえたので、どんな曲にも必ず通が居るのだと思い
ました。

 最後に、山田正樹は日フィルとの契約を2年間延長したそうで、それを利用してマーラーの連続
演奏会をオーチャードで行うとの事です。逆に、コンサートミストレスの方が契約切れでお辞めに
なり、新しくアシスタントコンサートマスターの方が就任され、今回早速トップサイドに登場しま
した。何れはコンサートマスター(ミストレス)に昇格するはずだそうです。

 オケの弦の音はコンサートマスターに左右されるところがあるので、将来どんな音を醸しだして
くれるのか大いに楽しみです。  

1509川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Apr 23 16:00:00 JST 2014
小野寺さん、高帰還型プリΕC-1 のお買い上げとご投稿ありがとうございます。

 実は小野寺さんには、既にΕ-10 とWRP-α9/A をお買い上げ頂いておりましたのに、さらに
ΕC-1 をお求め頂き、重ねて御礼申し上げたいと思います。

 α9/A をプリとしてお使いの時でも、勿論それなりにいい音でお聴きになられていたと思い
ますので、ΕC-1 にすればもっと良くなると予測されたのは当然の事と思います。然しながら
意外にも、私が掲示板に書いているようには音の向上が無かった事に、少々慌てられたように
ご推察申し上げます。

 その最大の原因が、ソース源にあると小野寺さんは判断されて、取り敢えずPCオーディオを
止め、CD再生に切り替えられてから十分満足の行く装置になったようで、改めてPCオーディオ
の難しさに気付かれたようにお見受け致します。

 私はPCオーディオそのものはやっておりませんが、息子が、クラシック音楽家を対象にした
デジタル録音をやっていますので、デジタル処理の難しさは痛いほど分かっているつもりです。
CDの黎明期にはデジタル時代になったら、みんな同じ音になるかも知れない、なんて言う事も
巷では囁かれていたのですが、蓋を開けたら、実際にはCDプレーヤー毎に音が違うと言う結果
になったのでした。

 何故そうなるのか、未だにはっきりした事は分っていませんが、おおよその推定は出来ると
思います。色々考えられると思いますが、結局、一番の問題はファイル転送にある気がします。
文書ファイル等は何回ファイル転送をしても、先ず、中身の文字列が変わってしまう等と言う
トラブルはありません。

 しかし音楽信号ファイルとなると、ファイル転送を繰り返す事で微妙に中身に変化が生じる
と考えざるを得ない現象が現実に起こります。例えば内臓HDD にあるファイルを再生又は出力
する場合と、外部HDD にある同じファイルを再生又は出力する場合とで、明らかに音の変化が
生じる事があります。此処で出力とはCD-Rに焼く事などを意味します。

 又、HDD をSSD に置き換えただけで音が変わる事もよくある事です。さらに外部HDD を接続
する方法、例えばUSB2.0で繋ぐかUSB3.0を使うかでも音は大きく変わる事がありますし、当然
その接続ケーブルでも音は変わる事になります。こうなりますと、何が正解かが分らなくなり
ます。

 元ファイルからミックスダウンしてCD-Rに焼くと言うプロセスには、幾通りも方法があって
どの方法がもっとも良い結果を齎すかは、最終的には優れた再生装置を使って、訓練された耳
で正確に判断するしか、他に方法はないように思います。

 おまけにデジタル処理にはもう一つ重要な問題があります。それはデジタル機器(PCを含む)
そのものがノイズの発生源であると言う事実です。使用されているスイッチング電源にも問題
があります。ノイズを発生する事は言うに及びませんが、電源出力インピーダンスがアナログ
方式に比べて下がり切らないと言う欠点があります。WRレコーディングでは可能な限りSW電源
を使用しないようにして、WR式安定化電源(Ε-10等に使っているものと同等品)に置き換えて
います。

 デジタルはデジタルなりの難しさがあり、アナログ以上に、多くの問題を含んでいるように
思います。PCオーディオと言えどもその難しさから逃れる事は出来ません。又、多分正解だと
言い切れる方法論も確立されていません。その意味でファイル転送の煩わしさに影響されない
CDプレーヤー等による再生には、捨てきれない魅力があると思います。

 話が脱線してしまいましたが、小野寺さんはこの事に気付かれてCDプレーヤーを復活されて

★やっとフルオケの中のコントラバス奏者の音が、他の音に埋もれずに
★はっきり、くっきり聞こえる、弓の動きが見えるシステムになりました。

と言うような音の再生が可能になったと言う事だと思います。小野寺さんはご自身でコントラ
バスを演奏されるのですから仰る重みはかなりのものだと思います。再生装置がまともに動作
するようになりますと、

★CDの音の違い、良し悪しがはっきり判断出来るようになりました。

と仰っているように、ソースの出来不出来が見えて来て、本当はいい録音だったとか、大した
録音ではなかったとか、が分って来ます。小野寺さんが挙げられた、ブラームス交響曲全集は
実は私も持っているのですが、音が硬質で、余りブラームスらしい重厚な音がしないと思って
今までお蔵入りになっていました。

 硬質な音であると言う事はこのアナログ盤(6747 270)も持っていて、LP時代からそう感じて
いましたので、それは事実だと思います。しかし再生装置の具合が良くないとそれが誇張され、
聴くに耐えない程の硬さになる事があるのです。そう言えば、高帰還化以降にこのCDを聴いた
事がありませんでした。

 早速私も聴いて見ました。確かに、少し硬めの音ではありますが、流石コンセルトヘボー管
です。世界三大オケの面目躍如たるものがあり、ハイティンクの若さあるエネルギーが髣髴と
して伝わって来ます。この録音からこんな充実した音楽が聴けるとは思ってもいませんでした。
小野寺さんの仰る

★ヴァイオリンが力強く、かつふわっとしています。

の意味は一流オケ独特の力強い立派な弦の音でありながら、弱音ではフアッと浮くような弦の
柔らか味も聴こえて来ると言う事でしょう。確かに、私もそう思いました。この音なら音楽を
じっくり楽しむ事ができそうです。

 実はこれまでLP時代も含めて、ずっと聴き続けた事は無かったのです。やはり高帰還化技術
は、本当はいい録音だったのに、再生装置の欠陥故に真価が発揮されなかったソースを確実に
蘇らせる事ができるように思います。
 
 最後に、お馴染みのBill Evansのワルツ・フォー・デビーを取り上げられていますが、注目
すべきは、

★アナログプロダクション盤でもXRCD盤でもなく、オリジナルのOJCが最も良く

と言う行(くだり)です。小澤/ボストン響の「フランク交響曲ニ短調」でも思ったのですが
どうも国内で発売される、オーディオ的に音が良いと吹聴しているCDは大体怪しい、と言う事
です。日本人がやると細部の音に拘り、全体のバランスや音楽的配慮が足りない場合が多いの
ではないかと思います。要するにある種の装置で聴けばそれなりの音になるのかも知れません
が、確固とした技術で製作された訳でもなく、その一般性や万能性には?マークが付くと思い
ます。これはCDに限らず、アンプを含めた他のオーディオ製品についても言える事ではないか
と思います。WRアンプユーザーの方は、オリジナル盤をお買いになる事を強くお勧めします。  

1507小野寺さん(アマチュアベーシスト) Fri Apr 18 13:06:24 JST 2014
川西先生の小澤/ボストン響の「フランク交響曲ニ短調」の一連の記事を興味深く読んでおります。

当方も10年ほど前は同一音源の異盤に興味を持ち収集しておりました。
しかし当時は違いがわかっても、音楽経験不足やシステムのせいもあってか、
良し悪しが判断出来る程の違いではなかったため止めてしまいました。

3月末にEC-1が我が家に届きE-10とセットになって、さてこれで音楽を聴くことが益々楽しくなるか
と思ったのですが、どうも川西先生の記事のようには感動が得られない。
システムの悪い点が浮き彫りになっているのだと思い、再構築しておりました。

参考までに、現在の機材は下記です。
CDプレーヤー:TEAC CD-P650 (ドライブメカのダンパー調整等、少し手を入れてます)
DAC : AIT DAC(ES9018搭載)
SP:B&W CDM-1
アンプ:EC-1、E-10 プリのヴォリュームは目盛4~6。

オーディオは10年以上右往左往してきましたが、ウエストリバーと出会って
やっとフルオケの中のコントラバス奏者の音が、他の音に埋もれずに
はっきり、くっきり聞こえる、弓の動きが見えるシステムになりました。

下記はEC-1を導入以前の再生方法でしたが、音色が悪いので失格となりました。
1)パナソニックのBlu-rayレコーダーからDACへデジタル出力
2)パソコンからの再生(リッピング音源、ハイレゾ音源、有料音楽配信(music unlimited))

現在のシステムで十分満足いくレベルでのCD再生が達成でき、その音色に鑑みると
PCオーディオでこの質を達成するにはまだまだ発展途上かと思いました。

こうしてシステムが落ち着きまして、CD再生でようやく満足できる状態になりました。
そうしますと今度は、CDの音の違い、良し悪しがはっきり判断出来るようになりました。

ブラームス交響曲第2番、第3番
ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団(1973年、1970年、フィリップス)
1)国内盤 グロリアシリーズ (17CD-45)
2)輸入盤 全集 (442 068-2 made in Germany) 

当初1のみ所有しておりましたが、生の音に比べるといささか見通しが悪く感じました。
チェロが埋もれていてコントラバスと混濁している。下手のヴァイオリン群と上手の低音群の間が
中抜けしているような感じで距離感がある。

そこでなるべくオリジナルに近いものとして、2のドイツ盤を入手してみました。
音が出た瞬間驚きました。音色の厚みが全く違います。
ヴァイオリンが力強く、かつふわっとしています。生き生きとしている。
表板から細かな振動が音となって空中に放出されているのが見えるようです。
チェロの動きも生々しく浮かび上がります。元々所有していた国内盤では、
バイオリンをはじめとする弦の響きの部分が大きく削がれてしまっているようです。

コンセルトヘボウと同じくオランダのオケ、ロッテルダムフィルを昨年実演で聴いたのですが、
その音に照らすと、コンセルトヘボウの美しい音色が想像できるような再生音です。

川西先生の『中高域が僅かながら硬直していて、それが弦の柔らか味を阻害している。
気持ちよく抜け切らない』ということは、こういうことなのだろうと思えます。

ジャズでもBill Evansのワルツ・フォー・デビーは、ウエストリバーのアンプを使うことで、
アナログプロダクション盤でもXRCD盤でもなく、オリジナルのOJCが最も良く、
生々しく聴けると迷わず判断できます。  

1506川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Apr 15 22:30:00 JST 2014
再び、小澤/ボストン響の「フランク交響曲ニ短調」について

 最初に、ルビジウム・クロック・カッティングと称する国内盤(UCCG-4779)を買って、かなり
違和感を覚えましたので何とか輸入盤がないかと検索したのですが、正規には存在せずプレミア
が付いて5000円もする状況でしたので、一時諦める事にしました。

 偶々、国内盤のゴールドディスク(UCCG-9245)を中古で見つけて、取り敢えず購入したところ、
遥かに良い音で聴く事ができ、その大きな落差もあって当面満足していました。この事を息子に
話したところ、確か発売時に輸入盤(437 827-2)を買ったはずだと言う事を聞き、それなら是非
聴いて見たいと思い探して貰う事にしたのです。纏めると以下の3種になります。

 1)ルビジウム・クロック・カッティング:メモリーテックカッティング?(UCCG-4779)

 2)ゴールドCD:ビクターカッティング(UCCG-9245)

 3)オリジナルCD:独カッティング(437 827-2)

 先日やっと見つかったと言って持って来てくれました。ゴールドディスクで満足していたはず
なのに、輸入盤を聴いて見ると又その上がある事に気付かされたのです。福与かと言うのか、生
オケ特有の柔らか味が感じられます。

 生オケの音は実に複雑で、剛体感があってゴツイ音にも聴こえるし、中低域がタップリしてて
中高域が抑えられてるようにも聴こえるし、はたまた鋭い中高域が飛び出して来る事もあります
が、何と言っても弦楽器の柔から味の魅力は言葉に尽くす事ができません。

 この曲の導入部は、低弦が深く沈み込む、ほの暗い感じで始まりますが、間もなくストバイに
少し明るい魅力的なテーマが出ます。ストバイも決して高い音程ではなく弦の柔らか味が出易い
低めのポジションで行き来します。ボストン響の弦の魅力が地味ながら匂い立ちます。輸入盤で
聴いて初めてそれがはっきり認識できたのです。ゴールドディスクで聴いても、それ程の感激は
ありません。ルビジウムは論外です。

 結局、ゴールドディスクも中高域が僅かながら硬直していて、それが弦の柔らか味を阻害して
いると思われます。だからストバイ・セコバイのffでも、多少の引き攣れが起きており、気持ち
よく抜け切らないのです。人間の耳は贅沢にできており、ルビジウムのあとに聴いたゴールドは
素晴らしいと思ったものの、輸入盤を聴いてしまうともうゴールドには戻れなくなります。

 この3種のCDを我が家のユニバーサルプレーヤーで掛けて見ると、お互いにレジューム機能が
働きますので3種のPQ信号は同一で、元のマスターは同じである事が分ります。しかし、3)は
マスター又はそれに近いものからドイツでカッティングされていますが、1)2)はマスターの
コピーが日本に送られて、そこからカッティングされているので、その段階での劣化が考えられ
ます。

 もう一つはドイツのカッティングマシンと国内のカッティングマシンが違う事です。経験的に
国内カッティングはドイツ本国のものに比べて劣る事が多いように思います。ゴールドCDは何も
細工していないはずですが、ルビジウムは分りません。外部クロックを注入するにはケーブルが
絡んでくるでしょうから、クロックの正確さ以上に音が変わる要素を含んでいます。

 例えばの話ですが、クロックの伝送は非常に難しくその波形が変わる可能性があります。本来
理想的なパルスは立ち上がりと立下りの時間は無限小でなければなりませんが、それは至難の業
であって、必ずオーバーシュートやオーバーダンピング等が起きてしまいます。

 波形が荒れれば、パルスの伝送にエラーが生じ易くなり、延いては音に影響する事になります。
パルスのような高調波成分を多く含む信号をケーブルを使って伝送すると、ケーブルの両端での
反射が無視できなくなり、ケーブル内に定在波が立つ事になります。それがオーバーシュート等
の原因になるのです。

 話が脱線しますが、PC等のデジタル系のコネクタの殆どは、ケーブルの特性インピーダンスや
コネクタのインピーダンス等は考慮されておらず、ましてや、マッチングを取る等の配慮は全く
なされていません。結局は、出たとこ勝負と言う事になり、何ともお粗末な状況になっています。
ケーブルを変えれば音が変わるのは当然の事でしょう。この影響を少なくするには、出来る限り
ケーブル長を短くするしかありませんが、それとて本質的な解決にはならないのです。

 伝送理論ではっきり分っている事の一つに、マッチングが取れていない伝送線路はケーブル長
の影響を大きく受ける、と言う事実があります。逆に言えば、マッチングが取れていれば長さを
変えても伝送特性は基本的には変わりません。同じケーブル、コネクタを使ってもケーブル長で
音が変わるとすれば、それはマッチングが取れていない証拠になります。

 このように考えて来ると、デジタル系は心もとない状況にある事が分ります。デジタル開発者
や設計者がもう少し伝送理論を取り入れていれば、違った世界が開けていた可能性があるように
思います。アナログの末期に、新しく誕生する理想のデジタルの世界に、大いに期待が集まった
ものの、便利さは別にしても、優れたLPの音に格段の優位性を示すデジタルの音がこれまで存在
したでしょうか?

 確かに、3)の音は実演を髣髴させる何かが感じられますが、そして交響曲ニ短調のベストCD
だとも思いますが、もしこの録音を純粋アナログ系で行ったとしたら、もっと良いものが出来た
かも知れない、と言う気にさせるのは、やはりデジタル系に完全に満足出来ていない現実がある
からだと思います。

 それにしても、この3種のCDの音の違いを明確に聴き分けられるのは、やはりWRの高帰還技術
が生きた、高帰還型プリアンプΕC-1 と高帰還型パワーアンプ(特製100W機)のお陰と言う事が
できるでしょう。   

1505川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri Apr 11 17:05:00 JST 2014
タケウチさん、WRアンプのお買い上げとご投稿ありがとうございます。

 タケウチさんには最初にWRP-Δ7 をお買い上げ頂いたのが始まりで、ご自身が仰っていますよう
にΔ7 の高帰還化、そして高帰還型プリアンプΕC-1 の追加注文を賜りまして、現在のWR最新技術
の状態でお聴き頂いております。私も、Δ7 と100W機の違いはありますが、同じ構成で音楽を日夜
楽しんでおります。

 マルチシステムは別ですが、一発で聴く場合は、このシンプルな構成で最高のパフォーマンスを
もって音楽を楽しむ事ができます。私は生の音楽会を物差しにしてアンプの開発を進めて来ました
ので、そのような趣味趣向の方々にはベストマッチすると申し上げて来ましたが、タクウチさんの
お言葉の中に「よほど変な趣味嗜好を持った人でない限り、WRアンプは、大いなる成果をもたらす
でしょう」とありますように、実はもっと広い趣味趣向の方々にもアダプトする可能性が出て参り
ました。

 必ずしもアコースティック楽器による音楽ばかりではなく、もっと広い意味でのオーディオ趣味
に対しても、最新の高帰還型WRアンプは、十分対応できるオーディオアンプであると言えるのでは
ないかと思います。

 私のアンプ開発法は、生演奏会をお手本にはしていますが、姑息な手段でそれに合わせるような
事は一切しておりません。あくまでも正攻法でアンプの開発・設計を行っています。帰還アンプ内
に不可避的に存在する「負性抵抗」を本質的に排除する特許回路がその根幹にあります。この事は
音楽のジャンルに依らず、やらなくてはならない事なのです。ロックだから、歌謡曲だから、この
「負性抵抗」を見逃して良いはずはありません。

 斯くしてタケウチさんのお言葉にあるように、余程ヘンな趣味をお持ちでないなら、WRアンプは
どんな方々にも理想的なアンプと成り得るのです。アンプ内で増幅される波形が、クラシックでも
ジャズでも、ロックでも、歌謡曲でも、その波形を正しく増幅してスピーカーに渡す事こそが大切
なのです。ロック、歌謡曲だからと言って、途中で波形が崩れて良い訳がありません。

 これまで、他のジャンルには門外漢の私がどんな音楽ジャンルにも合います、と言ったところで
信用されないので余り欲張らなかったのですが、タケウチさんから心強いエールを頂きましたので
改めて「実はWRアンプは万能である!」と此処に宣言したいと思います。

 次に、演奏会場で聴いた音が、実は我が家で聴いた音だったと言うタケウチさんの体験談は興味
深いものがあります。そう言われて見ると私も日フィルの定期演奏会会場で、この音家でも出てる
と思った事がありました。最近は、生演奏会の音を我が家で確認したり、家の音を生演奏会で確認
したり、相互に行き来してるような気がしています。

 タケウチさんはこうも仰っています。「15年間使っているスピーカー(Thiel CS2.3)が、これ
までにない、別の、豊かな表情を見せ始めました」と。そうなんです、スピーカーは自分自身だけ
で音を決められないのです。スピーカー固有の音は有るようで余り無いのです。

 それは当然の事で駆動するパワーアンプに依るところが大きいからです。駆動インピーダンスや
アンプの安定性でガラっと音は変わってしまうのです。定電圧駆動を前提にしたスピーカーの動作
原理を考えれば、至極当たり前の事なのですが、オーディオ関係者の間でもこの辺りの知識がない
方が多いのに驚きます。十分に安定で低い駆動インピーダンスを有するWRアンプなら、スピーカー
の本領は発揮されるのです。

 このような状態になりますと、タケウチさんも仰っていますが、電源の極性や各種アクセサリー、
また音楽ソースの良し悪しの判断が、何となくから正確に出来るようになります。この事は非常に
大切な事です。正確に判断できれば、システムは確実に向上して行きますが、判断に迷って誤った
結論を出せば、益々混迷を深める事になるからです。

 今のオーディオはある意味「混迷のオーディオ」だと思います。一時は良くても直ぐにその音に
飽きて、また何処かを変えたくなるのです。その度にバカにならない資金が流失し、その累積額は
相当なものになります。しかし本質的解決からは程遠く、何時しか音楽を楽しむと言う本来の目的
を忘れ、アクセサリーや機器の遍歴が自分の趣味だと錯覚するようになってしまいます。WRアンプ
を導入して頂ければ、確実に混迷のオーディオから脱する事ができます。

 そればかりではなく、「スピーカーの存在が消え、目の前に演奏空間が再現されている感覚」が
得られるようになります。そもそもスピーカーの存在が分ってしまうのはアンプの過渡特性の悪さ
の為なのです。WRアンプを正しく使えば、目の前からスピーカーの存在は確実に消えます。そして
存在するのは、音楽が奏でられた現場の生々しい雰囲気だけなのです。

 最後にオーディオに精通した友人に聴いて貰った時のコメントの中に、アンプに関する事は何も
無かったと言う点ですが、私はタケウチさんとはちょっと違った見解を持っています。どのような
観点からもアンプに対するケチが付けられない状況に嫉妬して、ノーコメントになったのではない
かと思っています。オーディオもある意味、嫉妬の世界ではないでしょうか?  

1504タケウチさん(カープとサンフレッチェの応援団員(になりたい!)) Sun Apr 6 11:00:47 JST 2014
ウエストリバーアンプと私

この掲示板を読んでいる方は、すでにWRアンプを所有し使っているか、導入を検討している
方々でしょうが、もしかしたら自分の経験や感じた事が、同好の士の共感を得られたり、導入
を躊躇されている方の参考になるならばと、PCの前に座った次第です。

まず最初に結論から申し上げますと、すでに所有されている方は、大概納得されると思います
が、よほど変な趣味嗜好を持った人でない限り、WRアンプは、大いなる成果をもたらすでしょ
う、という事です。
私の場合、WRアンプの遍歴は以下の通りです。

1)パワーアンプ WRP-Δ7 導入
2)パワーアンプ WRP-Δ7 高帰還化
3)プリアンプ  ΕC-1 導入

と、三段階に渡っているのですが、つくづくWRアンプの実力を知ったのが、2)の段階で、
私の住む地方のオーケストラの演奏を聴きにいった時、演奏の途中、「何かこの音聞いたこ
とある」と思っていたら、それは自分の家のオーディオの音だったと気づいた時です(もち
ろん、ミニチュア版のレベルですけど)。

2)の段階でさらに、自分が15年間使っているスピーカー(Thiel CS2.3)が、これまで
にない、別の、豊かな表情を見せ始めました。
このスピーカーは、男声には定評ありましたが、女声は特になにも、という評判で、私も
女声は悪くないと思いながら、こんなもんと認識していました。
それがこの段階で、例えばリンダ ロンシュタットの「Dedicated To The One I Love」
や、カール ベーム指揮、ウィーンフィル、1971年録音ドイツグラモフォン、モーツアルト
「レクイエム」(自分で300回聞いたのか、400回聞いたのか判りません)の女声が、
何とも豊かでふくよか、優しさに満ちたニュアンスで鳴るようになりました。

さらにこの段階で、自分がボンヤリなのが主要因ですが、繋げる機器の電極やスピーカー
の台座セッティング、PCを使っての音楽再生時の使用音楽ソフト等(私はマックブックエ
アーを使用していて、最終的にaudirvanaを選びました)の違いが、以前の何となくから、
はっきりと判るようになりました。

さらに、もうあきれてしまったのが、3)のプリアンプΕC-1の導入時です。
ΕC-1により、音場感や大げさな音の表情が改善され、満足していましたが、本当にその
真価を発揮し、その実力で私を驚かせたのは、導入から2週間位たった頃でしょうか。

ある日、いつものように音楽を聴いていると、何かが違い、古い記憶を思い起こさせるも
のがあるのに気が付きました。
それは、スピーカーの存在が消え、目の前に演奏空間が再現されている感覚であり、20
年程前に使っていた、型番は忘れましたが、オランダのオーディオスタティックという会
社の、静電型スピーカーの感覚でした。
ただし、その当時の記憶と違い、蜃気楼のような頼りない、わざと作ったような音空間で
なく、音像や高低音もしっかりと確保しながら、目の前に、音と空間が乱舞し、視覚効果
を刺激し、変な事言いますが、音にまるで色がついているような感覚に、それ以来狂喜し
ています。

長くなってしまいました。
最後に、自分勝手な、強引な思い込みかもしれませんが、、、。
ビートルズ変態の友人がわが家に遊びにきた時、スピーカーの音をとても褒めてくれたの
ですが、アンプについては一言も、何も言いませんでした。でも彼は器機や電気に関して
無知ではなく、ギターや、ギターアンプのリペアーを請け負ったり、「アースを取ると、
音の抜けが~」とか言う人物です。
その彼が、アンプに関して何も言わなかったというのは、反対に、アンプがあまりにもス
ピーカーと自然にマッチしていて、意識するレベルさえ飛び越えてしまっていた、という
風に私は解釈しています。


注)「リスニングルーム拝見」に装置の紹介が載っています。ご参照下さい。  

1503川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Fri Apr 4 15:00:00 JST 2014
小澤/ボストン響のフランクの交響曲ニ短調について

 先日、髪の毛が伸び放題になって鬱陶しくなったので、若い頃から通っている調布の床屋さんに
久し振りに行きました。最近は1000円でカットだけやってくれるお店も増えて来ましたが、やはり
昔ながらの床屋さんは安心して任せられます。

 子供の頃に実家の傍で通っていた床屋さんもそうでしたが、結婚を期に今の床屋さんに変えたの
です。床屋さんは理由もなく変えたくありません。私は神経質なところがあり匂いにも敏感なので、
少しでも異臭のするタオル等を使われると幻滅します。

 その店、通いなれたお店は何の心配もなく身を預けられるので、心が休まります。時にはご主人
と他愛ない会話も楽しみます。お互い同世代なので、何かと話が合います。ご主人の話では最近は
床屋さんも後継者に困っているようです。例え継いでくれても、世代が違うのでお店の外装・内装
から意見が合わず、已む無く隠居を選ぶ床屋さんもいるようです。

 そんな話を聞きながら伸び切った我が頭髪も綺麗に散髪されて、爽快な気分でお店を出たのです。
悪い事に調布の駅前にはパルコがあり、その中に「銀座山野」があるのです。特に何を買いたいと
言う訳ではなかったのですが、気分がいいとCDでも買ってみようかと言う気になるものです。

 色々物色を始めたのですが、余り触手を伸ばすものはありません。最近はユニバーサルもソニー
もSHM-CDばかりで閉口します。非・SHM-CDを探していると「ルビジウム・クロック・カッティング」
と言う帯の付いたCDを見つけました。それが小澤/ボストン響のフランクだったのです。発売年は
2013-3-27(UCCG-4779)です。

 そう言うものがある事は知っていましたが、買った事はありませんでしたし、フランクのいいCD
を持っていないので、買ってみる気にもなったのです。クロックが正確になるなら、悪い事はある
まいと思ったのですが、それが見当外れでした。

 家に着いて早速、聴いて見ました。プリはΕC-1 パワーアンプは高帰還化100W機です。この曲は
ゆったりした導入部が済んだ後に、独特のリズムとメロディーでオケが全開になりますが、此処の
音の再生が非常に難しいのです。混濁して弦が引き攣るのが落ちなのです。これまで機会ある毎に
LPやCDを買ってきましたが、此処が気分良く聴けるソースにお目に掛かった事がありません。

 このルビジウム・カッティングはどうでしょうか? 何か音が不自然です。高域が持ち上がった
ような感じで、弦は引き攣ってはいないのですが、ボストン響にしては厚みが感じられるず細いの
です。それに部分的に何とも言えない不安定な音が顔を出します。しかし、元の録音は良いのかも
知れないと言う兆候は感じられたのです。

 録音エンジニアを見ると、ハンス・ペーター・シュバイクマンです。この人の録音は、これまで
数多く聴いて来ましたが安定していて、音のバランスも良く、好きなエンジニアの一人です。小澤
のプロコ「ロミジュリ」も優秀録音です。この人がこんな音で録るはずはないと思いました。何か
ルビジウムに託けて弄ったなと思いました。

 このCDにはプーランクの「オルガン、弦楽とティンパニーのための協奏曲」も収録されています。
この冒頭を少し聴いて見ましたが、出だしのオルガンの派手な事、実際のオルガンはこんな音では
ありません。やはりこのCDはヘンです。

 それで、普通のCDは売っていないのかと思ってネットで検索して見ましたが、米国アマゾンには
あるようですが、日本国内では現在このCDしか正規に売っていません。輸入盤が仮に有ったとして
も5000円ほどもします。一種のプレミアでしょうか?

 そうこうしている内にアマゾンで中古品ですが、このCDのゴールドCD盤が売っているのを見つけ
ましたので、ダメもとで買って見ました。3日程待ってやっと届きました。発売は2001/12/21です。
中を開けて盤を見るとビクターカッティングです(UCCG-9245)。日本のグラモフォンは、通常盤は
コロムビアでカッティングされていましたが、ゴールドCDはソニー、メモリーテック、ビクター等
に分散しています。

 このCDはルビジウムでもなくSHM-CDでもありません。少し期待が持てます。早速聴いて見ました。
最初のffはどうでしょうか? そもそもこの部分の楽音の再生は、非常に難しい事は容易に想像が
出来ます。理想的かどうかは分りませんが、これまで聴いた音の中では一番良いかなと思いました。
普通は、此処で「ああダメだ!」と言って聴くのを止めてしまうのですが、この音なら止める理由
は全くありません。

 とうとう楽章の最後まで聴いてしまいました。特に最終部は厚みのある金管に支えられて非常に
いい感じで鳴っていました。流石、小澤!と言う指揮ぶりですし、録音も優秀と言っても良い程の
レベルです。演奏・録音を総合的に見るとこのCDのベスト盤ではないかと思いました。

 第2楽章のコールアングレも良いし、第3楽章もやはり陰でしっかり支える金管の魅力が目立ち
ます。弦は決して引き攣れる事なく、金管と絶妙にバランスします。勿論、木管群も言う事はあり
ません。長年生きて来て、やっとこの曲を満足の行く音で楽しめるソースを見つけたのでした。

 床屋さんで気分を悪くしていたら、多分「山野」は通り過ぎてしまったでしょう。人間の運命は
色々な因果関係に操られているのだと、改めて思ったのでした。これだけの音で聴けるなら輸入盤
を特に探す必要もないでしょう。

 それにしても今のオーディオの現状に合わせて、ソースまで歪められている実情は本当に困った
ものです。私から言わせて貰えれば、不安定動作するアンプの音に何とか合わせようとする努力が
空回りして、余計に変な方向にオーディオを押しやっているように思います。こんな事を幾ら繰り
返していても理想のオーディオから離れて行くだけです。全く理不尽です!

 仮に世の中の再生アンプをWRの高帰還アンプにすれば、全ては正しい方向に修正されて何時かは
理想的なオーディオの世界が訪れるのではないか、と思うのは不遜と言うべきものでしょうか?  

1502川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Apr 1 19:00:00 JST 2014
消費税アップに伴う価格改定について(お願い)

 ご多分に漏れず、WRアンプなどの価格を消費税分だけアップさせて頂く事になりました。
現行機種と関連商品の、ショッピングサイト上の価格を改定させて頂きました。今後とも
どうぞよろしくお願い申し上げます。

 表示は従来通り内税になっております。HP本体は未だ手がついておらず改定されてない
部分が多いですが、基板製作の暇を見て修正して参りなすので、今しばらくの間お時間を
頂戴できれば幸いです。

 Εシリーズのパワーアンプ群と、それにベストマッチするプリアンプΕC-1 を今後とも
どうぞよろしくお願い致します。この組み合わせならば、殆どの方にご満足頂けるものと
自信をもっております。約20万円から手に入るWRのコレクタホロワ型の高帰還化アンプを
是非、お試しになって下さい。

 これまでのトランジスタアンプの悪いイメージは、完全に払拭されています。そろそろ
本物をお使いになって、音質を気にする事なく音楽ライフをお楽しみになって見ては如何
でしょうか。  

1501川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Tue Mar 25 17:50:00 JST 2014
WRの最新プリアンプΕC-1 の特長について

 ご存知のように、ΕC-1 の前身はWRP-α9/A と言うヘッドホンアンプです。ヘッドホンアンプを
開発した時に少しでも需要を増やそうと、プリアンプにもミニパワーアンプにも使えます、と言う
キャッチフレーズを考えたのでした。

 ヘッドホンアンプは当然の事ながら残留ノイズの極小化が求められます。またヘッドホンアンプ
と言えども電圧増幅アンプでは無理があり、ミニパワーでもパワーアンプが基本的には必要になる
と考えました。

 そこで、WR既存の準コン基板を利用して、ゲインを落とし残留ノイズを少なくする為の再設計を
行いました。それには高帰還化しか手がないと考えたのです。普通ヘッドホンアンプは残留ノイズ
を減らす為に、アンプ出力に高抵抗(数100Ω)を直列に入れます。例えば、300Ωを入れて32Ωの
ヘッドホンを使えば、32/332=0.1となり残留ノイズは1/10になります。

 しかし、この手は駆動インピーダンスが上がり、アンプは最早ヘッドホンの振動板を制御できず、
だらしのない音になってしまいます。私はこの方法は取りたくないと思い、高帰還によってゲイン
を落とし、駆動インピーダンスをもっと下げる方向に舵を切ったのです。

 元々WRの準コン基板のゲインは26dBあったのですが、これを一気に12dBに落としたのです。結局
残留ノイズは単純計算で14dB(約5倍)減る事になりました。その他、初段の電流を大きく減らして
ノイズを減らす努力も行って、結局残留ノイズをフラットで20uV(DIN-AUDIO:14uV)に落とす事に
成功したのです。

 問題はもう一つありました。高帰還でノイズを減らす事は出来ても、アンプが不安定になっては
元も子もありません。そこで高域補償法をやり直す事にしました。従来の補償法では多分きついと
思いますが、そこが「負性抵抗」を防ぐ特許回路の強みです。帰還量に応じて補償コンデンサーを
適度に増やす事によって、適正な安定度を得た上で高帰還化に成功したのです。

 こうしてWRP-α9/A はデビューしたのでした。WRアンプの中では安価であった為、試し買いの方
も含めて結構台数が出ました。千葉さん初め結構多くの方にお褒めを頂きましたが、手間の割には
儲けが少ないので製作サイドからストップが掛かり、止むを得ずディスコンにしたのでした。

 その代わりそれを契機にプリアンプに昇格させる条件を飲んで貰って、ΕC-1 の誕生に漕ぎ着け
たのです。高帰還化でパワーアンプのゲインが減った分、プリで補う必要がありましたのでこれは
絶対条件でした。そうすれば、WRアンプは

 プリアンプ-----→ΕC-1

 パワーアンプ----→Εシリーズパワーアンプ

と簡素化できます。そして、今年に入ってやっと新型プリアンプは実現したのです。今現在、数台
以上がお客様に納入されて、何人かの方から優れたパフォーマンスに対する賞賛の声を頂いており
ます。

 そこで改めてΕC-1 の音の特長を精査して見ました。一聴して感じる事は中低域が厚みがあって
充実している事です。そう言えば生の演奏会場に行って何時も感じるのは、中低域が凄く安定して
いる事です。決して腰高の神経質な音ではありません。それに通じるものがあると感じました。

 これが何処から来ているか本当のところは分りませんが、やはりパワーアンプが送り出しアンプ
に使われている事でしょう。当然の事ながら、直流カットの出力コンデンサーを省略していますが、
この事も中低域の厚みに繋がっている可能性があります。

 もう一つ感じる事は中低域に厚みがあって安定しているせいか、中高域には全く神経質なところ
がなく、結果としてひずみ感が少なくソースの持つ良さをストレートに感じ取る事ができるのです。
CD再生によくあったデジタル臭は微塵も感じなくなりました。このような事が総合的に音質を向上
させ、結果的に濃くのある音になっているのではないかと思っています。

 ΕC-1 +WR高帰還化パワーアンプで音楽を聴いていると、魔法でも掛かったかのような安定した
再生が可能になります。オーディオの悩みが単純に整理されて、解決できるようになると思います。
まだお迷いの方、どうぞ安心して、WRの新型プリアンプΕC-1 とΕシリーズのパワーアンプの組み
合わせをお選びになって下さい。  

1500川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Thu Mar 20 14:00:00 JST 2014
プリアンプは何故必要か?

 昔からオーディオ装置の構成には、プリアンプとパワーアンプがセットで使われてきました。
当時のプリアンプには音量調節の他に、トンコントロールや左右レベル調整等のツマミがあり、
又、LP聴取は必須であった為に、パワーアンプのみでは明らかに機能不足で、用を足しません
でした。そうそう、位相反転のツマミなんかが付いたものもありました。

 しかしセパレートは場所を食うとか、高価だとかの問題もあって、プリメインアンプが脚光
を浴びてきました。その内にアンプやスピーカーの性能が向上し、必ずしもトンコントロール
や左右レベル調整は必須のものではなくなっていったのです。徐々にプリアンプの存在価値が
薄れてきたのです。入れない方が理想的だと思っている方もあるかも知れません。ストレート
ワイヤーがオーディオの理想だとすれば、プリのようなモノが入ると音が悪くなるとお考えの
方も居るでしょう。しかし、私は良く出来たプリなら積極的に入れるべきだと言う立場です。

 では最近のプリアンプの機能には最低何が必要なのでしょうか? 私なりに整理して見ると

 1.パワーアンプだけでは不足するゲインを稼ぐ事。

 2.種々の入力機器の切替を行える事。

 3.オーディオの肝であるパワーアンプに対する緩衝装置になる事。

の3つを挙げて見たいと思います。1、2はあくまで標準的な事を想定していますから、例外
も有り得ます。パワーアンプのゲインが高いのでプリでゲインを稼ぐ必要はないとか、CDしか
聴かないから切替SWは不要だとか、色々とあると思います。

 しかし、皆さんに取って聞き慣れない3については、私は必須だと思っていますので、此処
では3について詳しく説明を加えて見たいと思います。

 緩衝とは衝撃を和らげる事ですが、此処で言う衝撃の実体は高周波ノイズです。帰還アンプ
は動作する電磁環境の良し悪しによって、多かれ少なかれ影響を受けます。可能な限り高周波
ノイズの少ない所で使いたいものです。

 ところが最近のデジタル機器・家電の氾濫で世の中の電磁環境は悪化の一途を辿っています。
勿論、最大の汚染場所は家庭の商用電源ですが、空間にも高周波ノイズは飛来して来ています
ので、商用電源を使わないから安心と言う訳にも行きません。ケーブルがアンテナになり飛び
込んできます。

 スピーカーケーブルの両端を120 Ωで終端してマッチングを取ると、明らかに音が落ち着き
ます。これはスピーカーケーブルがパワーアンプのアンテナとして動作し、ノイズをアンプに
注入している証拠です。その為にパワーアンプが不安定になるからでしょう。エミッタホロワ
の類(カソードホロワ、ソースホロワ)のような不安定素子を終段にしているパワーアンプに
取っては、余計デリケートな問題になります。この事を逆用して、超高価なSPケーブルが売ら
れているのではないでしょうか。アンテナとしての条件を変えれば音は大きく変わるはずです。

 パワーアンプは、この他にも高周波ノイズの攻撃を受けます。1つは商用電源です。これは
地域差や戸建かマンションかでも変わってきます。大きな工場が近くにあるとか、太陽光発電
をしている家が近所にあるとか、インバーターやチョッパー等の技術を駆使したデジタル家電
を家の中で使っているとか、考え出したら切りがありません。電話機やインターネットからも
ノイズはばら撒かれています。何らかの方法でこれらから発生する高周波ノイズの影響を受け
難くする工夫が必要になります。

 最後にもう1つパワーアンプにノイズを供給するものがあります。それはCDプレーヤーとか
PCオーディオ及びDAC 等の入力機器です。これらも立派なデジタル機器ですから高周波ノイズ
を多かれ少なかれ撒き散らしています。スペアナで観測すると明らかにノイズが観測できます。

 それをパワーアンプにダイレクトに接続したら、よりレベルの高い高周波ノイズを供給して
しまう事になりますが、プリアンプを介して接続すれば、プリアンプが緩衝装置になりノイズ
レベルは軽減される可能性があります。

 プリアンプなら何でも良いと言う訳には行きません。全帯域でパス状態では意味がないから
です。出来るだけ高周波ノイズに対して、ローパス効果を持つ必要があります。WRプリアンプ
は、特許回路を搭載していて負性抵抗を抑制していますが、この回路は極端に言えば可聴周波
だけを通し不必要な高周波領域は殆ど増幅しません。この事実は出荷時に行うWRアンプの測定
結果からも明らかです。WRアンプは特異な周波数特性を有しています。

 この特性があるので、WRプリアンプに入った高周波ノイズはかなり減衰してパワーアンプに
送られる事になります。特に最近開発したWRプリアンプEC-1はラインアンプと送り出しアンプ
の2段構成ですので、減衰特性が積の形で効いてきます。EC-1の評判が上々なのもそれなりの
理由があります。

 逆に言えば、負性抵抗を取りきれていない不安定なプリアンプを接続すると、その不安定さ
がパワーアンプにも伝染し、余計に音を悪化させる事も考えられるのです。プリを使う以上は
プリ自体が安定で、明らかなローパス効果が期待できるものでなければなりません。

 そろそろEC-1の出荷も始まっていてご丁寧にもご報告を送って頂く方も居られますが、その
レポートからもEC-1が相当の効果を上げている事が分ります。どうか、E-10や高帰還化アンプ
をお持ちで、まだプリアンプをお使いでない方は、必ず音質は改善されますので、是非EC-1を
お申し込み下さい。3月一杯にお申し込み頂ければ、納期が遅れても割引の特典と5%消費税で
清算させて頂く所存です。  

1499川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Sat Mar 15 15:00:00 JST 2014
日フィル3月定期を聴く

 いよいよ春の音楽シーズンの開幕です。このところ例年3月はラザレフですが、3年前の事を
弥が上にも思い出します。そうです。3月11日が日フィルの定期の日だったのです。結局、交通
機関が全て止まり、行くのを断念したのでした。改めて震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈
りし、被災に遭われた方々にお見舞い申し上げます。

 今年はスクリャービンの2年目で、今回はピアノ独奏に浜野与志男を迎え、ピアノ協奏曲嬰へ
短調でした。メインの曲は名曲ながら実演の少ないショスタコの「レニングラード」です。規模
が大きいので、おいそれとは演奏できない壁があるのでしょう。これだけの奏者を自前で持って
いる日本のオケはないでしょうから、多くのトラを集めてくる事になります。

 スクリャービンのピアノ協奏曲は初期の作品で、まだロマン派の色を濃く残していると言われ
ていますが、私のレパートリーから外れているので、初めて耳にしました。全体から受ける印象
は、強いて言えばラフマニノフに似ていますが、決定的に違うのは耳に残るメロディーに乏しい
と言う事です。正直、もう一度聴きたいとは思いませんでした。

 短いオケの導入部のあと、ピアノが弱音で出てきますが、中高音部の美しい音にハッとしたの
ですが、その後のffで見事に裏切られてしまいました。その美しい音とは異質のある種の飽和感
が伴うのです。それは曲を通してずっと付き纏っていました。こうなるとピアノ協奏曲の魅力が
半減してしまいます。この音が自分の再生装置から出てきたら何処かがおかしいと疑うでしょう。

 ピアノのせいなのか、調律のせいなのか、タッチのせいなのか、ピアノの音質・音色も演奏の
内ですから、もう少し気を遣って貰いたいと思いました。明らかにpp~p では音が綺麗に澄んで
いたので、残念さが残る演奏でした。大ホールの隅々まで音を行き渡らせようと力んだ可能性も
否定できないでしょう。その意味では大ホールでのピアノ協奏曲には問題がありますが、以前に
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を聴いた時は、殆ど同様な条件であったにも
拘わらず、ffでも凄く冴えていたので、ピアニストのセンスと力量に掛かっている気がしますが、
曲自体の格の違いにも依るのかも知れないと思いました。(その時のピアニストは河村尚子)

 15分の休憩のあとは大曲「レニングラード」です。この曲はナチスがソ連に侵攻した時に国民
を鼓舞する為に作曲されたと言われています。第1楽章で軍隊を思わせる侵攻のテーマが小太鼓
のリズムに乗って奏でられて行くのですが、ラベルの「ボレロ」を模したように、徐々に楽器の
数が増え、音量も増大して行きます。

 最近は、ラベルの「ボレロ」は最後のffまで、混濁なく再生できるようになりましたが、この
曲は未だにダメです。第1楽章が最大に盛り上がる部分は、全く綺麗に再生できません。今回は
初めて聴く生演奏会です。そこがどうなのか、それを先ず検証しようと臨んでいました。結果は、
これは永遠に諦めた方が良いと思ったのです。音楽も音も破綻していると感じたからです。

 100 人前後の楽員が全て、これ以上の音は出せないと言う音量で奏でる訳ですから、120dB を
越えるような音圧ですし、戦争に打ち拉がれている国民を叱咤激励するには、エキセントリック
な音楽である必要があったと思うのです。平和ボケしている者にはこれはキツイ音楽です。この
曲に限らずタコ4、タコ8等でも耳を塞ぎたくなった事がありましたが、ショスタコに共通する
「エキセントリック曲想」なのでしょう。

 しかしこの部分を除けば、この曲は実に良い曲だと思います。何処を聴いても飽きない魅力が
満載です。メロディーは勿論、楽器の使い方に工夫があって、逐一、興味深く聴く事が出来ます。
私は曲が長い(約70分)事もあって、何時も第2楽章から聴き出します。この出だしの弦が昨夜
は凄く綺麗に聴こえました。CDでは気が付かなかったのですが、これはセコバイである事が分り
ました。そう言えば、ストバイはこの後にもう少し高い音で出てきます。ストバイは今一つ抜け
切れていませんでしたが、音量感・厚みは十分で、人数の割には存在感のあるビオラ、チェロを
含めて、改めて日フィルの弦パートは素晴らしいと思いました。勿論、受難続きのコントラバス
も十分に低音部を支えています。私の席ではピッチカートが低く下に伸びて心地良く響きます。

 弦パートだけではありません。木管も、最近著しく音楽的に成長したフルートを含めて4人の
呼吸、音色・音量感も秀逸で、今や日本のオケの弱点ではなくなりつつあります。金管もトロン
ボーンセクションが結構頑張っていましたし、トランペットはトップの影響を受けてか明らかに
レベルが上がって来ています。トロンボーンと言えば、この曲にはトロンボーンが6必要である
事を初めて知りました。バンダの効果を狙ってか、3人は左端に座っていました。ホルンも最近
新たに若いトップが入って、総合的に実力が上向いて来ています。

 第2楽章はスケルツォ楽章だと言われていますが、私には緩除楽章のように聴こえます。弦の
リズムに乗ってオーボエが妙なるメロディーを奏でます。ファゴットやコールアングレなど木管
が絡んで彩を添えます。途中でクラリネットが甲高い声を上げて、それが金管に全楽器に伝染し
激烈な盛り上がりを見せますが、また初めに戻ったように落ち着きを取り戻します。バスクラが
怪しい雰囲気を奏でますがクラリネットの明るい響きに引き戻されます。フルートも綺麗に絡み
魅力的です。

 第3楽章は出だしこそ木管の不協和音的刺激音に威圧されるものの、心が洗われる緩除楽章で
優しい弦の音に包まれます。この楽章は弦が下手くそだと聴いていられないでしょう。フルート
の澄んだ響きも格別です。勿論、中間部では金管を含むffが現れて、劇的な緊張感が一時は漲り、
ホルンが咆哮し、小太鼓が強打されますが、また弦パートの美しいアンサンブルに戻り、それに
木管がタイムリーに絡み、静かに最終楽章に切れ目なく流れ込みます。

 第4楽章は第3楽章の雰囲気を暫くの間引継ぎますが、低弦に動きが起こり次第にスピードを
速めて全ての楽器に伝染して戦闘モードに入ります。私には勝利を信じて突き進む様に聴こえて
来て、自然に気分が高揚してきます。途中で鞭を打つような音がしますが、これはコントラバス
が弦を弾いて出している事に気付きました。この後、速度を一旦落としゆったりした暗い楽想に
入ります。最後の爆発への前触れ、嵐の前の静けさなのでしょう。

 そして、徐々に暗い淵から這い上がって勝利に向けて邁進して行くのです。バンダも加わった
強力な金管、ティンパニーを含む打楽器、そう全ての楽器が参加してコーダに突入し、最終部を
盛り上げて、圧倒的響きで幕を閉じます。このメロディー、全楽器の迫力、ティンパニーの強打
最後を飾るに相応しい素晴らしい曲想です。ブラボーが出ない方が不思議と言うものです。会場
は興奮の坩堝と化したのです。ラザレフが頑張った奏者を立たせたり、自ら行って握手をしたり、
第1小太鼓(激しい部分では第2小太鼓が活躍)の奏者の手を携えて、指揮台の上に登らせては
その演奏を讃えていました。


注)私が普段に聴いているCDは、ネーメ・ヤルビィ指揮するスコティッシュ・ナショナル管です。
  (Chandos CHAN 8623) 日フィルの客員首席指揮者で実演を1、2回聴いていますが、中々の
 指揮者です。このCDは演奏、録音共に良く長年このCDで学習して来ましたが、スコティッシュ
 ナショナル管はロンドン響より上だと思います。昨夜は全く違和感なく楽しむ事が出来ました。
 兎に角、この曲は素晴らしいです。   

1498川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Mon Mar 10 18:00:00 JST 2014
オーディオの本質とは何んでしょうか?

 保存された音楽信号を人間の耳に聴こえるように、機械的又は電気的にパワー増幅する事だと
私は考えています。前者が蓄音機であり、後者が電蓄である事はご承知の通りです。

 蓄音機はSPの再生に於いて今でも珍重されています。寧ろ、電蓄の方は殆ど姿を消したのでは
ないでしょうか。蓄音機はSP盤の溝に刻まれた音楽信号を、モーターのトルクを利用して振動板
に機械振動として伝え、その微小な振動をエクスポネンシャル・ホーンによって空間にロスなく
音響的に放射するものです。この過程でパワー増幅が行われています。

 パワーとは今更申し上げる必要もないかも知れませんが、単位時間に行う仕事の量で、仕事率
又は工率と呼ばれています。電気では電力と言う言葉が使われます。此処でSP盤の話をする意図
はありませんので、電力を増幅する、所謂電力増幅にについて検討して見たいと思います。電力
の単位はジュール/秒ですが、普通これをワットと表示しています。

 私は「オーディオの本質は電力増幅に尽きる」と考えています。要するにきちんと正確な電力
増幅ができれば世話はないと言う事です。逆に言えばきちんと正確な電力増幅する事が、如何に
大変かと言う事です。

 その意味で、オーディオで一番大切なものはパワーアンプでしょう。ここで折角の入力信号を
歪めてしまっては、幾ら良いスピーカーを使っても本領を発揮する事はできません。そして宝の
持ち腐れになってしまうでしょう。この部分でのパワー増幅が、オーディオに於いて一番難しい
問題を抱えています。

 何故、電力増幅は難しいのでしょうか? 必須ながら達成の難しい条件を2つ挙げて見ます。

 1)広帯域に亘って、安定的に出力インピーダンスを限りなくゼロに近づける事が可能か?

 2)入力インピーダンスにも出力インピーダンスにも、負性抵抗が現れる事はないか?

この他にも、高調波ひずみ率を低く保つ、残留ノイズを低くする等々がありますが、特に難しい
と言う程の事ではありません。この2つが何故大切かを説明したいと思います。電力増幅に比べ
電圧増幅が楽に行えるのは、1の条件が必須ではなくなるからです。

 1は、前回も触れたように定電圧源を前提に開発されたスピーカーに取って、当然具備すべき
条件です。特に私が気になるのは、出力インピーダンスが高いと振動板の制御が出来ずに、その
自由振動を許し音楽信号に過渡的ひずみを付加してしまう事です。もう一つはスピーカーが振動
する事によって発電されて来る電圧をシャットアウト出来ない事です。この電圧はパワーアンプ
に少なからず悪影響を与え、音質を害する事にもなります。

 1の条件は、当然の事ながらアンプの系が安定に動作している事が、前提条件になりますから
そもそも系が不安定であったりしたら、それ以前の問題として落第になります。なのでDFが幾ら
大きくてもダメなのです。世の中にはデジタルアンプと言うものがあり、これに関して私は素人
ですが、多分、出力回路に入るローパスフィルターの問題を含めて、1の条件を十分クリアでき
ない側面があるのではないかと、私は考えています。だから綺麗だけど力がないと言われている
のではないでしょうか?

 2は自動制御論に基づいた高域補償法では十分ではなく、高周波帯域で入出力インピーダンス
の実部に負性抵抗が多かれ少なかれ現れて来ます。この負性抵抗は、系に取っては不安定要素で、
系を不安定にさせ、正しい電力増幅をする妨げになります。この問題は、無負帰還なら避ける事
が出来ますが、しかし1の条件で落第となります。

 以上の事から、一般の高帰還アンプ、無(低)帰還アンプ、デジタルアンプ共にきちんと正確
な電力増幅を行う事には問題がある、と言う事になります。それでも、その音が好ましいと思う
方が居ても趣味の世界だから仕方ありませんが、不完全な動作によって作られた音には恒久的な
説得力がなく、結局は飽きて又違うものを求めて彷徨う事になるだろうと私は思っています。

 翻ってWRの高帰還アンプは2つの特許回路の採用により2の条件をクリアし、高帰還によって
1の条件も、かなりの完成度でクリア出来ていると思われます。出来ている、と言う判断は次の
事に依ります。

 1.サントリーホールでの生演奏会の雰囲気が、我が家のリスニングルームで、近似的に再現
   出来るようになった事。

 2.同好の士(同様な趣味趣向の方)と思われる方々に頂いた、お貸出しアンプに対する評価
   が結構高く、例外が無かった事。

 以上のように、生演奏会のアコースティックな響きをリスニングルームで再現させる事を目標
にしたオーディオを私は想定していますので、それ以外を重んじるオーディオに関しては、この
限りではありません。今現在のオーディオの趨勢は「それ以外を重んじるオーディオ」に偏って
いるように私には見えます。それは私の目標には全く不要な高価なアクセサリーが持て囃されて
いる事から推定できます。そのような方には、WR高帰還アンプは大した価値のあるものにはなら
ないでしょう。

 音場を含めた生楽器の家庭での再現を目指す方、どうかWRの高帰還パワーアンプΕシリーズを
ご検討下さい。必ずやご満足頂けるものと思いますので、自信をもってお勧め致します。  

1497川西 哲夫さん(WRアンプ開発・設計者) Wed Mar 5 14:00:00 JST 2014
WRの高帰還アンプについて

 Εシリーズのパワーアンプから「高帰還アンプ」と言う名称で呼んでおりますが、高帰還
アンプとはどう言うものなのか、改めて解説させて頂きたいと思います。先ずは、世の中の
アンプ、特にパワーアンプは大別して無帰還アンプと帰還アンプに分類されますが、この事
はご承知の通りです。

 帰還とは言うまでもありませんが、出力信号を逆相で入力に戻し、周波数特性の広帯域化、
ひずみの低減、出力インピーダンスの無限小化などを図る制御技術です。表面的には悪い事
は何も無く、戦後大いなる期待をもってオーディオ界にデビューしました。

 戦前は、トランス結合を使った無帰還アンプが主流でしたが、戦後まもなく帰還アンプが
徐々に幅を利かせるようになりました。最初の内は、劇的な物理的特性の改善によって人気
を博していました。しかも、入力トランスを使わずに抵抗結合で回路が構成できるメリット
もあり、オーディオの振興と共に殆どのメーカーが手掛けるようになって、世の中は一気に
帰還アンプ1色になっていったのです。

 しかしそこにはもう一つ別の問題がありました。それは増幅素子の問題です。同じような
タイミングでトランジスタが実用化されていました。真空管は正電圧で動作する素子である
為自ずと制約があり、出力回路に出力トランスを使う事を余儀なくされていました。この事
が帰還を多量に掛ける障害になっていた事は否めません。勿論、OTL 回路も開発されました
が、出力回路が、カソードホロワとプレートホロワの折衷でしか構成できないと言う欠点が
あり、それを駆動する前段の設計が難しく、また大型管を複数本並列に接続すると言う問題
もあって、一般的にはなりませんでした。

 そこにコンプリメンタリ・トランジスタの登場です。真空管に比べて出力インピーダンス
が低く、負電圧で動作する素子を組み合わせる事によって、理想的なOTL 回路が構成できる
ようになり、一気にメーカー製アンプが花を咲かせたのです。そしてオーディオ産業として
大きく発展したのです。日本の電機メーカーでオーディオに手を出さないメーカーはない程、
多くのブランドが誕生し、猫も杓子もトランジスタを使ったオーディオアンプを使うように
なりました。

 出力トランスが取れた事で帰還量は一気に増えて、世の中は高帰還アンプで溢れて行った
のです。当時は今現在より高周波ノイズが少なく、メーカー製の高帰還アンプもそれなりに
いい音で鳴っていた時代がありました。だからこそ、あれだけの産業に発展したのでしょう。

 しかし、この華々しい時代は何時までも続きませんでした。色々と原因は有ったとは思い
ますが、私は世の中の電磁環境の悪化で、同様のアンプでも音質が知らず知らずの内に悪く
なって行った事が、一番の本質的な問題だったと思っています。この事に気づき、抜本的な
対策を講じなかったメーカーにも少なからず責任があるでしょう。

 徐々に「トランジスタアンプは音が硬い」と言う不満が表面化したのです。既に廃品種に
なっていた真空管が見直されたのは、この不平の裏返しであって、決して前向きな動きでは
ないと思っています。皮肉にもメーカー製高帰還アンプのアンチテーゼとして無帰還真空管
アンプが再び人気を博すようになったのです。

 しかしこれは不幸な事です。折角の帰還の恩恵を諦めて、古典回路に戻る事は一種の敗北
です。無帰還又は低帰還では「音がトランジスタアンプよりは柔らかい」と言う程度にしか
改善されません。その最大の理由は駆動インピーダンス(出力インピーダンス)が余りにも
高く、最近の実効質量の大きなスピーカーを完全にドライブする事ができないからです。

 それにも拘わらず真空管アンプの人気が一定のレベルにある事は、私に取っては不思議な
出来事です。しかし、ライブの音の魅力を知った人は、徐々に真空管アンプに懐疑的なって
きていると思いますし、かと言って今更メーカー製アンプでもないと気付き始めいるような
気がします。

 その矛先が優良なガレージメーカーに向けられて来ているのも事実でしょう。WRアンプも
その末席を汚しているのかも知れません。しかし、私はきちんとした理論武装を行い真面目
に対処しています。それは、折角の技術「帰還」を100%使い切って帰還のメリットをアンプ
に可能な限り適用すると言う事です。

 これはこれまで何回も言及して参りましたが、私は帰還アンプの成功の鍵は

 1.帰還回路に不可避的に生じる「負性抵抗」を抜本的に消失させる技術の開発。

 2.家庭内で発生する高周波ノイズを出来る限りシャットアウトする努力。

の2つだと思っています。

 1については、40年にもおよぶ研究の成果から「負性抵抗」を消失させる回路を考案して
2つの特許を取得し、実際にWRアンプに生かしています。この特許回路は、帰還量に応じて
負性抵抗を完全に抑制する事ができますので、帰還量が増えても安定性を十分に確保する事
ができます。

 2については、デジタル家電やスマホなど、身の回りには高周波ノイズを撒き散らす機器
が氾濫しています。これらが汚す家庭内電磁環境は、最悪の状況にあると言っても過言では
ありません。帰還アンプは外部からの高周波ノイズを受けると、多かれ少なかれ不安定動作
を繰り返します。

 一方、自動制御論に基づいた旧来の補償法では、概して帰還量と共に安定性が犠牲になる
傾向がありますし、そもそも従来の補償法では十分に負性抵抗を抑制する事は難しいのです。
それは、発振までの余裕度を表す位相余裕の大きさで判断できます。従来の補償法では40~
50度くらいが目安になっていますが、この程度では負性抵抗は取り切れません。WRアンプの
特許回路を用いて負性抵抗を完全抑制すると位相余裕は90~110 度程度になる事から、その
ように結論出来ると思います。

 斯様にWRの高帰還アンプは抜本的な補償法を用いていますので、これまでの高帰還アンプ
とは本質的に違い、帰還のメリットが副作用無しに享受できるのです。Εシリーズの高帰還
アンプは多くの方々に高い評価を頂いておりますが、それは偶然ではなく必然なのです。旧
WRアンプと比べて約5.3 倍程帰還が深くなっています。即ち高帰還化アップグレードを行う
と全てが5.3 倍改善される事になります。オーディオで2倍(6dB )変化すると殆どの場合、
耳で検知できますので、それが5倍以上ですから、かなり劇的に変わると思います。

 高帰還のメリットの内、一番大きいのは出力インピーダンスが安定性を確保した上で十分
低く抑えられている事ではないかと思います。申し上げるまでもなく、スピーカーは定電圧
源駆動が前提となって設計されています。定電圧源とは出力インピーダンスがゼロの電源を
意味しています。完全ゼロは無理にしても、低ければ低いほどスピーカーは理想的な動作を
する事になります。

 DFと言う言葉がありますが、これは出力インピーダンスの目安になります。本来は大きい
方が良いに決まっているのに、大き過ぎない方が良いとよく言われます。それは余り大きく
すると音が硬くなったり、低音が出なくなったりするからですが、実は、DFが大きくなった
からそうなるのではなく、帰還量が増えて、アンプ自体の動作が不安定になってしまうから
硬くなったりするです。Εシリーズのアンプは、旧WRアンプより低音は低い方に気持ちよく
伸びていますし、低音が出なくなったと言う感覚は全くもっていません。従って、見かけの
DFだけでは、本当の事は殆ど分らないのです。

 従いまして、ライブで聴く感じをリスニングルームで再現するには、出力インピーダンス
の高い真空管アンプ(OTLは除く)は論外ですし、「負性抵抗」を抜本的に取り除いていない
メーカー製高帰還アンプも、また不適合と言えるのです。抜本的な「負性抵抗」対策をして
いなければ、ブランドものでもビンテージものでも、五十歩百歩だと私は思っています。

 WRアンプの高帰還アンプは、不安定要素である「負性抵抗」を本質的に無くす回路を搭載
していますので、帰還のメリットを100%享受でき、スピーカーを理想的に駆動する事が可能
です。ライブの感激を我が家のリスニングルームで、と言う夢を追う方は是非、WRの高帰還
アンプを選定なさって下さい。音場感タップリの、アコースティックな楽器の音の再生には
大いに威力を発揮すると思います。